The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆いよいよ(※執筆開始から2年)アークナイツ主人公のドクターと世紀の天才極悪科学者が出会いました、長かったです。

◆イベ中ですが悪魔って何だ……サーミローグのアレと同じでいいのか?
源石といい悪魔といい偽りの空といい巨獣といい、テラには判らないことだらけすぎる……だがそれでも、それでもカオスエメラルドならきっと何とかしてくれるはず……(妄信)


RI-08-1/2.ドクターとドクター/Dicider. and Dominator.

 

一隻の舟が、一個の世界に挑む

 

 


 

1097年2月。

 

◆エッグマンボーグ・旧ロストフ家別荘、現エッグマンボーグ迎賓館◆

 

 色とりどりの宝石が設えた豪奢なシャンデリアが、この場にいる四人と一体を天井から照らしている。

 

「(彼がDr.エッグマンか……)」

「どうも初めまして。この度は面談のお時間を頂きましてありがとうございます。ロドスアイランド経営責任者のアーミヤと言います。こちらがロドスのドクター『ヨハノ・アノニマ』です」

 

 アーミヤとドクターは自己紹介の後に礼を示す。

 

 元ロストフ家所有の屋敷を改造したエッグマンボーグ迎賓館内の会議室で、アーミヤとドクターは今世界で最も注目されている国家であるエッグマンランドの主、Dr.エッグマンと秘書でありかつてのチェルノボーグ支配階級の一角であったナターリアと面会を果たしていた。

 

 現在のエッグマンボーグでは内密或いは私的にDr.エッグマンとの面会を望む有力者が多数存在しており、面会アポの取得は難しい状況だった。

また、ロドスより前に会合した面談者達が先走ってエッグマンランドの技術を毟り取ろうとしてDr.エッグマンの逆鱗に触れ、会議室どころか都市外へと叩き出されたこともあり、Dr.エッグマンへのアポ取りは難航していた。

今日の会談は渉外担当を務めた『ツキノギ』が誠心誠意交渉に立ったナターリアを説得し、彼女の信用を勝ち取ったことでこの場を設けることができたのだった。

 

「うむ。ワシがエッグマンランドの主、Dr.エッグマンである」

「初めまして、ロドスアイランドの皆様。秘書のナターリアでございます。そしてこちらが書記を務めるCASEALです。本日の会談内容は書面及び録音にて後程お渡し致しますのでどうぞ宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくお願いします」

 

 Dr.エッグマンとナターリアにお辞儀しながら、アーミヤは僅かに目線を周囲に向ける。

 

 この会議室には、ウルサス調の部屋模様にはまるで似合わない代物が多い。

黒炭の様に黒いテーブルを覆う様に敷かれた、原理は不明だが僅かに青く発光している薄いガラス。

壁のあちこちに据え付けられた、何かの数値が安定して同じ値を表示している謎の装置。

かつてウルサス国旗かチェルノボーグ都市旗が掲げられていたであろう額縁に飾られた、あの目立つエッグマンシンボルの旗章。

部屋の隅には換気扇のようなものがあるらしく、そこから小さい通気音が聞こえてきた。

 

「(何でしょう……この部屋に入った時から、妙な脱力感が。ホテルの待合室の時に近い感覚ですが、この部屋も除染装置が働いているのでしょうか?)」

「お掛けになって下さい」

 

 ナターリアの促しと共に、アーミヤとドクターとナターリアがそれぞれ着席する。

赤いドロップ型の椅子は手触りがすべすべしており、腰かけるクッションも非常に柔らかい素材を使っているようだ。

なお、書記役のCASEALは立ったままで、Dr.エッグマンは最初から座っている。

 

「(ヨハノ・アノニマか……言語ルール的には『名無しのジョン』あたりか。何とも胡散臭い名前じゃが、まぁ隣の小ウサギ共々所属自体は明らかではある……なら、どうでもよいか)」

 

 エッグマンはドクターの名前を聞いてそう推測したが、この分析は正しい。

不用意な身分証明による情報漏洩を最大限に危惧したケルシーの判断によって、ドクターは偽名を名乗ることになっていたからだ。

とは言え、明確に偽名と判断できる要素やアーミヤの身元及びロドスの企業情報についてはDr.エッグマンのロボット調査によって裏取りされており、また自分自身が本名は別にあれども通称を名乗っているため、Dr.エッグマンはひとまず問題なしと判断した。

 

「(こ奴らが万が一牙を剥くとしても、この部屋にはワシのアーツ妨害装置がある。保険としてバブルバリアとフォトンシールドもワシとナターリアが持っておるし、CASEALも内蔵武装パーツを用意させた。自爆テロだろうが誘拐だろうが何か企もうとも物の数ではないわ)」

 

 Dr.エッグマンは視線を移動させずにBe複数搭載アーツジャマー(エッグ=シャンデリア)とナターリア、CASEALのことを考える。

目の前の二人がもしも暗殺者だったとしても、Dr.エッグマンとナターリアは腕輪型の防御デバイスを備えており二重の防御策がある。

また会談参加者にコーヒーを配る書記のCASEALも、専用に換装した肩パーツには仕込み銃が搭載されている。

そして事が起こればすぐさま室外の鎮圧部隊に通報が入り、会議室に飛び込んでくるよう指示されているため荒事への対策は万全だった。

 

「で、オヌシらもワシの頭脳と技術をアテにしてきた口だな?」

 

 三人が座って早々、Dr.エッグマンは直球かつ歯に衣着せない言葉をアーミヤとドクターに投げかける。

もしも技術に関することでない、投資の呼び込み、あるいは答えない、答えられないようならDr.エッグマンは会談をそのまま打ち切りのつもりでいたからだ。

 

 来訪目的について探るどころか堂々と指摘するDr.エッグマンの発言に、ロドスの二人は思わず面食らってしまうが、彼の隣に座るナターリアは涼しげな顔をしている。

ナターリアにとってDr.エッグマンの言動は予想通りで、そして対処を諦めていた事柄だった。

 

 Dr.エッグマンという存在は、高度な科学技術を生み出す卓越した頭脳を持つ一方で礼儀作法については全く無頓着だ。

『天才は紙一重』『実力的科学者は変人揃い』という一種の定番を考慮するならよくある話かもしれないが、とにかくDr.エッグマンは礼儀に、いや態度に難ありだった。

というのも、Dr.エッグマンは作法自体は『知識として』その頭脳で学んでいるが、ならば実践するかといえばその気は皆無だからだ。

生き馬の眼を抜く貴族社会のそれと比べれば差別や見下しは殆どしないものの、相手を立てるだの謙遜するだのという配慮は存在しない。

エッグマンにとって態度の基準にあるのは『豊富な知力と技術があるか否か』だ。

ナターリアがその事に気付いたのは、ロドスより前の面談者でカジミエーシュの【商業連合会】外商担当と【クルビア】の【ライン生命】という企業担当者がDr.エッグマンと面会した時に、彼の両者への態度に明らかな違いがあったからだった。

二つの企業は共通してDr.エッグマンの類を見ない技術力と独自に【移動都市】を抱えるだけの資金力を当てにしていたが、片や商業連合会が会への加盟と投資を求めたのに対して、ライン生命は自社技術への共同開発と投資を求めていた。

結果、前者は興味が失せたとばかりに面談を打ち切ったが、後者はDr.エッグマンにしては丁寧な部類で面談を終わらせた。

尤も、ライン生命については『趣味が合わない』として投資は拒否したのだが。

 

「(いきなり正念場だな)」

「仰る通りです。私達は貴方方の持つ独自技術に対して強い関心を抱いております」

 

 ドクターは拳に力を込め、アーミヤはしっかりとした眼差しでDr.エッグマンのほうを見た。

 

「私達ロドスは日夜【鉱石病】の治療と根絶の為に活動を続けております。御承知のように、【鉱石病】はこの都市に限らず世界規模の課題です。私達の医療チームや研究室は寸暇を惜しんで解決法を模索していますが……残念ながら予防と事後療法にて【鉱石病】の症状を緩和させるのが限界です。それも病の進行を止めることは叶わず、精々進行速度の抑制や症状によって発生する肉体的疾患や精神的負担を軽減する程度でしかありません」

「じゃろうな、確かにこの惑星の医学的発展はかなり限定的じゃ。疾患に対する症例や外科・内外術例などの情報も集積、集約されておらん。尤も、病気に対する偏見に加え、近代まで知識が蓄積するに足る環境が文明に存在しておらんかったのは致し方ない事ではあろうな。おまけに未だ知識の大部分が上位組織の寡占状態にあるから、そやつらがやる気にならねば医療技術の発展など鈍くて当たり前よ。ワシとしてはそんな態度でよく【移動都市】のような技術が生まれたものだと感心するわい」

「……あのような技術をお持ちの博士なら、そのようにお思いになるのも無理からぬことかと思います(何だか、物の見方がズレているような……それに『惑星』?)」

 

 アーミヤはDr.エッグマンの物言いに違和感を覚えるも、今重要なのは彼の持つ技術を得ることにあるためひとまず腹の内に収める。

一方のDr.エッグマンは不敵、傲慢、尊大さを粉飾する様子もなく()め付け、ドクター達に対し胸を大きく張って。

 

「そんなにワシの技術が欲しいのなら、簡単なことよ。我がエッグマンランドの軍門に下るがいい。部外者の病事情など知ったことではないが、ワシの下に就くというのなら面倒を見てやる。ワシの手足となって働くというなら、おヌシらが欲しがっているモノだってくれてやってもよいぞ」

 

そう宣言した。

 

 さて、アーミヤは若輩であり、ロドスには彼女以上の経験や知識、歳月を重ねた者が多く在籍している。

それでもアーミヤは彼ら、彼女らに劣らず研鑽を積み社会的知識も身に着けてきた。

当然、アーミヤの獲得した知識の中には上流階級や有力者に対する社交術も含まれている。

格上のそういった人種は往々にして感染者に対する隔意を抱いていることが多く、態度や感情の所々からロドスを軽んじる意識が漏れ出していることもしばしばだ。

そのようなロドスを見下し貶す相手にどう対処すべきかを、アーミヤはまだ幼くもずっと学んできていた。

 

 ゆえに、思わずアーミヤは目を僅かに見開き耳を震えさせた。

降伏要求のごとき言葉をアーミヤ達に投げかけておきながら、Dr.エッグマンの発言には侮蔑や害意が含まれていないことを彼女は察してしまったからだ。

 

 Dr.エッグマンの言葉の根底にあるのは己の技術、力に対する絶対の信頼。

『己が本気をだせば、どんな困難もすべて解決する』

『屋根から跳べば、空を飛べる』

『自分には、誰にも負けない無敵の力がある』

という幼年期の子供が持つような妄信を、Dr.エッグマンはそのまま持っている。

先の言葉もただ『支配したい』『上に立ちたい』だけでなく、『己の技術があれば【鉱石病】は恐れる物ではない』とDr.エッグマンが心から思っていることがアーミヤに伝わってきた。

Dr.エッグマンがロドスの降伏、という暴論を持ち出したにも拘らず、その内心が奇妙なほどに直な欲望由来であることを感じ取ったアーミヤは、発言の唐突さも相まってどう答えたらいいかに詰まってしまった。

 

「残念だが、我々は奴隷になりたくて此処に来たんじゃない」

 

 そんなアーミヤの思考の空白を補うように、彼女の隣に座るドクターがDr.エッグマンに返答した。

 

「ほう?ワシの力はオヌシらの身を全て差し出してでも欲しいものではないと?」

 

 要求を突っぱねられたDr.エッグマンだったが、他の癇癪持ちの(誇り高い)貴族のような姿は見せずにドクターに問い、ドクターは首を横に振って返す。

 

「勿論、博士の技術は垂涎物だ。正直、それが何かしらの対価で得られるならば、直ぐにでも応じてしまいたいほどだ……だが」

 

 ドクターは机の下で拳を握りつつ続ける。

 

「博士に降って技術を恵んでもらうだけでは、その後のロドスは博士の垂らす糸に縋るだけの組織になってしまう。我々は博士の知恵の泉を求めてここに来たが、泉から水を汲んで瓶の内に注がないまま水を飲むだけなら、博士の温情が尽きる事は飲む水が尽きるのは同義だ。むしろ水の汲み方すら忘れ、口を開けることしかできず、ただ渇いていくだけになるかもしれない」

 

思い浮かべる、新たな記憶を得た時(チェルノボーグ)の光景とこの都市に入ってから(エッグマンボーグ)の光景。

崩れる都市、狂える感染者の姿に無力を痛感させられ、建て直される都市、治療される感染者の姿に力の差を実感させられた。

 

「暴動から再建された建物、空を飛ぶ船、歩き回るロボット、感染者もそうでない者も隔てなく受けられるサービス……これほどの技術力、それらを設計し実現させた博士の溢れんばかりの創造力は疑いようがない」

 

格上なのだろう、眼前の老人は。

老人の力があれば、より楽に【鉱石病】の諸問題は解決するかもしれない。

 

「だからといって、水が湧くに任せてお零れを飲むだけでは何も生みだせない。ロドスは得た水を基に花や実を育てるべきだ」

 

それとロドスが【鉱石病】治療のための歩みを老人任せにするのは違う。

ロドスが目指すべき道は、老人の持つ力を糧にして研究を重ね技術を育みより効果的な治療法を得ること。

そして【鉱石病】の悲劇から遍く人々を救うことなのだ。

 

「フン。泉だの花だの実だの随分と洒落た言い回しをしたものだが、結局はワシの知恵や技術を使って金儲けをしたいということではないか?」

「いいや、欲しいのは感染者……いや、人々の未来。人生を一日でも長く穏やかに過ごせる『ありきたり』を私達(ロドス)は求めている」

 

 ドクターはバイザーの奥に隠れた瞳をDr.エッグマンに向けて言い、Dr.エッグマンはそれを黒ガラスの奥にある瞳で睨む。

 

 誰も語らず、何も動かず、数瞬の時が流れる。

 

「フン、青臭いな」

 

 Dr.エッグマンからの圧が緩んだ。

 

「まぁ、その台詞をワシに面と向かって言ってのけたことは認めてやろう。ワシの技術を求めてきた連中の大半なぞ……どいつもこいつも上から目線、遜り、命令、果ては投資詐欺まで来おった!まぁ詐欺師の話は聞くまでもなく追い払ってやったがの。交渉過程での話しぶりはいくらか工夫や小細工こそあったが、結局のところワシから奪い取るか恵んでもらおうと息巻くやつらばかりじゃ。真っ当に話ができたのは一社位だったか、全く以て時間の無駄だったわい」

 

 Dr.エッグマンはそう愚痴りながら、CASEALの差し出すミルクをコーヒーに注いで一口飲む。

その隣に同席するナターリアも表情は崩さないものの僅かに疲労感を漂わせており、ドクター達は先に面会した者達の属性を察して内心同情した。

 

「とはいえ、あれは嫌だこれは出せないでは話が進展しないのは事実。よって我々ロドスからはこちらを提供する。アーミヤ、資料を」

「はい、ドクター」

 

 Dr.エッグマンの疑いは和らいだ、次はロドスがアピールする番だ。




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