The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
相手の言葉を飲むとともに
相手の肚に望みを飲ませるように
二人の
彼ら二人の前には虚像で結ばれた書面がリアルタイムで作成され、発言が公用の文字に直して表示されていく。
「患者及び関係者家族はロドスの従業員というわけではないので、ロドスが辞令を出してどうこうというのはできない。そちらへ紹介や斡旋はできるが、彼らを雇う場合は其方が彼らに会って面談等をしてもらえないだろうか」
「ワシとしてもやる気のない者を押し付けられても困る、人員の目利きはこちらでやるぞ。採用されなかろうと文句はなしじゃからな」
「ロドスを訪れる人々はどこかの国一つに籍を置いているわけじゃない。むしろ各国から人が集まっている。だからエッグマンランド以外の人間が表に出るような職に就く場合は当事国とでトラブルが起こる懸念がある」
「我がエッグマンランド国民ならともかく他国人をわざわざ表に出そうとは思わん。欲しいのは目立つ看板ではなく堅実に動く歯車じゃ。反発せずに働くなら何の問題もない」
机に直接書き込んだ草案や施設の大まかな見取り図が、すぐに修正され見やすい形となって編集されていく。
「医学薬学、ないし薬局や施術院についてはできればロドス主体で行いたい。また施設の内部には同時に患者の自立を促せるような労働環境を整備する計画を立てているが制限はあるか?」
「オヌシらがワシに利益を齎すというのなら方法については是非を問わん。当然我がエッグマンランド国法に引っかかるようなことはナシじゃ。言わんでも判っておるな?」
「法の遵守を徹底させる。恐縮だがロドスと協力関係にある企業を誘致して出店させることは可能だろうか?」
「その企業がちゃんと出店手続きをするならな。場所はオヌシらに貸すつもりの敷地内でだ。そこから外についてはそやつらの企業努力次第だぞ」
「言い含めておく。尤もその企業の主は仕事については誠実な男だから博士の眼鏡に適うはずだ」
机の上に浮かぶデータの中から地図のところをつまんで、対面者の前に投げるように差し出す。
「オヌシらに貸す場所はここだ。施設は此方で準備してやる。薬品の製造に必要な設備も整えてやるからその分の技術資料を提出するように」
「一部設備は他の企業に発注しているものがあるのでその分については
「……あの、Dr.エッグマン。この敷地の広さ、これで本当に合っていますか?」
「そこで間違っておらんぞ、小ウサギ。そこは少し前に精査が終わった廃都市の一部なんじゃが、もともとは工業用に整地されておってな。住宅向けに態々改造するのは非効率なので瓦礫をどかして何か製造工場でも建てるつもりだった。折角だ、そこにオヌシらの施設と製造工場を建てて製薬エリアにしてしまおうと思ってな。あー、ついでに新しく病院でも建てるか……我がエッグマンランドを目指して来る者もこれからどんどん増えるだろう。病院の数もどうせ増やす必要がある」
「(元が廃都市とはいえ、都市ブロックの一部をまるまるロドスに?ロドスがこれまでに建てた支店や拠点よりもはるかに広い面積なんですが?これもう実質ロドス支社とかのレベルでは?え?管理する人、誰を送ればいいんでしょうか?)」
『光』で出来た情報が、紙媒体を扱う速さで進むやり取りは混乱する者の都合を考えない。
要望、要求、意見のすり合わせは置いて行かれる者を気遣うことことなく進む。
「新設する工場と施設の他に、出来れば旧チェルノボーグ……エッグマンボーグの既存ブロックにもロドス支所を作りたい。地域の【鉱石病】対策としての拠点が市街地にもある方が良いと思うがよろしいか?」
「人の居ない医院や廃業で空いている店ならくれてやる。場所の候補を教えるので選ぶが良い。内装についてはオヌシらが準備せよ」
「空き店舗や新施設の賃料はどの程度になるだろうか?」
「施設自体はエッグマンランドの所有で、オヌシらが管理人になる。本稼働までの経費は面倒を見てやろう。また、研究成果と製造実績をワシに継続的に提出するなら土地代諸々は免除してやる。当然そこから生まれた利益の最低半分はワシのものじゃ。ワシのためにしっかり働いて稼ぐんだな」
「因みに形態としては業務委託か?それとも合弁会社か?」
「業務委託にする。ワシが手抜きと判断した時は契約をすぐに切って追い出す故、判っておるな?」
「期待に沿えるよう尽力する」
心の中で算盤を叩き、天秤を揺らし、分銅を積み、枡の中身を擦りながら相手の顔を見る。
「原材料の仕入れや製品輸送についての支援を頂くことはできないだろうか?」
「その素材から製造する医薬品が有用ならこちらも手を貸す、メイドインエッグマンランドで世界の市場に殴り込んでくれるわ。輸送については施設に付属して船もセットで貸してやろう。建設予定地が他のブロックとまだ接続しておらんし、エッグマンボーグや他の都市へ輸送するのにいちいち向こうのトラックとかに物資の積み替えをするのも無駄じゃろう」
「飛行船か……運転技師の訓練と育成が必要になるな」
「当分はワシのロボットが操作するのでその間に人を遣って学ばせるんじゃな」
片方が資力求め、片方は逆に知力を求める。
「薬草類工場で【鉱石病】向けにひとまず生産するとしたら何がいいかの?」
「毒素、重金属類の体外排出という点で
「オヌシら持ち込むつもりの薬草類は事前検疫をクリアしてから栽培を始めろ。薬草の治験を経て有用と認めれれば
「(促成栽培の間違いでは?いいえ、私が余計なことを口に出して話が抉れたら困りますね……)」
空中に表示されるデータの虚像は、もしも全てが紙に書かれていれば机の上から溢れ零れ落ちていただろうが、同じく虚像のフォルダが次々とデータを選り分けて格納し、次に表示されるデータを邪魔しないように整理されていく。
迸るデータの光に、アーミヤは目がくらむような思いだった。
「博士、そろそろ次の予定の時間です」
議論を続ける二人の
「む?あー、そんな時間か。では今日の所はここまでとする。ご苦労だったな、今回の会議内容をまとめた議事録を受け取ったら帰っていいぞ」
Dr.エッグマンは彼にしては珍しく
「本日はお時間いただきましてありがとうございます、エッグマン博士」
「非常に有意義な時間だったことを感謝する」
「結構けっこう、これからはワシと我が帝国のために励むがよいぞ!ヌワーハッハッハッハッハ!」
ドクターとアーミヤが謝意を示して頭を下げるのを背に受けながら、Dr.エッグマンは高笑いを挙げてから一人さっさと退出した。
部屋には秘書と書記と訪問者二名が残り、秘書が改めて訪問者に頭を下げる。
「本日はお疲れさまでした」
「こちらこそ、本日は面談に応じていただきありがとうございました」
「エッグマン博士への執り成し、本当にありがとう」
「御社のツキノギ様からは誠意ある姿勢と御社につての説明がありましたので、それに応じるのは当然のことです」
ナターリアは安堵した表情を浮かべて二人に話しかける。
「博士も御社と話が出来てよかったと思います。その、これまでの面談者はあまり実りのあるものとは言えず……」
「あー、その、確かエッグマン博士もそうおっしゃっていましたね」
「はい、先ほどまでの博士はとても楽しそうに話をしておられました。面談で博士が機嫌を損ねることにならなかったのは御社のお陰です」
「……先の面談でもそうだったが、彼は他の面談者でかなり苦労したようだな」
「ええ、ほんとうに。……談前の希望理由の時点で弾いたものも多いですし、理由自体は問題なかったのにいざ話をしてみれば全く違う話だったり表向きの理由で本題は隠してきたり、家格や国際関係者や紹介者の都合で無下にできないから面談を設けたのに、こっちの配慮なんてお構いなしに要求ばかり突き付けてきたり!この前クルビアから企業が一件来ましたがそれでようやく真面目な話ができました……博士は内容が趣味に合わないと仰って成約にはなりませんでしたが、そのあとの面談はまたもう!」
ナターリアのぼやきが次第に声量を増し、彼女の握る筆記具が軋み音をあげる。
このままだと周囲に漏らすべきでない愚痴がナターリアの口から更に出てきそうだと思ったアーミヤは、思わず彼女の言葉に割り込んだ。
「その、お気持ちというか、心中お察ししますが……あの、そういうことを外部企業である私達を前にしておっしゃってもいいのですか……?」
「……ここだけの話でお願いします」
「(クルビアから、か……確かロドスにもクルビアのライン生命からの出向者がいたな。彼女達なら何か思い当たる情報があるだろうか?)」
ナターリアはつい口が滑ったと、顔を赤くして口元を手で押さえて懇願する。
アーミヤは彼女の苦労を感じ取って苦笑を浮かべ、ドクターは彼女の言葉から何らかの情報が得られないかを思考する。
部屋に微妙な温度感のある空気が生まれたが、先ほどから書記CASEALが操作していた装置から紙の束が二冊排出された。
「あ、えっと、はい、こちらが本日の議事録と合意を得た案件をまとめた契約書、その草案になります。詳細や正式な契約については改めて此方から連絡しますので、何方か貴方がたと連絡が取れる人が居れば教えて頂きますようお願いします」
「判った。ロドスと契約しているトランスポーターが都市に滞在しているから彼女に伝えておこう」
ナターリアは書類を封筒に入れやや早口になりながらドクターに手渡し、ドクターは代わりにトランスポーター・プロヴァンスの身分証明書類をナターリアに渡した。
「改めまして、これからもよろしくお願いいたしますわ」
「こちらこそ。期待に沿えるよう努力する」
都市の主は既に去っているため、ナターリアとドクターが代表者として握手する。
ドクターはふと、握手するナターリアの手首を見る。
きれいな肌だと思ったが、何故自分がそう思ってしまったのかが判らずに内心首を傾げた。
◆◆◆
「ようドクター、おかえり。どうだった?」
ホテルに戻り、再度集合用の部屋に着いたドクターは風呂上りらしく湯気を纏わせてリラックスしているガヴィルからねぎらいの声をかけられた。
因みにアーミヤは別室で報告用のボイスレコーディングを行っている。
「ひとまずは。フロストリーフとプロヴァンスは?」
「そっちが会議している間に、こっちは源石の壁のほうに行って現地調査して来たからさ。今は交代でシャワー浴びてるとこ。あたしは先に貰ったんで一足早く一杯やらせてもらってるよ。この『ウルティカ』っていうビール、ウルサスじゃどこにでもある有名どころなんだとさ。サルゴンの『サボテキーラ』とは全然違うけど、こういうのも旅先で飲むなら悪くないな」
そう言いながら、ガヴィルはビール瓶を掲げてけらけらと笑う。
さっきまで会議で気を張りっぱなしだったことを踏まえれば、むしろ会話はこの方が気楽でいいとドクターは思った。
「そっちもご苦労だった。詳しい話はあとでするから、二人が戻ってきたらアーミヤも呼んで食事をしにいこうか」
「いいねぇ!ジャンクフードも悪くないが、ロドスの外に出てんだから店で飲まないとな!あたしとしては壁から戻ってくる最中に見た炎国風や極東風の飯が気になってたとこなんだ」
「そういうのを出す店が都市にあるのか?」
「あるある。なんだったらウルサス料理以外の飯もある。なんか飯屋台のバリエーションがめちゃくちゃ多くて多国籍というか無法地帯というか、そういうエリアが都市の南西にあってよ……」
「博士、先ほどから資料を見つめて何を考えてらっしゃるのですか?」
「ん?ああ、これか。今日来たロドスとかいう奴らのバイタルデータじゃ。あの会議中にこっそり記録させておったのよ。厄介な病気を持ち込んだりしていないか、体のどこかに武器を隠していないかを調べるためにだ。ついでに心拍数が変わっていたならどの辺りで嘘や焦りがあったかが判るかもしれんしな」
「成程……それで、おかしな所はありましたか?」
「いや。これを見る限り、あ奴らがワシに嘘を言った様子はない。嘘を真実と思い込んで話している可能性は残るが、会議を通してワシに誠実に受け答えしようとしていたことは認めてやろうではないか。ただ一つ気になる点はある」
「ロドスの発言やバイタルデータに何か?」
「ナターリアよ、オヌシは己の心拍数がどのくらいか知っておるか?」
「心拍数、ですか?そういえば、この前のメディカルチェックで調べましたね……確か平常時は40から50回だったと思います」
「うむ、ウルサス人ならそれくらいだろうな」
「え?心拍数って人種で違いがあるんですか?」
「そうじゃぞ、人種次第で10や20はズレる。ザウラ人はもっと少ないし、逆にザラック人だとかなり多くなる。で、これがアーミヤという小ウサギとヨハノとかいう男の心拍数じゃ。両者ともに時折変動こそすれ安定しているんじゃが、男のほうを見てみろ」
「えーっと、ウルサス人よりも高く、でもアーミヤさんより低いですね。これが何か?」
「その心拍数だと類似する人種はフェリーンやフォルテ・ペッロー・キャプリニーになる。あやつにそれらしい特徴はあったか?」
「うーん……かの人はフルフェイスのバイザーを着けていましたから、私からは何とも。確かに尻尾や角は見当たりませんでしたが、事故や手術でそれらを失う人はいますし、耳はバイザーの下にあるのかもしれません」
「まぁサルカズやオニも似たような心拍数であるゆえ、そっちの種族とも限らんがな。つくづく、嘘はなくとも真実がよく判らない男だった」
「……人員仲介の件、保留にさせますか?」
「いや、進める。ワシ程ではないが、頭の冴える気が利く男の筈だ。あやつが音頭を取って人材を差配するならワシの意図を踏まえて選ぶじゃろう。どうせ建てるつもりだった工場や病院で人が呼べるなら悪くない。ワシの期待に応え続ける限りはせいぜい利用させてもらおうではないか」
◆感想や改善点などございましたら是非お願いします。
前の一話含めてやっぱり文章が雑かもしれません……。
◆次話はそろそろ主任について触れるか、レユニオン側にするか、いっそ遠方の国にちょっかい書けるか……予定は未定、うん(白目