The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆今回も以前突発アンケートで募集したテーマの話になります。
ゲーム内シナリオとの乖離がありますが、もしも「シナリオ乖離な上に致命的な誤解」等があるようでしたら指摘いただけますと幸いです。
(これ書いてる最中に復刻イベントの情報が出て、妙にタイミングが重なって焦ってるんですよね)


CW-01.科学犬は宙の先の夢を見るか

空を願う地を這う者が

己より先に空に至った者を知るならば

その胸に宿る物は何か

 


 

 ()()を見た時、私は不意に幼い頃父と母に連れられて訪れた移動遊園地の乗り物を思い出した。

私が訪れた所はいわゆる都市内に建設されたものではなく、巨大な駄獣が数頭がかりで部品やテントを運び、移動先の都市の空き地を使ってアトラクションを展開する流れの遊園地だった。

巨大ブランコやミニカートコース、ポップコーンやホットドッグの屋台など規模にしてはバリエーションが豊かだった覚えがある。

その中にあったのが円形の乗り物で、スイッチを入れるとレール上を進みながら上昇下降回転を繰り返すタイプのものだ。

父がチケットを買い、母に専用のベルトを括ってもらってから座るとそれは大きく動き出した。

スピードを上げてレールを走る乗り物の中で、私は慣性力と遠心力を感じて新鮮な感覚を得たものだった。

上下移動の際に感じるふわりとした感覚は、今ならそのまま空まで飛んでいけそうだと子供心に響いた覚えがある。

 

 Webニュースに映る()()は、その時に乗った船の乗り物に似てどこか玩具めいたデザインをしている。

当然、昔に乗った物は空を飛ぶことなどできなかった。

しかし()()は間違いなく空を飛んでいる。

 

 いや、ただ空を飛ぶだけならクルビアだけでなく他国にも飛行機械は存在する。

父と母は一度飛んでいる。

クルビアに限らず、各国が地上を進む敵の軍隊や戦艦、移動都市を攻略するための飛行機械に注目している。

また個人レベルでも遊覧船として所有している大商人や貴族、業務用に飛行機械を運用する企業は居るには居る。

この星では空を飛ぶのはそういうことを指すだろう。

 

 そうではない、そうではないのだ。

()()は飛べるのだ、阻隔層の境を、父と母が先に向かったあの空を超えて飛べるのだ。

 

 年が明けたライン生命のオフィス、他よりやや空に近い自分の部屋、私は報道番組に表示される静止画の()()を見てそう確信した。

 


 

1097年3月。

 

◆クルビア・どこかの地下◆

 

[あんなものを見かけることになろうとは、私も全く予想できなかった]

 

 素材も判らぬ、傷一つない石棺(直方体の設備)がいくつも並ぶとある場所、地上の光溢れる華々しい繁栄とは対照的な暗く静かな空虚の洞、そして彼女の夢の土台となる先史の空間で【彼】がそう呟く。

普段は冷静さを保つ声に驚きの色が混じるのは、クリステンが初めて【彼】に出会った時以来であった。

 

「貴方でも予想外なことはあるのね」

[勿論だ。地上での君たちの暮らしもそうだし、君との出会いもまた予想外だ。しかし、今回の件は予想外の方向性が違う]

「と言うと?」

[惑星外生命体、アレはそういう類だ]

「意味が分からないのだけど」

 

 クリステンの問いに【彼】が揺らぎ、その答えにクリステンは困惑する。

何か【彼】らしい比喩表現かと思って聞き返すが、【彼】は目を伏せるかのように瞬いて返答した。

 

[言葉通りだ。アレはこの惑星で生まれたものではなく、あの舟もこの惑星由来の物質は殆ど存在しない。いや、いっそ架空の存在と言ってしまいたいくらいだ。なにせあの舟は私が見る限り、宇宙を航海する性能を十分に有している上に、アレには源石に関するものが一切ないのだから]

「……なんてこと」

 

 クリステンは【彼】の言葉を聞き、まるで頭を思い切り揺らされたかのような衝撃を受けた。

どれもこれもが信じがたい話ばかりで、『架空』の言葉が正にその通りにしか思えなかった。

 

[地上ではアレの来歴を探ろうとしているようだが無駄だ。アレは地上に一切の来歴がない。地上とは全く異なる歴史、文化、技術をたどってきた存在。恐らく他のどこか、決して地上ではない場所でアレは生まれ、そしてどういうわけかテラ(ここ)に来た]

 

【彼】はそこで一つ区切る。

 

[唯一明らかなのは、技術は宙を超越することがこの大地で証明されたことだ。ただし君以外の存在、慮外の存在、奇妙奇天烈な存在によってだがね。さて、先を越された君はこれからどうするつもりだ?]

 

 がらんとした場所で、【彼】はクリステンに尋ねる。

 

「……変わらないわ。これからもずっと。私は、そう生きてきた」

 

 クリステンの表情に偽りはない。

確かに阻隔層を抜ける事に遅れをとったが、探究者の彼女は昔からずっと空を超えることを夢見て歩んできた。

父母が目指した『向こう』に誰かが先に行ったからといって諦める理由になるはずがなかった。

もしも揺るがぬ決意を示す彼女の姿を見る者がいれば、それは暗闇に満ちた荒野の中を己の手に握る明かりを頼りに歩む冒険者のように見えただろう。

しかし。

 

「でも」

[うん?]

「両親以外の先達がいる、というのはこれほどまでに頼もしいものだったとは知らなかったわ。是非知見を得たいものね」

 

 【彼】には、クリステンの姿が暗がりの中を先に歩く人を見つけた子供のように見えていた。

 

◆◆◆

 

1097年4月、星夜、珍しく喧騒がない日。

 

◆クルビア・トリマウンツ・ライン生命エンジニア課主任室◆

 

「だから現地視察に行こうと思うの」

「なにが『だから』だ」

「貴女は興味がないの?アレなんて正に貴女の目指す建築の見本になるんじゃないの?」

「無いとは言わない」

 

 宙を目指す共犯者ともいえる相手にそう告げたクリステンを、部屋の主『ナスティ=ルノレイ』は眉をひそめて応える。

彼女は机上のリモコンを操作し、モニターにWEBニュースから切り抜いたあの空中移動都市を表示させた。

 

「動画で見たアレは鑑みるに方向性そのものは船の延長だろうが、あれだけの大質量を浮かべている上にそれを維持するエネルギーや船体構造が想像できない。現行の源石エンジンではパワーと強度が足りないし、仮にエンジンの大型化で賄うには船のサイズがもっと大きくなる。加えてそれだけのエンジンを動かすレベルの源石量を確保かつ保管が危険極まりない。一度トラブルがあれば一瞬で源石爆発を起こして塵も残らないだろう。しかしあのような発明をした集団がエネルギー問題を無視しているとは思えない。源石を管理する何か画期的な技術もしくは源石からより効率よくエネルギーを取り出す技術があると考えるのが妥当だろう」

 

 ナスティは骨筆の一本を右手で回しながら自身の見解を述べるが、クリステンがそういえばと一言発する。

 

「『聞くところ』によればあれは源石を使ってないみたいよ」

「……それを早く言え。高説の恥をさらしただけじゃないか。全く、ますますどうやっているのか気になるな」

「だから現地視察に行こうと思うの」

 

 自己解釈が空ぶったように感じて頭を掻く彼女を横目に、クリステンは部屋のカーテンを開け東の空を見ながら言った。

ナスティはため息が止まらない。

 

「『思う』なんて言っているが、もう頭の中では行くのは確定なんだろう?いつ出発する気だ?」

 

E-Day(あの日)以降も減りもしない空への夢を未だに抱く彼女の行動力を信じているナスティの問いに、クリステンは窓際にある本棚からクルビア国土地図鑑を抜き取って広げる。

彼女は地図の一角、クルビア内で最近羽振りがいいと噂の畜産エリアを指さして話し始める。

 

「最近このエリアのとある農業組合に、大規模な家畜や穀物類の買い付けをする客がいるわ。繁殖獣も肥育獣も認可品も規格外もまとめて買い上げてくれる超お得意様の。紹介人はサンクタで青髪のトランスポーターだったらしいけど、ここ最近来ているのは鎧みたいメイド服みたいな見た目をした女の人らしいわ。まぁロボットでしょうね、エッグマンランドの」

「レヴァナントとは全く違う完全自立のオートマタが仕事をするとはな。企業家達が聞けば諸手を挙げて導入しそうだな」

「貴族でも同じことを考えるでしょうね。で、次回の出荷は二週間後で組合は準備でてんやわんやらしいわ。そこで不思議な話だけど、毎度相当な量の買い込みをするお得意様なのに組合は買い付け主の移動基部が施設に来るまでの様子を見たことがないそうよ。時期になるといつのまにかいきなり大型の建造物が近くにいるんだって」

「組合は家畜や穀物類の運搬をどうしているんだ?」

「組合所有のトラックを使ってその建造物まで進入して運ぶとか。積み下ろしは全部向こう側がやってくれて、運転手や担当者は来賓用室の中で待っているだけでいいそうよ。軽食も出てトラックの洗車もしてくれるから楽でありがたい客だと運転手達は言っていたわ」

「暢気なものだな。十中八九その建造物とやらは飛行船のことだろうに。おおかた部屋の待遇は内部を無暗にうろつかせないための防犯処置といったところか」

「私もそう思う。知らぬが華というやつね、下手に知ったら命がいくつあっても足りないわ。それでね……地上の起伏を無視してチェルノボーグ、いやエッグマンボーグまでの直通航路があるなら、それは実にありがたいことじゃない?」

 

 クリステンが拳を握るのを見て、ナスティは彼女の行き当たりばったりもとい企みを理解した。

 

「まさか、それに相乗りするつもりか?」

「どうせなら飛行船、乗りたくない?ダメならダメで普通に行くだけ、目的地は変わらないからそれは別に問題ないわ。ついでに向こうの拠点は確保しておいたから、後は現地の研究者経由か本人に直接アポをとればいいのよ」

「確保?拠点?いつの間に押さえていたんだ?」

「チェルノボーグから脱出してクルビアに亡命したいウルサス人の中に貴族の方がいたの。住んでいた場所から察するにエッグマン側だったから、彼に『空き家の買取』で資金援助を申し出たら快く応じてくれたわ。だから寝泊りもしようと思えばできるし、多少なりの荷物なら郵送で送っても受取先があるわよ」

「なんとも間のいい、都合のいい話だ。その話を聞きだすのにどれだけの金が使われたんだか」

「ついでに一部の投資家に私が向こうに家を持つことを伝えたら『喜んで』資金援助の片棒を担いでくれたわ」

「動機の大半が個人的な理由だというのにちゃっかりしているな」

「当然よ、利用できるものは使わないと。先の飛行船も然り、ね」

 

 まるで遠足の日取りを数えるかのようにワクワクしているクリステン。

後ろから尻尾がぶんぶんと振られる様すらよく見える。

 

「仕事はどうする。予算だの承認だのでお前に会いたくて首を長くしている連中がどれだけいると思っているんだ」

「アポやミーティングの調節くらいするわよ。下手に仕事が長引いて当日の事を知られたら自分も連れていけ、って言いだす人が出かねないし」

「お前が真っ先に言っていることだな。飛行船で来るエッグマンランドの担当者に『私を一緒に連れていけ』と言おうとしているわけだが」

「……そういえばそうね」

 

 ふと自分の行動を顧みて、顎に手を当てて呻るクリステンの姿。

瞳に映るソレは思索にふける大人の姿に見えるはずだが、今のナスティにはソレが首を傾げて疑問符を浮かべる犬の姿にしか見えない。

 

 これが天才というものなのだろうか。

動機はシンプルながら、採った手段はコネもクチもカネも頭脳もふんだんに用いた大規模のものだ。

それでいて所々に見え隠れする()()()()()()をなんだかんだで成り立たせる才覚が彼女にはある。

そして彼女の欲望から始まった一連の流れに巻き込まれる人員や資金は相当なものになるはずだ。

そんな実情を知らない者がもしもクリステン=ライトを見たならば、これがライン生命の壮大な計画だと信じるかもしれない。

この目の前にいるクリステン()のせいでしばらく周囲に無意味な嗅ぎまわりをする企業や政府筋()がうろつくだろうことを考えると、己の眉間にしわが寄るのをナスティは止められなかった。

 

「……やれやれ、前々から博打好きだとは思っていたが、筋金入りだったか。こんなに気前よく金を浪費するなら金満共が聞けばお前宛て我先にと儲け話を持ち掛けてくるだろうな」

「投資家が独自の理論で収益を推測して出資するように、科学者は独自の理論で結果を推測して実験するものよ。私は何が起こるか判らない実験も好きだけど」

「それは逆に投資家が聞けば卒倒しそうな好みだな」

「投資家と科学者は性質のよく似た全く違う違う生き物だから当然よ」

 

 ナスティの苦悶顔をよそににへらと笑うクリステン。

 

「ああ、それにしても」

 

 夜空に浮かぶ瞬く星、それをかき消す程のライトが並ぶトリマウンツの街を眼下にして、彼女は只々空の向こう、山の奥、雲の上への様々な思いを胸に秘めて呟いた。

 

「向こうでは何に会えるのかしらね」




A.おっしゃ、次は私がいったろ。その前にちょっとインタビューしてくる(byクリステン=ライト)

◆感想や改善点などございましたら是非お願いします。
◆クリステンと【彼】こと『保存者』の出会ったタイミングについて。
時系列では確か「クリステン、孤星イベント時系列の2年前に失踪」なんですよね
クルビア国防部のホライズンアーク計画が『ザ・シャード』への対抗としてとあるので失踪は時期的に1097年頃のはず。
計画は真の目的(宇宙)のカモフラージュで、その肝となるエネルギーは【彼】と出会いによってめどがついたとのこと。
それでも計画の規模的に相当の時間がないと練れないはず。
そのほか諸々を考慮して作者は『クリステンと【彼】はE-Day以前に邂逅していた』と判断しています。
あと4月はまだ失踪前のはずなのできっと多分Maybe大丈夫のはず(そもそも失踪するんだろうか?)。
ただこの流れだとクリステンはホライズンアーク計画を発案するんだろうか……?
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