The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
シナリオを読み進めて胸中の感想がコロコロ変わっていくのはストーリー重視の作品における醍醐味だと思います。
そんな作者の胸中変化はこんな感じでした↓
【開始前】新キャラ!ウルピさんのスキル2は毒ガスステージが温泉みたいになるなぁ……
【序盤】思った以上に舞台となる都市の科学技術が高い……!装備がSFチック!
【中盤】敵勢力が怖い……ハイテク兵器を克服とか都市吞み込んで増殖とか『フラッド*1』みたい
【終盤】敵の黒幕が目的を明かした!
… …
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(՞⸝⸝o̴̶̷̥᷅ ⌑ o̴̶̷̥᷅⸝⸝՞)わァ…………ァ…………
未プレイの方のためにシナリオを簡単に言えば、
「海からの脅威に立ち向かおうとする国家で大規模なモンスターアタック発生。その黒幕の目的は
『惑星と宇宙を区切る壁に穴が開いている!乗るしかねぇ、このビッグウェーブに!』」
です。※多大な独自解釈
どうしてそんな穴が開いたかというと、とあるテラ人が莫大なエネルギーを全ツッパして長年の夢だった宇宙へ行ったからです。
その結果、黒幕とその勢力が同じく宇宙を目指そうとハッスルしてとんでもないことになりました。
宇宙?拙作ではDr.エッグマンが既に行ってるんだが?原作時間軸では宇宙行はチェルノボーグ事変から2年後位なのが当シナリオだけど宇宙に既に行ってるんだが?原作でも宇宙の件でケルシーが暗躍していたのに既に行ってるんだが?
ケルシーが宇宙関連で起こりうる危機を防ぐべく行動していた点は拙作の着想段階が8章頃なので考慮できていない部分が多々あるのですが、まさか危機が惑星レベルで発生するとは全く思ってもいませんでした。
アークナイツはこうした壮大なスケールのシナリオがポン出しされるのが面白い一方でいきなりの厄ネタが出たりもするので心臓に悪いです。
……まぁ、宇宙に関わらないアークナイツ二次創作ならきっと気にならないかもなんですが。
孤星といい生存航路といい、別の意味で心臓に悪いことこの上ないです。
その内新設定によって作者は討ち死にするかもしれません(青色吐息)
とりあえず拙作ではDr.エッグマンの技術及び【カオスエメラルド】と【エッグエメラルド】のお陰で宇宙船は穴を開けることなく地表と宇宙を行き来していることにします、こう、浸透膜を通る水みたいな感じで(強弁)
そうでないとドクターやケルシーがチェルノボーグで頑張ってる傍らで国が一つ滅亡しかねない(震え声)
野望に向かってひた走るのは人の性
共にプリミティブで、心に素直な衝動
1097年4月、快晴。
◆エッグマンボーグ・エッグマン科学研究所◆
エッグマン科学研究所。
元々チェルノボーグにも中規模の科学研究所はあったが、それはレユニオンが占領している西側にあるため、Dr.エッグマンが世界から回収してきた移動基部に新設された施設になる。
在野の立場から始まり、基礎・応用問わず有用と見なされた研究者が世界各地から集められているこの研究所の人間は一言で言えば「熱狂した人の集まり」である。
Dr.エッグマンの価値基準を基に餞別しているため『趣味が悪い』研究者は滅多にいないが、一方で【鉱石病】の罹患者は他の研究所と比べてかなり多い。
主に【鉱石病】に罹ったが故に追放を受けた者などが多いわけだが、この研究所に属する者は
研究ができる、設備が新しい、分析用の計算機が高性能、世界各地の情報が手に入る*1環境を得られるならば
ましてや感染者の科学者にとっては源石腫関係なく入所できる場所である、忌避する者などいるだろうか。
研究者の中には研究の過程で【鉱石病】を発症した者もおり、それでも研究に邁進する姿から世間から狂人の号を授かるのは当然だった。
それに彼らが入所する際にエッグマンランドから『定期的な除染処置を受けるように』と指示があったことから【鉱石病】対策に力を入れている事も判っていたため、ここまで至れり尽くせりな状況ならば募集に応じないが研究者にあるまじき頑迷であるとさえ彼らは思っている。
この研究所に集まった者は、それほどまでに『煮詰まった』面々であった。
「おや、君達は別フロアの研究室の助手君じゃないか。こんなところで何をしているんだい?」
「あ、『ハグネー』先生」
そんな己が研究に心血以上のものを注いでいる科学者にも弟子や助手がいる。
主に師匠や教授たる科学者の研究補助や生活支援*2等を行う彼らもまた熱狂の域に片足を突っ込んでいる存在だが、今日は日頃の熱狂ぶりとはうってかわり、彼らはとある一つの部屋の周囲に立って中の様子を遠巻きに伺おうとしている。
その部屋の前にはDr.エッグマンのワークロボット及びCASTが二体ずつ立っており、助手の彼らはそれらの忠告対象にならないように気を付けつつも、どうにか何か聞き取れないか耳を澄ませていた。
そうした人だかりを見たカジミエーシュ出身のクランタ人科学者ハグネーは、己の丈にやや合っていない白衣を揺らしながら彼女の手前に居る他の科学者の助手に尋ねた。
「あの、今日はエッグマン博士が研究所に査察に来る日じゃないですか」
「あ?あー、そういえばそうだったかな。私はその辺りの管理は助手のマーモット君に全て任せていたから忘れていたよ。じゃあ、今あの部屋にはスポンサー殿がいると?」
「それだけじゃなくて、クルビアのライン生命からトップ、あのクリステン=ライトが来ているんですよ」
「ふぅん?ライン生命と言えば多岐に
「それが、どうやら前回の担当者とは別件で面談しているらしくって。エッグマン博士とクリステン博士が一対一で話をしているんです」
「それで君達は
「「「あっ……」」」
屯する助手たちは、廊下の壁に掛けられた時計を一瞥するといそいそと各々の研究室に戻っていく。
教授の全員が全員とも時間設定が厳しいということはないが、ただ有名人の話を聞きたくて時間を浪費するのを全員が全員喜ぶわけではない。
……中には助手の行動に全く関心がない科学者や、逆に一分一秒を厳しく図る科学者もいたりするが。
「ふふふ、いやはや助手というのは大変なものだね」
「ハグネー、ここに居たのか。折角の料理が冷めてしまうよ」
「おや、マーモット君。わざわざ私のために食事を持参してくれるとは嬉しいねぇ」
「君は熱中すればすぐに食事を抜かしてしまうから、助手としては看過できないよ」
助手たちの慌てぶりを笑っていると、ハグネーの助手であるザラック人男性『マーモット』が彼女を探しにやってきた。
彼の腕には焼きたてのパンと思わしき食欲をそそる香りが漏れるバスケットがかかっており、そして毛に覆われていても判るほどの源石腫が腕から飛び出している。
ハグネーはそれを気にする様子もなく彼の隣に並んだ。
「ところでマーモット君、君はスポンサー殿が来所することを知っていたのかい?」
「そうだね。一応研究室の予定板にそのことは書いていたよ」
「私に一言言ってくれてもよかったんじゃないか?」
「君の研究には
「私が必要だと思う可能性は?」
「その時は君から要件を言うだろう。君は研究者だ、
「その通り。思い返してみたが確かに必要ない。スポンサー殿がロボット工学を始めとして諸々の頂点に居る点は敬服するし、私の研究に資金を出してくれたことは感謝するが……別に態々時間を狙って会いに行くつもりはないね」
ハグネーは踵を返して歩き始め、マーモットはそのあとに続く。
「彼は自尊心の強い人だ。君が好印象な眼差しを向ければ彼の覚えは良くなるかもしれない」
「おや、君は彼の妻の座を狙えというのかい?」
「君の性格上無理だからそのような提言はしないよ。君の家事の腕については触れないが、その腕を家事に費やす位なら研究に辣腕を振るう方が君らしい」
「ひどい言い草!そして正しい分析だ。私としても家事をする相手など君くらいしかいないし、そもそも君のほうが家事に優れているから私が研究、君が補佐のほうが効率的だね」
「その補佐の立場として言えば、君には適切な休憩と食事を疎かにしてほしくないのだけれど」
「これはまた手厳しい。君の体毛くらいの柔らかさで私に接してほしいねぇ」
ハグネーがマーモットの腕の毛を撫でながら、二人は彼女らの研究室に戻る。
Dr.エッグマンというスポンサーに世話になっているのは間違いないが、彼に媚びる暇があったら研究を進めたいというのがハグネーのスタンスであり、交渉や交流が必要であればマーモットが取り仕切るのが彼女達のスタイルだ。
媚びより学び、それがこの研究所に属する科学者に多く共通する認識だ。
……マーモットは例外だが、流石に他の科学者の助手達はそこまで傾倒しているわけではない。
研究以外の出来事や外部からの来訪者などに対し、常人と同じ真っ当な好奇心を持っている。
そんな助手達にとって、彼らのスポンサーであり卓越した科学技術を有するDr.エッグマンと、テラで有数の頭脳を持つクリステン=ライトが一堂に会するのは好奇心を大きく擽られるイベントだ。
各々の研究室に引き上げる中、纏まって帰る助手達はあの部屋ではどういう会話がなされているのかを想像して語り合った。
◆◆◆
◆エッグマン科学研究所・来賓用会議室◆
清潔感のあるクリアな青を基調とした部屋。
硬質ガラスのような、透明で淡く発光している巨大なデスク。
傷も汚れも何一つない純白のセラミックタイルを敷き詰めたフロア。
タイルの上、織物組合に命じて作らせたエッグマンシンボルの目立つ真っ赤な絨毯。
電球や電灯の姿がなくとも部屋を照らす天井。
エッグマンシンボル型で中央にウルサスの時刻、周囲に各国家の現在時間を表示したデジタル時計。
階下の温室中庭を一望する壁一面のガラス窓。
それを挟んで、片側に各国の報道機関が流すニューストピックスを映したモニター、もう片側にエッグマンランドを象徴する国旗の幕が据えられている。
そして今、この部屋には国旗側に一人と一つ、モニター側に一人。
この最新の研究施設の所有者にしてエッグマンランドの支配者Dr.エッグマン。
記録係兼秘書を務める事務用CASEAL。
そしてエッグマンボーグから遠く西にある国家クルビアにて有数の実力企業であるライン生命、その中枢を担うコンポーネント総括課のトップであり世界でも最高峰の頭脳を持つペッロー人女性クリステン=ライト。
そんな二者と一機がデスクを囲んで、いや正確に言えばデスク中央に置かれたジュラルミンケース、その中に格納されている一粒の大きなエメラルドを中心にして座っている。
一見すると貴重な宝石の取引か品評をする場面のように見えるが、その実ここでは宝石としての価値は全く求められていない。
何故ならその宝石はDr.エッグマンが造りだしたエメラルド【Be】である。
それはDr.エッグマンとCSEALにとってはただのバッテリーでしかなく、そしてクリステンにとっては宝石以上の価値を持っていた。
「あぁ……素晴らしい……形はオーバルカットの大振りな宝石、しかし内部にエネルギー用途の源石ブロックを遥かに上回るエネルギー量を内包しているのが感じ取れる。内部が僅かに発光して見えるのはこの宝石が貯め込んだエネルギーが僅かに外部に拡散しているから。本来エネルギーが光の形で放出されるなら、熱量などの観測できる変化も現れて然るべきなのに、手で触っても全くその様子はない。これならもし実際に利用してもバッテリー系の発熱は一切なく、熱劣化の心配もしないまま利用することができるはず……」
「(こやつ、いつまで話すつもりじゃ?)」
Dr.エッグマンは眼前の科学者を面倒くさい目で睨むが、睨まれた当人は全く気にする様子はない。
クリステン=ライト。
他者はおおよそ全て自分より頭脳が劣ると考えるDr.エッグマンが関心を持たざるを得ない才の持ち主。
クルビアに本拠地を置き他国にもその技術力が称される企業であるライン生命、その発起人の一人であり全体に対して権限を持つトップ。
面談までに調査した研究実績がDr.エッグマンを以て成程と思わせる程の実力者。
そして家畜と穀物の買い付けに行かせた輸送船にしれっと乗り込んでエッグマンランドに入国したかと思えば、個人名義でエッグマンランド科学研究所にアポを入れ、科学分野界隈のツテを全力で発揮してDr.エッグマンの視察日に合わせて会見時間をもぎ取るという矢鱈フットワークの軽い事をしでかした科学者である。
そんな彼女が【Be】を手に思索に耽っている。
それは大粒のエメラルドを眺めて見惚れる姿ではなく、未知の科学がふんだんに使われた文字通り技術の結晶を分析する科学者の姿……でもあるが、Dr.エッグマンから見れば新しい玩具を前に喜ぶ子供ないし大型犬の姿であった。
「結晶そのものがエネルギーを生産している……原理が判らない。また結晶内で蓄積されたエネルギーが内部反射を通じて漏洩を防ぎ、且つ外部からのエネルギーも吸収して効率的なエネルギー充填を達成している。内部のエネルギー反射構造はまるで真円、いや正素数角形の極めて円に近い状態を構築しているのか。これで人工物、しかも研究資料として博士が供出したものなのだから、より高品質なものは正に真円状態を形成するのかも……」
【Be】に没頭するクリステンを、Dr.エッグマンはげんなりした目で見ている。
わざわざクルビアから出向いてきたクリステンをある程度は実力があると認めたDr.エッグマンは、どうせならと研究所の科学者用に持参した【Be】を渡して彼女に意見を述べさせようとした。
その推測は正しく、【Be】を触り眺めるだけでその仕組みをある程度理解できたクリステンは正に天才と言っていいだろう。
だが、傍に誰か居ることも全く気にせずブツブツと見解を述べる彼女の姿は、投げられたボールが嬉しくて全力で噛みつく大型犬、周囲に尻尾がぶつかっているのも構わずぶんぶん振り回す大型犬のソレだ。
なお、彼女の口から【Be】についての質問と考察が最初に出てからDr.エッグマンは一度新しいお茶とお菓子を自分用にお替りしている。
「……確かにコレなら源石による被曝や感染の恐れはない。またリサイクルが可能なら発電設備でエネルギー充填して再利用すれば源石バッテリーを機械に組み込む必要がなくなり、不活性処置が不十分である家電が源石爆弾化するリスクも避けられる。もし【Be】のサイズと形が調整できるなら携帯性や自由度の点でも有効、いいえ確か【カオスドライブ】というものがそれに当たるのか。全く以て素晴らしい。これまでのエネルギー産業のみならず世界の技術が大きく傾く……それ以上に天地が逆転するレベルのゲームチェンジャーになる」
「そりゃ当然じゃ、(元々はあの小ギツネの発明ではあるが)ワシの作ったモノじゃぞ。だからいい加減にソレを返さんか」
呟きはまだ止まらなそうだったため、Dr.エッグマンはクリステンから【Be】を取り上げることにした。
「……」
「おい、鞄に入れるな」
「……」
「いやそれは【Be】じゃない、なんだその紙切れは」
「……」
「小切手?要らんわそんなもの。金の工面などワシはいくらでも出来る」
「……」
「だからその仕舞った【Be】を鞄から出せと言っておるじゃろうが!」
「是非ライン生命でも研究開発しましょう。これの有用性は科学者が見れば一目瞭然です。私の権限で特別予算も引き出せますし速戦即決できます」
「そんなもの不要、これはあくまでワシの技術でありワシの国の研究所だから研究させようとしているだけじゃ。いわばアヤツらに出す宿題のようなもの、わざわざ他所に持ち出してまで研究させようとは今のところ考えておらん」
「宿題の提出者ならいくら居ても困らないと思いませんか?私ならきっちりレポートを提出できますよ」
「無関係の小娘、オヌシの例えで言えば見ず知らずの女学生から宿題の提出をされて喜ぶ教師がいるものか。いいから鞄から出せ、これ以上聞き分けが悪いと力ずくじゃぞ」
「……」
「よーし、それをケースに戻して手を放せ」
「……」
「未練がましく撫でるな、玩具を仕舞われて不貞腐れる犬かオヌシは。ワシの手間を取らせおってからに。CASEAL、今すぐ【Be】を片付けろ。このままじゃ『猫に鰹節』、また手を伸ばされても敵わん」
Dr.エッグマンはCASEALに【Be】を預け、大きくため息を吐くが、その様子にクリステンはどこか新鮮な気持ちになる。
貴族や大商人程ではないが、彼女はクルビアにおいて確固たる地位があり、また彼女や同志達で立ち上げたライン生命は国を跨いだ知名度がある。
そんな彼女は他の科学者からは敬われる立場になって久しく、他の統括主任達はややフランクに接してくれもするが、それでも立場で言えば彼女を上に立たせることが多かった。
しかし、クリステンの前にいる老人は面と向かって彼女を『犬』と評し、むしろ聞き分けのない子供の様に彼女をあしらったのだ。
そのような経験は今まで味わったことは当然ない、そして自身が単に若年者扱いされたという事実は彼女に不思議な充足感を与えていた。
「全く、現地のCASEALと交渉して輸送船に乗りつけ、勢いそのままにエッグマンボーグにまだ居た自分の所の職員を脅しつけてワシと面談の時間をもぎ取ったトンデモ科学者がこんな女だったとはな。お前の所の職員から面談の打診があった時は融資の再申請かと思ったが、『融資のことはともかくどうかボスに会ってくれ』と懇願された時は何事かと思ったぞ」
Dr.エッグマンはクリステンが来訪した時の事を指摘して顔をしかめるが、クリステンは全く気にしない。
「どうやら私と彼に認識のズレがあったようですね。私はこちらに
「ふん、オヌシらの身内事情などワシにとってはどうでもいいわ」
先ほどまで【Be】を頑なに手放そうとしなかった人物とは別人であるかのように平然とそう言いながらクリステンはCASEALが配膳した緑茶に口を付け、Dr.エッグマンは極東出身の菓子職人に命じて作らせた芋羊羹の一切れを楊枝で刺して口に放り込む。
「で?ワシと面談をしておいて目的が【Be】の鑑賞と菓子の感想だけな訳があるまい、オヌシはワシに何を望んでここに来た?」
手に持った楊枝で指差してDr.エッグマンはクリステンに問い、クリステンは気にする様子もなく緑茶の香りを堪能しながら答える。
「都市内で募集している大学の教員枠、その中の客員教授の職を頂ければと。給与は金銭ではなく博士の所有するロボットの貸与、及び都市の科学研究所にある資料の閲覧許可の権利をお願いします。それと、【Be】の貸与も。勿論貸与品の無許可での国外持ち出しは決して致しませんし、それに関する誓約書も提出します」
すっと、エッグマンボーグ内で公開されている教職の求人情報ページと個人情報保護用パックに詰められた履歴書をテーブルの上に並べてクリステンはDr.エッグマンに差し出した。
「給料の代わりがその三つというのは、そのものズバリ自分でワシの技術を研究するためじゃろ」
「優れた技術を学ぶ機会を得られるなら、むしろ金を幾ら積んでも足りません。【Be】もサンプルを入手できないにせよ、見て分析するだけでも値千金です。それに博士にとっても既存の技術を渡せば支払いがなくなるというのなら好都合では?」
クリステンの都合に振り回されているように感じるDr.エッグマンは顔を顰めながらも渡されたパックの封を切って中の履歴書に目を通す。
職歴や保有技術、個人情報の一部などが所々機密保持の理由から詳細を伏せた記述になっているものの、内容そのものは流石クルビア屈指の科学者とあって教員としては特級の人材であるのは一目で判った。
「科学研究所の椅子を求めないのは?」
「そっちだと好き勝手出来なさそうなので……というのは冗談ですが、私もライン生命の統括ですし
クリステンは言い終わると再び緑茶を味わい、続けてお茶請けの芋羊羹を菓子楊枝で切り分けて頬張る。
「黄土色したゼリーのお菓子なんて味が想像できなかったのですが、これは甘みが強いですね。それでいてしつこさがない……クルビアのガツンと来る甘さとはまた違う味わいでおいしいです」
「ありがとうゴザイマス。オカシショクニンのヒトもヨロコびます」
クリステンが芋羊羹の味を誉め、CASEALがお辞儀して答える横でDr.エッグマンは履歴書に目を通し終えたらしく、Dr.エッグマンは目頭を押さえながら苦々しくため息を吐いた。
「オヌシの意図がはっきりしていて……いやはっきりしすぎてこのワシを利用してやろうという気概が見え見えだというのに、履歴書の中身やオヌシの才能そのものは正真正銘なのだから性質が悪い。まぁ良かろう、このワシのために働くならばそれでよい。もちろんワシの利にならぬと感じれば即刻クビを切るからな」
「ええ、当然です。成果能わず失職などクルビアでも日常茶飯事でしたから。それに向こうなら上司の妬み嫉みで能ある職員が解雇される例は多々ありますが博士ならそんなことはまずないでしょう」
「言うではないか。理由は?」
「博士は私を妬む理由がない。何故なら私は博士にとって隔絶した差がある存在で、劣る相手にそのような思いを抱く必要がないからです」
クリステンのDr.エッグマンの実力を上に置く発言にDr.エッグマンは鼻を鳴らす。
「ふん、己の分を弁えておるようだな。その通り、いくらオヌシが祖国で随一の頭脳であろうと、ワシに比べれば子供同然よ。子供相手に嫉妬するなど、世界で最も優れたこのワシがするものではない」
「でしょうね。ライン生命でもパワードスーツや自動操作ドローンなどは開発していますが、ああも高性能な飛行船や博士の側に控える人型ロボットなどの域に至るにはどれほどかかるか」
「できない、とは言わんのだな?」
「当たり前です。科学者とは『優れた物にいつか追い付き追い抜く』ことを目指す生物でもあり、私は特にそう考えています。ですので端から『できない』からと諦めることなどあり得ません」
「優れた物が
「
「……よくもまぁワシを前にして吠えたな、犬っコロ」
「獲物に向かって一直線に噛みつくのが犬ですから」
「そういう癖にさっきまでは
「……」
「そんな目をしても【Be】は渡さんぞ。とにかく、ワシの許で働くならオヌシの来歴などには忖度しないからな。ここでのオヌシは一番新しく勤め始めた下っ端じゃ」
「判っています。なので初心に帰った気分で思う存分学ばせていただきます、Dr.エッグマン」
クリステンはにこやかに手を差し出す。
第三者ならこの場において適切な笑みを浮かべているように見えるクリステンだが、Dr.エッグマンから見れば大型犬が前足を振ってお手を求める姿にしか見えない。
クリステンは優秀であるし、現時点では反逆はまだしないとみたDr.エッグマンは眉を顰めながらも握手に応じて契約が成立した。
「あ、それとできれば畜産輸送ルートとは別にクルビア・エッグマンボーグ間の直通航路を設けていただけませんか?ライン生命と大学の間を畜産輸送に便乗して行ったり来たりはいささか骨が折れます」
「……船については別途契約で運賃をとるからな?」
「もしかして運賃次第では船のグレードを上げられますか?私、後学のために是非ハイグレードの船に乗りたいんですが。あぁ、内装が高級とかそういうのではなく、最新技術が使われているタイプのほうがありがたいです」
「要求が厚かましいなキサマ!?」
こうして、クリステンは新設されたエッグマンランド大学の客員教師として不定期ながら教鞭を振ることとなる。
クリステンはライン生命に勤務体制の変更を
そしてクルビア随一の頭脳がDr.エッグマンと手を組んだという情報はクルビアに衝撃をもたらし、果てはロドスにいるサイレンスとサリアの飲むお茶を口から霧散させるバタフライエフェクトを生み出すこととなった。
◆感想や改善点などございましたら是非お願いします。
その内ライン生命でもCASTやCASEALやワークロボットが歩き始めたり……は他企業が拉致に奔りそうだから難しいか?下手するとラダイト運動も起こるかもしれない
◆(前書き続き)
エーギルが宇宙技術はない一方で他の科学技術がかなり高いことが今シナリオで説明されました。
宇宙の穴についても詳細に観測していることを考えると、Dr.エッグマンの科学技術の高さを精確に気付いてもおかしくなさそうだなと感じています。
更に科学分野に劣るはずの地上にいきなり現れた宇宙技術の結晶ですので、エーギルも強く興味を持ちそうです。
ただエーギルは割と深刻な生存戦争をしているようなので、Dr.エッグマンを干渉させるならシリアス全開じゃないと危なそうですね、どうしようか……
……そもそも拙作時間軸をとっとと進めろ、とか他の放置ネタをさっさと進めろ、と言われるとぐうの音も出ません。
◆【蛇足】ハグネー博士とマーモット助手はまぁあれです。
カジミエーシュの騎士競技関連だと思います(目逸らし)
◆今年も一年お世話になりました。
また来年も拙作をどうぞよろしくお願いします。
|クリステン《みなしご》は……
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独り星を仰ぐ
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北東に空の揺らぎを見た
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宙を往く舟を見た
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神と新たに語り合った
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「ちょっと出張行ってくる」