The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
この話は以前にプロットを書いてウルサス編が終わってから投稿しようと保管していたものです。
先日のラテラーノイベントの影響もあってか、キャラが「するする喋る」感じでイメージできたんですよね……。
時間軸としてはチェルノボーグ暴動後、一応本編に絡むサイドストーリー的な話に関わる予定のエピソードです。
◆それと活動報告で触れていた《いらないと思って辞めた話》ですが、やっぱり執筆して投稿しようと思います。
どうも辞めた話を通してからでないと次の話に手がつけられないみたいなので、本当に申し訳ないです。
NH-01.公益と私利~公証人役場の面倒な業務~
ケースに依っては私情も考慮されるべきだろう
少なくとも今回以外には
1097年2月、早朝。
◆とある移動都市・市街地◆
人通りのないビルの間。
林立する建物によって生まれた影で朝日が弱まり暗がりの目立つ路地裏の前。
ビルの間を抜ける風以外はその様な空間を通らないような所。
そこでは白い貫頭衣のような物を来た複数人のサンクタ人が平和な街並みには似つかわしくない程に荒らされた路地裏の瓦礫を片付けたり修繕したりする中、の二つの人物が
彼等の足許には
この
この男、申請があれば融通の利く【ラテラーノ】ではともかく、この移動都市にて無許可で蜂がモチーフの市街モニュメントに爆薬を仕掛け、
「陰険な代物だ!ラテラーノ白刻柱のような華やかさが一欠片もない!」
と叫びながら発破を掛けて辺りを混乱に陥れた。
その件で都市の治安維持機関及び蜂モニュメントのクリエイターからの依頼としてラテラーノ公証人役場から指名手配を受けた愉快犯が、リクエスト通りハニカム型のブドウ弾を用いたラッパ銃で滅多撃ちに処され、文字通り『蜂の巣』みたいな有り様となって気絶している。
「『エッグマンボーグで使用されている銃火器に対する、守護銃不正認可の疑い』ですか」
愉快犯を治安維持機関に引き渡すべく真っ白な貫頭衣で身を包んだ公証人役場所属の黒子達が回収する横で、グレーがかった白の外套に機械的な構造をした光輪と羽、サンクタ人の証でもある守護銃、そして冷徹で一切揺るがない視線を持ったフェデリコという名の男は同じく公証人役場から派遣された連絡員の指示を復唱した。
その落ち着いた振る舞いと淡々とした口調は彼を見る者にまるで精密なマリオットであるかのような印象を与えてくるものだった。
「そうだ『執行人』。
対する連絡員は黒シャツにジーンズ、腰に携帯電話ホルダーを着けた黒髪白肌の涼しげな表情をしたスマートな男だ。
男の細身の体と相貌は神の誂えた一品と言っても過言でない程に整っており、姿勢を崩して楽な格好をする腰つきや手持ち無沙汰を慰めるように動く指の一本一本のいずれにも人の目を惹き付ける魅力が漂っている。
一方で雨も降っていないにも関わらずビニール傘を差し、その頭頂部には針金で括られた輪っかの電灯が据えられているせいで奇妙さのが強く引き立てられていた。
その二人、執行人フェデリコの与える印象が『潔白公正の白』であるならば、連絡員は『清濁併包の黒』といっていいだろう。
「密輸、又は密造。この場合は密造の線ですか」
「私はそうは思わないのだがね」
フェデリコの問いに連絡員は肩を竦めた。
「私も少し前に興味本位でエッグマンボーグの警察、交番に厄介になってみたが……安心したまえ、道を尋ねただけだ。そう、交番にいる羅卒でも銃火器を持っていたんだ。彼らの腰の物を見て私も驚いたものさ。だがアレの源流は我々のそれとは異なるものだろう。我々のような過ぎ去りし
連絡員はサンクタ人の常識から外れた既視のようで未知の技術に対して感心するように自身の所感を述べると、フェデリコは表情を変えずに連絡員に問い掛けた。
「公証人役場にその意見の報告はしましたか?」
「いいや?だって無駄だろう。彼等は私以外の役員の言葉のほうを信じるからね、私が一言述べたところで聞き入れてはくれないのさ。一応、休暇を取る時に行き先だけは伝えておいたが何のレスポンスもなかったよ。で、私の見学の後から暫く経ってから漸く、現地を調査した他の公証人が慌てて役場に先の報告したものだから向こうはてんやわんやになったというわけだ。ラテラーノ以外への関心が薄いというのは全く困りものだね」
連絡員は役場の後手回りに対してわざとらしく肩を落とした。
「で、こういう時は君にお鉢が回るだろうと思って君との連絡要員として私が立候補したのさ」
「業務上での発見や経過分析は公証人役場における職務の一部です」
「言っただろう?仕事でじゃなくてプライベートでの出来事だ。出来立てほやほやの国だし興味本意で入国してみたんだが、以前のチェルノボーグとはまるで違う趣の建物があるものだから交番で道を尋ねたのさ。それとも君は役場の堅物と同じく個人旅行の内容も報告すべきだと言うのかい?」
連絡員は困ったような顔でフェデリコに尋ねると彼は首を横に振って否定した。
「業務時間外での行動なら問題ありません。個人のプライベートは尊重されるものであり、予め報告の指示がないのであればその必要はありません」
「真っ直ぐだな、君は。いや、私には君のその性質こそが好ましい。では手を煩わせてすまないが、君の報告書に私の所感を併せて書いておいてくれないか?君の字なら、彼等とて一顧だにしない事はないだろう」
「判りました。連絡は他に何がありますか?」
「んー……」
フェデリコの質問に連絡員はその表情をやや固くした。
「個人的には、本当は言いたくないのだが」
「貴方の職務へのそうした態度が貴方自身の評価に影響していることをご存知ですか?」
「私は別に役場の評価など気にしない……が、君に迷惑をかけるわけにはいかないか。では君への密命を伝えよう」
一度は渋りつつもフェデリコの要求に応じることにした連絡員は、公証人役場から出された他の指令を明かすことにした。
「公証人役場の一部はエッグマンボーグにいるサンクタ人婦警に『守護銃密造』の容疑をかけている。そこで君に彼女の『処罰執行』を命令するように言われたんだ」
連絡員のその言葉に、フェデリコは首を傾げる。
「先の指令である『密輸密造の調査』に矛盾する形ですが、婦警に明確な関与又は前科があると判断されての決定でしょうか?『密輸密造の有無を調査する』段階ならば、まだ婦警が実行犯と確定した訳ではないはずです。しかし今の指令は婦警の処罰を既に定めているようですが?」
フェデリコの冷静な指摘に、連絡員は傘をくるくる回しながら呆れたような顔で溜め息を吐いた。
「その通り。現状彼女がどういう立ち位置なのかは全く判っていない。ましてやあの銃火器は我々とは別の系統の代物だろうから、彼女については完全に無関係だ……と思わなかった連中がいたのが今回の問題でね。守護銃の技術保全と敬愛を謳う【第三課】が『サンクタ人の関与抜きでこのようなことが起こる筈はない。サンクタ人の女性警官による背信と断定できる』と宣った」
「婦警に背信を裏付ける証拠等がありましたか?」
「ない。完全に連中の言い掛かりだ」
ふう、と連絡員は溜め息を吐いた。
「公証人役場の立場上、守護銃の密造阻止を図る必要性についてはともかくとしても、サンクタ人婦警の処罰命令は『守護銃の技術は決してサンクタ人以外の者には発展できない』と崇拝する信奉者が自身の掲げるイコンを他国へ勝手に押し付けているに過ぎない。
『サンクタ人でない者が銃を開発などできるはずがない。にも関わらず新興国で流通しているのはサンクタ人の婦警が現地の権力者に取り入って守護銃のコピー品横行を主導したからだ』
とね。全く、守護銃研究の第一人者を自称する者がいざライバルが出来た途端に現実逃避とは……世界を照らす智慧とは彼等の愛玩動物ではないのだがね」
連絡員は眉をひそめて暴走した組織の頑迷さをぼやく。
そんな風に不快感を滲ませる連絡員に対して鉄面皮のままなフェデリコは、同意も否定もするつもりなく連絡員に命令書の提示を求めた。
手を伸ばすフェデリコを前に連絡員はズボンのポケットに手を無造作に突っ込むと、中からシワ一つない白と琥珀色で縁取られた封書を取り出して彼に手渡した。
「『処罰』に関する書類はこれですか」
「そうだ」
「確認します。……処罰の執行条件に『密造への積極的に参加及びそれによる利益を得たことが明らかとなった場合』とありますが」
「それは君の上司が守った公正さの賜物だよ。【第三課】の感情的な主張の一切を理知的に道理を以て舵取りをしきり、正式な命令は『重篤な背信が認められた場合に本国へ召還する』であることを認めさせた。あの課長とその『守護天使』は公証人役場の鑑だよ」
先の憂鬱な顔つきとは打って変わって、連絡員が感心した様子で執行人フェデリコの所属する課の手腕を称える。
「では先に貴方が話した内容は?」
「【第三課】が連絡員の私をわざわざ捕まえて必ず君に伝えるように厳命してきたのさ。君は真面目だから『サンクタ人の正しき智慧を守るため』とお題目を吹きかければ素直に従うとでも思っているんだろうね。全く、君は皆から本当にモテるなぁ」
連絡員は常人であれば思わずぞくりとしてしまいそうな妖艶さを醸し出した流し目でフェデリコのほうを見るが、視線を受ける公証人役場執行人のフェデリコに一切の変化はない。
「現場での緊急時における判断などはともかく、正式な命令書から逸脱する非公式な要求に従う理由はありません」
「流石だ」
連絡員はそれまでの雰囲気を正し、小さく笑いながら拍手をした。
「ともあれ、君にはこれからエッグマンボーグに向かって貰う。そういえば、今あちらにはロドスアイランドとかいう企業が内部に支店を建てたそうじゃないか。せっかくだから顔を出してみたらどうだ?君が依頼人から預かった子、向こうにいるかもしれないぞ?」
「彼女の行動適性は屋外や自然環境にあり、チェルノボーグのような都市部に派遣されるとは思いません。ですが調査においてロドスアイランドに協力を要請するのは考慮に値します。本件は調査対象以外の外部組織との接触は可能でしょうか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「判りました。旧チェルノボーグ地域、現エッグマンボーグに移動して調査を開始します」
フェデリコは連絡員から差し出された無記入の『調査報告書』担当欄に自身の職員ナンバーを書き込み、公証人役場正式の封筒に包み、外套の内ポケットに入れる。
そしてテキパキと守護銃を専用ケースに収納し、その場を後にした。
立ち去るフェデリコを優し気な表情で見送った連絡員は腰のホルダーから携帯電話を取り出すと、慣れた手つきで決まったボタンを順序よく押して電話を掛け始めた。
「……やぁ、私だ。今フェデリコに会って話が終わったところだ。いやはや、彼のような純粋な人は本当に見かけなくなったねぇ。……うん、あの件もちゃんと話したよ。誤解のないようある程度裏の事も話した。……おいおい、そう改まらなくてもいいよ、君と私の仲じゃないか。……歳の話を出されると立つ瀬がないな、判った判った。彼には【第三課】についての説明もしておいたから、後のそっちのほうは頼んだよ。十八番だろ、君には?……ハハハ、それは私の肌に合わないからパスだ。お詫びに今度何か奢ろうじゃないか。最近極東の料理人がオープンさせたダイナーがあってね……」
連絡員は電話片手に路地裏の奥へ歩いていく。
直後、若い新聞配達員が慌ただしく路地裏前を通り過ぎたが、そこはいつもの人一人いない静かな朝の光景しか残っていなかった。
◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。
◆次回投稿の内容はウルサス編に戻します。
|クリステン《みなしご》は……
-
独り星を仰ぐ
-
北東に空の揺らぎを見た
-
宙を往く舟を見た
-
神と新たに語り合った
-
「ちょっと出張行ってくる」