The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

77 / 86
◆クルーズ「(。・ω・)ん?」ワルファリン「(`・ω・)む?」ハイビスカス「あれ?二人とも、急にどうかしましたか?」


PE-02.ペン急と無粋な輩達「うむ、テキサスだ」「ひゃ、ひゃい…!エクシアです…!」「えっ、君ら急になんなん?」

「どうしてこうなった?」「どうしてうまくいかないんだ?」

「どうしてあいつらが居る?」「どうしてこの場所なんだ?」

その理由を、たった一言で黙らせる言葉がある

 


 

 E.P.U-13区の東ブロックには、いくつもの『間の悪さ』が積み重なっていた。

旅行者にとって手ごろなダイナーがあったこと。

龍門において最も引き金が軽く、最も斬撃が速い【ペンギン急便】が、宿泊先から近いその店を訪れていたこと。

他の北土都市では決して見られない、華やかなデザインの衣装をしたCASEALがその店に勤務していたこと。

自治の導入によって、武装解除したエッグマンロボットの数が他所より多かったこと。

都市と荒野を隔てる外壁が老朽化しており、倉庫街の一角に荒野と直接面する場所が存在していたこと。

黒社会に流れた依頼を果たすべく、CASEAL強奪のタイミングを虎視眈々と狙う者がいたこと。

 

 そして、ダイナーに勤めるCASEALが店の業務を終え、規定にあるロボット保管庫に帰投しようと開けた通りに出たこと。

 

 それらの間の悪さが連鎖して、E.P.U-13区で大きな騒ぎが起こることになった。

 


 

1097年4月、小春日和。

 

◆E.P.U-13区・東ブロック・一般区域◆

 

 市街地の一角、お昼時のやや騒がしい街の中。

一仕事を終えたペンギン急便の一行が、現地の不動産屋から紹介されたダイナーを目指して歩いていた。

 

「ボスのお望み通りの拠点用事務所が見つかって良かったわ。平屋、地下室ありっていう条件を満たす場所があるもんなんやな。まぁ、元居酒屋の空き家って奴やったけど」

 

 両手を頭の後ろで組み、指先でバイザーのベルトを弄びながら気楽に歩くクロワッサン。

 

「ボスは別にガチガチのオフィスが欲しいってわけじゃないしね。冷蔵庫とか厨房の設備云々は撤去されてたけど、床や壁は綺麗にしてあったからよかった~。掃除しなくていいし、ある意味自由にカスタマイズできるってボスも満足してたしね」

 

 先ほど屋台で買ったソフトクリームをほぼ食べ終え、残ったコーンを齧るエクシア。

 

「ボスはそのまま業者との打ち合わせに入ってしまったな」

 

 森を進む牙獣のごとく、背を一筋に伸ばして歩くテキサス。

 

「龍門で溢れてる酒瓶とかジュークボックスとか、そういう趣味系のやつをどうやって詰め込むか考えてるんじゃない?保険に入れば不在時でも管理する、って向こうの担当者が言ってたし」

「まぁウチとしてはめんどい書類手続に付き添わんでもええのは楽やわ。で、二人はダイナーで食事したら次どこ行くか考えてるん?」

 

 クロワッサンが尋ねると、エクシアはコーンの端を口に放り込んで考えた。

 

「そうだねー、ゲーセンで初めて見たタイトルとか筐体とかにチャレンジしたいかも。あと、守護銃擬きの試射場かな?まだ試してないやつがあるから、そっちもどんな撃ち心地なのか気になるんだよね」

「エクシアはんはゲーセンと試射場、ね。テキサスはんは?何もないならゲーセンか試射場やけど」

「……実は、蹄獣レース(競蹄)が気になっている」

「え?テキサスって、競蹄好きだったっけ?」

「昔、馴染みがあってな」

 

 こういう時のテキサスは、大抵エクシアかクロワッサンの提案に従っていた。

しかし珍しく自分の希望を主張したため、二人は揃ってテキサスのほうを見る。

テキサスの目は少し輝いていた。

 

「カジミエーシュやリターニアでの開催レースも中継で偶に観ていたんだ。どうやらこの都市ブロックに多目的レース場があるらしくてな。調べてみたら、午後の丁度いい時間に特別レースが開催予定だったんだ。各地から蹄獣と騎手を招待したようで、折角だから生で見たい」

「ほーん、お硬めのビターチョコ!なテキサスはんにもお熱なものがあったんやね。ええやん、ここらで一発どんと当てて荒稼ぎ。エクシアはんはどうする?」

「競蹄かぁ……ゲーセンは今日じゃなくていいし、私も付いてこうかな」

「決定やね。ほな腹ごしらえの後は競蹄場に行こか。因みにテキサスはんはどれ狙うんか決めとるんか?」

 

 クロワッサンがテキサスの肩に腕を載せて尋ねてみると、テキサスは入国待ちの時に買っていた新聞を腰のポーチから取り出す。

折りたたまれたソレから競蹄欄の部分を手早く捲ると、彼女は出走予定の蹄獣と騎手一覧を真剣な眼差しで見つめ始めた。

 

「うわ、なんかテキサスがパリッとしてきた」

「稲妻が見えてきそうな気迫やな」

 

 二人の呟きに気を留めることなく、紙面から情報を集めたテキサスは自身の読みを述べる。

 

「そうだな……どうやらリターニアの蹄獣オーナー、【ノイグラーベン】がこのレースに蹄獣を出走させるらしい。そこの牧場はリターニアでも老舗で過去にも名獣を何頭も輩出している。私なら出走予定の蹄獣【ロドールフ】を軸に考える。騎手の『ゴットフリート=グルントヘルシャフト』も勝鞍も多いから手堅いところだろう。まさかウルサス地域の都市で、この名前を見るとは思わなかった」

「饒舌になったな、キミ。じゃあうちもそれに噛ませてもらおかな」

 

 競蹄素人のクロワッサンは、テキサス一推しの蹄獣を選んだ。

 

「あたしは二人とは違うやつで……この【フェザーシャワー】にしようかな、羽繋がりで!」

 

 エクシアは横からテキサスの新聞を覗き込みながら、一頭の蹄獣を指さした。

 

「【フェザーシャワー】……小柄だがスタミナに優れた蹄獣のようだな。騎手は『D.G.アロマ』……ああ、このレースに参加する騎手『”マークスマン”マークフィールド』の弟子か。これは見ものだ。出走した経緯は判らないが、展開次第では師弟対決が見られるかもしれない」

「テキサスはんのお眼鏡に適う所なん?」

「あそこの師弟は忍耐強さで有名だ。勝負時まで慎重を期し一気に巻き返すスタイルは中々手ごわい。マークフィールドの綽名の所以だな」

「随分奥が深いんやなぁ。あ、このピンクい飾り付けの蹄獣、ソラはんが好きそうな飾り付けてるわ」

「飾り付きの蹄獣……【ツィフロフスキ】。ほう、カジミエーシュはハグネー家の所属か。さっき触れたマークフィールドが騎乗予定の蹄獣だ。ハグネー家の蹄獣は一癖も二癖もあるが強者揃いだ。特にこの蹄獣は芝、土問わず好走するから見ていて飽きない」

「本当に詳しいんだね、テキサス。ねぇ、折角だしもっと教えてよ」

 

 女が三人寄って文字通り姦しく歩いていると、いつの間にか目的地のダイナーが目と鼻の先に近づいていた。

その繁盛ぶりから、地元の住民からのある程度の評判を得ていることが見て取れる。

ふとエクシアがダイナー前に目を向けると、そこにはザウラ人の男二人が誰かを囲って話しかけている姿があった。

 

「なぁ、今暇?俺達がいい働き口を紹介してやるぜ」

[モウシワケごさいませんが、ワタシはスデにキテイのショクバでキンムしております]

「アンタが人々のためにもっと貢献できる場所があるんだよ」

 

「あ、ナンパ」

「そらまぁ場所が変わっても男と女がおったら……いや、あれは()()ならではやな」

「女型ロボットへのナンパは、この国以外で見られるものじゃないな」

 

 彼女達の指摘通り、男達が話しかけているのはCASEALだった。

CASEALのボディは施設の受付にて見かけることが多いメイド風のボディをベースにしており、白スキンとヘッドセット・手足パーツがライトグレー、翠色のアイレンズで構成されている。

そして彼女の嗜好か利用者(雇い主)の趣味なのか、そのCASEALの姿は入管や役所の窓口で見かけたようなデフォルト状態やオフィススーツではない。

 

 赤糸で陰影を表し、白糸で象った薔薇が右胸元でアピールされている。

汚れ一つない純白さを輝かせるノースリーブブラウス。

計って揃えたように真っすぐで乱れのない襞が、どこか清楚さを感じさせる青スカート。

此処がエッグマンボーグでロボットが着ているものでなければ、ヴィクトリアの貴族街を歩いていてもおかしくないような姿だ。

例え顔や肌具合でロボットだと判ったとしても、目が惹かれてしまうことはあるかもしれない。

まして、そのCASEALは被造物としても優れたデザインをしており、興味が勝れば相手がロボットであろうとナンパをする男はいるかもしれない。

 

 しかしその光景を見たクロワッサンは、CASEALよりナンパ男達のほうに引っかかりを覚えた。

 

「んー……なぁ、あいつら龍門のあいつらに似てへん?ほら、年末か年始頃に喧嘩吹っ掛けて来たやつ」

「その頃……っていうと、どれだっけ?三つほど立て続けになかった?」

「何やったっけ、【隗葉会(かいようかい)】の傘下だって威張りくさってた、確か【莝菰組(ざこうぐみ)】。ほら、あの後ろにいる奴」

「……覚えていないな」

 

 エクシアとテキサスに心当たりはなかった。

しかし、クロワッサンの指摘した男達のほうが、ペンギン急便一行の方を見て焦りだした。

 

「お、おい!ペン急の連中がいるぞ!」

「あ、なんだと?!何だってこんな所にいやがる?!」

 

「なんや、あいつらの方がうちらのこと覚えとるみたいやな」

「目に見えて慌ててるねぇ。そんなにナンパが見られたくなかったのかな?」

「……いや、様子がおかしい」

 

 テキサスの鼻がぴくりと動く。

視線の先の男達が漂わせる雰囲気に、彼女は覚えがあった。

『これから”デカいシノギ”をやってやろう』という、欲と興奮と焦りが混じった脂ぎった匂い……特に()()()()()()()()()の時に出るそれだった。

 

「何かやらかすな、あれは」

「えっ、莝菰組が?まさか”黒社会”するんか?あいつら根城は龍門やろ?」

「サンクタでもラテラーノ外で”ラテ爆”*1するのは控えるんだけどねぇ」

「なんやそのコーヒーラテ注文するみたいなノリは」

 

 テキサス達が莝菰組の動きを注視した、その時。

 

「ちょっかい掛けられる前に始めるぞ」

「ちっ、こんな時に面倒な」

 

 男がお互いに耳打ちをする。

そして片方の男がどこかに電話を掛け始め、もう片方の男が舌を長くぺろりと伸ばした後、自身の腰に巻いていた鞄から拳大の何かを取り出した。

 

「なぁ、お人形さん。ちょっとこれを受け取ってくれや」

[それはナンでしょうか?]

「アンタのため作った特別なクリーム、さ!」

 

 男はそう言いながら、CASEALが差し出した両手に向かって白いボールのようなものを叩きつけた。

白いボールがCASEALの両手に当たって割れると、それは急速に硬化し、CASEALの両手を石膏のように呑み込んだ。

 

[?]

 

 CASEALは首を傾げて両手を見つめる。

エッグマンランドのクラウドデータベースに類似の現象がないかを検索していたが、男は間髪入れずにCASEALの足を蹴った。

両足が蹴りによって揃うや否や、男は先程と同じく白いボールをCASEALの両足首に叩きつける。

両足首もまた白いボールで固められ、CASEALはバランスをとることができない。

支えのない彫像のように、CASEALはゆっくりと傾いてその場に倒れてしまった。

男達はそんなCASEALを、頭部と脚部を運送業者のように持ち上げる。

 

 ここは彼らの縄張りである龍門ではない、ましてやどこかの荒野や山林でもない生活空間だ。

地元の住人や警察に見られれば、忽ちに悪行が露見して通報され逮捕に至るのは想像に難くない。

にも拘わらず、男達は白昼堂々、市街地の中で()()という凶行に及んだ。

 

「や、やりよった……」

 

 男達から危ない兆候を嗅ぎ取っていたとはいえ、さしものテキサスとエクシアも言葉を失い、かろうじてクロワッサンが声を絞り出すのが精一杯だった。

 

そんな中、突然龍門でもよく見かけるミニバンが、けたたましいブレーキ音を鳴らしてCASEALと男達の隣に急停車した。

 

「あ、やば」

 

 エクシアは直感的に守護銃の引き金を引き、男達の方を撃つ。

しかし、咄嗟の結果は、ミニバンのドアに穴を開けるのみ。

一方、ミニバンの助手席からはエーギル人の男が身を乗り出して、エクシア達の方にボウガンを向けて撃ち返してきた。

 

「うわっぷ!」

 

 反射的にクロワッサンが盾を構え、テキサスとエクシアは揃ってその線上に収まった。

が、ボウガンの矢が盾に命中した瞬間、辺り一面は濃い墨を流し込んだかのような霧に覆われた。

 

「今だ、早くしろ!」「待て待て!雑に扱って壊れたらどうする?!」「つべこべ言わずに積み込め!」

「目くらましかい!」

 

 クロワッサンとテキサスが、ハンマーと源石剣で黒霧を切り払う。

霧が晴れた時には、男達はCASEALを荷台に押し込み、自分達も乗り込んでリアゲートを閉めようとするタイミングだった。

 

「それは流石に見逃せないかなって!」

 

 エクシアが再び男達を狙い撃つもあと一歩及ばず、弾丸は閉まったリアゲートに当たるだけだった。

エクシアの弾丸を受け止めたミニバンは急発進して、平和な市街地の中を爆走し始める。

そのすぐ先にて、十字路から顔を出したセダンタクシーが出合い頭にミニバンと接触した。

 

「うわぁ、なんだ?!」

 

 ミニバンに右ヘッドランプを潰された運転手が、衝突を無視して走り去るミニバンを呆然と見つめた。

 

「馬鹿野郎が!当て逃げかよ、畜生。あのオンボロミニバンめ……絶対弁償させてやる」

 

 仕事にケチのついた運転手は、帽子を握りしめて悪態を吐く。

彼は車から離れ、ミニバンの特徴を警察に伝えるべく電話を掛けた。

それが運転手にとっての『間の悪さ』だった。

 

「そこのおにーさーん♪」

「あ?」

「降りるなら少し借りるぞ」

「え?」

「タクシー代はミニバンのほうにツケといてや!」

「は?」

 

 運転手の是非を聞かず、あれよあれよと女三人がセダンに乗り込んだ。

エンジンを吹かし、ミニバンを追いかけてトップスピードで走り去るセダン。

その後ろ姿を、タクシー運転手は呆然と見つめるしかなかった。

 

 電話が警察に繋がった。

 

警察(399)です。何が起きましたか?》

「……えっと、タクシーがミニバンに当て逃げされて、それで……タクシーが盗まれました」

*1
ラテラーノ式爆発術:造形物に関して何らかの心が動いた場合、それを爆破することで昇華するラテラーノ文化。興奮してきたな




◆なお、このテラ世界では歌劇王なスワイヤー、金色暴君なケルシー、噛みつき癖のあるU-Officialちゃん、バイクにカッケーするアンジェリーナ、横になるサイレンス、ハニーベリーをよろしくおねがいします、スペっとしてる妹系Mon3tr、尻がえっぐいサイボーグエンテレケイア、でちゅね遊びするミルラ、逃亡者なケイパー師匠、竹の風紀委員なエラト、ハジケリストアッシュロック、ルチャドールするウィスラッシュ、夢の旅路のウタゲ、マーベラス★なセイリュウ、突っ込み役兼疾風迅雷のティフォン、博打にひりつくテンニンカ、自称聖女のニンフ、いやーきついでしょバニラ、パプリカチャンカワイイ、セレブ志向のビーンストーク、いい匂いがする人とはDNAの相性がいいファイアーホイッスル、ジンクスブレイカーのプリン、キュウカンバーなヘビーレイン、ペペダモンニ、すごくすごいポンシラス、宇宙三兆人のファンをもつミント、This地球のメテオ、先頭の景色を譲らないラ・プルマ、コーヒー党のロスモンティス、眼鏡文学少女なススーロ、多言語対応のジャッキー、三冠キラーなジエユン、雪国出身のめんこいエステル、スフィーラなアイリス、鉄球を圧縮するアーモンド、レース実況のオーロラ、温泉勤務のバグパイプ、無人島開拓のワイフ―、凱旋門初挑戦なホルハイヤ、初代三冠リード、ロボット科学者ナイチンゲール、FPS巧者ヴァルカン、L'Arcリーダースルト、青い三女神ドロシー、お先に失礼!スカイフレア、不審者鍼師のリィン、理事長なラヴァ、スポーツ系配信者ズィマー、アオハルの白い方アステジーニ、イケボナレーションなエンペラーなど結構いる模様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。