The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆【ウォルモンドの薄暮】復刻につき+本編(ロドス編を予定)の次の話も情勢の解説を中心とした話になりそうなので急遽幕間めいた話を挟んでみる。

◆副題:【ウォルモンドの薄暮】改造プレイ
プログラム変更点:改造パッチ(Dr.エッグマン)利用でイベント開始時間を前倒しして各種フラグを回避。
※改造パッチによってスズラン(我らが光)の登場フラグが消えました。


【ウォルモンド騒乱編】
TW-B1.ウォルモンド襲撃


 あらゆる生命は、【天災】に対して無力だ。

 

 地を這う虫も、野にしがみつくも草花も、空を飛ぶ鳥も、山に潜む獣も、湖に沈む魚も。

 

【天災】は彼らに抵抗を許さない。

 

 故にあらゆる生命は【天災】から逃げる。

それは喩え万の重さを抱えて走る舟を持った人でさえ例外ではない。

 

 ある者は言った。

【天災】に遭ったとして、それで生き残ったのならば充分だろう、と。

その言葉が『【天災】から生き残ったことに対する幸運』を指すのか、それとも『【天災】に見舞われて生き残ってしまうというこれ以上ない不幸』を指すのかは明らかにならなかった。

 

【天災】は悪辣だ。

あれは逃げた先にも待ち構えているのだから。

あらゆる生命を呑み込む口を大きく広げて、あらゆる生命の足元を掬いにくるのだから。

 

【天災】は、いつも通りだ。

それが、【天災】というものの本能なのだろう。

 

◆◆◆

 

1097年6月。

 

◆リターニア・【ウォルモンド】◆

 

 重厚な石造りの建築、岩が流動したかのような繊細な彫刻、空に向かって伸びる針葉樹のように聳え立つ尖塔を誇りとする移動都市ウォルモンドは、他を拒絶するかのごとき冷気に包まれ窮地に陥っていた。

 

 本来なら近づく予定のない北の山々を前にして、寒さと日々減っていく食糧や燃料を目の当たりにして、人々は身を寄せあって震えていた。

 

 大裂溝。

 

 ただ東南方面に長く横たわるだけの溝は、ウォルモンドに対してその土地の四分の一を削るにのみならず、都市の運航計画に深刻なダメージをもたらした。

大裂溝自体がウォルモンドの人々を虐殺した訳ではないが、むしろウォルモンドの人々が衰弱していく様を見たいがために敢えて犠牲者を出さなかったのかもしれない。

 

 大裂溝によってウォルモンドを含む周囲の移動集団は思わぬ航路変更を余儀なくされた。

溝を避けての逃避行は人々を北へ北へと押しやり、彼らの蓄えを崩れる砂岩のように磨り減らす。

加えて今のウォルモンドには致し方なく迎え入れた招かれざる客もいる。

大裂溝によって生まれた難民、それも感染者やサルカズ人傭兵団も含めた余所者の一団がウォルモンドの一角を借りて窮乏を凌いでいた。

ウォルモンド市民は自分たちがウォルモンド市民(誇りある先民)であるが故に彼らを受け入れたものの、食わねど高楊枝と振る舞えるのは余裕があればこそであり、余裕がなければ口にするのは不満と怨嗟のみである。

 

 恐らく【天災】は()()を待っているのかもしれない。

人々が不満や怨嗟を呑み込めないほどに溜め込んで、それが口から溢れた時、残るのが渇いて飢えた躰か、それとも他人の血で渇きを癒した人々なのか、その瞬間を見るために。

 

 そして人々は望むと望まざるにかかわらず、己の末路を選ばざるを得ないのだ。

 

◆ウォルモンド・とある地下室◆

 

  ▼物資量:均等に分けて ←その前に都市が崩壊する

付近の都市に救援を求める →物資に余裕・受け入れに余裕のあるところなし

付近のキャラバンから物資を調達する →付近にキャラバンなし

貴族の憲兵隊を呼び戻す →失敗

 

  ▼最後の手段 ✔唯一の手段

 

 

 泥と煤でくすんだ紙に認めがたい文章が書き込まれていた。

 

 天井に括りつけられたランプが照らす内容は、この場にいる者達にどうしようもない現実を文字として表している。

暖炉もないその部屋は身も凍るような寒さを含んだ空気だけが漂い、その寒さ以上に彼らの心と血は凍りついていた。

 

「……もう打つ手はない。その手段を採る以外の自由はもう残されていないんだ、『ビーダーマン』」

 

 氷の結晶が解けてできた露が彼の外套から更に熱を奪う。

その露をふるい落とすことなく、土埃で汚れた士官服を着るキャプリニー人の男は紙の最後に記された一文を指差した。

 

「それが……あの医者を犠牲にすれば成せる道なのか、『トールワルド』?何も知らぬ相手を何も知らぬまま、無理矢理生贄に捧げるというのか」

 

 士官服の男、トールワルドから残された手段を聞いた野営服の男は机に手をつき震える歯を強く噛みしめながら彼に問い質した。

彼は野営服の男であるビーダーマンの問いに首を横に振って答えた。

 

「何もしなければウォルモンドの市民全てが魔女の釜の中に煮られる結果になるだけだ。医者だろうと感染者だろうと非感染者だろうと、自ら流す血で煮込まれて骨しか残らなくなるだけだ、ビーダーマン。我々にある手段は二つ。悪を為して少しでも生き残らせるか、悪を為さずして(何もしないで)死に絶えるか……選ぶべきは言うまでもないだろう」

……そうはならないかもしれないだろう、いや、何でもない。どうやって始めるつもりだ?」

「近いうちに医者が回診で町のはずれにある難民キャンプに行く。診療所代わりのテントには避難してきた傭兵団の連中もやって来る。飢えた奴らだ。しかも武器も持っている。先に手を出されれば、同じくやり返さなければ生きてゆけない人種だ。同胞が喪われれば必ず牙を剥く。喪われた者の中に世話になった医者が居れば尚更な。傭兵団のリーダーは沈着冷静な人物と聞くが……一人だけでは血気に逸る団員達を止めることは不可能だ、他の難民とともに蜂起する可能性は高い」

「そうして更に犠牲を積み足すというのか?」

「それがウォルモンドに生きる市民の命を救うなら、私は幾ばくかの命を潰すことに躊躇いはない。その幾ばくの中に私自身が含まれていたとしてもだ」

 

 ビーダーマンがトールワルドの瞳を見る。

ランプの灯りのみの暗い部屋であるにもかかわらず、彼の眼は脂を燃やした炎のような色を宿している。

ビーダーマンは部屋に入った時から既に渇いていた喉を鳴らして唾を飲み込んだ。

 

「蓄音機は暴走させれば通常は攻撃と防御に割り振っているエネルギーを全て攻撃に、いや暴発に費やす。キャンプ付近の蓄音機を暴走させればほぼ間違いなく周りの人たちを巻き込んで暴発するだろう。だが付近の人々は()()()()()()()()()()()()()。知っているのは市民だ。彼らの疑いは町のほうに必ず向かう」

 

 トールワルドは外套のポケットから蓄音機発動用の鍵を取り出す。

 

「そして町の人々は()()()()()()()()()()()()()()()()。蓄音機は貴重な代物だからな。彼らの疑いは町のはずれに必ず向かう」

 

 鍵を机の上に置き、ビーダーマンの方へ滑らせる。

 

「最後に都市の機関部が破壊されれば互いへの疑いが確信めいた不信となってぶつかり合う。それを火種に篝火が燃え上がれば、外の貴族にもウォルモンドの窮状が見えるようになるはずだ。それでウォルモンドは救われる」

 

 鍵はビーダーマンの手に当って止まった。

 

「……それでも、貴族()が狼煙に気づかない場合もあるんじゃないのか?」

 

 鍵を取る前に、ビーダーマンはトールワルドに質す。

 

「気づくかどうかを検討する段階じゃない。やらなければ全てが息絶え、やれば誰かが生きる『かもしれない』。言っただろう?その手段を採る以外の自由はもう残されていないんだ」

 

 トールワルドは断言した。

 

 ビーダーマンは葛藤するかのように瞼を閉じて眼をめまぐるしく動かした後、震える手で凍える程に鈍く輝く鍵を握ろうとした。

 

RRRIIINNNGGG!RRRIIINNNGGG!RRRIIINNNGGG!RRRIIINNNGGG!RRRIIINNNGGG!

 

 突如、地下室に据えてある非常用のベルがけたたましく鳴り始めた。

二人はその音に驚愕し、ビーダーマンは掴もうとした鍵を取り落とす一方でトールワルドはその音を聞いて焦りが一気に吹き出した。

 

「非常警報……それにこれは、『敵襲』の合図?!」

 

 ウォルモンドの警報音には種類がいくつかある。

【天災】が町の周囲に近づいている時や急な天候変化などにおいても用いられる警報音だが、士官として教育を受けた者であれば必ず覚えている音のパターンがある。

それは『野盗や他の都市といった外部からの攻撃を受けた』場合である。

今流れている音は正にそのパターンであった。

 

「クソっ、こんな非常事態に襲ってきた莫迦はどいつだ?!いや、それとも既に暴動が起こったか?!」

 

 もし万が一、感染者或いは都市の住民がこの時点で衝突した場合はトールワルドの想定通りの事態に推移しない恐れがあり、外遊する貴族に気付かせる前に潰し合っては生き残る数が減ってしまう可能性が極めて高かった。

少なくとも衝突はトールワルドらの筋書きにて調整できるようにデザインされる必要があったのだ。

 

 トールワルドは大きな音を立てて階段を駆け上がり、非常事態の詳細を探るべく地下室から飛び出した。

警察隊が臨時本部を設置している議事堂まで脇目もふらずに走ると、そこには警察隊を取りまとめて矢継ぎ早に指示を出す彼の父『セベリン』の姿があった。

 

「議事堂屋上の蓄音機を全て起動しろ!感染生物用だがないよりはましだ!地上用のもだ!」

「ハッ!」

「市民を全員避難させろ!避難先は最寄りの礼拝堂、無理なら議事堂を開放してもいい、非常事態だ!」

「了解です!」

「それとまだ動ける民兵団にも、いや難民の所にいる傭兵団にも声を掛けろ!難民避難及び臨時召集だ!」

「よ、宜しいのですか?!奴らはウォルモンド市民じゃ!」

「構わん!今は戦力がどれだけ合っても足りなっゴホッゴホッ……ッ!

「とうさっ……士官長!大丈夫ですか?!いったい何が起こったのです?!どこから敵襲が?!」

 

 妙に薄暗い空の下、トールワルドはセベリンに駆け寄り背に手を当てながら敵の状況を尋ねた。

 

「トールか。敵は……見ればわかる」

 

 そう言うとセベリンはむせる口元を抑えながら空を見上げ、トールワルドもつられて彼と同じ方向を見た。

 

「……なんだあれは?」

 

 トールワルドの抱えていた敵への焦りと計画破綻への恐怖が全てひっくるめて吹き飛ばされた。

 

 彼らの視線の先には赤と黒と橙に彩られた鋼鉄の船が悠々と空を飛んでいた。

 

◆◆◆

 

◆エッグマン艦隊所属巡洋艦・艦橋◆

 

「ほうほう、ここがウォルモンドとかいう移動都市か。想定していた巡航ルートにおらんかったから見つけるのに時間が少しかかったな」

 

 複数の艦船からなるエッグマン艦隊分隊が飛行する中、Dr.エッグマンは眼下に広がる都市を座乗する巡洋艦『エッグクルーザー』の艦橋から眺めていた。

 

「確かここに『蓄音機』とかいう自立型拠点防衛兵器があるんじゃったな。聞けば一定範囲内の敵に対する迎撃と配備した味方の保護を同時に行うと」

 

 彼は艦長席に腰掛けながら世界に派遣させた偵察ロボットから集められてきた『惑星独自の兵器に関する報告書』の資料を読んでいた。

本来であればエッグマンボーグの主である彼のような立場では都市から遠く離れたリターニアの地など到底気軽に行けるものではないのだが、チェルノボーグを熟知している市長代理(XXXXXX)の存在と外部委託による行政担当を雇用したことである程度の余裕が出来ていた。

汎的な決算案件については復旧した市役所機能が稼働し始め彼を通さずとも処理できるようになり、重要案件については直接エッグモービルか巡洋艦の端末にデータ送信されるために都市の領主館に控えておく必要は無くなった。

……それでも普通の領主であれば、余程のことがない限りは自領を側近に任せて抜けることはあまりないのだがそんなもの(領主のあるべき姿云々)は彼の知ったことではなかった。

 

 そこでDr.エッグマンは世界征服プランの一環として【テラ】独自の軍事技術の接収を図ることにした。

今回はその中の一つである蓄音機をターゲットとし、エッグマンボーグから見て最寄りの位置にあるウォルモンドに向けて航行していたのだった。

 

「エネルギー供給に源石が必要だったりアーツ技術による操作が必要だったりするようじゃが、その辺りは改造すれば何とでもなる。後はワシのロボットを配備させれば常時防衛が可能……そうじゃ、蓄音機の保護機能にバリア添付も追加すれば防御は更に硬くできるやもしれんな。フッフッフ、ワシでも知らぬ技術と言うのは何とも心躍るわい!」

 

《目標地点に到達。現在地に未知の戦力及び周囲に複数の地点から源石エネルギー反応を感知。迎撃プログラム、始動》

 

「ほう、地上の奴らはやる気のようじゃな」

 

 艦内アナウンスが響き渡り、クルーロボットが一斉に動き始めた。

 

「ウォルモンドの民よ、貴様らの抵抗など無意味であることを世紀の大科学者たるDr.エッグマン様が見せつけてやるわい!」

 

 新たな世界征服の一歩に対し、Dr.エッグマンは髭をしごきながらふてぶてしく笑った。




◆感想や改善点などございましたら是非お願いします。

※今回はWEB上にある【ウォルモンドの薄暮】考察ページなどを基に執筆しておりますが、作者のイベント理解力不足や見落としなどで矛盾などが起きているかもしれません。
致命的なミスがあった場合は出来る限り直そうと思います。
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