The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆今回から前書きには作者の言葉を載せようかと思います。

ウォルモンド編の投稿が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
正直に言えばまだ描写不足や文章不適切、誤字脱字などがまだまだあるはずですが
何卒ご容赦のほどをよろしくお願いします。

◆ドッソレス市長の彫像onクルーザーを見て
「こいつDr.エッグマンと同じようなことしてる」と思ったのは
多分私だけじゃなかろうか。


TW-B3-1/2.全ては、より多くの命(ウォルモンド)を救うために。

レールを切り替えるのに人が苦しむ原因は

多を救うために一を犠牲にすることだけが理由ではない

その犠牲に自身が含まれていない(自分だけを犠牲にできない)からだ

 

 

 

◆ウォルモンド大議事塔前・大広場◆

 

 セベリンは支えにしていたフレイルを握ることが出来なくなり、その場に崩れ落ちた。

 

〈運がなかったのはオヌシのようじゃな。どうする?今なら話を聞いてやらんでもないぞ?〉

 

 艦内と思わしき背景の中で足を交差し手を組む姿勢をとったDr.エッグマンは、己が既に勝利したのだと言わんばかりにモニター越しにそう提案する。

Dr.エッグマンの自信を体現する数百もの鋼の足音が通りの建物に反射して響き、音だけでも前線の隊員達を押し潰そうとしているかのようだった。

 

「お、お前達はセベリンさんを後退させろ!早く医務室に連れて行くんだ!」

 

 上級重装隊員の声を受けて二人の重装隊員がセベリンを両肩に抱えて大議事塔に戻る。

速度優先のせいで乱暴な搬送になっているにも関わらず、セベリンからの反応はなく意識がないのは明白だった。

 

 前線で果敢に戦っていた指揮官が倒れては、余程に訓練された兵士や隊員でなければその士気を保つのは容易ではない。

傭兵のマドロック小隊はリーダーの統率もあってその機能を損なわずに戦闘を継続しているが、ウォルモンドの主力たる警察隊と民兵団のほうが大きく動揺してしまったことで防衛線が緩み、逆に動揺というものがないロボット軍団はお構い無しに戦線を押し込んでいくため大勢は決しつつある。

後退できる陣地があるだけ幸いの、崩壊間際の状況だった。

 

「マドロック、警察隊が士官長(雇い主)の撤収を終えた」

「判った」

 

 友人たちよ、休む前の一仕事だ 

 

 マドロックが三体の石像に命令を下す。

 

 マドロックの声を受けた石像達は加速をつけて動き出し、その柱のような腕を思い切り振り回しながらロボット軍団に向けて突撃した。

体を形作る岩石の強度を無視した、回転による遠心力とロボットとの衝突によるエネルギーによってそれらの巨躯は次第に自壊していくが、それは即ち勢いのついた瓦礫がロボット軍団周辺に振り撒かれることと同義である。

石像と交戦していたロボット兵達の多くが飛んでくる石礫や土砂によって埋められ、その侵攻を停止させたことで重装隊員達にかかる圧力が僅かに緩んだ。

 

「傭兵も中々やるじゃないか。助かった、これで仕切り直し……なっ?!

 

 ロボット軍団を妨害したマドロック小隊が追撃を避けるように路地裏へと退いて戦線を離脱した。

前線を支えるべく残っていた重装隊も大議事塔まで後退してまとめ直そうする中。

 

「何をすっ?!」

 

 重装隊員達の背中を突如霜が走り、その体を拘束して強引に足を止めさせた。

 

「貴様っ?!」

 

 土砂から抜け出して迫るロボットを前にしての急停止は重装隊員達にとって致命的な隙となり、追い付かれた隊員から順にロボット軍団の波に呑まれ無力化され捕縛されていった。

 

クソッ!援護射げっぐぁあーっ?!」

 

事態の急変に驚く狙撃隊員は急いで重装隊員の退却を援護しようとするが、大広場の左右から現れたロボット兵援軍による麻痺弾の一斉掃射によって被弾し沈黙させられた。

 

 ウォルモンド防衛軍が一人も居なくなった大広場にはトールワルドが一人、アーツケインに出来たばかりの霜と冷気を纏わせていた。

 

 足元には先程彼が倒したエッグマンランドの旗が落ちている。

 

 トールワルドは旗の持ち手を握り締めると、旗を天高く掲げて振り回した。

 

 それは抵抗や攻撃のそれではない。

 

「私の名はトールワルド!エッグマン様、私は貴方様に降伏する!どうか、どうか慈悲を!」

 

 レバーを自身のいるレールに切り換えるもの味方の背を討ち侵略者に従う裏切りそのものだった。

 

◆ウォルモンド大議事塔・正門バリケード◆

 

「ト、トールワルド?!一体何を?!」

「隊員を、アーツで攻撃したのか?」

「そんな!それじゃ重装隊員の皆は!?」

 

 先んじて後退に成功していた警察隊員やバリケードを守っていた民兵団員達からトールワルドの豹変に対して戸惑いの声が溢れる。

前線を倒れたセベリン士官長と共に支えていた、彼の息子であるトールワルドがロボットの大軍を前にして降伏旗を掲げるようにエッグマンランドの旗を振る様子は彼らに大きな混乱を引き起こした。

 

 その裏切りの意図を知るのはただ一人。

 

「トールワルド……お前は、本当にやるつもりなのか…?!」

 

 遠距離攻撃要員として防衛戦に参加していたトランスポーター、ビーダーマンは戦いが始まる前にトールワルドの『計画』について予め聞いていた。

 

 

◆◆◆

 

◆ウォルモンド大議事塔・守衛用備品室◆

 

 開戦前。

 

「とんでもないことになったな……プランは中止か?」

 

 人目を避けて部屋に入ったビーダーマンは椅子に座るトールワルドに尋ねる。

予定していたウォルモンド煽動プランに関するビーダーマンの問いかけに、彼は支給されたプロテクターや持参していたアーツケインを点検しながら答えた。

 

「そうだな……こんな事態になるとは全く予想出来なかったが、ある意味次善に近い状況だと思う」

「次善?」

 

 ビーダーマンは彼がプランが頓挫させられているにも関わらず、この侵攻を肯定的に見ていることに驚いた。

ウォルモンドを愛する彼が侵略者の襲来など絶対に許さないと思っていたのと、先程までのプランを台無しなされかねない状況に怒っていると考えていたからだ。

 

 ビーダーマンの疑問に対しトールワルドはその理由を語った。

 

「プランを話している時にも言ったが、ウォルモンドにとっての『最善』は貴族の憲兵隊が物資と共に引き返してくることであり、『最悪』は何の支援もなく飢え死にすること……その事実は変わっていないのは判るな?」

「そうだな。俺達は『最善』やそれ以外の手が無くなったから、『最悪』になる前に手を打とうとした。だが今の状況も『最悪』一歩手前じゃないのか?いきなり侵略を受けたんだぞ?」

「いや、少し違う。少なくとも貴族の憲兵隊が引き返してくる可能性は非常に高くなった」

「どうしてそう思う……いや、『侵略された』からか」

「そうだ。貴族が自身の移動都市(縄張り)に手を出されたなら動かない訳には行かない。ましてや相手は野盗程度ではなく他の移動都市だ。動かなければ貴族の沽券に関わる」

「貴族が動くと見た訳は判ったがそれでも直ぐに来てくれるとは限らんぞ?」

「問題ない。今上流階級ではあの飛行船のことで持ちきりだからな」

「というと?」

「リターニアの貴族界隈じゃどうにか飛行船を入手できないかで話題なのさ。何せ小さくてもロボットを大量に運べる性能だ、外遊用の調度品や衣類をしこたま積んでも飛べるだろうし、何だったら【天災】時の避難場所としてはトップクラスだ。移動都市と違ってビークル並の速度で移動できるんだからな。おまけに【ボリバル】のほうじゃ【イベリア】から買い取ったとかいう豪華客船を態々人工の海に浮かべたという話もあるから貴族連中が張り合わないわけがない。だが飛行船については北東地域でないと現物がないから貴族は少しでも情報を仕入れようと躍起になっている。ならばもし、自分の移動都市で飛行船の話が飛び出して来たら?」

「……後回しにはしないということか」

「そうだ。ましてや攻撃を受けたとなれば絶対に見過ごせない、必ず引き返す」

「なるほど……」

 

 ビーダーマンは顎に手を当て、トールワルドが『次善』と評した理由を理解した。

 

 彼の父セベリンはウォルモンドを守るために日頃から都市の防衛技術などの情報を集めていたが、対してトールワルドは貴族や他の移動都市と交渉するための情報を集めていた。

となれば貴族が今何に関心を持っているのかを彼が知っていてもおかしくない。

その中でも特に関心の高い飛行船が来たとなれば貴族が子飼の憲兵隊を送るという予測は理に適っている。

加えて攻撃を受けたとなれば、相応の武装と物資を引き連れての帰還になる可能性は高い。

 ウォルモンドに不足している物資と治安維持の武力が一気に賄えるかもしれないとあれば、確かにトールワルドの言う通り『次善』といっても障りはないかもしれなかった。

 

「ならばプランはある意味ほぼ成立手前というところか。あとはあの飛行船をどう凌ぐかという所だな……」

 

 そう呟くビーダーマンの顔色は優れない。

 ビーダーマンもトランスポーターの情報網や危機契約ネットワークでエッグマンランドに関する話は聞き及んでいたが、いずれも規格外の実力を示すものばかりだ。

(いち)トランスポーターの身分で言えば興味の尽きない存在であったが、いざ敵対しろと言われればとっとと逃げ出してしまいたい所であった。

 かといって今の彼はウォルモンドに派遣された危機契約トランスポーターとして仕事を果たすべく務めていた上、それこそ『最悪の中の最善』を掴もうとトールワルドと共にプランを立てていたのだ。

結果的には『次善』となる出来事であっても今は『最悪』の過程の只中にいる彼は、如何にこの窮地を脱するべきかを考え始めた。

 

「いや、不可能だ。凌ぎ方以前に今のウォルモンドでは到底勝てない」

「なに?!」

 

 しかし、彼の目の前のトールワルド(共犯者)はビーダーマンの思考を一息に断ち切った。

 

「お前も知っているだろうが、向こうは暴動中とはいえウルサスの大都市チェルノボーグを奪い取った国だ。恐らく暴徒も憲兵も相手にした上で勝ち上がったのだろう。更に言えば暴動で荒れた街並みを馬鹿みたいな速度で復興させるほどだ。ウルサスと真っ向からやりあえるレベルの強国と見ていい。翻ってここウォルモンドは蓄音機と愛郷心ある警察隊や民兵団こそ居るが主力の憲兵は不在で物資は欠乏している。チェルノボーグの時と前提が全て同じとは限らないが、それでも不利の条件が強すぎる。ウォルモンドに勝ち目はない」

「それは……」

 

 トールワルドの分析にビーダーマンが反論できない中、引き続き彼は持論を述べる。

 

「ただ少なくとも最近の情報ではどこかの移動都市が滅ぼされたというものはなかったし、領土拡大を狙うならチェルノボーグに近い所から始めるのが筋だろう。わざわざウォルモンドに、それも本来の航路から外れた場所にあるウォルモンドを目指して到来したのであれば何か目的があるはずだ。それを交渉材料にできるかもしれないが……」

「まだ何か気がかりがあるというのか?」

「その実、交渉というよりも財貨を差し出しての命乞いになる可能性が高い。……そうなると今度は市民の間で抗戦派と降伏派が生まれ、ウォルモンドが二つに割れてもおかしくない。俺達のプランでは判りやすい形(感染者と市民)で対立を引き起こすものだったが、エッグマンランドに付くか付かないかという形だと制御は困難だ。なにせ片方はウォルモンドにとっての裏切り者になる。市民は絶対に許さないし、貴族も見逃さない。裏切り者もそれが判った上で抵抗する、生き延びるためにな。最早殺すか殺されるかの二択になる……そうなればウォルモンドは立ち直れない。生き延びても市民の命は喪われ、分裂した事実が楔となってウォルモンドの誇りは折れる」

「いや、でも……」

 

 ビーダーマンは彼の悲惨な結論に反する何か好材料のポイントを挙げようと考えを巡らせるが、彼自身の知識とウォルモンドでの暮らしでの経験はビーダーマンの言葉を途切れさせるほうにしか働かなかった。

 極論を言えば、彼らのプランではまだ感染者と市民の衝突であればどうにかなるはずだった。

彼我の戦力差は極端に偏ったものではなくやや市民側有利といったところで、計画における予測としては貴族の救援が来るまでは拮抗するものとみなしていた。

加えて感染者側は難民が占める割合も多く、市民側からすれば彼らは余所者という認識が強い。

ウォルモンド市民の誇りの源泉である『我々は一致団結したウォルモンド市民である』という認識さえ揺るがなければ、分断が起きたとしても致命的にはならないはずだったのだ。

 

 だが市民間での衝突、それも正義と生存をかけた争いとなれば話は別だ。

離反者に市民が混じる可能性が高く、更に貴族の救援が入れば離反者が粛清される恐れも充分にある。

そうなれば、内紛によって市民の信頼と誇りは断絶しウォルモンドは十中八九衰退する末路を辿るに違いなかった。

 

「よって、動くチャンスがあるとすれば()()()()()()()()()()だ」

「ど、どういうことだ?」

 

 点検を終えたトールワルドが椅子から立ち上がった。

悲観的な分析を終えた男は、その目に尋常ならざる熱量を以てビーダーマンの方を見る。

 

()()()()()()()()()()()。もしも相手が戦力を小出しにしたり警察隊を過小評価したりすれば一度だけなら撃退できるかもしれない。此方には蓄音機がある、迎撃自体は可能だろう」

「成功するとどうなる?」

「ウォルモンド市民は短期間ではあっても団結を維持できる。『我々は侵略者などには負けない』と。それがただのまぐれ当たりだとしても、だ。そこにもし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()者がいればどうなる?」

「……まさか、お前」

 

 ビーダーマンの肩にトールワルドの手が置かれる。お互い厚手の装備を着込んでいるにも関わらず手の触れている肩の熱は恐ろしく低く感じた。

 

「ウォルモンドは裏切り者を許さない。それこそ侵略者よりも遥かに強い恨みを抱く。裏切り者を罰するためには例え侵略者の手だろうと掴み生き延びようとするだろう」

「トールワルド……それは、賭けの過ぎる話じゃないか?思い通りになるとは限らないぞ?」

 

 ビーダーマンの声が震える。

眼前の男は己の命を一枚のコインにして、ウォルモンドの未来を掴もうとする。

 

「我々はプランのために共犯者という役を全うすると決めた。迷う自由は既に無い。だから頼むぞ、()()()()()()()()()役は」

 

◆◆◆

 

◆ウォルモンド大議事塔・正門バリケード◆

 

「見損なったぞ、トールワルド!」

「ト、トランスポーター……!」

「ビーダーマンさん?!」

 

 民兵団の中でクロスボウ射撃を行っていたビーダーマンが正門バリケード前に立ち、()()()()トールワルドを罵った。

 

「命を燃やして戦うセベリン士官長の姿を見ておきながら、お前は守るべき仲間の背を討ち侵略者に進んで頭を下げるというのか?!恥を知れ!」

「恥だと?寝惚けているのかトランスポーター、いや、ロボットの足の錆にでもなりたい願望があったなら謝罪しよう。此処にいる者達の目が節穴でなければ理解できるだろう?先のロボットの倍の量が直に押し掛けてくるんだぞ。勝てると思うのか?Dr.エッグマン、いや鋼鉄の帝王に」

 

 侵略者に降る卑怯を糾弾するビーダーマンに対して、トールワルドは聞き分けのない相手にうんざりするかのように言葉を返した。

その態度が、大議事塔まで退却していた警察隊や窓から覗いていた民兵団員の神経を逆撫でする。

その空気を燃料に。

 

「だから寝返ると?!己を踏みにじってでもウォルモンドを救う気か棄てるというのか、ウォルモンドを!?お前に誇りはないのか?!」

「そうだ。その程度でどうにかなるなら安いものだ」

 

 ビーダーマンは悲鳴にも似た怒声を挙げると、トールワルドは悩む自由(理由)などないかのように事も無げに首肯した。

 

ふざけるな裏切り者!

貴様の指示に従ったことが恥ずかしくてならない!

セベリン士官長の顔に泥を塗りやがって!

 

 激怒した民兵団員からの降り注ぐ、トールワルド(裏切者)への罵声と投石。

 

「エッグマン様、どうか彼らの言葉は聞き流していただけませんか?彼らは貴方の無敵の軍団を見ても尚自分達のほうが強いと信じているだけなのです」

 

 自分に向けられる害意を気にすることなくトールワルドはDr.エッグマンの映るモニタードローンの所まで赴くと、深々と頭を下げて彼に謝罪した。

まるで自分のほうが正しいのだと言わんばかりに振る舞うトールワルドにウォルモンド防衛軍は益々激怒した。

一方のDr.エッグマンも向こうの騒ぎを気に留めずにトールワルドに話し掛ける。

 

[ホッホッホ。オヌシも大変じゃの、じゃがワシの偉大さをいち早く理解して反省したのは認めてやろう]

「感謝致します。この都市にある蓄音機は博士に差し上げますので、どうかお受け取り下さい」

[良かろう。ここまで礼を示したのだ、ワシとてケチではない。何か望みはあるか?]

「いいえ、私から望むものはありませんが……恐れながら申し上げますと、博士が蓄音機を回収する際に市民から妨害が入る恐れがあります」

[回収ならワシのロボットに命じてさっさと引き上げるつもりじゃが?]

いいえ、イケマセン!……失礼、蓄音機の動力源は非常にデリケートで、強引に動かすと暴発するやもしれません。蓄音機の設計士等がウォルモンドには居りませんので、機構を解析して正しい順序で解除してからの運搬をお勧めします。つきましては博士の作業中は警察隊から捕虜をとって警察隊を弱体化させることと、市民を黙らせ博士に感謝させるために鼻薬を嗅がせる(食糧などを宛がう)のがよろしいかと。数は……そう、()()()()()()もあればいかほどの市民でも黙るでしょう。無論タダとは申しません。私は警察署の財貨が保管されている金庫の場所を知っています。鍵については残念ながら管理者が都市を離れているのですが、博士の力があれば()()など容易いのではありませんか?」

[よく判っておるではないか。食糧くらいならエッグマンタウンにある備蓄で事足りる。丁度生産施設の稼働で幾らか製造試験を行っていた所じゃ。一日あれば此処まで持って来れるじゃろう]

「……近くにまだ他にも船を待機させていたのですか?」

 

 降伏者の進言に気をよくしたDr.エッグマンはトールワルドの提案を快諾したが、その手際のよさに彼は思わず小声で即決の根拠を尋ねてしまった。

彼の驚きを気にすることなくDr.エッグマンはその理由を答えた。

 

[いや?確かにまだ船はあるがエッグマンボーグ北方にあるエッグマンタウンから直に持って来させる。船のチェックと積み込みで半日、移動で半日といった所か。行きとは違ってウォルモンドの場所はマーク済みじゃから最短ルートで航行できる筈じゃ]

「……流石でございます。では、警察庁舎から()()()()()()()()参ります。よろしければエッグマン様のロボット兵をお借りしたいのですが……」

[よかろう]

「エッグマン様の御期待に沿えるよう微力を尽くします」

[よい、よい。見所のある輩には悪くしないのが偉大なる支配者として当然の振る舞いじゃ]

 

 Dr.エッグマンは満足げに頷いた。

 

「捕虜については……先の戦いで倒れた士官長などが宜しいでしょう。弱っていますから抵抗は微弱ですし、『愚かにも敵対したとはいえ、その気概を買って手当てを施す』とでも言って連れていけば彼らとてエッグマン様の寛大さと慈悲深さに感服することでしょう」

[フッフッフッフッフ、確かにワシの偉大さをまざまざと見せ付けるにはよいデモンストレーションじゃ。いいじゃろう、オヌシはこの都市で第一の家臣となった。その先見性を認めてロボットの指揮権の一部をオヌシに貸してやろう]

「重ね重ねの御配慮、感謝の念に堪えきれません」

[ヌワーハッハッハッハ!よし、お前達はアヤツの指示に従うように。二機はアヤツの護衛じゃ。他のロボットよりも人型のオヌシらのほうが小回りも利くじゃろう。他のロボットは破壊されたロボットの回収と都市にある蓄音機付近の制圧じゃ。残ったロボットは抵抗勢力の立て籠る議事塔の周囲を封鎖しろ。ワシは蓄音機の解析に掛かるとしよう。何かあればロボットを通じてワシを呼ぶといい]

「畏まりました、エッグマン様」

 

 モニター画面の向こうにいるDr.エッグマンが艦内のロボットに指示を下すと、上空に浮かんでいた飛行船から更に四十機程のロボットがトールワルドの周囲に降下してきた。

それまでウォルモンド防衛軍が対峙していたどこか玩具めいた赤と橙のロボット兵とはまた別のタイプであった。

屈強な重装隊よりも巨大なカーキカラーのボディ。

丸みのあるロボット兵とは異なる武骨で直線系の規格。

先に活躍したマドロック小隊の石像のように太い鋼の腕には【G】とエッグマンランドの国旗マークがペイントされている。

 それらの手には全てウォルモンド防衛軍を苦しめた麻痺弾砲が握られており、一度に射撃されればウォルモンド防衛軍には防ぎようがない。

鋼のロボットゴーレムがその頭部にある眼と共に大砲を一斉に大議事塔のほうに向けてウォルモンド防衛軍を睨み付け、セベリンの統率なき隊員達や民兵団員達は誰もが後ずさるか遮蔽物に隠れるなどした。

 

 ただ独り、ビーダーマンだけがナイフを片手に持ちながら得物のクロスボウを構えてトールワルドを睨み返した。

 

 ビーダーマンとトールワルドの間に沈黙が過る中、彼の後ろから下降してきたロボットゴーレムとは趣向の違うロボットが二体歩み寄る。

 カラーリングは他のロボット兵のように赤と橙と黒をベースにしていたが。

 

片やロボットゴーレムにひけをとらない長躯。

下腿や前腕、胸郭、頭部をメカニカルなパーツで覆いながらも上腕や大腿はまるで力自慢の鉱山労働者のごとき筋肉を備えており、筋骨隆々の軍人がロボットになったかのような見た目。

腕には【CAST】と印字されていた。

 

片やロボットゴーレムと比べて小柄な女性ほどの体躯。

顔は女性的で、流線型のボディパーツとプレート状の防御パーツが何処と無く看護師のような雰囲気を与えてくる見た目。

腕には【CASEAL】と印字されていた。

 

 各々がトールワルドの両側を守るように二挺の小型機関銃と捕鯨砲を構えてビーダーマンに銃口を向けた。

 

「君達が護衛か、武器を下ろせ。あれはただのケジメ(威嚇)、手を出すまでもない。仕事のほうが大事だ。」

「イエッサー、コマンダー.トールワルド」

「ワカりました、トールワルドサマ」

 

 二体のロボットガードが武器を下ろす。

ビーダーマンは尚も武器を構えたままだった。

 

「半分ついてこい、残り半分はここから南に進んだ先に警察庁舎があるから財貨を回収するんだ。幸いにも警察戦力の殆どがこの大議事塔に集合しているから金庫室と会計室には容易に進入できるはずだ」

「コマンダー、当機達ハ何処ヘ行キマスカ?」

「捕虜の収容だ。医務室と臨時医療室はあそこに見える廊下の突き当たりにある」

「抵抗ノ可能性ガ極メテ大デス」

「正面からは行かない。手はある」

 

 トールワルドは指揮下に入ったロボットに命令を下しながら、得物のアーツケインに冷気を纏わせつつその場を後にした。

 

 

 

◆大広場に通じる路地裏◆

 

「どうする?契約はほぼお流れに近いぞ」

「士官長が不義理を働いたのではないのだから、私たちには契約を履行する責務がある。それに向こうには世話になった医者……ロドスの先生がいる」

「あー、あの人な。確かに、俺達のキャンプに薬草だの虫除け香だのを分けてくれてたな。じゃあ誰が行く?」

「私が行く。友人たちが一握り有れば咄嗟の事程度ならどうにかなる。副長は私が不在の間、同胞たちや感染者たちのとりまとめを頼む」

「あいよ。もしも逃げるときは盛大に、こっちにも判り易く派手にやってくれ」

 

 




◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。

2/2については近日中に投稿します。
そのあと一話投稿してウォルモンド編を終了とし、本編に移りたいと思います。
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