【とある海兵視点】
彼女と最初に会ったのはエニエスロビーにバスターコールが発動された時だった。
俺はオニグモ中将の下で働いている一等兵。
所謂下っ端だ。
オニグモ中将に味方の乗った船ごと麦わらの一味を砲撃しろと言われた時、
俺は反対、というか口答えをした。
それにたいして向けられたのは銃口。
正直、分かっていた。
ここで凶悪犯を逃せば千人どころか数万人を超える人が
犠牲になる可能性が高い。
だからこそバスターコールが発令されたのだ。
銃声と共に俺は目を瞑った。
しかし、衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開けると、そこには股間を押さえて蹲るオニグモ中将と、
一人師団とも恐れられている[刀鬼]くいな中将が居た。
どうやらくいな中将が弾丸を防いでオニグモ中将を蹴り上げたらしい。
俺の為になんと恐れ多い。
そう思っていたら、怒るオニグモ中将を笑顔で脅し、
俺に対して砲弾を撃つように指示した。
味方の海兵は全員助けるから安心しろと添えて。
なんて心優しい方なんだと思った。
噂では傍若無人で制御の効かないキラーマシンのように言われているが、
やはり民衆の言う通り可憐なヒーローというのが彼女の正体なのだと、
俺はその時、そう確信した。
その後有言実行。
砲弾の爆発から全ての海兵を守り、助け出した。
それから彼女は下っ端海兵にとっての英雄となったのだ。
そして2度目はあの恐ろしい頂上戦争。
白ひげ海賊団との戦い。
当然、俺なんかが戦力になるわけもなく、傘下の海賊の船員にやられて倒れていた。
あのままだったら、俺は巻き込まれて死んでいた。
しかし彼女が、くいな中将が傘下の海賊団と戦いながら
負傷者を巻き込まれない位置に移動させ、戦線を押し上げてくれた。
おかげで俺は今こうして生きている。
彼女のおかげで、付近の戦場の犠牲者は彼女がクロコダイルと戦う為に動くまでほぼ0だった。
海賊の被害よりむしろ、サカズキ大将のマグマの流れ弾にやられた海兵の方が多かったくらいだ。
その後、クロコダイルと戦いながらも、
倒れた海兵を巻き込まれないように移動させる彼女を見て、
多くの海兵が励まされた。
巻き込まれた海兵も居たが、命は助かったのだ。
死への恐怖が、倒れても彼女が避難させてくれるという信頼に。
だからこそ、あの瞬間にはみんなが驚愕した。
海軍の英雄が裏切ったことに。
あと、あの無茶苦茶な強さに。
手負とはいえサカズキ大将を瀕死に追い込み、クザン大将の攻撃を爆発で解除して、返しの突きで島の反対側まで吹っ飛ばし、ボルサリーノ大将の攻撃を謎の力で防ぎきった。
一人師団とは誇張では無かったのだ。
しかし俺は彼女がサカズキ大将を倒した時に、驚きはしたが同時に納得もした。
何よりも仲間の海兵を大事にするくいな中将と、
何よりも正義の執行を大事にするサカズキ大将。
気が合う訳が無い。
その後、海賊王の息子とドラゴンの息子をみすみす逃し、戦争は終結した。
白ひげを討ち取ったとして勝利と広報したが、実質負けだ。
責任を取る形でセンゴク元帥とガープ中将が役職を降りた。
後任はセンゴク元帥推薦のクザン大将か世界政府推薦のサカズキ大将か。
恐らくサカズキ大将だろうとする意見が多い。
過激な方ではあるが、この広い海の平和を維持するにはあの人の思想が必要だ。
それに、海軍は世界政府の下部組織。
逆らうことは難しいだろう。
納得はしている。
しかし、俺はついていけない。
サカズキ大将が退院しだい後任は決まるだろう。
そうなったら簡単に辞めることができなくなりそうだ。
そう思い、俺は海軍を辞めた。
同じ思いの海兵は多かったようだ。
肩の荷が下りたのか、センゴク元帥が教えてくれた。
海軍に入って5年。
初めての会話だ。
ここ数年で人望も増え、部下を持たせようとした矢先だった。
この戦いが終われば大将に上げる予定だった。
あいつの考えていることは分からんが、やはり海軍という組織には合わなかったか。
そう語ってくれた。
彼女の考えは本人が言っていたと思うが、
彼女とは親交が深かったと聞くし、俺には分からない何かがあったかもしれない。
さて、久しぶりに故郷に帰ろう。
親も心配しているはずだ。
彼女の助けになることはできないが、何かあったら匿ってあげたいな。
くいなは格下としか戦ってないので海兵を避難させる余裕がありました。
モブ海兵には雲の上過ぎてそこらへんがよく分かりません。
別に海兵が大事とか無いです。
車道に出そうな他人の子供を、危ないよ、って抑える程度の感覚です。
ちなみにくいなの実力は未だ大将未満です。
三大将がだいぶ消耗していたから出来た事です。