漆黒の鋼鉄   作:うづうづ

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ノリと勢いだけで書いているから設定ガバが押し寄せてくる……!


第四十三話 対決、謎の緑色ウマ娘!?

 

 

 

菊花賞を終えて数日、私はいつも通りトレーニングを──

 

「ブラックプロテウスさん、本日はありがとうございました。またよろしくお願いします」

 

「はい、ありがとうございました……ふう……」

 

 することが出来ていなかった。インタビューに来た乙名史記者を見送り、一息つく。外を見るとすっかり日は沈んでしまっている。

 

 無敗でのクラシック三冠達成。どうやら私が思っていた以上に注目度が高かったようで、連日のようにインタビューやらTV出演やらの依頼が舞い込んできており、授業後2、3時間はその対応に追われている。

 

 次走を次の日曜の秋の天皇賞に定めているので、トレーニングに集中するべきなのだろうが、ファンへの対応は疎かにしたくないため、多少無茶なスケジュールであるが詰めに詰め込んでの対応になってしまっている。

 

 依頼に関してはURAからの斡旋が最優先で、後は回せるものは後日に回して等、断れないものをトレーナーさんが選別して対応する形になっている。

 その為、トレーナーさんは多分ここ数日まともに眠れていないだろう。トレーナー室に栄養ドリンクの瓶が散乱しており、目の下にはうっすらと隈が出来ていた程だ。

 

 朝方全部片づけておいたが、多分また散らかっているだろう。インタビューが終わった報告をするついでに片付けていこうと、トレーナー室へと足を運ぶ。

 

 トレーナーさんは嬉しい悲鳴だから気にするなと言っていたが、私としては申し訳ないと思う。

 

 この熱が冷めるまでレースを休み、ファンサービスに徹することも考えたが、スズカ先輩やマックイーン先輩と戦える最後の機会になるかもしれないので、どうしても今回だけは譲れなかった。

 

 マックイーンさんもスズカさんも、長い間シニア級にいる。マックイーンさんはこれが復帰初戦だし、スズカさんは前走、毎日王冠の走りを見た限り、全盛期からはやはり衰えが見える気がする。

 現にスズカさんとの併走では、2000mであればほぼ互角になるまで能力差が縮まっているほどで、2400m以上であればほぼ勝てる状況だ。

 

 そしてテイオーさんは既に引退を表明し、ドリームシリーズへの参加が認められ、ルドルフ会長に勝つのだと意気込んでいる。

 

 ドリームシリーズへの参加条件は秘匿されており不明となっているが、テイオーさん、マックイーンさん、そしてスズカさんにも参加の誘いが来ているという。

 

 基本的には一定以上の実績を残したシニア級のウマ娘に対して誘いが来る、ということだろう。現に私にはその話は来ていない。まあ、多分希望すれば通ると思うが……まだそちらに挑戦するつもりはない。

 

 まだまだ私はクラシック級で現役バリバリだし、フジキセキ先輩との決着もまだついていない状態で移籍するのは流石に無い。

 

 そのフジキセキ先輩の競走能力がどの程度戻るかが問題だが……順調に回復したならば来年の安田記念辺りには出てくるだろう。

 

「トレーナーさん、インタビュー終わりました……大丈夫ですか?」

 

 朝片づけたばかりのトレーナー室の床に栄養ドリンクの瓶が十本以上転がっているのを見て、思わず声を掛ける。

 

「まあ、一段落は付いたから大丈夫だ。お前こそ大丈夫か? あまり走れていないだろう? 頼まれていたコースの夜間使用許可、取れたが走ってくるか?」

 

「そうですね。門限まで走ってこようと思います」

 

 インタビューの応対などもあってここ数日は日が沈んだ後に走っている。若干寒いのだが、走っているうちに気にならなくなるので特に問題はないが、あまり音が響くようなトレーニングは流石に自重している。

 

「あ、そうだ。URAからクラシック三冠のボーナスの明細が来てたぞ。ボーナス1億だ」

 

「話していた通り、全額私に振り込まれたってやつですよね? 私だけの力じゃないんですから、半分こでよかったんですけど」

 

「いや、頑張ったのはお前なんだし流石にな……」

 

「正直この歳で大金持ってても何とも……」

 

 というか、レースの賞金だけでもとても大変なことになっている。本賞金の金額で現状11億以上、その他にも特別出走手当やらグッズ類売上のインセンティブやらなにやらで賞金3割の手取りとそこから掛かる税金を差し引いても、考えるのを放棄するほどの額が振り込まれている。

 GⅠ勝つごとに一本ずつ、趣味の日本刀を買ってはいるが高いものでも700万くらい……今考えると700万円って高いよね、うん。お財布の紐、ちゃんと締めないといけないな……こういうの、上を見るとキリがないし。

 

「金はいくらあっても困るもんじゃねえし、貰っとけって。何かあった時に困るといけないしな。どうしても気にするってんなら、今度コーヒーでも奢ってくれ」

 

「分かりました。マックイーンさんに教えてもらったメジロ家御用達のお高い喫茶店に連れて行ってあげますね」

 

「いや、ドレスコードが必要そうな店はちょっと……」

 

 冗談を交えつつ、片付けを済ませてからコースへ向かう。今日は見知った顔だけの取材ということもあって、体操服で取材に応じたからだ。

 

 なるべくトレーニングの時間を確保するためのものだと乙名史記者達も理解してくれた。でも、やっぱり少し失礼だっただろうか。大勢の人が来るときは流石にちゃんと制服か勝負服で応対しようと思う。

 

 

 

「……あれ?」

 

 芝のコースへ向かうと、コースで誰かが準備運動をしているのを見つけた。

 

 まだ18時を少し回ったところだし、門限も過ぎていないので別におかしくはないのだが、私が不思議に思ったのは、今まで見たことが無いウマ娘がそこにいたからだ。

 

 腰の下まで届くくらい長い髪を軽く後ろで一つに纏めている、鹿毛のウマ娘だ。私より少し背が高いくらい、体付き的に恐らく高等部の先輩だろうか?

 今まで一度も練習で見たことがないウマ娘だ。緑色のトレセン学園指定体操服を着ているから学園生だろう。そして見たことがない筈なのだが。何処かで出会ったような気もする……

 

「あ、あの、こんばんは。えっと……はじめまして?」

 

 出会ったことがあるような気もするが、思い出せない。ひとまずじっと見つめ続けるのも失礼だと思って話しかけに行く。

 

「えっ? あ、テウスちゃ……いえ、こ、こんばんは!」

 

 話しかけると少し面食らったようにしながらも返事が返ってきた。私の名前は知られているらしいが、やはり思い出せない。

 

「あの、すみません先輩。何処かでお会いしたことありましたっけ……?」

 

「へっ……あ、ああいえ! 初めて! 初めてですよっ!?」

 

 わたわたと慌ててはいるが、どうやら初対面らしい。まあ、いい意味でも悪い意味でも名が知れているだろうし、一方的に向こうが私の名前を知っていてもおかしくはないか。

 

「そう、ですよね? 何処かで出会ったような気がしていたんですけど……はじめまして、ブラックプロテウスです。先輩のお名前をお伺いしても?」

 

「えっ!? えっと……ト、トキノって言いますぅ! じゃ、じゃあわたしはこれで!」

 

 慌てたようにその場を去ろうとする。トキノ先輩……うん、やっぱり初対面だろう。

 

「あっ、待ってください。折角なので併走しませんか? 走るつもりだったんですよね?」

 

「いいんですか? お邪魔にならないと良いんですけど……」

 

 先輩を呼び止めて一緒に走ろうと誘う。折角準備運動までしていたんだから、走らないで損というものだろう。それに……

 

「トゥインクルシリーズでは見たことありませんし、現役ではないんでしょうけど……先輩、とっても強いですよね? 邪魔になることなんてありえないと思うんですけど」

 

 一目見た時から、このウマ娘は強いと思えた。ドリームシリーズに出ているところも見たことがないが、このウマ娘ならどちらのシリーズでも十分やっていけるような、そんな気配がする。

 

「……買い被り過ぎですよ? あなたの言う通り、既に現役ではありませんし。でも、そうですね……折角なので、走りましょうか。芝、2400でいいですよね?」

 

「ええ、お願いします。手早く準備運動済ませちゃいますね」

 

 先輩と一緒に準備運動を済ませて、スタート位置に着く。トレセン学園での芝2400は一般的な併走メニューであり、また、模擬レース等でもよく用いられる。

 ステイヤーである私には得意とされる距離ではあるが、ちょっと短いとも言える絶妙な距離だと思う。

 

「では、いきますよ?」

 

 号砲やゲートなどはないので、トキノ先輩が持っていたコインを弾き、地面に落ちるとともに揃って駆けだす。

 私はいつも通り逃げようと、最初から飛ばしていく。トキノ先輩も逃げなのか、私と競うように走っている。

 

 スタートもかなり良い。やはりこの先輩、ただ者ではない。

 

 クラシック三冠を取っただけあって、私は私自身の実力をそれなりに評価している。過大評価ではないと思うのだが、その私に競り合える時点で現役を退いているとは到底思えない。

 今回使用する芝コースは東京レース場のレイアウトを再現したものだ。つまり、芝2400の併走というのは、東京芝左回り2400。ダービーを再現したものだと言える。

 

 トレセン学園にはいくつもコースがあるため、模擬レースで使った中山再現のコース以外にもこういったコースがあり、様々な練習が可能になっている。

 

 第1、第2コーナーにかけて長い下り。第3コーナー手前で大きく上り、その後緩やかに下った後ホームストレッチで上り……と、大体のところで上るか下るかしており、平坦な道の方が少ないというタフでハードなレイアウトなのが東京レース場の特徴だ。

 

 ウマ娘の能力が出やすいコースデザインで、最も運があるウマ娘が勝つと言われるダービーが行わる東京レース場だが、いわゆる「紛れ」は起こりにくいと言えるだろう。

 

 そんなレースを、一応私は制している。だから、このコースも苦手というわけではないのだが……

 

 距離が離れない。全力で飛ばし、ゆったりとしたコーナーでもスピードを落とさず駆け抜けていったのだが、ほぼ真横で抜きつ抜かれつを繰り返している。

 

 横目で見ると向こうも少し驚いた表情をしているので、多分同じことを思っているだろう。脚質的に、私と彼女のものは似通っている。現在は私が外側なので若干不利ではあるが、それを差し引いてもとても現役を退いたウマ娘と思えない走りだ。

 

 向こう正面に入ったところで早々に勝負を仕掛け、半バ身程前に出る。正直、カーブより前に出れないと相当厳しいと思う。

 

「……っ!!」

 

 トキノ先輩が脚に力を籠めたのを感じる。半バ身付けた差が縮まっていく。

 

 このウマ娘は、強い。ならば、本気を出すしかない。

 

 ただの併走、いや今となっては野良レースだが、それで全力を出したと知れればトレーナーさんに怒られてしまうだろう。

 

 それでも、今この隣のウマ娘に勝ちたい。間違いなく私が出会った中で五指に入るであろう強敵に勝ちたい。

 

 世界から音が、色が引いていく、いつもの感覚。まさかただの野良レースでこの状態になるとは思いもよらなかったが、出てくれたのなら丁度いい。

 

 今になっても意識しては出せないが、出てしまうと何でもできそうな全能感があって、走るのがもっと気持ちよくなる。

 

 向こう正面の坂の手前で既にスパートを切る。隣のウマ娘から驚いたような雰囲気を感じるが、それを置き去りにして前に出る。

 

 ハナを奪い去り、内側も奪い去って第3コーナーへ入る。スピードを保ったままコーナーを駆け抜けて、そのまま先頭を──

 

「まだ、まだっ!」

 

 タダで駆けさせては、貰えなかった。直線に入る手前、トキノ先輩も勝負をかけてきた。爆発的なその加速力で、私から先頭を奪い去りにかかる。

 

 これで現役を退いている? 何の冗談だろうか。スピードもパワーもスタミナも、第一線で通用すると思う。

 

 1バ身、そして半バ身と差が縮まっていくのを感じて、姿勢を低く、低くする。練習用シューズでどこまで耐えられるかわからないが、出し惜しみなんてなしだ。

 

 歯を食いしばって身体にかかる反動を無視して全ての力を加速だけに費やす。縮まっていっていた距離が、縮まらなくなり、やがて少しずつ離れていく。

 

 そのまま行けば勝てる。そう思った瞬間、世界が凍り付いた。

 

 つい後ろを振り向く。今まで併走していたウマ娘が、まるで人が変わったかのように威圧感を放ち、私だけの世界すら侵食していく。

 

 これが、このウマ娘の本気──!

 

 開き始めていた距離が、また縮まっていく。既に靴は壊れ、踏ん張りが利きづらくなってきた脚を奮い立たせ、追い付かれまいと更に地面を蹴り──

 

 そうして、ゴール数歩手前で並ばれ、抜かされそうになり、隣のウマ娘が右脚を踏み出したとき、ガクンと崩れ落ち、失速した。

 

「っ! 先輩っ!? って、あっ」

 

 失速した先輩に気を取られ、ブレーキが間に合わず外ラチに激突し、粉砕してしまう。最近はあまり起こさなかったのだが、ついにやってしまった。

 

「だ、大丈夫です。古傷が痛んだだけで……ってテウスちゃんこそ怪我はありませんか!?」

 

 少しばかりよろよろとしていた先輩がこちらの惨状に気付き駆け寄ってくる。多少右脚を気にしているようだが、骨が折れたとかそういうわけではなさそうだ。

 

「わ、私も大丈夫です。慣れてますから。ごめんなさい、熱くなり過ぎました」

 

「いえ……わたしも夢中になってしまいましたから。ふふ、現役時代を思い出してしまいました」

 

 これほど強いウマ娘ならGⅠの1つや2つ獲っていてもおかしくないと思っていたが、ケガが原因で引退したんだろう。まだ痛むのか右脚を庇うようにひょこひょこ歩いている。

 

「すみません……お怪我は大丈夫ですか?」

 

「もう完治はしてるんですよ? 長いレースには耐えきれないだけで……ふふ、そんなに気にしないでください。言っていなかったわたしも悪いんですから」

 

 少し落ち込んでいた私の頭を撫でて気にしないようにと慰めてくれる。

 

 これほど強い先輩でも、怪我に悩まされて引退してしまう。どんなに強いウマ娘で怪我をすれば、本気で走れなくなってしまう。

 

 私が怪我に悩まされることがないのは、殆ど反則技によるものだが……恵まれていることを忘れてはいけないな。

 

「それにしても……派手に壊しちゃいましたねぇ」

 

「あっ……え、えーっと……たづなさんに報告しないと……」

 

 見るも無残な姿になったラチを見て苦笑いする先輩。私はまたたづなさんに怒られるのかと頭を抱えてしまった。

 たづなさん、怒るととっても怖いからなあ……

 

「今回はわたしも悪かったですから……何とかしておきますよ」

 

「え、でも、たづなさん怒りませんか?」

 

「? だからわたしが悪いので……あっ、いえいえ、大丈夫ですよ。こう見えてもわたしは先輩ですから、それなりに伝手がありますので。わたしに全部任せてください。テウスちゃんは、整理運動して早めにあがってくださいね。来週の天皇賞に響いたら大変ですから」

 

「そうですか……? なら、お言葉に甘えます。あ、でももし怒られるようなことがあったら私の名前出して貰って構いませんので!」

 

 ぺこりと頭を下げて、整理運動を済ませる。

 

 整理運動が終わった後ちらりとコースを覗くと、壊れたラチの前でスマホを弄っているトキノ先輩がいた。見ているのに気付いたのかこちらに笑顔で手を振ってくれたので、手を振り返し、一礼してからコースを去る。

 まだ門限には少し早いが、トレーナーさんに練習用のシューズと、コースのラチを壊してしまったことを報告しないといけないからだ。

 

 それにしても──

 

「私、先輩に次走の予定なんて言ったっけ……?」

 

 まあ、きっとどこかで聞いたんだろう。秋の天皇賞に出ることは公言していたし、ニュースか何かになっていたのかもしれない。

 

 自分で自分の疑問を解決して、トレーナーさんの下へ報告しに向かうのだった。

 

 

 

 

 

『未だ菊花賞の興奮冷めやらぬ、秋の府中。京都での伝説が今、ここ東京にも輝くのか! 秋シニア三冠初戦、天皇賞(秋)! 今年の天皇賞は、正しくドリームレースの様相を呈しています!』

 

 インタビューと練習漬けの日々を送り、日曜日。私は東京レース場にいた。

 

 菊花賞から連闘にはなるが、調子は万全だ。

 

『ケガから復帰したメジロマックイーンと、同じく復帰初戦のナリタブライアンが居ます! 毎日王冠を制覇した前年の覇者、サイレンススズカが居ます! そして何より、無敗のクラシック三冠ウマ娘、ブラックプロテウスが居ます! 22万人を収容できるこの東京レース場ですが。朝一から入場制限が掛かり、レース場周辺も数えれば合計30万は下らないファンたちが、ここ府中に詰め掛けました!』

 

 今日も今日とてレース場は超満員。菊花賞の時も大勢人が来たらしいが、今日の客入りもとんでもない。

 迷子にでもなろうものなら見つけ出すのは至難の業だろうな……と思いつつ、ターフから観客席を眺める。

 

 横断幕やらなにやら、様々なものが観客席を彩っている。流石に野球とかの応援のような鳴り物は無いようだが……まあ、ウマ娘の聴力だと鳴り物を鳴らされると集中力が切れる可能性があるし、当然か。

 

 それにしても、実況の人が言う通り今年の秋の天皇賞は大物揃いだ。マックイーンさん、スズカさん、ナリタブライアン先輩、ジェニュイン先輩、マチカネタンホイザ先輩、そして、リボンマンボ先輩。

 

 GⅠ戦線で活躍したクラシックシニア入り乱れた優駿たちが、18人出揃っている。

 

「それにしても……テウスさん。本当に出てきましたのね。呆れるというか、流石というか」

 

「ふふっ、そうね。沢山走れるのは羨ましいわ」

 

 マックイーンさんとスズカさんが穏やかな雰囲気で話しかけてくる。確かに少し無茶なスケジュールではあるが、無理はしていないのだが。

 

「先輩たちと戦える最後のチャンスかもしれませんからね。どれだけ強くなったのか、本番のレースで証明します」

 

「ふん……仲が良いのは何よりだが、こちらも忘れてもらっては困るぞ。手加減はせん」

 

 先輩たちと談笑していると、ナリタブライアン先輩が話しかけてきた。

 

 ナリタブライアン先輩は今年の阪神大賞典の後、関節炎を患って長期休養していたウマ娘だ。

 

 私と同じく三冠を制したウマ娘であり、おそらく今年か来年あたりドリームシリーズに移籍するであろうと言われている、先行や差しを得意とするウマ娘だ。

 

「はい、手加減なんて不要です。全力を尽くしましょうね、先輩」

 

「やっぱり、無理を言って復帰してよかったな。こうして、楽しい勝負ができる」

 

 獰猛な笑みを浮かべて、ナリタブライアン先輩が離れていく。周りの先輩たちも、闘志を燃やしている。

 

 少し肌寒くなってきたというのに、ここだけまるで真夏になったかのように暑く感じる。

 

「凄い気迫ですね。皆さん」

 

「ええ、そうね。私も楽しくなってきたわ」

 

「テウスさんも笑っていますわよ? まったく……でも、熱くなるのもわかりますわ」

 

 勝つのは、私だ。そう言っているかのように、全員自信に満ち溢れた笑みを浮かべている。

 

 

『栄光の日曜日の主役となるのは、果たして誰なのか! 天皇賞(秋)、まもなくファンファーレです!』

 

──そして、秋シニア三冠の初戦がまもなく、始まろうとしていた。




前年度ウオッカ走らせたせいでブライアンさんが三冠だとおかしくなりますが、アニメ時空(スペちゃんデビュー済みでそこでブライアンが三冠として紹介されてる)なので気にしないでください

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