今日はジャパンカップ当日。東京レース場のパドックで自分の出番を待つ。今日の私は大外枠、パドックも一番最後の出番だ。
今日の勝負服はいつもの黒の着物だ。宝塚で着たドレスや駿大祭で着た着物でもいいとは言われたが、一番着慣れているし、同じ東京レース場で行ったダービーでもこの勝負服で出たので、験担ぎの意味でもこの勝負服にすることにした。
そんなことしたくなるくらいには、今日の出走ウマ娘たちは強敵揃いだ。今日の出走ウマ娘は全員で16名。
海外からの招待ウマ娘計9名。今年の欧州三冠ウマ娘ラムタラさんを始め、昨年のドイツ年度代表ウマ娘のランドさん、昨年のジャパンカップで一番人気、ブラジルと北米で活躍しているサンドビットさんなどなど、世界各国で活躍しているウマ娘たちが集っている。
日本から出ているウマ娘たちも負けてはいない。ナリタブライアンさんは秋天に続き出走してきているし、京都大賞典を制したけれど、秋天には出てこなかったヒシアマゾン先輩もジャパンカップに出走してきている。
ヒシアマゾン先輩は秋天に出走したかったらしいのだが、トラブルがあって出てこれなかったと聞いている。今回はその分気合も乗っているだろう。
秋天に引き続きマチカネタンホイザ先輩もいるし、宝塚で3着だったナターレノッテ先輩、京都大賞典から復帰して、ジャパンカップにも出てきたナイスネイチャ先輩もいる。
後、勿論と言ってはあれなんだけど、リボンマンボ先輩もいる。彼女は私と一番戦っている相手だ。ラムタラさんと同じくらい油断してはいけない相手だろう。
誰か一人だけ手強い、とかいう話ではない。誰も彼もが強い。GⅠだから当たり前なんだけれど、ジャパンカップは少し格が違う気がする。
国際競走というものの意味を改めて思い知った。決して油断できない相手ばかりだ。
ジャパンカップに出ると決めた時から今日まで、トレーナーさんと一緒に各ウマ娘、全員のレースを見て、それぞれの対策を考えてきたけれど、だからといって私のすること、出来ることに変化はない。最初から最後まで逃げ続けるだけだ。そこにそれぞれのウマ娘がどう動いてくるかを加味した対策は、トレーナーさんが考えてくれた。そういった意味では、このジャパンカップは二人分の力で挑むつもりだ。
秋天のようなペースで走ったら下手すると私でもバテる可能性はあるけれど、あれは大逃げのスズカさんに最初から最後まで競り合いを仕掛けた結果なので、今回はそうはならないだろう。今回逃げを主戦法にするウマ娘は私だけみたいだし、単騎逃げですんなりと逃げきれてしまう可能性も十分あるが、油断はできない。いつも通りやるべきことをやろう。
15番のリボンマンボ先輩がパドックから戻ってくるのを見て、軽く頬を叩いて気合を入れなおしてから入れ替わるようにしてパドックへ向かった。
『東京レース場、次のレースは本日のメインレース、国際招待競走GⅠ、ジャパンカップ! 今年のジャパンカップは16人での競走となります。本日は好天に恵まれ、バ場状態も絶好の良バ場発表となっております』
何事もなくパドックのお披露目も終わり、本バ場入場を済ませて後はゲート入りを待つだけ。晴天の東京レース場は少し肌寒いくらいの気温だが、走るのに気になる程ではない。というか、ウマ娘は大体寒いのには強い娘が多いので、この程度の気温であれば何ともない娘が多いだろう。
晴れ渡った空を眺めていると、見慣れない栗毛のウマ娘がこちらに近付いてきているのに気付いた。
彼女がラムタラさん。同じ栗毛でもスズカさんというよりはグラスさんに近いような栗毛のウマ娘だ。かなり背が高く、スタイルがいい。ゴルシさんと同じくらい身長がある。私は決して背が低い方ではないんだけど、それでも少し見上げる形になってしまった。
さて、何を言われるんだろうか。簡単な英語であればグラスさんに教わったので大丈夫だろうが、会話となると厳しい。それにドバイがあるアラブ首長国連邦は確かアラビア語が公用語だったはず。共通語として英語が通じると聞いた覚えはあるけれど……
「ハーイ、こんにちは、ブラックプロテウス。今日はいい天気ね、ちょっと乾燥してるけど」
「え、あ、はい。よろしくおねがいします……? 日本の11月ならこのくらいだと思いますよ? 確かドバイは蒸し暑いんでしたっけ。それにしても日本語お上手ですね?」
タイキ先輩よりもずっと流暢な日本語で話しかけられてグラスさんに簡単な挨拶を教えてもらっていたものが頭から完全に吹き飛んだ。この人日本のウマ娘だったっけ? と思うくらい日本語が上手だ。
「あはは、驚いた? 日本語を勉強していた甲斐があったわね。卒業したら日本に来ようと思って勉強してたんだけど、その反応なら問題なく暮らせそうだわ。ドバイは雨も降らないのに蒸し暑くて困るのよね」
どうやら思っていたより随分とお茶目なウマ娘だったらしい。こちらが驚いたのを見て楽しそうに笑っている。
ただ、少し気になることがある。何というかこう、彼女からは強いウマ娘から感じる覇気のようなものを感じないのだ。
勿論、レースが始まるとスイッチが切り替わるようなウマ娘も居る。セイウンスカイ先輩辺りがそのタイプだし、彼女もそのようなタイプのウマ娘なんだろうか。
私は彼女のことを深く知らないし、多少引っかかる点はあるが、それも計算なのもかもしれない。
「日本は平和でいいところよね。引退したら来ようと思っていたんだけれど、今からでも住みたくなっちゃったくらい。こっちに引っ越してきたときはよろしくね」
そう言って和やかに去っていく。最初から最後まで、レースのことは口にしなかった。少しモヤモヤしたものを感じながら、もう一度空を眺めて、ふと思い至る。
もしかすると彼女は既に、燃え尽きてしまっているのではないかと。
2戦目でクラシックの頂点に立ち、3戦目で世代の頂点に立ち、4戦目で世界の頂点に立ったウマ娘。そこに至るまでにそれなりの事情はあっただろう。ただ、それでも彼女は頂点に立った。すでに引退のことを口にするくらいには、それ以上の目標を見出せないくらいの頂に、彼女は立っている。
彼女はそんな気持ちで走るようなウマ娘じゃない。そう理性では判断しながらも、私の心の奥の方で、ふつふつと何かがわいてくるのを感じていた。
『世界のウマ娘が栄光を求め、ジャパンカップの府中に集う! 日本勢は対抗できるのか!』
レース場にファンファーレが鳴る。私の中にわいてくる何かを押し込めながら、自分が入るゲートへ向かった。
日本の東京、そこにある、ファンファーレが鳴り響くレース場で、この私、ラムタラにあてがわれた、4枠7番のゲート。入った後にふと、ここに至るまでの経緯を思い出してしまった。
デビューした後練習中に酷い捻挫をしてしまって、母の故郷のドバイで暫く療養しているうちに、その時担当していたトレーナーとサブトレーナーが諍いを起こした末に、トレーナーがサブトレーナーに銃で撃たれてしまう、なんて事件が起こった。
その事件の影響で元々いたイギリスのトレセンから、ドバイのトレセンに転校した。
そしてその後突如肺を患ってしまい、昔から少し身体が弱かったせいか、それとも色々起こって精神的に弱っていたせいか、生死の境を彷徨ったこともある。
幸運にも一命は取り留めたし、捻挫による影響もほぼなかった。そんな私を『神に愛されたウマ娘』だなんて言う人もいたけれど、どんな皮肉なんだと思う。
本当に神に愛されているなら、こんな波乱万丈な生き方はしなくても良かったと思う。クラシック初戦だって本当は出たかったし、怪我も病気ももうコリゴリだ。
どんな神話でも神に愛されたものにはそれなりの試練があるものだけれど、自分の身に降りかかるのは勘弁してほしい。
それでも、前のトレーナーが夢だと言っていたダービーを制した。その後はアイリッシュダービーに出るつもりだったが、またしても捻挫してしまって回避することになって、KGVI&QESに出ることにして、そして勝った。
その後も、脚の不安は消えなかったが何とか調整を済ませ、凱旋門にも出て、勝った。ブリーダーズカップに出るプランもあったけれど、やっぱり脚の不安があって、間隔も短かったから回避した。
無敗で欧州3大レースを制したウマ娘は居ない。凄いことだと周りは言ったけれど、実感は湧かなかった。
『ああ、もう私が出るレースはないんだな』と、そんなことを漠然と思っていたから、このジャパンカップに出るつもりも、本当はなかった。
『──各ウマ娘、ゲートイン完了。スタートしました』
ゲートが開いたのでひとまず飛び出す。今日は少し前めにつけてみようかと思ったものの、先行勢が結構多かったので無理に競り合わずに、少し後ろで様子を見ながらも、余計な考えは止まらない。
このジャパンカップに出てみようと思ったのは、今のトレーナーが招待状を持ってきたから。
『今の日本には君と同じ、無敗の三冠ウマ娘が居る』
そう聞いて、少しだけ興味が湧いて、引退を一時取りやめて日本に来てみた。
その日本のウマ娘、ブラックプロテウスの戦績を見て真っ先に思い至ったのは、何て頑丈な、そして幸運なウマ娘なんだろう。そんな言葉だった。
きっと彼女は、私とは違って、皮肉でもなんでもなく神に愛されているんだと、そう思えるウマ娘だった。
羨ましいだとか、そんな気持ちは湧かなかったけれど。最後に一度くらい、彼女とレースに出てみてもいいかなと、そんな思いで、私はこのレース場に立って、そして今レースに出ていた。
そんな彼女は遥か前方。まだ16の標識を過ぎたところなのに、大分離れてしまった。大逃げするウマ娘だと聞いてはいたけれど、東京2400では差しで走ったと聞いていたから、少し驚いた。何やら接触のアクシデントがあったと聞いていたが、結果一着であったので深く気にしていなかったが、戦法はやはり大逃げなのか。
今までこんなハイペースで逃げるウマ娘となんて戦ったことはない。どこから仕掛けていけばいいか全くわからない相手だが、今まで通りでいいだろう。仕掛けるとしたら、最後の直線あたりか。このレース場の直線は長い。
中団くらいからであれば、十分届く。外から少しずつ順位を上げながら、14の標識、12の標識を過ぎたあたりで5番手辺りに付けて、機を窺いに行こうとするが、今まで通りだと前に出辛いことに気付く。
イギリスやフランスの芝と、日本の芝では全然違う。多分これはスピードタイプの芝だ。私の2400のタイムは大体2分31秒とか32秒だけれど、多分この芝だとそんなタイムだとタイムオーバーになる。
根本的に私の脚にこの芝は合わないと感じたが、出てしまった以上は『It’s too late.』 日本語で言えば後の祭りというものだ。まあ、少し早めに行けばいいだろう。
10の標識を過ぎたあたりで更に少しずつスピードを上げる。こういうスピードレースはあまりしたことがないからこのペース配分でいいのかわからないが、前を行くブラックプロテウスの背は遠い。
ブラックプロテウスはスタミナ自慢のウマ娘だと聞いているから、スタミナ切れには期待できないだろう。というか、そんなスタミナ自慢なら多分イギリスやフランスの芝の方が得意なんじゃなかろうかとも思う。あの芝は私含め、スタミナ自慢のウマ娘の方が得意とする芝だと思うから。
『最後の直線に入って先頭は変わらずブラックプロテウス、だが後続も追いすがる! 外からラムタラ! 驚異的な末脚! これが欧州三冠ウマ娘の切れ味だ! このまま差し切ってしまうのか!?』
そのまま外から仕掛けて、一人、また一人と抜いていき、ブラックプロテウスの背中が見えた。3バ身、2バ身と迫ったところで、ブラックプロテウスがちらりとこちらを見た。
逃げウマ娘はどの程度後ろが迫っているかを確かめるために時折こうして振り向く。そうしているうちに抜き去ってしまうのが、いつものことといえばいつものことだ。
何も変わらない。イギリスでも、フランスでも、日本でも。『恵まれて勝利を手にした』と言われてしまうくらいに。今回も勝ってしまうのだろうか。
そう思って、彼女を抜いたと思った、その瞬間。私は彼女の背中を、見つめていた。
「……
スパートを掛けている筈の私から、彼女の背中が少しずつ離れていく。スタミナは問題ない。脚だっていつも通りに動いている! それなのに、逃げウマ娘の彼女を、追い越せない──!!
あまりの出来事に、周りから音や色が消えたような感覚に陥る。仕掛け所も間違えていないはずなのに、どうして届かないのか。今まで自分が築いてきたものが、失われていくような感覚を覚える。
『だが、だが! それでもこのウマ娘を打ち崩せない! 鋼鉄の牙城が神の見えざる力を跳ねのけた! 逃げウマ娘とは思えないこの末脚! ブラックプロテウスだ! ラムタラに追い越されるかと思ったその瞬間、まるで二段ブースターかのごとき末脚で逃げ切って見せました、日本が誇るスーパーウマ娘ブラックプロテウス。ついに伝説に並び立ちました!
大歓声が巻き起こる。レース場を見渡せば、私の凱旋門の時より、観客が居るような気がする。
いや、もしかしたら、凱旋門の時よりは少ないのかもしれない。私は、周りの事なんて、見えていなかったのだから。わかるわけがない。
彼女から少し遅れてゴールして、空を見上げる。
負けて当然だ。だって私は今日、レースをしに来ていなかったのだから。私はただ、ジャパンカップに出ただけだった。
いつからだろうか、このレースで走りたいではなく、このレースに出てみようかと思っていたのは。
分からない。いつから私は走っていなかったんだろう?
「ラムタラさん」
空を見上げていた私を、優しくて、そして厳しい声が呼ぶ。
目の前に居るのは黒い髪に黒い着物。その名の通り、黒で身の回りのものをほとんど固めたウマ娘。その耳の白いカバーの薄い桜模様がまた映えて、美しく、強いウマ娘。
ただ、その表情は厳しかった。勝った後なのに、それを喜ぶでもなく、ただ私を睨みつけている。
「日本のレースはどうでしたか? 海外の芝とは違って走り辛かったですか? それとも、貴女が本気で走るのには値しないレースでしたか?」
その言葉に、私は言葉を返せなかった。何を返したって、言い訳にしかならない。
そんな私の態度に、彼女はさらに一歩近寄ってきた。一対の瞳が、私をただじっと見上げている。
「私は貴女と走るのが楽しみでした。貴女とレースで競い合うのが、楽しみで仕方ありませんでした。貴女は、私とレースをしてくれましたか?」
少し悲しそうに私に問いかけ、返事を待たずに踵を返して、彼女は歩いて行ってしまった。
ウイナーズサークルでのパフォーマンスを終えて、表彰やら何やらを貰った後に控室に戻った。
今まで走ってきたレースで一番モヤモヤしたものが抜けない、そんなレースだった。京成杯の時よりももっとモヤモヤしていて、表彰などの際に上手く笑えていたかどうかわからない。
「おめでとうございますっ! テウスさんっ! これで後は有馬記念で勝てば秋シニア三冠ですね!」
そんなモヤモヤを吹き飛ばすかのような明るいお祭り娘が、控室の扉をぶち破ってきた。いや、ウマ娘用に設えた控室のドアだから、多分壊れてはいないだろうけど、そんな勢いで飛び込んできたのは確かだ……大丈夫だよね?
「キ、キタちゃん。ありがとう……えっと、他の皆は?」
「すぐに来ますよ! それにしても凄かったです! テイオーさんのジャパンカップと同じくらい凄かったです!」
随分な高評価を頂いた。いつも以上の走りができたとは思ったけれど、彼女が尊敬……いや、崇拝するテイオーさんと同じくらいには凄かったと認めてくれるくらいには上手く走れたらしい。
「おめでとっさんテっちゃん! ほーらお祝いの鯉だぞ」
次に楽屋に乗り込んできたのはゴルシさんだった。最近ゴルシさんは私のことをテっちゃんと呼び始めた。その前はブラっちゃんだったが色々被るからという理由で最近はテっちゃん呼びだ。飽きたらきっとまた別の名前で呼ばれるだろう。
「あ、ありがとうございます……後で食堂で捌いてもらいますね」
一先ずゴルシさんが用意してくれた氷がたくさん入ったクーラーボックスに入れておいた。後で私やスペさんやライスさんの胃袋に消えることになるだろう……何だかいま動いたような。まさかまだ生きてるとかそんなことないよね? 鯉にしては大きいような気もするし……90cmくらいはあるだろうか?
そうしているうちに、スピカの先輩が皆控室に集まってきた。ちなみにトレーナーさんは居ない。この後ライブ衣装に着替える必要があるから控室に入るわけにはいかないしと先に会場で待っていることにしたらしい。
「それにしても今日のテウスちゃん、ちょっと怖かった~。なんか宝塚記念の時のグラスちゃんみたいで」
「ええ……? すこしモヤモヤしながら走ったのは確かですけど……というかスペさんグラスさんに何したんですか?」
あの穏やかなグラスさんが怒るなんて考えられない。私といるときはいつも優しくて、お茶を淹れてくれたり一緒に素振りしたり、駿大祭の時には弓の練習に付き合ってくれたりと凄い優しい先輩なのだけれど……
「あはは~……語るのはちょっと恥ずかしいというか情けないというか」
苦笑いで誤魔化されてしまった。まあ、深くは聞くまい。どんな穏やかな相手でも、怒らせてしまうことはあるものだ。もし私がグラスさんを怒らせてしまったら素直に謝ろう。
「テウスちゃん、そろそろ着替えないと……脚とかは大丈夫? トレーナーさんから、もしテウスちゃんがアイシングとかが必要だったらって色々貰ってきたんだけど……」
スズカさんが大きめのバッグからいろいろ取り出そうとしてくれるが、大丈夫だと断ってから着替え始める。正直、今日は秋天の時よりは消耗していない。
彼女が本気でレースに打ち込んでいれば必要だったものだろうけれど……今回は必要なかった。
私が彼女の本気を引き出せなかったのか、それとも別の何かなのかはわからないけれど……
「おうこらテっちゃん、なにこえー顔してんだ。これからライブだろ? ほら笑顔笑顔。マックちゃん、お手本見せてやれ!」
「いきなりなんですの……ほら、こんな感じで」
ゴルシさんの無茶ぶりに呆れつつも緊張を解そうとマックイーンさんが微笑んでくれる。周りではテイオーさんとか、車いすに乗ったライスさんとか、その車いすを押しているダイヤちゃんとか、クーラーボックスから飛び出してピチピチ跳ね回っている鯉を何とか捕まえようと悪戦苦闘しているスカーレットさんとウオッカさんを眺めて、モヤモヤしているものが晴れていくのを感じる。
いい仲間たちに恵まれたな。口に出して言うと恥ずかしいからあまり言わないけれど、感謝してもしきれない。
「何だこの鯉!? いきなり水噴き出して……うおあぁぁっ!!」
「ウオッカァァァァ!!? 何なのよコイツ!?」
「やっべえハイド○ポンプ使いやがった! マックちゃん捕まえるの手伝ってくれ!」
「なんなんですのー!!!? 」
「ワケワカンナイヨー!」
どんどん水浸しになっていく控室を横目にさっと着替えて、勝負服を抱えてライスさんの車いすを押しながら控室から飛び出す。
うん、やっぱりとんでもない仲間だ。感謝しているけれど。気を抜いたら次の瞬間何が起こるかわからない怖さがある。
危険を察知したのか既に外に出ていたスペさん、スズカさん、キタちゃん、ダイヤちゃんの4人に、ライスさんを託してライブ会場へ向かう。事態の収拾はまあ……何とかなるだろう。最終的にたづなさんが来て何とかしてくれると思う。
でも、あそこ私の控室だし、また反省文書かされることになるのかな。勘弁してくれないかなぁ……?
控室に入った時とはまた違うモヤモヤを抱えながら、ウイニングライブに向かうのだった。
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