無慙無愧が巡る怒りの日   作:ヘルシーテツオ

11 / 26
第八章『ただ愛しいあなたのために』

 再開された凶獣二匹による喰らい合いは、予想に反して一方的な様相を示していた。

 

 フレデリカの持つ死鎌(デスサイズ)

 惑星規模の命を狩った殺人姫の凶器。単純な数で問うのなら、完全に圧倒しているといっていい。

 数が絶対ではない。しかし無意味であるわけもない。事実、死鎌を振るうフレデリカの我力は段違いの跳ね上がりを見せている。

 紛れもなく、これこそが今のフレデリカに出せる全身全霊。殺人姫の純なる殺意、虚ろなる刃は人間にとっての恐怖以外の何物でもない。

 

「Und rühre mich nicht an――Und rühre mich nicht an!」

 

 されどそれすらも、今のシュライバーの影を踏むことすら出来ない。

 絶対回避の理。理性の皮を脱ぎ捨てた最速の魔狼は、殺意の刃の悉くを躱してしまう。

 それが意味するところは一つ。フレデリカの殺したいという想いよりも、シュライバーの触れられたくないという想いが勝っているということ。

 無意味な取り繕いなど、もはやする必要はないのだから。私に触るな、私に触るなと、唯一無二の狂念(イノリ)のみが今のシュライバーを支配している。

 

 思い切り殴り蹴り、獣の如く噛み砕く。

 超常の殺人術などではない、まさしくそれは原初の獣。

 史上、最も古い闘争の姿だろう。そして相手の破壊に費やされた肉体箇所は、己の速度によって砕けてしまう。

 まるで禊の如く。他人と触れた箇所は棄て去らずにはいられないと、そんな心象が現れているように。今のシュライバーは自壊を一切意に介さない。

 

 そして壊し合った両者は、次の瞬間には再生を果たしていた。

 フレデリカは戒律によって、シュライバーはエイヴィヒカイトに貯蔵した魂によって。

 まさしく彼と彼女は不死身の獣。殺されながらも、二匹は殺し合う凶手を決して止めない。

 その殺意に歯止めが掛かった時こそ、狂する鬼としての敗北だと悟っている。人外の怪物同士による共食いは、故に人間へと戻ってしまえば崩れ落ちるのだ。

 

 その上で、一方的な蹂躙を続けるのがシュライバー。

 相手の再生と己の自壊。二つの速度を、最速の渇望は凌駕している。

 細胞が壊れた事実を認識するよりも先に、万を超す打撃を叩き込む。述べてもおかしさしか無い暴論だったが、彼という世界の法則はそれを実現させるのだ。

 それはフレデリカが再生を果たすよりも速く、更なる破壊を彼女に与えていた。傍から見れば透けて通ったと勘違いするほどの再生速度、それすらシュライバーの攻撃回転は上回っているのだ。

 よってフレデリカは何もできない。せっかく出した死鎌も振るう機会を得られず、棒立ち同然の状態で、ただ己の不死身を崩すまいと注力するしか術がなかった。

 

 シュライバーの殺意は、それを壊さんとしている。

 急所を探す、なんて手段はもう取らない。隙が無いなら、無理にでも抉じ開けるだけ。

 触るな汚らわしい寄るな止めろ触れるんじゃない。薄汚い汚濁の総て、この暴嵐で消し飛ばしてやる。

 煮えたぎるような悪意を叩きつけて、相手の心を砕きにかかる。それは単純だが効果的な、精神に対する暴力だった。

 

 人が他人に悪意を向けること。

 面と向き合った者同士が、この相手を排斥したいと害意を向ける。それは立派な攻撃である。

 直接の暴力に至らなくても、悪意を向けられるだけで人の心は疲弊する。度が過ぎれば意志の支柱をへし折って、相手を再起不能に追い込むことも可能である。

 まして人類総てを殺し尽くしたいと望んでやまない凶獣の悪意ならば、常人の精神は向けられただけで粉微塵に砕け散るだろう。

 

 そして何も出来ない状態というのも、精神への疲弊を増長させる要因であった。

 再生が追い付かず、壊され続けるしかない現状。何かをする事が許されない蹂躙の中では、己自身すら見失ってしまう。

 そうして信念の意味を忘れてしまえば、もはや戒律だとて関係ない。フレデリカという個我は元の形を忘却して消え尽きるだろう。

 

 ウォルフガング・シュライバーこそ、黒円卓最強。

 最恐最速の魔狼を止められる者はいない。過ぎた跡の轍だけが許される名残だから。

 

「舞って、巡れよ、無垢なる祈り……立って、奮えよ、善なる子たち……それが誓いの聖なる戒律、私たちの真我(アヴェスター)……」

 

 そんな蹂躙の中で、フレデリカが諳んじていたのは、無意識に刻まれた聖歌だった。

 聞く者がいない歌。もはや意義を失って、この世界では意味が通じることもないだろう、無価値な調べ。

 事実、シュライバーには何の影響も与えていない。音の速さなど周回遅れにして引き千切る今の彼には、そんな雑音は耳に届くことすらなかった。

 

 それでも、フレデリカは諳んじている。

 もはや思考さえも覚束ない破壊の最中、知性を働かせる脳髄が無事で済んでいる時間など一秒だってありはしない。

 ならば、その歌が刻まれているのは肉体の器ではなく、魂そのものに。呪詛にも等しい原初の鼓動、母の心音よりも聞いていた調べ。

 

 即ち、意識(イド)を超えた先の無意識(エス)の領域。

 フレデリカが“無”に近づけば、それは表に現れるのだろう。不死身であり、消えても死なない彼女だからこそ起きた現象。

 魂が還るべき原初の揺りかごで、フレデリカは自己の内へと埋没していった。

 

 

 

 

 母はわたしのことを愛している。かつてフレデリカはそう信じていた。

 空虚な心が口にした取るに足らない戯れ言。しかし紛れもなく本心からの言葉でもある。

 

 母はわたしに殺意を教えてくれた。

 その上、死んだ後でも食べやすくバラバラになって、わたしのことを育ててくれたんだと。

 野ざらしのまま屍体を放置したのも、彼女なりの感謝の現れ。わたしたちは互いを想い合う愛に満ちた親子だった。

 

 論ずるまでもない。聞くに堪えない狂論だ。

 全てが都合の良い自己解釈。(クイン)が娘をどう思っていたかなど、腹にいる胎児の段階で殺害を試みた時点で明らかだろう。

 自己愛という魔女の指摘は正鵠を射ている。他人を愛し、愛されることの本質が、外れた怪物であるフレデリカには理解できない。

 

 娘を殺そうとした母。しかし彼女を責めるのは酷というもの。

 二元論の宇宙において、黒と白とに分かれれば親子といえど殺し合うのが運命(さだめ)

 ましてフレデリカは生まれながらの殺人鬼。これでも愛せというのは、常人には些か以上に荷が重すぎる。

 

 彼女は天の理に物申せる器ではなかった。

 むしろそんな、天に連なる者たちの思惑に翻弄された犠牲者だと言える。

 彼女は善良で、強い芯を持ち楚々とした女性だったが、やはりそれでも人間だった。同族喰らいの鬼子までも抱擁できる愛など持ち合わせるわけもなかったのだ。

 

 フレデリカは、愛に餓えた子供である。

 母から与えられなかった愛。まるで欠けたものを埋めるように、フレデリカはそれを求めてきた。

 向けられた殺意を愛だと思った。他の人間の親子の営みに愛を見た。親とは子を育て守り、慈しむものだと。

 だからこそ殺人鬼なりの解釈で、同胞たちを慈しもうと思った。その過程が壮絶な振るい分けとなったのも、ひとえに殺意を愛だと信じるが故に。

 愛に呪われ、ずっとそれだけを探してきた。それがどんな形をしているのか知りもせず、まるで無明の中を手探りで探すように。拾い上げたものを、これが愛だと判別する手段も持たないまま。

 

 いったい誰ならば、フレデリカを愛することが出来たのだろう。

 母には無理だった。では父ならば?

 可能性はある。とある事情から、彼は自己の何たるかを見失っていたが、その本質は天地に類を見ない慈愛の化身。

 世界の色さえ塗り替える父性の愛。まさしく人間を凌駕した域にある彼の愛ならば、たとえ殺人鬼といえども血を分けた娘を見捨てず、向き合って彼の愛を説いていただろうか。

 

 しかしそんな仮定も、やはり意味のないものなのだろう。

 父は娘を救わなかった。その存在を認知せず、無いものとして娘のことを見限った。

 たとえ本来の愛を奪われて、不明の中を彷徨っていたからだとしても、ならば過去が帳消しになるなんて道理もあるまい。

 少なくとも、見限られた側からすれば。フレデリカにとって、父など顔も名前も知らないどうでもいい存在に過ぎない。

 

 空虚な心に真実と呼べるものはない。

 よって彼女は愛を得られず、自身から生じた自己愛で慰めるより術がない。

 そう、かつては確かにそうだった。その程度の浅い底のままだったなら、その不死身は凶剣によって容易く斬殺されていただろう。

 だがそうはならなかった。図らずもそんな凶剣の鋭さが、彼女の虚ろな魂に変革をもたらしたから。

 

 マグサリオン様。

 あなたこそ真実。わたしにとっての唯一無二。

 わたしはあの御方に恋をした。誰よりも美々しく、絢爛で、凄絶なあの殺意に。

 わたしはあなたを殺して、あなたの手で殺されたい。殺人鬼として抱いたこの想いを、至上の幸福だと疑わない。

 あなたは殺意でしか他人とは触れ合えない。ああ、なんて素敵な運命でしょう。結ばれた赤い糸を感じずにはいられません。

 妻と夫が抱き合うように、互いの刃を交わらせたい。親が子を慈しむように、鮮血の色彩に沈めてさしあげたい。

 あなたの存在こそ、わたしの全て。死ぬことなんてちっとも怖くない。ただこの恋が実らない、そんな未来だけが怖かった。

 もう虚ろな夢は見ない。本物の情熱がどういうものか、知ってしまった今となっては取るに足らないとしか思えない。

 この気持ちに燃えている限り、わたしは無敵。恋する乙女は最強なんだと、砂糖菓子のような甘い言葉だって信じられた。

 

 フレデリカの恋は成就した。

 あの御方の刃に刺し貫かれて、その胸の中で死ねたこと。

 その結末こそ唯一無二の一〇〇〇点満点。溢れんばかりの幸福に満ちた最期だったと今でも思っている。

 

「それでしたら、こうして今ここにいるわたしは、いったいどうするべきなんでしょうか?」

 

 また会えること。それは普通に嬉しい。

 結末に未練はないが、それはそれとして機会があるなら逢瀬を重ねたいと願うのも、乙女の本心。

 心というものは複雑怪奇で、特に女の心は男のそれを上回る難解さだ。

 愛しい彼の勝利を願って退場した。けれどいざ、その機会を与えられれば求めてしまうのも、彼女が持つ真実の一側面なのだろう。

 

 ああだけど、それだけではつまらない。

 せっかくならば褒めてほしい。あの方が知っている以上のもので驚かせてみたいと思う。

 矛盾しているようだが、言ったように乙女心は複雑怪奇だ。ある側面の願いだけを切り取っても全体像は見えてこない。

 恋する心とは求める気持ち。他の一切なんて目もくれず、全てを懸けて臨んだフレデリカは乙女として完璧だった。

 

 

 ――――では、その先にあるべき“愛”とは?

 

 

 今の自分が対峙する白い凶獣。

 凶気の咆哮を轟かせ、総てを滅ぼさんとするその殺意。

 百万回再生するなら、百億回でも殺してみせると。理性のブレーキを無くした凶念は天井知らずの跳ね上がりを続けている。

 

 あたかもそれは、過日の凶戦士のようで。

 初めての邂逅、名乗りさえも許されなかった激しい逢瀬。

 総身に駆け抜けた衝撃を覚えている。度し難く理解不能な、愚かの極みに見えて、故に凄絶。

 殺人姫の空虚な胸に真実の想いが宿った奇跡の瞬間。思い出は色褪せることなく残っている。

 

 だからこそ、フレデリカは確信する。

 凶念の禍々しさに通じるところはあれど、凶獣と凶戦士は違う。

 仮にもし、過日に逢ったのがこの子だったとしても、自分はときめかなかった。

 まず乙女の直感により、フレデリカはそう断定した。理屈なんてどうでもよく、結論としてはそれだけでも十分すぎる。

 

 その上で、フレデリカはあえて思考を進める。

 言ったように彼女自身は理屈なんてどうでもいい。無粋だと思うし正直に言えば苦手である。

 だけどそこを指されて、単なる都合の良い妄言のように片づけられるのは、どうしても癪に触る。

 それに、そういった面倒事にも真摯に取り組んできたのがあの方だから。それを倣うのだと思えば、むしろ嬉しくなるというもの。

 

 凶獣と、凶戦士。

 どちらも世にとっての凶の存在。殺すためだけに駆動する排撃の権化。

 余人にも分かる形として、両者の明確な違いは何処にあるだろう。

 たとえば殺害する相手への理解。凶獣は殺した後の轍として見つめて、凶戦士は不変と定めた理解の上で殺している。

 要するに後か先かという話。その一点だけ取り出しても、なるほど両者の姿勢には明確な違いがある。

 しかしフレデリカが出逢った当初、凶戦士の姿勢はそのようには定まっていなかった。

 当人自身が八つ当たりだと自覚していた所業。振り下ろすべき矛先を見失い、慚愧と共に振るっていたのがあの頃の凶剣だ。

 理解なんて考慮せず、ただただ抹殺のために振るわれた剣。フレデリカに熱を灯したのがそれならば、彼女の主観において理解の有無はさして重要ではない。

 

 では単純に、祈りの質や強度といった話だろうか。

 他人からの接触を忌諱する凶獣。その根本にあるのは逃避の思い。

 彼にとってあらゆる他人は汚濁である。故に忌み嫌い、その嫌悪を無くすために殺して回っている。

 凶戦士の殺意と比較すれば、後ろ向きで卑屈だと言えるだろう。どちらに感じ入るものがあるかと問えば、凶戦士の方に軍配があがると予想できる。

 しかし同様に、祈りの理由が強さを左右しないのもこの宇宙の真理。如何に卑賤な祈りだろうと、それが頭抜けた強度を有しているなら、渇望は世界を塗り潰す。

 悲惨ではあれどありきたりで、だからこそ不純がないのが凶獣の祈り。凶戦士と比較しても、決して一概に劣っているとは言い切れまい。

 それにそもそも、そんな狂人ばかりが得をする道理など、凶戦士自身が駄目だとこき下ろしている。そこを根拠に指すようでは、フレデリカの恋心もただの妄執の誹りを免れまい。

 

 だからもしも、両者の間に決定的な違いをあげるとすれば、それは自覚の有無。

 凶戦士は分かっていた。己の行く道が誉れも救いもない冥府魔道であると。

 誰からも理解されず、安息も存在しない。世界にとっては己こそ悪だと知りつつ、為すべきを躊躇わない決意と覚悟。

 渇望に振り切れただけの狂人や、空虚な殺人鬼には決して持てない。森羅万象と向き合っても揺るがない不変の意志力が、自分の殻を打ち壊してくれたのだと。

 

 わたしが恋した勇者様。

 あなたを想うこの気持ちが、わたしの誇り。

 そんなあなたに釣り合えるわたしになりたい。わたしは、このままのわたしで在ることに我慢がならないのです。

 もっともっと構ってほしい。わたしだけを見てほしい。あなたが唯一理解できなかったものとして、永遠にあなたの心を掴んでいたいと願うから。

 

 乙女は恋を知り、成就を経て愛へと至る。

 自身の本懐を完全に理解したフレデリカ。満たされる情熱が彼女に変革をもたらしていった。

 

 

 

 

 殺意に狂い哭く暴風疾走の最中、シュライバーは異変に気付いた。

 

 凶獣の猛攻に停滞はない。

 相手が死ぬまで、その攻撃は止まない。選択肢が思い浮かぶことすらないだろう。

 死鎌の刃はこちらを捉えず、一方的な蹂躙が続いている。状況は何一つとして変わっていない。

 

 壊れた思考では、まともに理解することなど出来ない。

 しかしそれでも、ウォルフガング・シュライバーは生粋の狩人である。たとえ狂乱の坩堝にある今だとて、殺戮に関する事柄は決して取りこぼさない。

 感じたものは手応えの変化。無論、肉を穿ち骨を砕く感触はその手にある。特筆すべき異能は再生のみだと、そこは間違いなく断言できる。

 変わったのは特異な超感覚がもたらす実感。数多の命を喰らったマンイーターとして、標的の致命にどれだけ近づいているかを判断する直感である。

 寸前までは確かに近づいていると感じていたものが、ここにきて一気に遠のいたような。既に破綻しているシュライバーの理性にも、それは困惑として表れる。

 

 直感したことは、現実の事態としても現れ始めた。

 フレデリカが壊れない。一身に総ての殺意を受け止めるのは相変わらずで、しかしその身が一向に削れない。

 不壊の身体となったわけではない。彼女は今も凶獣の手で壊されている。しかし異次元すぎる再生が、その事実を認識する前に元の形へと戻してしまっているのだ。

 まるで蜃気楼。霞でも殴っているような感覚。生じる血飛沫だけが、シュライバーの凶手の成果を証明していた。

 

「憐れな子。そんなになるまで、あなたは愛してほしいと叫んでいたのですね」

 

 変わらない姿で、フレデリカは微笑んだ。

 受ける痛みは消えていない。その身は暴嵐の蹂躙に曝されながら、それでも彼女は端然とした微笑を崩さない。

 与えるべきものを与えるために。苦痛などものともしない感情が、乙女の総身には溢れていたから。

 

「壊れ果てたその様が、あなたの願いの切実さを示しています」

 

 目の前にある同胞を見る。

 その有り様を不憫だと思う。孤独に取り残された魂は永遠に報われない。

 救いたいし、慈しんであげたい。それは即ち、愛さなければならないということ。

 

「だからこそ、それほど切実に愛を求めたあなたには問わなければなりません。

 あなたを包んだその居場所は、あなたが求めた祈りに対し、本当に相応しいと言えるのでしょうか?

 万象一切区別なく、全部の価値が横並び。天から見下ろしているだけの愛が、あなたが望んだものだと?

 その愛はきっと、慈しみを与えてはくれません。それはあなたの願いとは真逆ではありませんか?」

 

「黙れええええええぇぇェェッ!!」

 

 まるで未知なる何かに怯えたように、唸る殺意を迸らせたシュライバーが乙女の口を引き裂く。

 とうの昔に絶壊しているシュライバー。今さら何が正しくて何が間違っているかなんて分からない。

 だからこそ、彼は黄金以外の法を認めない。そんな疑念を少しでも混ぜれば、彼の狂信(イノリ)まで脆く砕けてしまうから。

 

「わたしは負けない。わたしは不死身だ。二度と誰にも奪わせない!

 ハイドリヒ卿に壊された最初の爪牙。永遠の修羅道を行く、あの人の白騎士(アルベド)

 僕は無敵の英雄なんだ!お前らなんかと一緒にするなああああアアァァァァッ!!」

 

 吼えるように謳いあげるのは、忠義であり信仰そのもの。

 黒円卓の十二位。三騎士の席を担う大隊長。並ぶ者なき絶対速度の不死英雄(エインフェリア)

 そのアイデンティティーこそがシュライバーを確立させている。壊れた精神は別の価値基準に縋ることでしか、自己というものを定めることが出来ないのだ。

 見ず、聞かず、何もかも省みずに。栄えある獣の牙として、狂奔のままにシュライバーは駆け抜け続ける。

 

「ええ、そうですね。確かにあなたの気持ちも分かります。

 そんな愛し方くらいでしか、殺人鬼(わたしたち)を愛せる者はいないのですから。

 ようやくあなたを包んでくれた、その抱擁。他にはもう何も要らないと、自分を閉ざしてしまうのも無理からぬことでしょう」

 

 殺人鬼とは、孤独である。

 同じ人でありながら、人を殺す。明確な理由もなく、ただそういう性だから。

 誰に受け入れることが出来るだろう。ある日、唐突に殺しに掛かってくるかもしれない者と席を並べることは出来ない。

 たとえ神であろうと、それは同じ。神だとて、人なのだから。如何に慈愛の女神でも、ありのままに彼らの性を愛したりはしないだろう。

 慈悲によって彼らを人の輪の中に引き戻したとしても、それは同時に殺人鬼たる彼らの否定である。生まれながらにそう在る者にとっては、もはや己を消されるのと変わらない。

 人類という種にとっての異分子。いつの時代の世であっても、外れた存在が真に受け入れられることはない。

 

 どうして、彼らのような存在が生まれるのか。

 どんなに環境が平穏で満たされていたとしても、突然変異はいつだって生まれてくる。

 純白の色に全が一つに染まった悲想天の楽園であっても、異端者は発生したのだ。ならばもう、それは変えようにも変えられない人類の根本的な性質なのだろう。

 人間は多様性の動物だ。善悪なんて所詮は総て後付け、誕生の瞬間より色分けされる二元論など、本来の宇宙にはあり得ない。

 だからこそ、これに理由なんて無いのだ。それもまた一つの可能性として、無数の人の枝葉の一端として殺人鬼たちは存在している。

 

 世界が光で満ちていようとも、外れる者は出てきてしまう。

 人が怪物の皮を被っているのではなく、怪物が人の皮を被っている。

 神様にも愛されない奇形児たち。祝福を受け損ねた虚ろな魂は、その空白を埋めながら彷徨い歩くしか道はない。

 

「まあ、別に被害者ぶるつもりもないのですけどね。

 殺人鬼(わたしたち)が殺しを愉しんでいるのは否定しようがありませんし、今さら悔い改めようとも思いません。

 息を吸うなと言われて、それが正義だからと納得しては、あまりに生まれてきた甲斐がないでしょう」

 

 人々にとって、殺人鬼とは脅威であり、許されざる悪である。

 まずそれが大前提。捕食者の心理など、被捕食者が慮ってやる道理もあるまい。

 まるで憐れな犠牲者のように殺人鬼を扱った言い分など、大多数の者には納得してもらえまい。

 殺人鬼とは忌むべきもの。至極真っ当な理屈であり、そこはフレデリカ自身も納得している。

 

「けれども、ええ。そんな殺人鬼たちのありのままを慈しみ、愛することが出来る者が、この広い宇宙にひとりくらいはいてもいい。

 わたしはそう思いますし、そういうものになってみようと決めました」

 

 怪物だと言われたこと。

 わたしたちは罪深い魂で、地獄の業火に焼かれることを望まれている。

 天に座します神様も、きっと同じような判決をくだすのだろう。怪物は誰からも愛されない。

 

 だからこそ、愛されない孤独な魂たちを、殺人姫は慈しもう。

 外れた者を理解し、その傍に寄り添うことが出来るのは、同じく外れた者だけだから。

 だからわたしがそれを為す。母が子を愛するように、虚ろな鬼たちをこの手の中に抱き締めよう。

 この胸に灯った熱にかけて。この宇宙がどんな色をしていても、不変として定めた慈愛の在り方だった。

 

「オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛――――!!!!」

 

 そんな言葉をかき消そうと、更なる狂騒を発露させるシュライバー。

 その狂態に呼応して、更に更にと速度を跳ね上げる蹂躙疾走。超えるべき速さがある限り、シュライバーの加速に限界はない。

 

 なのに死なない。

 死なない。死なない。死なない。どれだけ殺しても、壊しても、再生を果たす乙女の不死に追い付けない。

 如何なる殺意と狂念を向けられても、乙女は優雅に微笑みを浮かべたまま。彼女の慈しみは崩れない。

 速度なんて概念では、今のフレデリカには追い付けないのだ。まさしく世界法則にも匹敵する領域で、今の彼女は不死不滅。

 

 戒律と種族特性の重ね掛け。そうして発揮される不死性こそ、フレデリカの強み。

 そこから更に、彼女の不死身は発展を遂げていた。戒律に新たな縛りを追加することで、見返りもまた大きくなるという処方。

 相手からの攻撃から逃げないこと。その上で、あらゆる殺意も憎悪も、愛をもって受け入れること。

 同胞たちへ、そして人間たちへと向けた不変の愛。愛することの熱を知った殺人姫の不死は新たな次元に昇華する。

 

 図らずも、それはマグサリオンが辿った道と同じ。

 しかしまったく同じなわけでもない。何故ならこの舞台に、宣誓を聞き届けて承認を与える真我(カミ)はいないのだから。

 それは真我の思惑に左右されないことであるが、同時に後ろ盾が無いことも意味する。つまりは独力の自負心のみでやってのけねばならないということ。

 決して簡単ではないだろう。それでもフレデリカはやり遂げた。はっきりと異形ではあるだろうが、彼女が掲げた愛に偽りなんて微塵もない。

 

 縛りの遵守で得られるのは不死性の向上のみだが、それを指して平凡と嗤うことは誰にもできまい。

 元より彼女の不死身は最高の性能を有していたのだ。それが更なる成長を果たしたのだから、その脅威の程は推して知るべし。

 殺人鬼(どうほう)たちへと向けた彼女の愛は無限大。フレデリカが愛を貫く限り、その不死身もまた完全無欠。

 

 そんなフレデリカにも、シュライバーは凶手を振るい続けるしかない。

 だって彼にはそれしかない。壊れているシュライバーには、殺人以外の道なんて存在しないのだ。

 分からない。この相手が分からない。理解不能な存在に恐れを懐くが、凶獣の殺戮思考に出せる答えなど殺し以外にあり得るわけもなく。

 

 殺しても死なない。そんな評価を得ている者ならいくらでも知っている。

 だがシュライバーの知っているそれは、単に殺されぬ術に長けているだけだ。危機を察知し、幸運を掴み、そして殺されてもなお足掻く不屈の精神の持ち主たち。

 所謂、英雄と呼ばれる戦場の花形。修羅道に生きるシュライバーにとっては馴染み深い相手だ。よく知っているから恐くない。

 だが、これはいったい何なのだ?理解できない。理解しようとすれば、自分にとっての致命的な何かを曝け出すことになりそうで、理解を拒んで凶手を振るうしかなかった。

 

 自分は殺す。ただ殺す。

 誰を?決まっている。無論、総てを。

 あらゆる人間は汚濁に過ぎないから。そんな穢れたものに触りたくなくて、ああだけどお願い私を愛して。

 右の眼窩から流れ落ちる血涙が、まるで彼の嘆きを表しているようで。疾走の中で踏み潰してきた轍、汚濁と称する人々の魂が死世界(ニヴルヘイム)より流れて、流れて、流れ続けて――――

 

 故に、その結末は必然のものとして訪れた。

 

「あ……」

 

 乙女の愛は無限でも、憐れな少年の幻想は有限。

 燃料切れ。その眼窩にはもう何も残っていない。何処までも速く、速く速く何処までも疾く走り続けて、ついにはその膨大な魂の貯蔵を使いきってしまった。

 最初に予想された通りの結末。魂という対価がなければ、エイヴィヒカイトは幻想の恩恵を授けない。

 こうなってしまえば、シュライバーは単なる痩せた子供に等しい。もはやここにいるのは儚く脆いだけの少女(アンナ)でしかなかった。

 

「お願い……」

 

 魔狼の幻想を剥ぎ取られて、剥き出しとなった少年であり少女である姿。

 それは壊れた果ての残り滓。彼自身にとっても、もはや無意味でしかない始まりの轍。

 それでも英雄の幻想を打ち砕かれれば、彼に残っているのはそれしかない。何もかもが漂白した果ての、純粋な想いをシュライバーは口にした。

 

「抱き締めて……」

 

「ええ、もちろん」

 

 そんな求めへと、まるで慈母のような微笑みで応じて。

 愛しい我が子へとそうするように、振るわれた死鎌(デスサイズ)がシュライバーの首を刎ねた。

 

「いいんですよ。あなたはそちら側に行っても」

 

 殺人姫にとって、殺意こそが愛の証明。

 やはりその心象は異形そのもの。人々にとって、フレデリカが怪物であるのは変わらない。

 それでいい。彼女の中では自らの行動は何ら矛盾していない。宙を舞った生首を抱き留めて、優しく撫でながらフレデリカは囁きかける。

 

「あなたは本来、こちら側ではありませんからね。

 人の血潮を浴びる喜び、解らないというなら無理にとは言いません。

 人の子として、素直に愛を求めに行ってもいい。そんなあなたのことも、わたしは寿ぎましょう」

 

 アンナ・シュライバーは、生まれながらの殺人鬼ではない。

 生前にこびりついた汚濁、その業の一切を洗い流せば、魂はありふれた只人として歩き始めるだろう。

 輪廻転生の理。女神の慈愛に包まれた天地ならば、その魂は幸せになれる。殺人鬼としての性に背を向ける道を、しかしフレデリカは否定しない。

 

「それでも、わたしはこちらにいますから。

 もしもあなたの因果が巡り巡って、またこちらに来るようなことがあっても、心配はいりません。

 居場所ならここにあります。寂しくはありませんから、どうか安心なさってくださいな」

 

 想定外はいつだって起きるもの。

 彼は黄金の魔城に召し抱えられた不死英雄(エインフェリア)。魂に刻まれた獣の祝福は、たとえ輪廻が巡ろうとも消え去らない。

 いつの日にか、重ねてきた罪業が巡り巡って、彼を殺戮の魔狼へと回帰させる事態が起こるかもしれない。

 

 そうなったら、こうしてまた抱き締めよう。あなたがもう、孤独に泣くことがないように。

 わたしは不変の殺人姫。人の鮮血と死を好む怪物。異端に生まれる魂たちを慈しむ者として、わたしはわたしで在り続ける。

 

 殺人鬼にとって、人間とは食糧であり娯楽であり、この世界に生きる存在意義そのもの。

 人々にとって、わたしたちは人類種の癌細胞と映るかもしれない。仮にそうだとしても、わたしたちが存在できるのは宿主がいればこそ。

 何を壊したいのでも、何に勝ちたいのでもない。わたしたちはただ、人を殺したいだけだから。

 この心だけは誤魔化せない。そんな己の願いに真摯であること、それだけが虚ろな心の中で唯一はっきりと分かる真実だから。

 悍ましき同族喰らい。みんなから否定されて、その上でわたしたちは人を殺す。それこそが相互理解のカタチ。

 愛憎とは表裏一体の感情だから。故に向こう側へ転ぼうとも、それは絶縁を意味しない。フレデリカの殺意(アイ)は遍く総てに向けられているから。

 

 その胸の中に抱かれて、シュライバーは思う。

 全てを理解できたわけではない。けれども抱擁から伝わる温もりは、母にも感じたことがないものだったから。

 きっと、それだけでよかったのだ。子供が親に心から願うことなんて、たった一つしかありはしない。

 

 修羅道には似つかわしくない安息の中で、ウォルフガング・シュライバーは穏やかにその死を受け入れた。

 

 

 *

 

 

 戦いの顛末を、玉座に侍る黄金は余すことなく見届けていた。

 

 元よりこのシャンバラは黒円卓の、ひいては彼のために用意された祭壇。

 彼の眼に映らないものはなく、彼の手が届かない場所もない。

 ラインハルト・ハイドリヒを降臨させる黄金錬成。されど、彼は不本意に封印されているわけではない。

 やろうと思えば、儀式などしなくても出てこれる。彼の渇望が真にそれを望むのなら、黄金の獣を封じられる縛鎖など存在しない。

 それをしないのは朋友(とも)との盟約があるからであり、また同時に、それでは本懐は果たされないと彼の魂が感じていたから。

 総てを破壊し、三千世界の果てまで進軍する最終戦争。その“怒りの日(ディエス・イレ)”こそ己の再臨の時だと決めている。

 

 言い換えるなら、この黄金錬成は練兵の場だと言っていい。

 狂乱の白騎士(アルベド)もまた黄金の一部。己の近衛の敗北をラインハルトは当然ながら承知している。

 見事なり素晴らしい。卿らの奮戦を寿ごうと、配下が敗れたことに拘泥する気持ちは微塵もない。

 これが練兵ならば、敗北とて必要な糧に相違ない。その渇望を昇華させ、魂の輝きを磨き上げたのなら、これに勝る結果はないだろう。

 ここは戦士の館たるヴァルハラ。来たる本番に備えた修練に明け暮れるべき場所なのだから。敵に敗れるのも、味方たちの同士討ちも、修羅の王にとっては等しく愛おしい。

 殺意がそうであるように、戦争もまた他者がなければ成立しない概念なのだから。好敵手の存在は味方以上に貴重である。

 

 殺人姫フレデリカ。

 彼女が見せてくれた不死性と、殺意の慈愛を体現したその姿。

 ラインハルトにとって、どちらも一家言を持っている概念だ。ここまでのものを見せられてそそられないはずがない。

 ああ惹かれるな。好奇心が疼くぞ。是非とも会いたい。素直に抱いた気持ちに従い、一切の躊躇なく黄金はそれを実行に移す。

 

 それ即ち、魔城への招待状。神威の如く下される黄金の決定が、フレデリカをグラズヘイムへと招き寄せた。

 

 相手の了承など必要としない。

 その立ち振る舞いは優雅なれど、獣の愛とは破壊の情。

 彼こそ覇道という、他者を己の色に染め上げる者としての完成形。将として部下を率いるカリスマは、たとえ同格の神といえど右に出られる者はいない。

 嫌よ嫌よと言われても、その敵意ごと抱いてやろう。愛しき者らよ、我が愛の洗礼を受けるがいい。

 

 つまらない悪意などはなく、至極当然の道理のように、ラインハルトは苛烈なる情愛を燃え上がらせた。

  

 

 

 

 周囲の景色が一変したことに、とりあえずフレデリカは驚いた。

 

 彼女自身の認識ではほとんど何が起きたか分からない。

 直前、何か大きな視線のようなものを感じたが。その直後には、まるで全身を潰されたかのような衝撃を味わい、そこから何かを認識する前に、事態は今へと至っている。

 技術やら仕組みやらの方面にはとことん疎い箱入り娘のフレデリカだ。自分が置かれた事態を論理的に推測する術など持ち合わせていない。

 よって出来ることといったら、周りへと観察の眼を向けることくらい。とりあえずそうすることで、状況の理解へと努めた。

 

「綺麗……」

 

 そして思わず漏らしたのは、感嘆の吐息。

 総てが黄金の一色で塗り固められた城の意匠。数多と置かれた調度品の数々。

 素人目にも、どれもが一級品を越える至高の名品だと分かる。成金趣味にならず、栄えある輝きとして黄金を際立たせるのは、人界にあるまじき黄金比率。

 この世界はあまりにも完璧すぎた。真っ当な想像力では到底描けない美しさは、常人では理解が追い付かず発狂へと至るだろう。

 

 だがフレデリカの琴線に触れたのはそこではない。

 欠けたものが何もない、完璧なこの世界において、唯一つだけ決定的に欠いているものがある。

 それは命。あって当然、なくてはならない絶対要素が、この黄金の城には存在していない。

 美しくもおぞましいと感じてしまうのはそのためだ。生命にとっての未知である死後の具現、これがそうだと言葉にせずとも理解できる。

 怖気が走る、この寒々しさが良い。殺人鬼にとっては何よりもそそられる人の死が、この場所には溢れ渦巻いていたから。

 

 なるほど、あの子が救いを見出したのも納得がいきます。

 あるいはこの世界こそ、わたしたちがありのままに生を謳歌できる唯一の天地かもしれない。

 ここには無限の死がある。餓えることはなく、満たされた居場所を手に出来るのでは思ったから。

 

「気に入っていただけたかね?フロイライン」

 

 掛けられた典雅な声音に、フレデリカの意識はその一点へと引き寄せられた。

 

 端然と、微笑を湛えて佇む黄金の美丈夫。

 その姿に、不死身の殺人姫をして破滅の断崖を覗き込むような感覚を味わった。

 非の打ちどころのない美貌。向けられる眼差しの奥、秘めた妖しい魅力には手弱女ならば容易く心奪われていただろう。 

 どうしようもなく危険な存在だと分かるのに、惹かれる気持ちを抑えられない。愛すべからず光とは、人を断崖へと走らせる誘蛾灯だ。

 安穏に生きるばかりでは退屈で、人とは未知なる深淵に命の意味を求めたがる。進めば死だと分かっていても、いいや分かればこそ覗かずにはいられないのだ。

 美々しく絢爛、そして苛烈な性を併せ持ち、それらを気品をもって調和させた黄金比率。それは凶戦士にも通じる危険な魅力を備えた、破壊の君主。

 

「ようこそ我がグラズヘイムへ。私はラインハルト・ハイドリヒ。

 どうかこの賛辞を受け取ってもらいたい。卿が見せてくれた麗しき舞踏に、私は心からの感動を覚えている」

 

「まあ、それはそれはご丁寧に恐縮ですわ。

 お初にお目にかかります、わたしはフレデリカと申します。お招きくださりありがとうございますわ、ハイドリヒ様」

 

 ドレスの裾を持ち膝を折って、淑女としての返礼を示すフレデリカ。

 どちらにも所作に気品があり、相手に向けた親愛の念がある。美麗の偉丈夫が幼き淑女をエスコートしている様は、絵画の題材としてさぞ華があると言えるだろう。

 

 どちらにも微笑が浮かび、険呑な様子は何処にも見えない。

 されど、もしもこの場に第三者がいたならば、両者の間に漂う異質な空気を感じずにはいられなかっただろう。

 殺したい。壊したい。互いが互いに向けた殺意を隠そうともしていない。

 どちらにとっても、それはもはや呼吸にも等しい感情の発露。誤魔化すような意図はなく、何をしたいかなんて明白すぎて確認する意味もなかった。

 

 ラインハルトの手には神槍(ロンギヌス)が。フレデリカの手には死鎌(デスサイズ)が。

 それぞれが握った凶刃より滲み出る殺意が、今か今かと解放される時を待っているのだ。

 

「以前に話を伺った時から気にはなっていたが、やはり実物を見ると受ける感想もまた異なる。

 絶対に攻撃を躱さぬと決め、故に不死身を得たという御仁とは如何なるものか。戒律の剛毅ぶりからして、あるいは戦士の類いとも思ったが、よもやな。

 まさか卿が如き可憐な花とは、夢にも思わなかった。感じ入ったよ、その在り方。歴代最高だと称されるのも頷けるというもの」

 

 それは紛れもない賛辞であり、故にその破壊の情は強まっていく。

 槍に満ちる神気。黄金の色に輝いていたそれが、別の色彩を描こうとしていた。

 

「ならばこそ、我が爪牙らと競わせたいという欲求も強くなる。

 シュライバーに勝利したのは見事。であれば次を試したく思うが、如何に?」

 

 浮かんだ色は、鋼鉄の黒。

 グラズヘイムにおいて最も険呑な死の色彩。神にさえ終わりをもたらすご都合主義(デウスエクスマキナ)

 担い手の黒騎士(ニグレド)は既に舞台を降りていたが、一度地獄に取り込まれた魂の渇望は消えない。地獄の城主として、ラインハルトならば過不足なく扱える。

 絶対の死をもたらす者と、絶対に死なぬ者。まさしく矛盾の相関性、であれば試し合いたいと思うのもまた人情。

 

「どうやら卿の想い人はコレに打ち勝ったようだ。卿もまたそれに倣いたく思うならば、臨んでみるのも一興ではないかね?」

 

 その発言。恋に生きる乙女にとっては無視できるものではなく。

 存在を近くに感じる。凄絶なその鼓動が耳を打って聞こえてくるのだ。

 再会はもう間近。きっとあの御方は、とても近い場所に居る。ならば提案された通り、矛盾の決着に臨んでみるのがよいか。

 恋する彼に恥じない女になりたいと思った。この身は何人にも犯せないと、誓った想いを偽りなく誇るのなら避けて通ることは出来ないだろう。

 

 終焉を宿した槍の矛先が向けられる。

 恐怖を感じる。容易くいくとは口が裂けても言えやしない。

 それでも逃げない。逃げるわけにはいかない。それが殺人姫たる己の戒律。

 わたしは不死身の殺人鬼。如何なる破滅の中でも平然と立っていなければならないと、外れた怪物としての芯の形。

 それはまるで両者の間で交わされた合意のように。待ち構えるフレデリカへと、ラインハルトは神槍を突き放ち――――

 

 

「ごめんなさい。わたし、そういうのには興味がないのです」

 

 

 と、茶目っ気のある仕草を見せて、フレデリカは神槍の矛先をあっさりと躱していた。

 

 優雅に湛えた笑みの表情に、瞠目を混じらせるラインハルト。

 意外なんてものではない。あり得ないとさえ言っていい。

 ラインハルトが所持する黄金の神槍。彼以外の何人にも触れることが出来ない唯一無二の聖遺物。

 その矛先は森羅万象を破壊して、決して標的を逃すことはない。それは運命といってもいい絶対の因果。

 故に、その矛先が躱されたというのがあり得ない。ラインハルトにそうする意図がなかった以上、確約された運命が覆るなどあり得ないはず。

 

 しかし此度に関しては例外だ。

 攻撃から逃げないフレデリカの戒律。神槍が定める運命よりも、その矛先が貫くのは彼女自身の必然である。

 だからこそ彼女が下した選択は、神槍の必中すらも覆す。矛先が貫くよりも致命的な破戒の罰が待っている以上、それもまた必然と言えるだろう。

 ラインハルトの驚愕も、自身が標的を外したためではない。自ら終わりを選んだフレデリカの意図こそが最大の未知であったが故に。

 

「殿方の皆さんは、そうした強い弱いの比べ合いがお好きなのでしょうけど、あいにくこの身は女でして。

 それに好いた御方がおりますのに、他の殿方に肌を許すだなんて、はしたないと思います」

 

 この地獄の景色に、感じ入るものがあったのは間違いない。

 彼の美貌、典雅な振る舞いの数々、元の好嫌など吹き飛ばして等しく染め上げる覇王のカリスマ。

 男性に触れたこともない生娘では抗うことなど出来なかっただろう。あるいは恋をしていたかもしれない。

 

 だけどそうはならなかった。乙女の気持ちは揺らがない。

 確かに似通ってはいても、この人とあの御方は違うのだから。そこを間違えるようでは合わせる顔がない。

 だからこそ、向けられた終焉に身を差し出す真似はしなかった。わたしを殺すのはあの人だと、決めた心は不変のままだ。

 

「うん。そうですね。ちょうどよい頃合いですし、ここまでとしておきましょうか」

 

 そして掟破りの代償はやってくる。

 己の中に亀裂がはいる。魂の芯に致命的な断裂が走ったのを感じていた。

 もういくらも保たず、この身は消え果て散るだろう。自身の選択が招いた結果をフレデリカは理解していたが、そこに後悔はなかった。

 

「理由を尋ねてもよいだろうか?何故、そのような真似を?」

 

「理由、ですか。そうですねえ。お恥ずかしいですが、あまり言葉が上手ではないので、うまく伝えられるか分かりませんが。

 正直に言いますと、直前までは受けようという気持ちもあったのですよ。その先であの御方と再会し、かつてのように激しく逢瀬を重ねたい。それはわたしの中にある本心です」

 

 お互いに、殺意でしか他人と触れ合えない者同士。

 それは即ち、彼ら同士ならば触れ合えることでもある。凶戦士と殺人姫は、鮮血の赤の糸で結ばれた二人だと言えるだろう。

 かつて重ねた殺意の応酬。互いに殺し、殺されて、あの時間はフレデリカにとっての至高の一時。いつまでだって繰り返していたい時間だったと断言できる。

 またあの時間を味わえるのなら、これに勝る喜びはない。そう思う気持ちに嘘はつけなかったが。

 

「ですけど本当に、ええ、本当に残念なのですけれど、あの御方は人殺しがお好きではないのです」

 

 けれどそれだけでは一方通行だ。

 恋して求めるばかりではいけない。真に淑女たらんとするならば、互いに求め、与えられるようにならなければ。

 男同士の比べ合いではない。それは女としての矜持である。無敵の頂きになんて興味はない。わたしの不死はあの御方のためにある。

 

「今宵はお招きくださりありがとうございました。

 少々名残惜しくもありますが、この辺りでわたしもひとまず退場させていただこうと思います」

 

 消え逝く身体で、礼節に則った別れを告げる。

 その所作には幼いながらも気品に溢れ、何より揺るぎない気高さがあった。

 もはやフレデリカを侵せるものは何もない。愛を貫いた彼女の芯はたおやかに、不変であっても頑なではない融通無碍。

 

「いつの日にか、またこのような機会があるのなら、その時には」

 

 切なさに零れそうになる涙を抑え、強かに微笑んでみせる。

 あんなにも雄々しく美々しい彼だから、それに相応しい強さを持ちたい。

 

 かつて勝ち取った無二の居場所。

 その地位を不変のままにするためには、変わらないままでは駄目なのだ。

 彼の凶剣とて過去のままではない。地位に慢心しているようでは、進み続ける理解の前に容易く斬滅されることだろう。

 より不可解に、謎めいたものとして。謎は女の魅力を輝かせるから。愛しい彼に驚いてもらえるように、一層に己を磨き上げよう。

 再会の逢瀬はその時に。より相応しい舞台にて、殺意によって抱き締め合おう。

 

「甘く狂おしく情熱的に、どうかわたしを暴いて、殺してみせてくださいましね、マグサリオン様」

 

 いつか来るその日のことを確信し、乙女の宣誓を遺してフレデリカは演者の舞台より退場した。

 

 

 

 

 そうして一人、完全に取り残された男は、天を仰ぐようにして笑いだした。

 

「はははははははははは、アァーハッハッハッハッハッハッハ!」

 

 響き渡る美声の哄笑。

 もはや笑うしかないだろう。なんとも見事にやられたものだ。

 なんたる未知。逃した獲物は惜しく、妬ましくも素晴らしい。

 

「女は駄菓子、などと誰が言った?」

 

 そして晒した自らの間抜けぶりは、それこそ笑い飛ばさねばやってられまい。

 

 女の矜持、見せてもらった。

 男の理屈で事を解そうとしていた我が身を嗤う。

 ああ、久方ぶりに感動したよ。こんな痛快な思いは、もしかしたら生まれて初めてなのではないか?

 

「これでは女に袖にされた、無様な間男ではないか」

 

 素直に敗北を認めるしかあるまい。

 我が破壊(アイ)は受け入れられず、壊せぬままに逃げられたと。

 その結果には賞賛しか浮かんでこない。恥じ入る気持ちよりも昂る思いばかりが滾ってくる。

 かつてあれほど求めた未知が、この舞台には溢れている。童心に還ったような感覚、未だに実感が追い付いていないのだと痛感する。

 であればこそ、いつまでも拘泥してもいられまい。舞台の幕は下りておらず、今もなお美々しき演者たちが、その繚乱たる魂を輝かせているのだから。

 

「なあ、カールよ。既知がなんだと、いつまでも言っている場合ではないぞ」

 

 

 

 

 フレデリカの結末を、近いところでマグサリオンも感じていた。

 

 ここは現世の円環より外れた異界のグラズヘイム。

 地獄の坩堝をひた駆ける凶戦士も、殺人姫の存在は感じ取っており、まさに今そこへ向かおうとしていた。

 無論、殺すために。かつて不可解の中に取り逃がしたことは彼にとっても業腹であり、機会というなら望むところ。今度こそは凶剣の錆びに変えてやると、猛る殺意に迷いなんて微塵もなく。

 

「勝ち逃げのつもりか?」

 

 だからこそ、再び取り逃がした事実を痛感し、無である貌の中でマグサリオンは歯噛みした。

 

「調子に乗るなよ。俺を出し抜いた気になっているんだろうが、貴様ごときの浅知恵がいつまでも通じるとは思わんことだ」

 

 相も変わらず、忌々しい。

 鬱陶しくて、煩わしい。それが心底気に入らないから――――忘れられない。

 唯一人、マグサリオンが理解を果たさぬままに剣の露へと散った乙女。それは彼の不変の中で、唯一のよく分からなかったものとして刻まれてしまった。

 最も謎めいていた兄すら理解した今となっては、その地位は正しく無二だ。それをそのままにして善しとする感性は、凶剣の凄絶にはあり得ない。

 互いの因果に秘められた関係については既に承知している。かつてのままなら一刀のもとに斬り伏せると自負するが、相手にも以前にはなかった気配を感じていたから。

 

「次は殺す。だから他の奴に殺されてくれるなよ。

 貴様は俺にとって拭えぬ痕だ。いつか必ず、俺のこの手で精算してやる」

 

 相手が聞いていたなら狂喜するだろう殺意の宣誓。

 それだけを手向け代わりに言い渡し、マグサリオンは足を止めた。

 

 別段、不思議がることではない。獲物を見失った狩人が足を止めるのは当然。

 されどその道理、凶戦士にも当て嵌まると言えるだろうか。

 休みを挟めばその分だけ取り零しも多くなる。凶念一つで殺戮の荒野を駆け抜けた冥府魔道。

 そんな彼の道に休息などあり得ない。それでもあり得るとするなら、その方が合理的だという場合に限る。

 徹底した殺戮への合理性。如何に余人からは無軌道に見えたとしても、彼はいつだって最短距離をひた走っているのだ。

 

「――――ォォォォ」

 

 波動を感じる。

 豪快に、奔放に、まるで闘志という言葉がカタチを為したかのような気迫。

 それが近づいているのを感じる。物質的な距離感では表せないが、しかし確実に近づいていた。

 いうなれば引力。互いの存在が引き合って、というより向こうがほぼ一方的に引き寄せ引き付けられんとしている。

 覚えがある気配である。何故だとか、理由を考えるのも馬鹿らしい。どうせ大した理由など無いのだから、手っ取り早く対処してやろうと足を止めたまで。

 

 剣を握る手に力を込める。

 膨れ上がっていく殺意。その上で収束させ、一点に絞って向ける。

 さっさと来いと告げていた。鬱陶しいことこの上ないが、逃げるつもりは毛頭ない。

 一人一人と、目を合わせた上で殺す。とても律儀とも言えるそれこそが、マグサリオンの道なのだから。

 

 

「――――マグサリオォォォォォォォン!!」

 

 

 そしてあらゆる道理も、展開をも無視して、バフラヴァーンが次元の壁を突き破って現れていた。

 

 ザミエルとの戦いで、特異点へと落ちたはずのバフラヴァーン。

 求道の究極の先にある神の頂き。森羅万象と等しい個人として、成ってしまった以上は元には戻れない。

 神は万能であるが、自らの万能性を捨てることだけは出来ないのだ。出来てもせいぜい触覚を飛ばす程度。絶対の強度とは、それ故に不可逆性を持つ。

 

 だが、そんな不可能と呼べる事柄にこそ、バフラヴァーンの真価は発揮される。

 既存の強さからの改良と発展。成長の概念こそが彼の強さの真骨頂。

 不滅のものがあれば滅ぼせる己になり、届かないものがあれば届かせる己へとなる。

 中身を流れ出させるのではなく、己という宇宙のままに現世へと帰還する。そういう方向性を持つ彼だからこそ、この前人未到を成し遂げられた――――わけではない。

 

 今回の掟破りに限って言えば、裏がある。

 そもそもの話、今のバフラヴァーンの求道は完全とは言い難い。

 他人という不純物を排斥し、無限の己によって世界を満たす。血沸き肉踊る永遠の闘争こそ、求める世界。

 そこに唯一無二の他人を求めてしまった。その時点で渇望には拭えない瑕が生じ、それを埋めない限りはバフラヴァーンの宇宙は完成しない。

 故に、欠けているピースを埋めるために、求める誰かのところへとバフラヴァーンは落ちていった。落下の終点がここであり、即ちこの空間そのものが特異点と化す。

 

 修羅道の地獄を押し除けて、無限闘争の理が世界を染める。

 よく似通っているが、しかし決定的に違う二つの宇宙。外へと広がる前者に対し、後者は己という器の元へと収束していく。

 ならば部外者が入り込める余地はない。唯一無二なる他人(あこがれ)をその手に掴み、バフラヴァーンは歓喜と共に全霊の闘気を解放させた。

 

 おおマグサリオン。俺の敗北(はじめて)を奪った男。

 お前のせいだぞどうしてくれる。お前に出逢ったから、俺はもう一人では満足できない身体にされてしまった。

 かつての己に戻りたいとも思えない。お前がそこにいる限り、俺は永劫不変にお前を追い求める者で在りたいから。

 

「さあどうする?俺としてはこのまま、完成した場所で永遠に死合いたいと思っているが」

 

 唯一無二を見つけたことで、バフラヴァーンの特異点の収束が始まる。

 それは求道神としての完成。無限の群生相を生むバフラヴァーンと、それを殺し続けるマグサリオンとで完結する永劫の闘争だ。

 求道とは自己完結の道。だが決して、そこに他人が介在できないわけではない。何故なら多くの場合において、人の願いとは他人がいなくば成立し得ないものなのだから。

 ただ一振りの刀でありたいと願ったなら、永遠に斬り続けられる相手がいる。途中で途切れてしまう関係では完結とはいえず、斬っても斬れない比翼連理が必要なのだ。

 自分と相手、二人の相関によって完成する求道。バフラヴァーンにとっての番いは決まっており、世界は彼とマグサリオンの両者のみで閉じていく。

 

「付き合わせるな、屑め。貴様ごときにいつまでも係っている俺ではない」

 

 そんな法則(ルール)そのものに、振り下ろした無慚の刃が断裂を入れた。

 彼は掟破りの凶戦士。誰よりも、この宇宙の法に破滅をもたらすのに長ける者。

 永劫の闘争になど興味はない。戦いにも、殺しにも、愉悦を覚える感性など持ち合わせてはいないのだから。

 

「来いよ。滅ぼしてやる」

 

「カハ――!」

 

 相も変らぬ冥府魔道っぷりに、バフラヴァーンは快笑する。

 ああそうだとも。お前はそうでなくては、それでこそ我が憧れ。

 だからこそ俺も追い求める甲斐がある。俺は俺の望むまま、俺としての道を貫こう。

 

「あいにくと、俺はフレデリカほど淑やかな(タチ)じゃなくてなぁ」

 

 あれこれと頭で考えるのは止めにした。

 どんなに優れた理屈だって、俺にとっては意味はない。

 戦い続けよう。答えなんて、戦いの中の歓喜と興奮が教えてくれる。

 我、戦うゆえに我あり。それこそがバフラヴァーンという男の、唯一にして絶対不変の真理なのだから。

 

「戦いが好かんだと?だったらその口から言わせてやる。

 こんなにも充実できる“遊び”は他にないとなあ!」

 

 この刹那に命を燃やし、全てを懸けて憧れた“絶域(さいきょう)”へと挑んでいく――――その脳裏で。

 

 予感していることがあった。

 理屈じゃない。そんなことを考える知恵も興味も持ち合わせない。

 だからこれは、純粋に直感だ。実証したわけではなく、ただそうなるだろうと。

 単なる勘で、しかし神域に最も近づいた者としての感覚で、それを確信していた。

 

 マグサリオンとバフラヴァーン。

 その背景に違いはあれど、構図としてはかつての戦いを踏襲している。

 そしてその結末も、恐らくは同じようなものへと行き着く。定められた宿業として、可能性は既知の結果に収束するのだ。

 結末は繰り返される。覚醒や無法でどうにかなる次元の話ではない。それがこの舞台の、そこに立つ演者に根差した宿命なのだと。

 

 あれでフレデリカの奴も、なかなかに聡い。

 もしかしたらあいつも、その辺りの事を察して退場を選んだのではないかな?

 

「などと、俺が考えるようなことじゃないなぁ」

 

 脳裏に沸いた余分な思考を、次の瞬間には切り捨てる。

 俺に迷いはない。結末が繰り返される?大いに結構。

 結果なんてどうでもいい。俺が求めるのは勝利ではなく過程。頂きに辿り着くのではなく、のぼり続けることを望む。

 繰り返すというならむしろ好都合。俺とお前の闘争に、倦怠なんて二文字は入り込む余地すら存在し得ない。

 

「いくぞおおおぉぉぉぉぉおおぉぉ!!」

 

 拳と剣が交錯する。

 大地も、星も、宇宙そのものすら震撼させる両者の闘争。

 たった二人だけの特異点で、彼らは激闘を繰り広げた。

 

 

 




今回の話で、物語的にはバフラヴァーンとフレデリカは退場です。
次からはしばし解説回がはいります。
その間マグサリオンはなにしてるんだというなら、バフラと遊んでるんだと思ってください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。