星の王は果てへ臨む   作:龍覇

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第9R

芝1600m、朝日杯と同じ距離。

併走する相手は、スカーレットとウオッカ、スズカだ。

「レックス先輩、よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくね」

「併走でも、負けないわ」

「ええ」

「よーしお前らー!準備はいいかー!」

トレーナーの声が遠くから聞こえる。

「いつでもいいぜー!!」

かわりにウオッカが声を上げる。

昨日の惨劇?忘れたわそんなもの。しばらくブーちゃんは肉を食べても機嫌が悪かったのだけ言っておく。

しかしこうも、強い相手と併走なんてワクワクしてしまう。

はやる気持ちを抑えて、スタートした。

速い。

速い。

速い。

大逃げの戦法のスズカ、先行のスカーレット、差しのウオッカ。

私は追込。

三人は特に圧を感じさせない走りだ。前回のメイクデビューとは違い、誰も掛からない。

なるほど、これがG1の数々を勝ってきたウマ娘たちの力なのか。

ああ、面白い。

私は、ニヤついてしまう。

 

 

 

 

 

雰囲気が変わった、気がする。

オレは、後ろのレックス先輩の圧を感じつつも、走っていた。

この緊張感は、オレが今までに出たレースと同じくらいか、それ以上の緊張感だ。

オレには越したい人が沢山いる。

併走だろうが、なんだろうが、オレは負けねえ。

オレはただ、勝ちを狙うだけだ。

それでも。オレはこのゾクゾクした感じを、楽しんでいる。

レックス先輩は間違いなく、ブライアン先輩と並びうる、カッケー人になる。

もちろん、今もカッケー。だがもっと、カッコよくなる。

オレは想った。それでも負けねえ。

よし、ここから仕掛ける。

スカーレット、先輩方。勝負だッ!!!

 

 

 

 

 

 

レックス先輩は、白かった。

ゴルシよりも、白い、綺麗なウマ娘。

でもそれだけじゃない。レックス先輩は、きっとすごいウマ娘になる。

そんな気がする。

でも私だって負けない。

スズカ先輩だろうが、ウオッカだろうが。

もちろん、後ろの圧はすごい。

ゾワゾワする圧。前の私なら、怖くて、かかってたかもしれない。

それにこの圧はウオッカが一番かかってるけど、ものともしていない。

それなら私は負けないし、負けたくないし、屈しない。

今の私なら。

一番を譲らない。

ウオッカにも、スズカ先輩にも、レックス先輩にも。

さあ、いくわよ。

私が、一番を取るんだから!!

 

 

 

 

 

 

前へ、前へ、前へ。

私は、走っているときは全く、何も感じない。

ただ、先頭の景色を見たくて。夢中に走る。

でも、普段は感じないはずの、圧、とかそういうものが感じる。

…もっと、速く走らなきゃ。

でも、まだダメ。

先頭の景色を譲らせないようにするにはまだ。

ああ、でも。

もっと走りたい。

もっと、もっと。

こんなにワクワクしてしまって、どうしよう。

レックスちゃん。

あの子はきっと、ぐんぐんと伸びる。

だけど、関係ない。

私の先頭の景色は、誰にも譲らないから…!

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

スズカが、スパートをかけた。タイミングはちょうどいい所だ。

こちらもスパートをかける。じゃないと追いつかない。

それはスカーレット、ウオッカも同じことで。ぐんぐんと走る速度が速くなる。

しかし、速い。面白い。

シィィィィィィ…!

もっと、もっと。

足に空気を。

ぐんぐんと、追いつく。

ゴール板に近づいていく。

何とかゴールをするも、やはりと言うべきか。

経験の差がある。当たり前だ。

私は四着だった。

「あーっ、負けちまったー!!」

「危なかった…越されるかと思った…!」

「…お疲れ様、レックス」

距離が長かったらわからなかった。

それぞれみんなハナ差だ。

それでも悔しい。やはりまだ、足りないのだ。

「…ええ。私も、もっと強くならなきゃ」

まだ、まだ始まったばかりなのだから。

「トレーナー、どうかしら?」

「シニアまで走り抜いた三人に食らいついたんだ。走れる。これまで以上にビシバシ行くぞ!」

「…ありがとう」

朝日杯は本当はやめようかと思っていた。が、トレーナーが大丈夫なら、出ようと思う。

調整を頑張らねば。そして、そして。

誰よりも強くならなければ。


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