星の王は果てへ臨む   作:龍覇

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第3R

話が終わり、長い廊下を歩いていた。

「………」

緊張した、の一言。

というか、皇帝相手に何をメンチきったのだろうか。

「…目、付けられたわよね」

死んだ目でターフを見る。

外には既に練習しているウマ娘とトレーナーがいた。

今のんびりしている場合ではない、が。

肝心のトレーナーがいない。

なんでも、チームに入らなければならないらしく。

「ふ〜む…」

今こうしてチームのポスターを眺めてはいるものの、多すぎて分からない。

眺めていれば声がかけられるはずだが、声をかけられない。遠巻きで見られているだけだ。やはりこの見た目は、ここでも目立つみたいだ。

「ねえ、貴女」

栗毛のウマ娘にやっと声をかけられた。数人のウマ娘を連れて。

「芦毛じゃなくて白毛で合ってるわよね?」

「…ええ、そうだけど」

「ふーん…そういえば貴女、編入生で三冠ウマ娘のナリタブライアン様と一緒にいたわね。白毛のノロマのクセに、生意気ね」

「……はあ」

随分と面倒なヤツに絡まれたものだ。

しかも一緒に走ってもいないくせに、ノロマと決めつけてきた。

確かにトゥインクルシリーズでも白毛のウマ娘は圧倒的に少ない。白毛自体が少ない故に。

しかもブーちゃんと一緒にいるだけで難癖をつけてきた。

確かにブーちゃんは三冠ウマ娘ですごい子だ。だがその前に大事な親友である。

「あなたみたいなのが、チームに入るどころか、デビューなんて無理よ無理。しかも三冠ウマ娘と一緒にいるのも不釣り合いだし」

面倒だなと思っていたらどんどん勝手に話が進む。

というかチラチラと此方を見る人がいるし、コソコソと話をしている。

見ているぐらいなら止めて欲しいものだが。

「…ちょっと話聞いてるの?」

「ああ、なんの話でしたっけ」

「編入生のクセに、生意気ね!!」

「というかここで問題起こさない方がいいのでは?というかチーム決めたいんですよ。用がないならさっさと帰ってくれます?」

「っ、このっ…!!」

しつこい。しかし、このウマ娘。随分と短気だ。

というか、取り巻きらしき人が滅茶苦茶睨んでくる。

「あーもうめんどくさい。そんなに鬱憤溜まってるならそこの取り巻き全部まとめて野良レースにしない?全員、纏めて潰すから」

ブチッ!!!

「ええ、ええ!!上等よ!!!」

こうして、野良レースをすることになってしまった。

 

 

 

 

 

 

「…む?なんの騒ぎだ?」

「あー、ハヤヒデー!今から野良レースするんだってー!!」

「野良レース…?…あれ、レックスじゃん」

ザワザワと随分と騒がれている。

栗毛のウマ娘は、G1で勝っている強いウマ娘らしい。

確かにそこにはテルがいて、アップをしている。途中で目が合って、笑ってピースをした。それに私も手を小さく振って返した。

「…うっわ、目ぇイってる」

タイシンは若干引き気味である。

どれだけ煽ればここまでいくのだろう。というより、レースに集中出来るのだろうか。

「でもあの子、大丈夫かなー…?」

チケットは少し不安げに言う。

それもそのはず、編入したばかりのデビューをしていないウマ娘だからだ。普通ならそう思うだろう。

「いや、テルなら大丈夫だ」

「え?」

「私の推測が正しければ…走っている者全員、心が折れる」

「…そうなの?」

「ああ。なぜならテルは…」

バン、とゲートが開いた。

 

 

 

腹の立つウマ娘だ。だけど、相手がデビューしていなかろうが、手は抜かない。

あの子は、追込でいくようだ。

ただ、ずっと、ずっと、何かが這うような、胸が重くて苦しいような。

何か嫌な感覚が私を駆け巡る。

いくら気が立っていても、ここまで集中できないなんてことは無かったはずだ。

まだ。

まだ。

まだ。

今、ここ。

大丈夫、大丈夫。今理想的なレース運びができてる。

シィィィィイッ…

謎の音が聞こえた。音が聞こえた方向へ、目だけ向かせる。

「ヒッ!?」

ピッタリと、後ろに白毛のあの子がいる。

そして、謎の嫌な感覚が、強くなる。

怖い。

怖い。

怖い。

恐怖で足が進まなくなる。

せっかくスパートをかけたのに、これでは意味が無い。

「…お先に」

今までのあの子はどこに。

あの前のウマ娘は誰。

あの冷たい目でこちらを一瞥した、目の前の、ウマ娘は…

恐らく最低なタイムで、私はゴールした。

 

 

 

 

 

 

実は白毛だから遅いとからかわれたのは今に始まったことではない。

だからこうして、走って、思い知らせる。

思い知らせて、こうして、地を這わせる。

散々つっかかってきたウマ娘たちは、後ろでへなへなになっている。

酷ければ、呼吸困難になっているはずだ。

「……ヒュー、ヒュー……」

この人はもう、走れないだろう。

プライドがあればあるほど、私の走りというものは心を折らせるものだ。

強い人はここでは終わらないはずだが。

いつの間にかできた観客にはどよめきが広がっている。

編入してきた私が、G1のウマ娘に大差勝ちした。

「…誰かこの子達を保健室に」

そういうと慌てて人が何人か降りてきて、保健室に運ばれた。

「…テル」

「ハヤちゃん」

ハヤちゃんが静かにこちらに来た。

昨日は運が悪かったからか、会えなかったのだ。

「前よりも速くなったな」

「ありがとう」

「…それにしても、なぜこんなことに?」

「それは…」

経緯を話すと、ハヤちゃんはまたか、と苦笑する。

「大丈夫だ。私は君の強さを知っている。それはもちろん、ブライアンもな。君のその脅威的な圧とその呼吸、そして鋭い末脚には負けていられないな」

「…ハヤちゃん」

「編入して早々は災難だったな。ゆっくり休むといい」

「うん」

大人しく、ハヤちゃんの手を受け入れるのだった。




鬼滅の全集中の呼吸を取り入れました。
実際、呼吸による身体能力向上、というより細胞の活性化はあるみたいですね。
だからといって日の呼吸とかの型はさすがに出来ませんので、あしからず。
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