トレーニングは順調に進んだ。
メイクデビューで出るレースはマイルの芝。
スピードとパワーを主に上げた。スピカのメンバーは快く、トレーニングに付き合ってくれた。
しかし問題がひとつある。
ウイニングライブ。
結局ダンスは間に合わなかったのだ。
ズーン…
「だ、大丈夫だよ。筋良かったし」
「もうどうにでも……ん?」
ひとつ思い出した。
ミスターシービーはあの時どうしただろうか。
「もう自由に踊るわ」
「ええ…」
そんな悟りに至れば、あとはもう簡単だった。
パドック。
私は、1番人気を貰っていた。
「1番人気、三番、ステルラレックス!」
その声に導かれるように入っていくと、どよめきが走る。
「えっ、白い…」
「芦毛じゃなくて…白毛…?」
「あの子速いの…?1番人気だけど…」
観客にどよめきが走る。
白毛の認識は思ったよりも冷たいのだ。
「レックスさーん!頑張ってくださーい!!!」
どよめきの中に、スペ先輩の声が聞こえた。
次々とスピカのメンバーの声も上がる。その様子に、思わず笑みがこぼれる。
「……」
すう、と息を吸う。
「私の名はステルラレックス!このレースに勝って、クラシック三冠を掴み取る者だ!!!」
ザワザワとどよめきが走る。
「私の走りを見て信じるといい!私は走れると!!」
そして後ろに翻す。
「す、すげえ…気の強い子だな…」
「でもなんかあの子強そう」
「期待してみてみるか…」
観客に期待が走る。
ゲートに入る。共に走るウマ娘達は、困惑した目でこちらを見る。
「全員、ゲートに入りました。」
ガコン
ゲートが開かれた。
「一斉に綺麗なスタートをきりました」
「誰が最初に抜け出すか注目しましょう」
実況の声が耳に届く。
今回は先行の少し後ろ。差しまではいかないが、先行の集団より少しだけ後ろの位置に付けた。
レースは特に何も無く進んでいく。だがそれでも私の威圧に負けて後ろに、ジリジリと下がっていく。
「なんと、ステルラレックス以外、逃げ、先行で進んでいた全員がかかっている!」
「これはどういうことでしょうか」
「ステルラレックス、悠々自適に進んでいく」
第4コーナーカーブ。
差し、追込のウマ娘達が追い上げていく。
逃げ、先行のウマ娘はあっという間にバ群に沈んだ。その光景もまた、異様であり、沈むとしても全員はいないはずだったのだ。
だが、そのスパートをかけたウマ娘たちは、かかってしまった。
これには、会場の誰もが、驚きを隠せない。
そして、それを最前席で見た人は呟いた。
「あれは怪物だ…」
「そりゃあ後ろの子達耐えられないだろ…」
「ふっ!!」
そして最後のダメ出しと言わんばかりに、レックスはスパートをかける。
それはもう大差。
差をさらにグングンと広げていく。
後ろのウマ娘達は、諦めてしまっていた。
それもそのはず、喧嘩を吹っ掛けた、レースに出ていたウマ娘でさえも、心が折れるレベルなのだ。
レースの経験のない子たちは、怖くて怖くて、泣き出してしまいたかった。
これはもう蹂躙。
星の王は、初陣を蹂躙しておわったのだ。
あのレースのあと、走りきったウマ娘たちは立てなくなっていたし、トレーナーに泣きつく子もいた。
全員立てない中、私一人だけ、立っていた。
観客は、呆然としていた。あっさりとその概念を打ち破った私に。
それは、暴君にひれ伏す平民の図。
そんな中、私は、チームのみんなにピースをしていた。
ウイニングライブ。
あの後、ウマ娘達はダウンした。圧に負け、暫く立てなかったため、実質私のソロライブだった。
「………」
曲は完全に自由になった。
いきなりと言われても、思いつくものでは無いのだ。
なので、得意な軽業を披露した。それらしい音楽に乗せて。
パチパチと拍手がなる。
玉乗りして、ジャンプして。
(…これ怒られるわよね)
勘弁してくれ、歌を練習してなかったのだから。
せめて皐月賞までにはwinning the soul完璧にしてくるから。許して。
あ、朝日杯フューチュリティステークスが先だから、先にENDLESS DREAMが先ね。
なんとか軽業を終えることが出来た。
後日、新聞にてウイニングライブで軽業を披露する、チームスピカのメンバーとして大々的に取り上げられることになった。