後日案の定怒られた。
というよりも、エアグルーヴに怒られている。
会長も出る幕がないようだ。ブーちゃんは呆れた顔でこちらを見ている。
「…で、聞いているのか」
「すみませんでした…」
こういう時は黙って聞くに限る。というよりも八割…いや二割は自分も悪いのだけれど。
啖呵を切っといてウイニングライブは軽業である。
拍子抜けもいいとこだ。だがこれしか出来ないのだ、しょうがない。
「ごめん、カイチョー。さすがのボクたちでも間に合わなかったよ〜…」
「あのトレーナー…蹴っ飛ばす…」
正座で足が痺れて前のめりに倒れる。
新聞には大々的に私の記事ばかり。ひれ伏す走者と私、更に大きい写真でウイニングライブを軽業で披露。なにこれ。
ふみ
「ヴ…ッ!!!」
足痺れたところをブーちゃんに踏まれた。鬼畜生である。
野太い声はご愛嬌に。
「でもアンタの軽業、久しぶりに見たな」
「いつぶりだったかしらね…?」
呻き声しか出ない。
足の感覚が戻るまで、何時になるのやら。
「…確かブライアンとレックスは幼馴染だったかな?」
「ああ。家が隣同士でな」
つんつん、と私の頭をつっつく。人の頭で遊んで楽しいのだろうか。
「思い出した…確か雨の日でかけっこ出来なくて、ブーちゃんたちの家のバランスボールの上で歩いたんだった」
「え、そんなことしてたの…?」
「ええ。その後逆立ちにも挑戦していつの間にか…」
「人の家の物で何をやっているんだ…」
「結構大ウケだったわよ。怒られたけど」
あの時はみんな、やんちゃだったもので。
最初は止めていたハヤちゃんは、楽々とバランスボールの上を歩く私に興奮して。
走れなくて拗ねていたブーちゃんは、自分もやると言い出して。
「あの驚異の体幹の良さはそこから来ていたのか…」
そこからどこから用意したのかビニールテープで綱渡りの代わりをして。
いつの間にか、軽業師・ステルラレックスの誕生に繋がってしまったのである。もちろん、危ないのでマネはしないように。
「まあでも流石に次のウイニングライブの練習はしてるから…その…すみません…」
「そういえば、次のレースはどこに出るのー?」
「朝日杯フューチュリティステークスね。その後にホープフルステークスにでるわよ」
「え、随分とスケジュールがハードじゃない?」
「私も思ったけど…走法の改善を少しやればいけるってトレーナーが」
「ええ…」
トレーナーのトレーニングプラス、自主トレ。
トレーニングは走法の改善、自主トレは呼吸を常にできるようにすること。
これは前から行っていたことであり、両方とも大分タイムが改善された。
この分なら行けるとのこと。
「まあでも、次の並走でスケジュールは変えるかもしれないわね。ダメだったらホープフルは止めて、朝日杯の前にサウジアラビアロイヤルカップにするし…ブーちゃん?」
「無理はするなよ」
「私をいったい幾つの子供だと…まあでも、今までの例があるものね。分かったわよ」
「ブライアンってレックスの事になると過保護になるよね…というかブーちゃんって呼ばれて…ぶっ!?」
「いたっ!?」
ブーちゃんと呼ばれていたことにからかったテイオーは口を引っぱたかれ、私も叩かれた。
「可愛いじゃないか、ブーちゃん…」
笑いこらえているエアグルーヴに…いや、最早堪えきれていない。
「……お前のせいだぞ、テル…!」
「まあまあ、ブライアン。喧嘩はするものじゃないよ…お」
ピン、と会長の耳がたった。なんだろうか。
「喧嘩…喧嘩。うん。ケンカはしちゃいけんか。ふふ」
「……さすがです、会長………」
生徒会室の空気が冷えきった。
エアグルーヴのフォローが、痛かった。