私の部屋は殺風景だった。
物はあまり持たないようにしていたし、物を捨てるのが好きな故に、何も無かった。
「アンタの部屋、本当に何も無いな」
「なんというかまあ…高校生にしては物が無さすぎるな」
「…そう?一応美容品はあるのだけれど」
ブラシ、テールオイル、ヘアオイル…あくまで身だしなみに必要なものである。
ハヤちゃん程ではないけど、髪もまあフワフワしているので付けている。
必要なものがあればそれでいいのだ。
服も3、4着あれば充分なもの。ダメになれば新しいのを買いに行けばいい話だ。
「まあ確かにそうだな」
「…………まったく」
ハヤちゃんは深いため息をついた。
「ブライアン、お前あれから服買っているのか?」
「…は?」
「まさかとは思うが…私のお下がりと前買った服だけとは言わないよな?」
面倒なことになった。
一度こうして火のついたハヤちゃんは誰にも止められない。
「服、買いに行くぞ。今週末にな」
「…今ので十分なんだけど」
「服がだいぶヨレヨレなんだが?」
「……ぐ…」
「…チッ、めんどうな…」
これは着せ替え人形になるしかない。
二人は決意する他なかった。
ショッピングモール。人が多い。
結局引きずられる形でショッピングモールに入ることになった。
「……おい、なんで手を繋ぐ必要があるんだ」
「お前たちは勝手にどこかに行くからな」
「すごい目立つ…いい歳した高校生が…」
最強姉妹と有名な二人は目立つ。それプラス、前のウイニングライブで軽業をした私である。絶対に悪い意味で目立つ。
「……くそっ」
ブーちゃんはもう機嫌が斜めである。私も異議申し立てしたい。
「…はあ…」
「よし、早速いくぞ」
だがここからは地獄だということを、私たちは知らなかった。
「着ろ」
「着ない」
「着ろ」
「着ない…!!」
ハヤちゃんは完全に別の方向で火がついた。
今、私が来ている服はフリフリだ。昔着ていたので最早何も思わないけどやはり、年齢的なものできつい。
しかも未だに親からもフリフリの服が送られる。
サイズも全然合わないので、申し訳ないが捨てている。そういえば最後に会ったのいつだろうか。
「…しょうがない、入るぞブライアン」
「!?おい、テル!!この頭でっかちを止めろ!!!」
「……諦めなさい」
「私の頭はでかくない。全く、お前は昔から…」
「待て…おい、やめろ!〜〜〜っ!!!!!」
試着室に入る2人を見届けた。
これもまあ目立つ目立つ。有名人は辛い。
ドタバタドタバタと試着室が揺れている。狭いのに暴れるからだ。
「ちょっとブーちゃん。試着室で暴れないのー」
「テルのバカ野郎!!!」
「こらブライアン!!服が破けるだろ!!!」
「バカ姉貴!どこ触ってるんだ!!」
その無意味な攻防はどこまでも続いた。
シャ、とカーテンを開かれた。
「…………」
完全に怒っている。耳が後ろに伏せられている。
服は私の色違いと言ったところか。
私が赤に対して、ブーちゃんはピンク。かつ髪型もポニーテールからツインテールにされている。
ハヤちゃんはもう着替えていた。色は黄色。
「ふむ、さすが私の妹だ。よく似合っている」
「ヒラヒラしやがって…!」
「ライブ衣装も着てんだからこれぐらい平気でしょ?」
「それとこれとは訳が違う…!」
しかしこれは双子コーデならぬ3つ子コーデだ。
なんかそれはそれで恥ずかしくも可愛い。
しかしここで、暗雲が立ちこめる。
「あれー?ブライアンさんだー!」
オレンジ髪の小さい子…マヤノトップガンがブーちゃんの名前を呼ぶ。
「マヤノ…!」
サッ、と青ざめた。
「…ハヤヒデ、レックス、あんたらどうしたの…」
「……タイシン??」
「ああ、これは…ハヤちゃんが変なスイッチ入っちゃって」
「ああ…」
我に返ったハヤちゃんはピシッ、と固まる。
タイシンは察したのか、哀れみの目でこちらを見る。
どうもここは知り合いの子も来るようで。
「おや、偶然だね」
「………なんだこれは」
会長と副会長が集結した。何これ。
ブーちゃんにとってはさらなる地獄だろう。
「ブライアンさんどうしたのその格好?かわいいー!!」
「ちが、これは姉貴が…!」
「タ、タイシン…何故ここに…!」
「ゲーセンで新しい音ゲーのやつ出たから遊んでたなんだけど。…ごめん、大分目立ってたから」
「君もそんな格好するんだな」
「ハヤちゃんが変なテンションになってたので。ああ、でも小さい頃は似たようなの着てましたよ」
「あまりはしゃぎすぎるなよ。こうして他の生徒も遊びに来ているからな」
「肝に銘じますわ。…あーあ、これは地獄絵図ね」
ふっ、と横を見ると、気を使って去ろうとするタイシンをハヤちゃんは必死に止め、マヤノトップガンの口を必死に抑えるブーちゃん。
事態を収拾するのに、副会長が止めにかかったのだった。