君と夢見た明日へと ──トップウマドルを目指して☆── 作:キビタキ
この日ばかりは目覚まし時計もお休みだった。
若草色のカーテンから漏れる柔らかな光。それにまぶたを優しく撫でられると、魔法をかけられたように目が覚める。
満足のいくまで安眠を貪っていた。昨日の疲れもかなりあったのだと思う。不思議とライブを寝坊してしまう心配だけはなかった。
起きた時には八時を回っていた。開始予定の十時まではまだ余裕があるし、ゆっくりと支度を始める。
朝食を軽く済まし、ほざぼさ頭を直し、歯を磨いて、私服に着替える。私服といっても、いつもと変わらない上下ジャージ姿ではあるが…。というのも、今はこれくらいしか着る物が無い。最低限必要な衣服以外は、こちらに引っ越してから買い足そうと考えていたからだ。
日用品も間に合わせだし、ダンボールに入れっぱなしの荷物の整理もまだ手つかずだ。そのため、部屋はまだ引っ越し直後と変わらず、生活感に乏しいままである。
(ライブが終わったら色々と済ませないとな…)
明日からはスカウト活動で忙しくなり、それどころではなくなるだろう。
いや、本来であれば今日もそれに打ち込むべきなのかもしれない。例えば、自主練習を見に行くとか、食堂でコミュニケーションを図りに行くとか。
休日といえど、授業がないというだけで、生徒たちは自由に過ごしている。外出を楽しむ子がそれなりにいるにしても、学院内で過ごす娘もそこそこいるはずだ。
何にしても、ファル子のライブを済ませてからの話にはなるが…。
スマホに表示された時刻をちらっと見やる。少し早いように思えたが、じっと待つというのはことのほか胸の奥がざわついて仕方がない。昨日の一件があるだけになおさらだ。
動いていた方がそれを紛らわせるかもしれない。そう思った時には自室を後にしていた。
休日の学院はやはり静かだった。トレーナー寮を出る時、私服姿の先輩トレーナーを見かけたのと、外周を走るジャージ姿の生徒と何人かすれ違ったくらいだ。
職員の姿もなければ、制服を着た娘もいない。トレーニング施設に行けば誰かいるのだろうが、道中にそういったものもない。
正門付近にたどり着くと、ようやく私服姿の生徒たちがちらほらと見受けられた。
最速を目指すため日々厳しいトレーニングをこなすウマ娘といっても、やはりそこは年頃の少女である。年相応におめかしして、おしゃれを楽しんでいるように見える。一人だったり、グループだったり、人数はまちまちだが、休日を思い思いに過ごすのだろう。
ふと、ここでファル子と出会ってしまうかもしれないと身構えたが、幸か不幸か、彼女の姿を見かけることはなかった。
ポケットからさっとスマホを取り出す。さすがに今日は忘れていない。
文明の利器の何と便利なことだろうか。画面に示された道順に沿って、ただ歩くだけなのだから。
ちなみに、ファル子から教えてもらった近道はさすがに使っていない。
(あれ絶対誰かの家の庭を横切ってたからな…)
急いでいる時ならいいとして…いや、急いでいようがいまいが使わない方がいいだろう。本能がそんな警鐘を鳴らしている。
わずかに寒さを残す曇り空の下、自分のペースをのんびりと刻んでいく。どこかで道草を食っても間に合うほど時間はあったが、浮気することなく一途なナビと添い遂げることとなった。
薄暗く、ひんやりとした高架下は、一昨日ファル子と初めて会った場所。予定時刻まではまだ三十分もあった。
やはりというか、そこには誰もいなかった。
小さい子供が隠れ家的な空間として遊びそうな雰囲気もあるが、遊具の類や遊んだ形跡は全くない。
側を流れる川も、何の音も立てずにゆらゆらと水面を揺らしているだけだ。聞こえる音があるとしたら、鳥のさえずりか、ごくまれに高架を通行する自動車の走行音くらいである。
都会の喧騒と隔絶された貴重な穴場のように思えてならない。
コンクリートの土手に座り込み、その時が来るのを待つことにした。
唯一心配なのは、彼女が来てくれるのかということだった。なにせ昨日の今日なのだ。会いたくないと思われていても仕方がない。もし来てくれたとしても、どんな顔をして、どんな声をかければいいのか、正直迷っている。
早く着き過ぎたことで時間はたっぷりあったが、それは心を落ち着かせることに繋がらず、逆に悪い想像力をかき立てるのには十分すぎた。
刻一刻と迫るその時間。いまだに彼女は現れない。不安が全身に覆い被さって、鼓動が早くなっていくのが分かる。
そして、手に持つそれが十時を告げた。
「おはよう☆」
後ろから朗らかな声が聞こえた。
振り返りながら見上げると、そこにはつややかな栗色の髪をしたウマ娘。二つの逆立つ耳が元気そうに揺れている。
「おはよう」
まず交わされたのは一言ずつ。
彼女はいつもと変わらない様子でにこにこしている。
個性的なファッション…というべきだろうか。手首まですっぽりと覆うピンクの長袖セーターには、大きくハートマークが描かれている。淡いブラウンのミニスカートと、白のニーハイソックスの間から覗く肌色は、きらりと眩しい。
ただ、かなり幼い印象を与える。彼女が憧れているであろうアイドルっぽさを感じないわけでもないが、少なくともあでやかさとは無縁に思える。
彼女はそっと、俺の隣に腰を下ろした。
静寂が訪れる。
せっかく出会えたはずなのに、なぜか会話が続かなかった。やはり昨日のことが尾を引いているのだろう。
ただ、居心地が悪いというわけではなかった。春の穏やかな朝を、静かなこの場所で二人して満喫しているような、そんな雰囲気だった。
秒針がコースを一周したくらいだと思う。
彼女を泣かせてしまった負い目がそうさせたのだろうか。先に口を開いたのはこちらだった。
「…昨日はごめんな」
破られた均衡。止まっていた二人の時間が、少しずつ動き出した。
「ううん、気にしてないよ。トレーナーさんの提案は当然のことだし…」
少しだけ耳をしゅんとさせながら、俯き加減にほっぺたをかいている。
「今日はさすがに来てくれないよね…って思ってたから、会えただけでも嬉しい」
「ああ、見に行くって約束したからな」
その言葉に、彼女はゆっくりと顔を上げ、薄暗い水面を見つめる。
「私の方こそごめんなさいだよ。負けちゃった悔しさと情けなさが爆発しちゃってさ…」
「いや、俺はあれで良かったって、今なら思えるかな」
きょとんとした顔がこちらへと向けられる。
「どういうこと?」
「何ていうか…感情をぶつけてくれるくらいには心を許してくれてるんだなって。あんなところで泣かせちゃったことはごめんだけど…」
もし初対面だったらああはならなかったと思う。少しずつお互いのことを分かり合えてきたからこその、爆発だったんじゃないだろうか。とはいえ、それはただの自惚れかもしれないが…。
「確かに、見ず知らずの人に言われるよりかは、ショックだったかな…」
どこか不貞腐れたように、彼女はわざとらしくぷいっと顔を背けてみせた。
慌てて「本当にごめんな」と謝ると、にんまりとした顔で「大丈夫だよ☆」と返してくれた。いつもの様子で安心した。
「他のトレーナーさんや教官さんからもね、今まで何度もダートで走らないかって誘われたの。私も砂の上が走りやすいって分かってた。でも…全部断ってきちゃった」
「それがファル子の夢なら仕方ないさ。ただ、トレーナーは生徒の夢を背負わないといけないからな」
「ははは…その通りだね。このままだと難しすぎて叶わない夢だもん、誰も背負ってくれるわけないよね」
彼女の乾いた笑いが、容赦なく俺の胸を締め付ける。
ダートなら可能性はある…とはこの場で言えなかった。そんなことは本人がよく分かっていること。それが紛うことなき事実だからこそ、その葛藤はより深いものになっている気がする。
彼女が芝にこだわる理由が分かれば、解決の糸口になるかもしれない。まずはそれを見つけて、俺のできる限りのことをしたい。もし、その上で心が変わらなければ、その時は…。
考えたくもないそれを振り払うようにして、すっくと立ち上がる。
「ライブ前にそんな顔、似合わない。ファル子はウマドルなんだろ?」
「…そうだよね。ファル子ウマドルだもん! めそめそして、ファンをがっかりさせちゃダメだよね!」
つられるように彼女も元気よく立ち上がった。お尻をぽんぽんとはたきながら、尻尾はそれを邪魔しないよう器用に跳ね回っている。
「それじゃあ、早速始めよっか☆」
天真爛漫にウィンクを決めたファル子は、一昨日と同じ、土手沿いの小高い場所へと駆け出す。そこが彼女にとってのセンターステージ。
そして俺は、彼女の目の前、定位置である最前ドセンへと陣取る。
観客はたった一人。その一人のためのライブが、今幕を開けた。
「一曲目は…じゃじゃじゃじゃーん!『winnning the soul』で〜す☆」
ウマドルの明るい声とファンの拍手が、即席のステージで密やかに響く。
(『winnning the soul』か…もうすぐ皐月賞だしな)
それは、クラシック三冠に勝利した者だけが歌唱を許される楽曲。すなわち、皐月賞、日本ダービー、菊花賞のいずれかにおいて、三着以内で走り抜けたウマ娘だけがステージで歌える曲だ。
つまり、一年のうちにこれを本番で披露できるのは最大でも9人しかいない。ファル子に限らず、トゥインクル・シリーズを目指すウマ娘にとってまさに憧れのライブ曲。誰もがそれを超満員のステージで歌う輝かしい未来を夢見ているだろう。
「さすがに音楽無しは寂しいから、スマホで流すね☆」
慣れた手付きでそれを操作し、少し離れたところ立てかけた。
目をつぶり、全身に緊張感をまとわせて、いかにも準備万端といった様子である。
(ん…ちょっと待て)
ふと、あることに気づいてしまった。
(その格好で踊るってことだよな…)
彼女が下半身に身につけているそれは、トレセン学院の制服のそれより遥かに短い。
しかも、彼女は俺から見て少し高い場所にいる。自然と下から見上げる形になってしまい、なおさら気になってしまう。
そうこう考えているうちに、音量全開で流れ始めた音楽。激しくも静やかなイントロに合わせて、しなやかに躍動する四肢。そして歌い出す直前、くるりと一回転してみせると、それは遠心力でふわりと舞い上がった。
もちろん、その下が見られてもいいものであることは承知しているし、実際そうなっているのだが…。
(何というか…目のやり場に困るな…)
目の前の少女は美しく澄んだ歌声を響かせながら、軽快なステップを刻む。その度に露わになる健康的な大腿。
それはとてつもない脚力を生み出す源。鍛え抜かれた筋肉が眠りし絶対的な領域。その反面、見るからにすべすべとした美しい素肌は、潜在的な探究心をこれでもかというほどにそそる。
とはいっても、昨日の体操服姿と露出している面積は大して変わらないはずなのだ。白のニーハイソックスを着用している点も昨日と同じである。それが、衣装一つで印象ががらりと変わってしまうというのも、存外不思議なものである。
(…って、何考えてるんだろうな、俺は…)
落ち着いているのか、動揺しているのか、はたまた幸福に感じているのか分からない心境を、合いの手で何とかごまかす。
ただ、一つだけ間違いないのは、無意識に、知らず知らずのうちに、本能的に、視線がそこにいってしまうということだ。
こればかりはもうどうしようもない。
(まぁ、本人が気にしていないことを、俺が気にするのも野暮だよな…)
彼女に限らず、他のアイドルも魅惑的なステージ衣装を着用することを考えれば、この格好が特段おかしいわけではない。彼女も誰かに見られるのを承知でそれを着てきたのだから、こちらが恥ずかしがったり遠慮したりする必要はないはずなのだが…。
無心を意識しながら、曲が終わるまで破れかぶれに手を叩き続けていた。
「手拍子ありがと〜☆ やっぱり誰か見てくれてるのって最高だね♪」
『winnning the soul』を披露し終えた彼女は、手を小さく振りながら満面の笑みを振りまいていた。
ダンスのキレは良かったし、歌もかなり上手だった。人に自信を持って見せられるほどに練習を重ねていることは、ひしひしと伝わってくる。
できることなら本番のレースで見てみたい。そう思ってしまうほどに、彼女のパフォーマンスは素晴らしかった。
「何かリクエストがあれば踊っちゃうよ☆」
スマホをひょいと拾い上げると、今か今かといった眼差しでこちらを見やる彼女。
ちょっとだけ考え込む振りをして、こう答えた。
「うーん、そうだな…どんな曲が入ってるか見せてもらって構わないか?」
「は〜い! どうぞ☆」
彼女はすたすたとステージから駆け下り、スマホを手渡してくれた。いかにも彼女好みのピンク色をしたスマホカバーには、これでもかと言わんばかりのデコパーツが装飾されている。
一画面には収まりきらないほどの楽曲一覧。適当に上下にスクロールしてみる。見た感じ、おそらくほとんどのライブ曲が網羅されているようだ。
ウイニングライブには多種多様な楽曲が存在しているが、重賞競走では使用されるものは決まっている。
思いがけず、一つの曲が目に止まる。その曲はG1のダートレースでしか歌われない曲。
それを知らないふりして水を向ける。
「へぇ、俺の知らない曲もいっぱいあるな。この曲、タイトルがかっこいいな」
指差す先には『UNLIMITED IMPACT』。
「それにする? ちょっと寂しい感じの曲だけど、勇気が湧いてくる歌だよ。ファル子のお気に入りなの☆」
特におかしな反応はなかった。それどころか、彼女の中では好きな部類に入るらしい。どうやらライブ曲に関しては芝もダートもないようだ。
「だったらそれをお願いするよ」
「オッケー☆」
言い終えるが先か、動き出すのが先か、ステージ上へさっと戻ると、先程と同じようにスマホをセットし、始まりのポーズを取る。
彼女の顔はいつの間にか真剣なものに変わっていた。
どこか切なさを感じさせる出だし。まるで雨に打たれているような情景が浮かぶ。
劣勢、逆境、絶望。たとえどんな困難が待ち受けていても、立ち向かっていくたくましさをその歌に乗せて彼女は舞う。前を向き、胸を張り、いつだってその秘めたる思いは変わらない。そんな素敵な歌だった。
彼女が将来披露するかもしれないそれを、俺はしっかりと目に焼き付けていた。
物事に夢中になると、時はあっという間に過ぎていくものである。
どれくらいのライブパフォーマンスを披露してくれただろう。ステージで躍動する彼女の瞳には、初めて見た時と変わらないきらきらとした輝きが常に宿っていた。
ラストに歌うと決めた『Make debut!』を終えた時には、お互い達成感に満たされていた。
「応援ありがと〜☆ 皆のウマドル、スマートファルコンでした♪」
いつものように、両手をハートの形に合わせて決めポーズを取る彼女。その額にはほんの少し汗が浮かんでいた。
「お疲れ様。凄く楽しかったよ」
一方の俺も、手拍子を繰り返した手の平と、発声を繰り返した喉に疲れを感じるほどにはエキサイトした。
というのも、ライブの合間に彼女こだわりのコーレスを一通り教わり、実践していたのだ。
周りに誰もいなかったからだろう。気後れすることなく声を上げ、ライブに没頭することができた。人前ではできなかっただろうなと、我ながら気恥ずかしさを覚える。もし彼女のファンを続けるなら、いつかはこれを克服しないといけないとも思う。
(心の底からライブが好きなんだな…俺も、ファル子も)
額の汗を拭き取りながら、彼女は満足そうに微笑んでいる。俺も自分の顔が綻んでいるのを確かに感じる。ライブの余韻に浸っているだけで心地良い。
二人にとって、とても幸せな時間を過ごせたことは間違いなかった。
「あっ! そうそう、これ渡しておくね」
思い出したように駆け下りてきた彼女の手には、一枚の紙が握られていた。
それは新しいフライヤー。一昨日渡されたものと変わらず、彼女らしい世界観で構成されたそれは、カラフルで丸っこい可愛らしさにあふれている。
その中で、一際異彩を放っていたイラストに目が留まる。
「この動物みたいなのは何?」
それは四足歩行と思われる、茶色の動物のような何か。耳と尻尾はウマ娘の持つものと似ていて、頭と長い首の上にはふさふさとした毛が生えている。猫とも犬とも牛とも違う。強いて言えば、キリンを無理やり縦に縮めたような、そんなシルエット。
「それね、『オウマサン』っていうの。可愛いでしょっ☆」
自信満々にそう答えてくれたが、結局何なのかはよく分からない。一丁前に名前までついているようだ。
何だか不思議だけれど、確かに可愛いイラストだ。
(名前はそんなに可愛くないような気がするけどな…)
独特なネーミングセンスに、内心首をひねっていた。
「…ってか、明日も早速あるのか…」
ライブの日付に目を通すと、明日の月曜から土曜の放課後全てに予定が入っている。
「だって、来週からは春のファン感謝祭の準備で忙しくなるし、それに…」
一呼吸置いて、どこか恥ずかしそうな顔をする。
「ファン第一号さんが待ってるかなぁって」
両手の指先同士をぽんぽんと合わせながら、その視線は俺の足元へと向けられている。
「ああ、確かに楽しみにしてる。でも、明日からは来れるか分からないぞ」
「うん、分かってるよ。良い娘を見つけないとだもんね」
手を後ろに回して、彼女は俺の視界から逃れるように身をよじらせる。その横顔はそこはかとなくよそよそしい。
「だから一人でもライブ頑張るから。それに、もし誰かにスカウトされちゃったら、気軽にライブもできなくなるだろうし…まぁ、それがいつになるかは分からないけど…」
強がりなのか、寂しさなのか、それとも気を引こうとしているのか、真意を測りかねる意味深な言葉。
正直なところ駆け引きは得意ではないし、逃げる彼女をどこまでも追いかける覚悟もまだ無い。
だから、今思うことだけを口にした。
「例えばの話だけど…もし俺がファル子の担当トレーナーだったら、ライブの時間は削らないよ」
「…ほんとに?」
つややかな尻尾が、定め無く揺れ動いている。
もう一度だけフライヤーの日付と時刻に目をやると、それを折り畳んで手帳の中へと挟み込む。
「その代わり、トレーニングを兼ねた激しくて楽しいライブを提案させてもらうけどな」
「うん…ありがとう☆」
感謝されることを言ったつもりはないのだが、なぜか嬉しそうに頬を緩ませている。
次いで、こちらへ一歩だけ近寄ると、いそいそと両耳を上下させる。
「最後に一回だけ…コーレスしてもいい?」
「ああ、いつでもいいぞ」
そう答えるやいなや、彼女は口に手を添えた。
「ファル子が逃げたら〜?」
「追うしかな〜い!」
「世界の果てまで追いかけて☆ スマートファルコンでした〜♪」
高架下に一際楽しげな声が残響する。
二人が織り成すそれは、春の穏やかな風によく似て、ぽかぽかと温かさをまとっていた。
「…それでね、トレーナーさん。一つお願いしたいことがあるんだけど…」
もじもじと落ち着かない様子で、彼女はいじらしい笑顔をこちらへと向けたのだった。
お疲れ様でした。
ファル子ちゃんの私服ってなかなか個性的ですよね。
次回はあの娘が再登場。