ガンダムビルドファイターズAMBITIOUS外伝~南風激闘伝~ 作:ちくわぶみん
『Please set your GP BASE』
案内に従い、私はGPベースをセットする。
カバンの中から取り出したのは、ガンプラバトルに向けて完成させたばかりの新品だ。
でも大丈夫。ガンプラバトルはダメージレベルがあって、低く設定しておけば壊れる事は──
『ダメージレベルは当然Aだぜ!ビビんじゃねぇぞ!ファーッ!』
『ええええええッ!?』
そう都合よくはならないか~……。
ダメダメ!逃げの姿勢じゃ勝てるものも勝てないじゃん!
操作は動画で何度も見て来た。その通りにやればきっと動くはず!
「取り敢えず、エミカちゃんはとにかく逃げ回りなさい。あいつら倒すのは私に任せて」
「でもそれじゃ、先輩が……」
「甘く見ないで頂戴。そんなに気になるなら、囮としてあいつらを引き付けるってつもりで逃げるのよ」
「な、なるほど……」
じゃあ、戦闘は先輩に任せて、私は囮と自衛に徹しよう。
私の機体なら
「スナガワ・レイコ。ブレイズザクインヴォーカー、出るわよ!」
「ナガミネ・エミカ。アトラスガンダム、行きます!」
ガンダムを愛する者なら誰もが憧れるロマンの一つ、発進カタパルト。
私のガンプラが今、初めて飛び立つ!
カタパルトを抜けると、そこは一面に緑と土色の広がる平原だった。
うわぁ……すっごく綺麗!視界の先を見渡すと街もあるし、ジオラマよりもリアルで、まるで本物みたい。
ここに自分のガンプラを降り立たせられるんだ……うわ~、写真撮りたいなぁ……。
「感心してる場合じゃないわよ。平原フィールドには、遮蔽物が少ないわ。街まで急がないと、すぐに狙われるわよ!」
「ああ、そうでした!急いで移動します!」
ドルルルルルルル……
その時、バイクのような走行音がこっちへ向かって近付いてくる音がした。
音のする方角を見ると、土煙が上がっている。
あれは……砲台が付いたでっかいタイヤと、それに乗った黄色い短足のMS……。
アインラッドに乗ったゲドラフじゃん!?
「エミカちゃん、本気で逃げなきゃ死ぬわよ!!」
「わ、分かってますぅ!!」
指示通り、サブレッグを展開して加速する。
取り敢えず市街地に逃げ込んで、ゲドラフの注意をこっちに向けよう!
『ヒャッハー!追いかけっこの始まりだぜぇ~!』
『オラオラー!死神様のお通りだ~!』
それはデスサイズでしょ!!
今の声からしてゲドラフ使ってるのは、さっきのリーゼントとモヒカンだ。
もう1人、あとハッツンって人の機体は……。
「ファーッ!!」
「させるかッ!」
すごい速度で突っ込んできた機体を、レイコ先輩のブレイズザクインヴォーカーがビームトマホークで受け止める。
「行って!!」
「はいッ!!」
私はその場をレイコ先輩に任せ、全力で市街地の方へと向かっていった。
『ちぇっ、邪魔しやがって。俺はアイツと喧嘩してぇんだよ!』
「そうはいかないね。アンタの相手はこのアタシさ」
『ファッ!仕方ねぇな。まずはお前と遊んでやるぜッ!この俺の最強ガンプラ、ワスプガンダムがなッ!!』
ワスプガンダム、か。
見たところ頭部の形状と、背部にある翅のようなGNビット、腰に見える楕円状のGNドライブから察するに、ベース機はガンダムアルテミーか。
外見の特徴は、体付きが男性型になったアルテミーといった所だろう。
そして装備は……。
『くらえッ!
「なるほど、ヒートランスッ!」
戦闘スタイルは近接型のようだ。トールギスのヒートランスを手に、真っ直ぐに突っ込んでくる。
でも、そんな短調な攻撃じゃ届きゃしないよ!
向かってくるランスを素早く躱し、ビームトマホークを振り下ろす。
当たると確信した次の瞬間、背部のビットが光を放った。
「ッ!?」
次の瞬間、一筋の光がメインカメラをかすめていった。
どうやら、背部のGNビットをそのまま固定砲台にしたらしい。
「へぇ、やるじゃないか」
『あんまし舐めてっと、痛い目見るぜ?ファーッ!』
ワスプガンダムは方向転換すると、再びこちらへと突っ込んでくる。
こいつ、言動はバカっぽいけど腕はいいわね。
「なら、私を秒殺してみなさいな。可愛い可愛いミツバチちゃん!」
『ファッ、言ってろ量産機ッ!テメェなんかサクッと串刺しにしてやるぜ!』
今度は突きではなく振り下ろし。ビームジャベリンと違って、形から剣に近い使い方ができるのがヒートランスの強みだ。実体武器だからバリアも貫くし、振り下ろせばそれなりに重量も乗せられる。
だが、アタシのトマホークはビーム刃と実体刃、どっちも使えるのさッ!
振り下ろされたジャベリンに実体刃をぶつけて鍔迫り合う。
やれやれ。すぐに終わるかと思ったけど、こいつを相手するのには思ってたより時間がかかりそうだ。
エミカちゃんを支援しに行けないのは気掛かりだけど……まあ、窮地での成長ってのも無いわけじゃない。どちらにせよ、こいつを倒して行かないとね。
アタシの期待、裏切んじゃないわよ?
□□□
「どひぇぇぇぇぇ!!来てる来てる来てるぅぅぅ!!」
背後から迫るタイヤの音。アインラッドがビームを放ちながら、地面をどんどん踏み荒らしていく。
建物の陰に隠れながら、レールガンで狙撃すればなんとか行けると思ったのに!!
アインラッドをヨーヨーみたいにして建物壊してくるなんて……。
それにレールガン、全然当たらない!
狙いは外れるし、姿勢がダメなのか反動でコケるし!
しかもアトラスのサブレッグ、慣れてないせいで全然飛べなくて走っちゃってるし!!
そうやって、理想と現実のギャップに打ちのめされた私は今……ゲドラフに囲まれていた。
『ヘイヘーイ、どこ行くんだいお嬢ちゃ~ん』
『俺らと遊ぼうぜぇ~』
周囲を2機のアインラッドでグルグルと回る……ヤンキーものでよく見る追い込み方だ。
逃げ道は上にしかない。でも、今の私じゃアトラスを上手く飛ばせない……。
『もう逃げられないって諦めたか?』
『んだよ、もう終わりかよぉ~』
でも、ここで飛べなきゃ逆転すらできない!
やってみせろよ、エミカ!
なんとでもなるはずだ!
「うおおおおおおお!!」
『なっ!?』
『こいつ、まさか……!?』
頭上めがけて跳躍!
サブレッグを両足裏に展開し、アトラスは今、空へ──
というわけにはいかず……姿勢制御もままならないアトラスは、そのまま浮遊しながら不格好に踊り始めた。
『『ブレイクダンスだと!?』』
「きゃあああああああああ!!止ぉぉめぇぇてぇぇぇぇぇ!!」
ブースターの推力に振り回されるがまま、空中ブレイクダンスのように両足を振り回すアトラス。
そしてその結果、両足はブースターと共にアインラッドのど真ん中へ。
乗っていたゲドラフ2機を蹴り飛ばし、アインラッドは横転した。
『『ぐああああああああ!!』』
「止まれぇぇぇぇ!!」
何とかブースターを止め、地面へと降りる事に成功する。
いや、正確には落ちたって言うべきだけどね……。危なかった……このままだと延々と回り続けるところだった。
「って、あれ?」
よく見ると、ゲドラフの一機が横転したアインラッドの下敷きになって動けなくなっている。
これは……ひょっとして……?
「えいっ」
『ぐあああああ!!』
この至近距離で外すわけもなく、レールガンでコックピット部を貫かれ、ゲドラフは爆散した。
「やった……私、勝てた!!」
偶然とはいえ、勝利には違いない。
初の撃墜に、私は心を躍らせた。
「やったーーー!倒せたー!」
『ぬーがや!?』
「ひぇっ!?」
私が喜びのあまり小躍りしていた次の瞬間、もう一機のゲドラフがキレ気味に叫んだ。
ちなみに、「ぬーがや」っていうのは沖縄方言で、「なんだ」って意味。
沖縄のヤンキーがメンチ切る時によく使う言葉でもある。
あ、でも今のはメンチっていうより、本気で驚いてる感じだ。
誰より一番驚いてるのは私なんだけど。
『素人が調子乗ってんじゃねぇ!!』
「ひぇぇぇぇぇ!!」
何かキレてる!?
『リーゼンの仇だ!轢き潰してミンチにしてやらぁ!!』
「ガンプラはミンチになりませんけどー!?」
やっば!?怒りに任せてビームライフル乱射してきた!?
幸い、ゲドラフのビームライフルはバレルが短く、ほぼビームピストルに近い。威力も射程も、一般的なライフルに比べて低いのは幸いだ。
シールドで難なく防げる。あとはこのまま狙いを定めてレールガンで……。
『少しビビらせれば、すぐに守りに徹する……やっぱり素人はチョロいもんだぜぇ!』
なっ、狙いは私が守りに入ること!?
見るとゲドラフは、私に発砲しながら倒れたアインラッドを立て直しており、ちょうど乗り込んだところだった。
『くらいやがれ!滅殺ローリングタイヤアターック!!』
とてつもなくダサいネーミングの技名を叫び、アインラッドを高速でバックさせる。
そして十分な距離を取ると、発砲と共にビームシールドを展開しながら、私の方へ向かって一直線に加速した。
『アクセル全開ッ!これで潰れろぉぉぉぉぉ!!』
眼前に迫る大車輪。5秒もすれば、アトラスはこれに轢かれて敗北するだろう。
慣れてる人ならここであっさり回避してみせるんだろうけど、生憎、私は全然素人なので避けても直撃を逃れるだけなのは目に見えている。多分片足持ってかれて、次の一撃で轢かれて敗北する。向こうもそうなると読んでいるはずだ。
そして、ゲドラフの両腕から発生するビームシールドは、展開すれば360度全方位からの攻撃を防ぐことが出来る完全防御を可能とする。アインラッドに乗って使用すれば、その走りを止める事はほぼ不可能だ。
ビーム兵器は当然弾くし、実体兵器も真横からの攻撃でなければある程度防ぐ事ができる。
まさに当たれば必殺、自動車が目の前に突っ込んでくるのと変わらない攻撃方法だ。
でも、逃げるのはここで終わりだ。
何故なら──
「近付いてくれれば、私の射程だ!!」
私は迫ってくるアインラッドへと、盾を真っ直ぐに向ける。
そして、アトラスの盾に装備された秘密の装備を起動した。
「メデューサの矢、発射!!」
『ぬ、ぬぅぅぅぅぅ!?』
メデューサの矢。アトラスガンダムのシールドに搭載された隠し装備だ。
盾から発射された無数の針が、ビームシールドを抜けてアインラッドに突き刺さる。
そして、突き刺さった針からゲル状の物質が噴出され、機体の動きを阻害する。
『お、おいおいどうしたアインラッド!?っああああああ!?ブレーキが効かねぇ!!』
あっという間にアインラッドは動けなくなり、付着したゲルでスリップ。
進路を外れて市街地の方へと向かっていく。やった!作戦大成功!
『ブレーキ!ブレーーーーキ!!うわあああああああああ!!』
そのままビルに突っ込んで、何とか止まった……と思ったら──
『ぐああああああ!!ビルが!ビルがあああ──』
アインラッドを降りた所を、ビルの倒壊に巻き込まれ、そのまま瓦礫に潰されてしまった……。
2体目も撃墜しちゃった……。
「やったーーーー!!また勝ったーーーー!!」
初めてのバトルなのに、2体も撃墜しちゃった!!
ひょっとして私、才能あるのかな?
まあ、ほぼ偶然で倒せたようなものなんだけどね……。
でも、勝ちは勝ちだもんね!イエイ☆
っと、レイコ先輩に伝えないと。
「レイコ先輩!何とか勝てました!」
『へぇ、やるじゃない。予想以上に見込みがあるわね、エミカちゃん』
「えへへ~、それほどでも~」
『ちょっと待っててね。もう少しでこっちも終わるわ』
あ……先輩、戦ってる途中なんだ。邪魔しちゃいけないよね。
集中できるよう、回線を切ろうとする私。
その時だった。
……私は、ガンプラヤンキーの事を甘く見ていた事を思い知らされるのである。
登場人物紹介②
スナガワ・レイコ:髪を後頭部で団子に纏めた副部長。模型部の立て直しを諦めておらず、シロマ部長を廃部から踏みとどまらせている。怒らせると怖い人。シロマ部長の消極的な態度に呆れつつも、なんとか模型部を引っ張ってきた頼れる姐さん。
使用ガンプラはブレイズザクインヴォーカー。
よく見るとガンプラには「陰暴渦阿」とペイントされている。