ガンダムビルドファイターズAMBITIOUS外伝~南風激闘伝~   作:ちくわぶみん

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第3話『無法の乱入者』

エミカのアトラスがゲドラフ2機を相手してる頃、レイコのブレイズザクインヴォーカーと、ハッツンのワスプガンダムの戦いは白熱していた。

 

「アンタ、意外とやるじゃないか。ガンプラヤンキーなのが惜しいくらいだ」

『ぜぇ……ぜぇ……テメーこそ何なんだ!?()()()()()()()()()()()()()()()()()!?』

「使い方がまだまだ甘いのさ。初心者以上だが中級未満。だけど反射神経は悪くない。アンタは磨けばもっと強くなれるよ」

『こ、こいつ……!』

 

何度ランスを突き出しても、トランザムで速度を上げて突っ込んでも、ワスプの攻撃がインヴォーカーに届く事はなかった。

 

ただ、インヴォーカーの方もトランザム中のワスプには攻撃がギリギリのところで当たらず、勝負が付かない状態であった。

 

まるで掌で弄ばれているような感覚と、それでいて実力を伺わせる戦い方。ハッツンは焦りを感じ始めていた。

 

「けど、そろそろ終わりだよ。アンタの動きはもう覚えた。次は外さない」

『や、やらせねーし!そっちこそ、次で決めてやるぜ!!』

 

睨み合う両者。互いに得物をしっかり握り、次の一手に備えて構える。

 

そして……二機が同時に動く──その直前。

 

『Intrusion』

 

けたたましいアラートと共に、赤文字で表記されたのは「乱入」を意味する文字だった。

 

「ら、乱入!?」

『ファッ!?おい、どういう事だよ!?』

「アタシが知るわけないだろ!?アンタの方じゃないのか!?」

『俺だって知るわけ……ファーッ!?バトロワモードになってやがる!?』

「なんだって!?」

 

バトルロワイヤルモード。それは、チーム戦とは別に設定された、ガンプラバトルのシステムの一つである。

 

チーム戦モードは最大3人でチームを組んで戦うモードで、最大4組まで参加出来る。

だが、バトルロワイヤルモードでは、設定された定員数までなら途中参加OKであり、いわゆる乱戦好きなバトルジャンキー向けのモードだ。

 

そして、マナーの悪いガンプラバトラーの中には、口ではチーム戦と言いつつも、こっそりバトロワモードに設定し、乱入を悪用する者もいるのだとか……。

 

まずい、とレイコが気付いた時には既に遅かった。

 

ドォォォォン!!

 

「くっ!?」

 

乱入者の不意打ちが、背部のブレイズウィザードに被弾したのを察し、レイコはウィザードを切り離す。

 

分離と同時にウィザードに回し蹴りを当てると、ウィザード内のミサイルが誘爆し、空中で爆散した。

 

爆煙に紛れて着地すると、レイコは周囲を見回し、敵影を探す。

フィールドは平原だ。市街地から離れていれば、フィールド端の岩陰を除いて隠れる場所はほぼない。

 

そして、乱入者はすぐに見つかった。

バズーカを構えたグレイズが、岩陰から顔を覗かせていたのだ。

 

「やってくれたね。お返しだよッ!」

 

次弾を撃たれる前にと、レイコはザクインヴォーカーを加速させ、グレイズの方へと接近する。

 

その時、またしてもアラートと共に『Intrusion』の文字か表示された。

 

「乱入者がもう1人ッ!?」

『イィィィィヤッフゥゥゥゥゥ!』

 

頭上からの影に、回避行動をとる。

直後、地盤を砕いて降り立った黒い巨体が、大地を揺らして姿を現す。

 

「こいつは……グレイズ・アイン!?」

 

アニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場する武力組織、ギャラルホルンの量産機グレイズ。

そのグレイズと同系統でありながら、通常のMSと比べて1.5倍近くの巨躯を有する漆黒の狂戦士。

 

グレイズ・アイン。オルフェンズの物語に於いては、1stシーズン最後の敵として現れたMSである。

 

『ヒャッハー!!面白そうなことしてんじゃねぇか!』

 

雄叫びを上げるグレイズアインは、ザクインヴォーカーを見ると、両手に大型アックスを構えた。

 

『呼ばれたもんで、遊びに来てやったぜぇ~!』

『随分とダチを可愛がってくれたってなぁ!?』

『助っ人参上ってやつだ。禁止はされてねぇだろ?』

 

見れば、グレイズはもう一機いるではないか。

先に抜けたモヒカンとリーゼントで2人分の空きができ、レイコとエミカが2人チームだった事で空いた枠が1人分。

その席に居たのは、パンチパーマとニグロ、そして丸刈りの3人組。おそらく丸刈りがグレイズ・アインのファイターだ。

 

バトルロイヤルでは途中参戦も認められているとはいえ、これはあまりにも無法である。

 

「おいおい、2vs4だなんてちょっとズルくないか?」

『ファーッ!どういうつもりだよテメェら!俺の喧嘩に出しゃばってくんじゃねぇよ!』

『知るかってんだ!呼んだのはテメーらだろうが!あぁん?』

『ファッ!?俺はテメーらなんか読んだ覚えは……』

 

どうやら、あちらにも何やら事情があるらしいが、それはレイコに関係ない。

 

レイコが真っ先に狙いに行ったのは、バズーカを持ったグレイズ……以下、グレイズAだった。

 

「くっちゃべってる暇があんのかよッ!」

「させるかよッ!」

 

しかし、振り下ろしたトマホークは、割り込んできたもう一機のグレイズ……グレイズBが持つ、バット型のメイスに防がれる。

 

次の瞬間、ザクインヴォークの腰部に装備されているレールガンが屹立し、至近距離からグレイズBを射抜く。

怯んだ瞬間、トマホークを横薙ぎに払い、グレイズBの体勢を崩す。

 

地面に倒れ、ダウンしたグレイズBを放置し、再びグレイズAの方へと進むザクインヴォーク。

グレイズAは狙撃ポイントを移すべく、移動している途中であった。

 

「そこだああああああッ!」

 

ザクインヴォークは、トマホークの柄を途中で分割し、手斧サイズとなったそれを思いっきり振りかぶる。

 

次の瞬間、ザクインヴォークの手を離れたトマホークは、グレイズAへと向かって真っ直ぐに──

 

□□□

 

「え──レイコ……せん、ぱい……?」

 

通信からの会話で、レイコ先輩の所に乱入者が現れた事を知った私は、アトラスをレイコ先輩の所まで向かわせていた。

 

平原だったお陰で、戦場の様子も近付くにつれてすぐに見えてきた。

 

一つ目で額の出っ張った量産機、グレイズが2機と、黒くて大きいグレイズ……グレイズ・アイン。

そして、わけが分からず呆然としている様子のワスプガンダム。

 

急いで援護しなきゃ、と射撃用に画面を拡大した時だった。

 

「え──」

 

レイコ先輩のザクインヴォークの背中に、グレイズ・アインの大型アックスが突き刺さっていた。

 

「レイコ……せん、ぱい……?」

 

ザクインヴォークが倒れる。グレイズアインが動きだす。

 

倒れる直前に投擲したトマホークは、グレイズAのコックピットから微妙に逸れて、バズーカを懸架している右肩に突き刺さった。

 

「レイコ先輩!逃げて!」

『くッ!このッ!』

 

立ち上がろうとするザクインヴォーク。

グレイズ・アインは無慈悲にも、その背後まで近付くと、突き刺さったアックスを引き抜き、ザクインヴォークを踏みつけた。

 

『結構やり手のファイターみてぇだが、勝負は身体のデケェ奴が勝つもんなんだよッ!オラッ!』

『こいつ……ッ!』

「レイコ先輩!こ、このぉ!」

 

私はグレイズ・アインの背中へ向けて、レールガンの標準を定める。

 

インジケーターが赤くなった瞬間、トリガーを引く。レールガンはガンッと音を立て、勢いよく弾を射出した。

 

でも、私はやっぱり発射する時の姿勢が悪いらしく、反動で転けてしまう。

そして、レールガンの弾は全然的外れな場所に当たり、グレイズ・アインを傷付けることは無かった。

 

『おっと危ねぇ。今のは当たってたらタダじゃ済まなかったかもなぁ。撃ったのが素人で助かった……ぜッ!』

「そんな……ッ!」

 

丸刈りの言う通りだ。

鉄血系MSには、ビーム兵器に対して極めて高い耐性を発揮するナノラミネートアーマーがある。そして、アトラスのレールガンはナノラミネートアーマーを突破できる実弾装備であり、アニメでもズゴッグの機体を容易く貫通する威力を誇っていた。

 

どれだけ優れた装備でも、使いこなせなければ意味が無い。

まさに、「当たらなければどうということはない」んだ。

 

『悪い、エミカ……』

 

そして、ザクインヴォークの耐久値が尽きる。

私の実力が至らなかったばかりに、先輩は敗北した。

 

「そんな……」

『お?よく見たらお前……珍しいガンプラ使ってるじゃねぇか』

 

グレイズ・アインのカメラアイが、こちらへと向けられる。

 

背筋にゾワリと鳥肌が立つ。

作中ではあまりにも生物的な挙動から、見た者に生理的嫌悪感を与える描写があったのを思い出した。

 

ゆらり、と振り向くその姿には、まるで獲物を凝視する蛇のような威圧感があった。

 

『お前ら、あの素人のガンプラ、なるべく傷付けずに倒してこい。総長に献上するぞ』

『『アイアイサ~』』

「ひぇっ!?」

 

丸刈りの指示を受け、グレイズA、Bがこちらへと向かってくる。

 

『ざっけんじゃねぇ!!』

 

怒りのこもった叫びと共に、グレイズ達の頭上から緑色のビームが降り注ぐ。

当然、ナノラミネートアーマーが弾いてしまうのだが、グレイズ達は頭上へと目を向ける。

 

浮かんでいたのは4基のGNビット。

そして次の瞬間、赤い光がグレイズ・アインへと向かって突っ込んでいく。

 

『俺の喧嘩に割り込んで、勝手に仕切ってんじゃねぇ!ブッ刺してやるぜッ!』

 

どういう事情かは分からないけど、トランザム状態のワスプガンダムが、グレイズ・アインを攻撃していた。

 

右から、左から、背後から。

赤い残像を残しながら、スズメバチの名を与えられたガンダムは、果敢に黒い巨人へ立ち向かう。

 

しかし、それも長くは続かなかった。

ワスプがグレイズ・アインのコックピット目掛けて、ヒートランスを刺突しようとしたその時……トランザムの赤光が消えた。

 

『ファッ!?クソッ、限界時間かよ!』

 

トランザムには限界時間があり、タイムリミットを過ぎれば機体機能が大幅に低下してしまう。そして、ワスプはさっきまでザクインヴォークと戦っていた。GN粒子の消費量は既にギリギリだったんだ。

 

そして、機能低下の隙を突き、グレイズ・アインはワスプのヒートランスを掴む。

 

『小賢しい手品はもう終わりかぁ?なあハチ公よぉ!』

 

そして、ワスプを思いっきり地面へと叩きつけた。

 

『ぐああああああッ!?』

『次、邪魔しやがったらテメェのガンプラもぶっ壊してやるぜ』

『クソッ!動けよ!動いてくれよ、ワスプガンダム!!』

 

残っているのは私だけ。自分のガンプラもろくに動かせない初心者と、性能を全く活かしきれていないアトラスガンダム……。

 

逃げようとして躓き、アトラスが転倒する。

起き上がろうとして、グレイズがすぐ後ろまで来ているのに気付いて、尻もちを着いたまま後退る。

 

「嫌だ……」

 

嫌だ……ここで負けたくない!

負けたら私も、あの男の子も、大事なガンプラを盗られちゃう!

 

「お願い……」

 

でも……私はもう……。

 

「誰か……」

 

だけど、私は……諦めたくない……!

 

「助けて……」

 

『Intrusion』

 

「………………え?」

 

今回3度目になる、乱入アラート。

 

直後、戦場の彼方から聞こえて来たのは、キィィィンという風を切る音。

 

『何だ、この音?』

 

その場の全員が、音のする方に目を向ける。

場所は私の、アトラスの遥か後方からだ。

 

私も音のする方にカメラを向ける。

 

そこに映っていたのは……燃え盛るような“赤”だった。




登場人物紹介③

シロマ・タケフミ:四角メガネな模型部の部長。模型部の立て直しを諦めかけており、そろそろ廃部手続きを行おうとしている。
ガンプラファイターだが、自分の作ったガンプラが壊れるのを恐れているため、ダメージレベルB以上のバトルを避け続けている。
使用ガンプラは不明。

ハチノセ・ショウヘイ:蜂の模様のようなニット帽を被った金髪ピアス。『秒殺のハッツン』の二つ名を持つ、学年で一番強いガンプラヤンキー。頭は少し残念だが、反射神経が鋭く、バトルセンスも侮れない。好きな昆虫はスズメバチ。
使用ガンプラは、アルテミーガンダムをベースにした太陽炉搭載機、ワスプガンダム。
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