ヘロヘロが行く   作:ロアグリーン

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この物語はオーバーロードの二次創作です。
主人公はヘロヘロと言う至高の41人の一人です。

でも最近思います。
これオーバーロード要素薄すぎて、主人公オリキャラだったら二次創作詐欺になりかねないな…てね。

原作キャラが出ないのは序盤だけで、物語が進めばガッツリ原作キャラも出るようになるので、もう暫くお待ち下さい(´・人・`)よろよろだよ。


ーー追記ーー
薬師が群生地から薬草を取りつくした描写を消去。



ヘロヘロ、薬師との邂逅

辺境の村の収入の多くは農作物が占める。

朝早くから日暮れまで足を棒にしながら農作業に従事した所で、所詮村も村人も貴族の所有物だ。

 

生産した麦の殆どは税金として徴収され僅かに残った収穫を売るなり食べるなり消費する事で代々命を繋いできた。

 

一応これでも生きていくことは出来る。

元々は出来なかったが、国の政策が変わった事でギリギリ生きていけるぐらいに調整された。

 

とは言えそれでは一生現状維持するだけの歯車だ。

蓄えが無ければその歯車も何かの拍子にひび割れ崩れ朽ち果てる。

だからこそ辺境の村々は森の恵みに肖ろうとする。

 

薪に丸太に野草に薬草に…。

肉に魚に果実に穀物に…。

生活必需品から食用までそれこそ数えだしたらキリがない。

 

だが森は魔物の領域だ。

魑魅魍魎が跋扈する森の奥へと迂闊に近付こうものなら、たちまち追われ拐われ肉と化す。

 

恵みを求めて森へと踏み込む者が血肉となって森に恵みを与えるのだ。

ミイラ取りがミイラになるとは正にこの事で、皮肉なことに湖に釣り針を垂らす漁師とその構図は変わらない。

 

それでも人は森へと足を運ぶ。

それはランプの灯りに誘われ集る蛾の心境か…。

 

今日もまたそんな森を歩く二つの影があった。

旅装束に身を包む男女で男を先頭に女が後に続く。

その男の背には大きめなリュックが背負われ、その腰には武装としては頼り無さそうなナイフがぶら下がる。

一方の女の細腕に握られるのは薙刀だ。

一見して先頭を歩く男が散策し女がその護衛と言う構図が見てとれた。

 

悠々と進む男の足に迷いは無い。

それもそのはずだ。

周辺の薬草の群生地は大概把握している。

昨日まで何もなかった場所に突然薬草の群生地が生まれる訳がないのだから、目的の群生地まで真っ直ぐ進めばいいのである。

目ぼしいものが無いかとキョロキョロ辺りを散策するよりも、この方が遥かに早く安全だ。

 

「サティア君。そんなに警戒しなくとも、この辺りは比較的安全でそうそう魔物など出てこないさ」

 

突然、前を歩く男が肩を竦めた。

ピリピリと神経を尖らす女の気配に気付いているのか、単純にそれが何時ものパターンなのか、男は背後の女を安心させるように振り返る。

 

肝試しなどでも定番な話ではあるが、危険な場所や恐ろしい場所においては男こそが女を引っ張ってやらなければいけない現実は今も昔も変わらない。

増しては相手は一回りも年齢の離れた少女であり、生徒であり助手なのだ。

時には大人の威厳を見せつけ安心させるのも大事な役目の一つ。

…と、男はそう考えていた。

 

そんな男の気遣いに答えるようにサティアもまた笑顔で出迎えた。

その手に持ったゴブリンの首と臓物やら返り血やらで汚れた衣服など気にも留めぬ満開の笑顔だった。

 

「流石です先生。既にゴブリン二体とウルフ一体仕留めましたが、先生程になるとこんなもの魔物の数にも入らないのですね」

 

当てが外れた。

男は素直にそう思った。

だが彼女の尊敬の眼差しに男は満足して頷く。

先生としての威厳は保たれてると判断して良さそうだ。

 

「当たり前だろう。この僕を一体誰だと思っているんだい?」

「皮肉も通じないその強靭な精神力。私も見習いたいくらいです」

「止めておきなさいサティア君。高みを目指すのは良い事だが、挫折に打ち震える君の姿など僕は見たくないよ?」

 

ハッハッハッと笑って再び歩きだす男の背中に思わずサティアもジト目で見送る。

 

「…どうやったら倒せるんだコイツ」

 

などと聞こえないように愚痴りつつ、少し距離の開いてしまった背中を小走りで追いかけた。

ちなみに殴れば倒せるが、そういった事を愚痴った訳ではない。

 

 

小一時間程森の中を歩き、いよいよ森が樹海へと姿を変えてきた頃。

どこからともかく聞こえる呪文の様な響きに二人の足は止まった。

 

目当ての群生地まで最早目と鼻の先だと言うのに、よりにもよって群生地の方から呪文のような何かが響いてくるのだ。

流石のこれには男も悔しそうに歯を食い縛る。

 

太い木の幹に身を隠し、呪文の発生源を特定しようとするが…。

距離はそこまで迫っていると言うのにその発生源が見当たらない。

 

「…先生、これ。なんだと思います?」

 

たまらずサティアが声を掛ける。

男も自分の持つ知識を総動員して考えてはいるものの、確信に至るものは何も無かった。

『君子危うきに近寄らず』と言う言葉が不意に頭に浮かぶ。

ただでさえ危険な森の中で、得たいの知れない怪奇現象と遭遇しているのだ。

それが冒険者の失踪と関係が無い等と誰が言いきれるだろうか?

撤退する理由としては十分だ。

 

「呪文のようにも、独り言のようにも聞こえるが、正直分からん」

 

サティアに目を向けると、彼女もまた不安げな表情を向けていた。

その目が語る。

採集を諦め撤退するべきだと。

 

だが男は思う。

もし採集せずにノコノコ村に帰った場合はどうなる?

 

村の皆から冷たい目線に晒される?

それは無い。

そもそも村長命令で採集は控えてくれと言われているのだ。

ここでの撤退は英断だと言われる事はあっても、無能だと罵られる事はないだろう。

 

ならば撤退か?

答えは否だった。

珍しくも不安げな表現を見せるサティアのか細い姿に男は気付いてしまったのだ。

 

あれこれひょっとしてチャンスじゃね?…と。

 

ここ最近、サティアには呆れ果てられる事はあっても尊敬されるような事をしていない。

先程も魔物の襲撃にも気付かぬ無能ぶりを見せてしまったのだ。

サティアは褒め称えてくれたし自分も何とか体裁を取り繕ったものの、内心では気付いていた部分もあった。

あれは皮肉だと。

 

不意に『虎穴に入らずんば虎子を得ず』と言う言葉が脳裏に浮かぶと、『君子』に向かい飛び掛かりマウントを取り始める。

リングの上で盛大に争い始めた『虎穴』と『君子』の試合は苛烈を極め、やがて3ラウンド目にして『虎穴』の放ったパイルドライバーの前に『君子』は完全に沈黙した。

 

故に男は決する。

 

「サティア君。君はここで隠れていたまえ」

 

突如、男の腕の裾をサティアが掴んだ。

 

「正気ですか?」

 

サティアの目は何処までも悲痛であり、その顔には焦りが見えていた。

この男はやる。

それが分かっているからこその無言の叫びだった。

 

行かせまいと力を込めるサティアの手が、その表情が、

何故だが親に捨てられる孤児の姿とダブって重なった。

 

「大丈夫だ。安心したまえ。サティア君」

 

だから安心させるように、そっと手を添えて声を掛けた。

決して無理矢理引き剥がす様なことはしない。

腕力で引き剥がせない事は私生活でのイザコザで既に察している。

 

「大丈夫だと言う根拠を提示してください」

 

しかしサティアも引かなかった。

以前慣れない薪割りに挑戦した時はコレで陥落したと言うのに、どういう訳か今日に限ってサティアも引かない。

しかし根拠なんてあるはずもない。

なんと言っても大人の威厳の為に言った出任せだ。

 

しかしここに至って男も引くわけにはいかなかった。

サティアの言動から事が如何に深刻で、コレが如何に重要な選択かは察するに値する。

生徒だの助手だの言った所で危険に対する直感はサティアの方が上なのだ。

そのサティアがこれ程までに真剣に引き止めようとしているのは何時以来なのか…。

最早森に対する見解が甘かった事に疑いは無かった。

 

しかしだからこそ引けないのだ。

それ程までに逼迫した状況にありながら、生徒に言われて「はいそうですか」と踵を返すのは威厳ある大人の姿からは余りに逸脱している。

 

事ここに至って、自分の選択が軽い気持ちで大人の威厳と背伸びをした結果だと言う事を悟られる訳にはいかない。

だから男は根拠を提示する。

 

「今日の健康運ーー」

 

言ったとたんサティアは逆上したように片腕を上げ、男は思わず言葉を詰まらせる。

同時に振り上げられた手は地面へ振り落とす。

 

「ーー先生は、弱いし。意地っ張りだし、バカだし、騙されやすいし、金銭管理むちゃくちゃだし、社会不適合者だと思います」

 

言い過ぎだと思ったが、男に返す言葉が見当たらない。

割かし間違っていない気がしないでも無かった。

 

「だけど。それでもーー私の、恩人です」

 

絞り出したように吐き出した本音をどう受け取ったのか、男はそっとサティアの頬に手を添える。

 

「そうだ。僕は君の恩人だ。弱くて意地っ張りな僕だけど、だからこそ君には尊敬されていたいんだ」

 

そう言って笑った。

いつしか緩んだ手を腕の裾から引き剥がし、男は立ち上がり背を向ける。

 

止められなかった。

とサティアは唇を噛み締める。

 

尊敬されたいと言う低俗な想いなんかで、冒険者すら失踪したこの森に響く呪文の方へと迷い無く歩いていく。

 

そんな事をして、尊敬されたいとほざく人物にまで危険にさらす事に気が付かないのだろうか?

…気付かないのかもなぁ、と内心思った。

だって馬鹿だから。

 

そんな馬鹿な男を先生と呼び従う自分も、その馬鹿な背中を放っておけるハズがない事も分かっていた。

 

先生は止まらない。

自分も先生を放っておくことが出来ない。

殴って引き摺って帰ると言う選択も取れない自分も結局半端者だ。

ならば、やることは結局一つしかないと、サティアは薙刀を強く握りしめ後を追いかけた。

 

ーーー

ーー

 

その呪文は、まるで二人を森の奥地へと誘うかのように、ボソボソと森の中を静かに響かせる。

 

それはまるで暗い部屋を照らすランプの灯だ。

その明るさに焦がれ集る蛾の末路など知らない訳でもないハズなのに。

二人は慎重に森の中で歩を進ませる。

 

むしろ知らなかった方が幸せか?

その蛾と自分を重ね合わせる必要も無いのだから。

 

 

まるで地の底を響くように耳を打つ呪文。

ここ最近の森の異変の正体に直面したような気味の悪い感覚にその身を凍らせながらも二人はただ黙々と歩いた。

 

そして辿り着く群生地、太い木の根元に密集して生える薬草の上。

奇しくも得体の知れない呪文はその木の幹から響いていた。

 

だがその頃には、その呪文の異様さに気付き二人は無言で顔を見合わせる。

そう異様なのだ。

呪文について詳しく無い二人であったが、それが異様だと言うことは容易に分かる。

 

何故ならその呪文は一言で『愛』を唱えていたのだから…。

 

やがて木の幹にへばりつく黒い粘体を発見すると、呼応するように呪文はピタリと止まった。

その途端、まるで時が止まったかのように静寂が場を支配する。

川のせせらぎすらも聞こえる静寂の中で、やがて黒い粘体はポツリと問いかけた。

 

「…い、何時から聞いてました?」

 

歌だった。

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

ヘロヘロは村での交渉に失敗し、惨めな負け犬宜しく岩の隙間で寝込んだ後、パチリと目覚め活動を再開していた。

 

クソブラック会社の残業と過労でボロボロだった時代とは違いここ最近の体調は良好だ。

 

粘体の癖して傷心を理由に何時までも寝ていられるほど自堕落な身体では無かったらしく。

かと言って直ぐに交渉に向かえるメンタルでも無かったヘロヘロは、何かしらの成果を求めて森の中の徘徊を始めた。

 

徘徊しながら何をすれば成果になるかを考える。

食料の調達?

それはグロプが得意でありヘロヘロが頑張った所で足元にも及ぶ気がしない。

便利な道具でも作る?

作れるハズがない。

自作パソコンなら組み立てるのが得意だが、あれはそもそもそう言うプラモデルのようなものだ。

一から何かを作れる能力などヘロヘロには無い。

 

そして思い付いたのが情報だった。

辺りを散策して得た情報を紙に記して地図でも作ればグロプもきっと流ヘロ(流石ヘロヘロの略)と誉めてくれるに違いない。

都合のよい妄想に気分を高揚させた粘体は、善は急げとばかりに行動を開始した。

 

冒険者の遺品の中から回収した紙とペンを手に散策を始めたヘロヘロはやがて辿り着いた太く丈夫な木の幹の滑らかな部分を下敷きに散策した結果を書き記す。

 

自分にしては順調な滑り出しと、ついつい好きなアニメソングでも口ずさみながら作業に没頭する。

 

しかし現実と言うのは不思議なもので、こう言う時に限って後ろに人が聞いてましたなんて事は良くある話。

それが神のいたずらだとか運命だとか言うならば、そう言う超常現象の類いもすこぶるニッチな趣味をお持ちのようで…。

その良くある現象は気分よく歌うヘロヘロを見逃したりしなかった。

 

そう詰まるところ。誰もいないと思って気分よく歌ってる最中に人の姿を確認した。

気付いてしまった。

そして急激に恥ずかしくなり黙り込む。

 

近くの川のせせらぎすらも聞こえる静寂の中で、何とか絞り出した声が森の中でやたら響いた気がした。

 

「い、何時から聞いてました?」

 

 

ーーー

ーー

 

「知性あるスライムと言うのは珍しいね。初めて見たよ」

 

男が群生地から薬草を引き抜きながら言う。

その引き抜く手際も慣れたもので、薬草を引き抜く動作から床に広げたリュックへと収納する動作も素早く無駄な動きが感じられない。

そもそも引き抜く…と言う表現も過ちだ。

よく見ればどれも薬草の根元は残っていた。

 

その男を守るように、薙刀を構えた少女がピリピリと警戒心を向けている。

 

そんな光景を眺めるように、少し離れた地面にヘロヘロはいる。

薬草を取りに来たと言う男に指摘され、わざわざこうして場所を譲って距離を離したのである。

なんと言っても薙刀を持った少女がピリピリしていて怖いから。

 

「ところで、村に侵入したスライムってもしかして君の事?」

 

男は穏やかな声音で問いかける。

その間も薬草を回収する手は止まっていない。

代わりに目だけが此方を向いていた。

ヘロヘロは人の目を見て感情を読み取れるほどコミュニケーションに長けた存在ではない。

それも当然だ。プログラマーとして今まで長い時間パソコンの画面と睨み合って来たのだ。

交渉事など本来他の人間の役割で、当然その能力も養われてはいなかった。

 

だがこの時ばかりはその男の目を見て直感した。

これは心躍る愉快な談笑なんてものではない。

これは警部さんからの取り調べであり事情聴取だ…と。

 

「は…い。そうです」

 

内心滝のような汗を流しつつ、ヘロヘロは答えた。

最早生きた心地がしない。

何て言っても不法侵入したのは事実なのだ。

まさかこんな所でスライムになってまで法律が適用されようとは夢にも思わなかった。

 

「それはどうして?」

 

どうしてと聞かれてヘロヘロは悩む。

理由は至ってシンプルに交渉したかった。

そう話がしたかったのだ。

 

会話して分かり合って仲間になりたかった。

だがそれを素直に話して大丈夫だろうか…。

 

もしもこれが彼方の世界で今の自分のような薄汚い貧困層が「私達の事を知ってください」と勝ち組の本社や高級住宅街に不法侵入なんてしようものなら…

あ、死んだわ。コレ。

ヘロヘロは一人絶望する。

 

むしろ取り調べしてくれるだけでもマシな気がした。

せめてカツ丼が食べたかった。

…などと思いつつ、遺していくグロプを想う。

 

「…会話がしたくて」

 

だが結局それを伝えるしかなかった。

都合の良い言い訳を咄嗟に思い付く程良い頭はしていない。

 

「ふむ、魔物に分類される君がわざわざ人間に伝えなくてはならない事や重要な取引でもあったのかい?」

「いや、そう言う訳では…。その、話して仲良くなれたらな…て、思いまして」

 

男はまた「ふむ」と考えるような動作を見せた。

そして薬草採集も終わったのか突然立ち上がると顎に手を当ててヘロヘロの様子を観察する。

 

「スライムを撃退したのは、村の少年との事だったね?」

 

男は少女を見る。

その動作に少女も誰に対しての質問かを把握し、反応に遅れながらも返答する。

 

「え?あ、はい」

「怪我はあった?」

「いえ、特に怪我はしてなかったと聞いています」

 

男は再び「ふむ」と考える仕草で空を仰いだ。

そして、

 

「本能で動くスライムだって撃退されそうになれば身を守る為に反撃だってするだろう。年端もいかない少年がいくら相手がスライムとは言え反撃されて怪我一つ無いのは出来すぎてる」

 

男は言った。

それはまるで一人の探偵のように自分の推理を口にする。

 

「思うに、最初から危害を加えるつもりは無かった。だから反撃もしなかった」

 

事ここに至って、ヘロヘロも少女も男が何を言いたいのかを察して顔を向ける。

だがその感情は正反対のものらしい。

ヘロヘロはともかく、少女の表情は雄弁に感情を語るのだ。

 

「サティア君。僕は彼を信じてみようと思う」

「正気ですか?」

「勿論だとも、森の魔物が協力者になれば薬草採集も安全に行えるし。森の異変も調べられる。失踪した冒険者の事も分かるかも知れない。…それにだ」

 

男はそっとサティアに耳打ちをする。

 

「お前はあれに脅威を感じるか?」

「それは…感じませんが」

 

感じないのである。

どんな魔物であれ人間であれ、対峙すれば相手の力量がだいたいではあるが脅威と言う形で感じることができる。

人によってそのアンテナの強度はピンキリだが、サティアは感じる側の人間だった。

 

そのサティアの感覚が目の前の魔物が戦力外だと告げている。

それこそ万一襲ってきても瞬殺出来るだろうと勘繰る程に…。

 

その事実に背中を押され、サティアもしぶしぶながら諦めの溜め息を吐いた。

 

「…分かりました。先生の判断に従います」

 

そう言って、サティアは男の後ろへと下がる。

そしてもう一度溜め息を吐き。

肩の力を抜いて、自分の信じる先生とスライムとの様子を伺った。

 

魔物の協力者と言うのには、やはりそれなりに抵抗があった。

だが先生の言った内容はどれを取っても正論だ。

…とサティアは内心で納得せざるを得なかった。

 

薬草採集が出来なければ、それはそれで薬師に取って死活問題だ。

魔物が浅い層でも頻繁に遭遇するようになってしまった森の異変だって、解決しなければ森の恵みに肖る事も儘ならなくなってしまう。

これはこれで村として死活問題だ。

失踪した冒険者の件だって、村の連中にはどうしようも無いことだとは言え気持ち悪い事には変わりがない。

 

考えれば考えるほど魔物と協力した方が良いと言う事実が浮き彫りになる一方だった。

…やはり不本意だったが。

 

そんなサティアの気持ちなど露知らず、男はヘロヘロの側まで来ると無造作に手を差し出した。

相手の種族が何であれ、握手は友好を伝える万物共通の手段であると信じている故の行動だ。

 

「自己紹介がまだだったね。僕はマイク・エレクトーニア。しがない薬師の端くれさ。後ろの彼女が助手のサティアだ」

 

ヘロヘロもまた伸ばされた手に答えて触手を伸ばす。

マイクの後ろの方から「うわぁ…」と言う嗚咽が聞こえた気がしたが気にしない。

 

「わ、私はヘロヘロです。見ての通りスライムです」

 

がっしりと交わされた一人と一体の硬い握手。

それを機に、警部と容疑者だった二人の関係は今、友好的な協力者へと成り変わったのだった。

 

…後に冒険者の遺品であるペンと紙をしっかり見られて再び容疑者に転落するのだが、それはまた別の話し。

なんとかなった。




この世界にプロレスとかコトワザとかあるの?
…て思ったら敗けだと思ってください。

現地人と現実世界とでは言語が違うものが無理矢理翻訳機能が働くと言う設定があります。
その為、言語が違う人同士だと誰が歌っても歌のリズムやテンポがバラバラになり最早呪文状態になります。

決してヘロヘロさんが音痴な訳じゃないんだ。信じてくれ!!
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