Sword Art Masked Rider   作:通りすがりの幻想

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皆さん、どーもです。



前 書 き あ と が き の 圧 倒 的 ネ タ 不 足 に つ い て 。





Ep.17 心の温度はソコにある⑦

 

(リズベットside)

 

数時間後、あたしたちは一日ぶりに店に戻ってきた。

幸いにも、山を下りた時点で、あたしはなんとか体を動かせるようになり、そこからは一緒に歩いて帰ってきた。

 

リズベット「たっだいま~!…いやぁ、一日留守にしてただけなのに、なんだか懐かしく感じるわね。」

 

カイタ「その気持ち、分からんでもない。…ほんじゃ、ベテラン鍛冶屋のお手並み拝見と行きましょうか。」

 

リズベット「分かったわ。じゃあ、工房に来て。」

 

あたしは、カウンターの奥の扉を開けて、工房に入った。

 

インゴットを取り出して、真っ赤になった炉に投下する。

 

リズベット「…え~っと、片手直剣でいいのよね?」

 

カイタ「ああ。よろしく頼むよ。」

 

カイタが、奥にある来客用の椅子に腰かけた。

 

リズベット「りょーかい。…あ、言っとくけど、仕上がりはランダム要素に左右されるから、あまり過度な期待はしないでよ?」

 

カイタ「なーに。インゴットは山ほどあるんだ。こんだけありゃ、1本か2本はいいのが出来るさ。…それに、最悪の場合、もう一回取りに行けばいいしな。」

 

リズベット「…長いロープ忘れないでよ?」

 

カイタ「…覚えときます。」

 

そんな会話をするうちに、インゴットが十分焼けたようだ。金床の上に置いて、いつも使っている鍛冶ハンマーを振り上げ、勢いよく降ろした。

 

カーン、カーンと心地よい音を聞きながら、あたしはある決意をしていた。

 

リズベット(…あたしは、カイタの事が好き。ずっとそばにいて欲しい。…納得のいく剣が出来たら、彼に気持ちを伝えよう。毎日、この家に帰って来て欲しいって言おう。)

 

その決意は、インゴットの輝きが増していくと同時に、より強固になっていった。

 

━そして、数百回叩いたところで、インゴットが一層輝きながら形を変えていった。

 

カイタ「…おお、これは…」

 

現れた剣を見て、カイタが感嘆の声を漏らす。

 

出来上がったのは、全長は長いが、少し細い片手剣だった。とはいえ、ロングソードと呼べるほど長くもない。さしずめ、カテゴリー「ワンハンド/ハイミドルソード」といった所だろうか。

眩しいほど銀色に輝く刀身に、鍔の部分はアタッシュカリバーを彷彿とさせる黄色と黒のカラーリング、グリップの部分は、あたしを助けた時に使っていた斧の様な武器のグリップと同じ、深い青色だった。重さも、アタッシュカリバーに負けず劣らずの重量だ。

 

あたしは、剣をワンクリックして、ポップアップウィンドウを見た。

 

リズベット「え~と、剣の名前は《ライジング・エクステリオン》ね。…あたしが聞いた事無いって事は、現状、情報屋の名鑑には無い剣ね。…はい、試してみて。」

 

カイタ「おう。…ちょっと離れててくれるか?」

 

カイタが右手で剣を受け取り、肩の上に構える。

 

そして、右から斬り、左から斬り、一回転してもう一度左から斬り、最後に右から左上へ切り上げた。この動きは、ホリゾンタル・スクエアだったはずだ。

 

カイタ「…ん?…ふふっ。」

 

直後、カイタが剣を見つめたかと思うと、笑みをこぼした。

 

カイタ「…いい剣だ。ますます気に入った。」

 

リズベット「ちょ、ちょっと、何笑ってんのよ?」

 

カイタ「ああ、スマン。ここ見てみな。」

 

カイタが指さしたのは、剣の鍔、ちょうど刃先の根本の辺りだ。

よく見てみると、まるで剣のエンブレムであるかの様に、剣を背負ったかのようなバッタが小さく彫られていた。そしてそのバッタは、ライジングホッパー、だったかしら。カイタが変身していたあの戦士のクレスト(紋章)のバッタによく似ていた。

 

カイタ「…今日から、こいつが俺の相棒だ。あ、こいつの鞘見繕ってもらえるか?」

 

リズベット「あ、うん。」

 

あたしはそう言って、彼の衣装とよく似た黒色の鞘を選び、彼の剣を収めた。

 

リズベット「…そういえばあんた、剣を頼んだ際に、アタッシュカリバーと同等、もしくはそれ以上のスペックって言ってたじゃない。見たところ、今作った剣もいいけど、アタッシュカリバーとそんなに違うとも思えないわよ。なんで同じような剣を用意しようと思ったの?」

 

カイタ「…いや~、実をいうと、確かにカリバーはこのアインクラッドで1、2を争うスペックだと思うけど、致命的な欠点があってね…というのも、こいつで敵を倒したところで、正常に撃破判定がされない可能性があるんだよ…。早い話が、討伐系のクエストを受注して、そのターゲットを倒しても、こいつを使っていたら、討伐したことにならない可能性があるって事だ。この武器がシステムに規定されていないからだろうけど…。」

 

リズベット「え?規定されていない?どういう事よ?」

 

カイタ「…まあ、それはおいおい話すよ。」

 

リズベット「ふ~ん。なら、いいけど。」

 

カイタ「…おし。これにてミッションコンプリート。この剣の代金を払うよ。…あと、昨日壊した剣の弁償金も。幾らだ?」

 

リズベット「あ、えっと…」

 

あたしは深呼吸して、心の中で考えていたことを口に出した。

 

リズベット「……お金は、要らない。」

 

カイタ「そうかそうか。金は要らな……はああぁぁぁ!?」

 

リズベット「その代わり、あたしをカイタの専属スミスにしてほしい。」

 

カイタ「…はぇ?そりゃあ一体、どういう…」

 

リズベット「一日の攻略が終わったら、この店に…この『家』に帰ってきて。それで、あたしに装備のメンテナンスをさせて欲しい。…毎日、これからずっと。///」

 

カイタ「…っ!そ、それって…///」

 

たぶん今、あたしの顔は、人生で経験した事がないくらい真っ赤になっていると思う。

 

きょとんとしていたカイタも、あたしの言葉の意味を悟ったのだろう。不適な笑みを浮かべる事の多かった彼の顔は、同じく赤く染まり、あたしから視線を逸らしている。

 

リズベット(…あと一言。ほんの一言でいいんだ。頑張れリズベット。)

 

あたしは自分にそう言い聞かせ、残ったなけなしの勇気を振り絞って、彼の腕に手を添えた。

 

リズベット「…あ、あのね。あたし…あたし、カイタの、事…。」

 

すでに心臓は爆発しそうで、恥ずかしさで限界だったけど、あたしは最後の一節を

 

 

 

告げようとした瞬間。

 

(バターン!!)

 

勢いよく工房の扉が開けられた。あたしは驚いて、反射的にカイタから手を離した。

 

「リズ!心配したよ~!」

 

その言葉と共に、あたしは誰かに固く抱きしめられた。顔は見えなかったが、栗色の長い髪で、誰なのかすぐに分かった。

 

リズベット「…ア、アスナ!?」

 

聞き返すあたしの顔をアスナはすごい剣幕で睨みながら、早口でまくし立てる。

 

アスナ「メッセは届かないし、フレンドの追跡機能も使えなかったし、常連の人に聞いても何も知らないって言うし、一体夕べはどこに行ってたの!?私、最悪の事も考えて、黒鉄宮の生命の碑まで見に行ったんだからね!?」

 

リズベット「え、え~っと、そのぉ~…」

 

「おいおい、アスナ落ち着けよ。その人困ってるじゃないか。」

 

どう返答したものかと思案するあたしに助け舟が入った。

 

見ると、工房の扉の所に、黒いコートに身を包み、黒い剣を背負った真っ黒コーデの男性プレイヤーが立っていた。

 

アスナ「キ、キリト君…だって、心配だったんだもん!」

 

リズベット「ア、アスナ?その人は…」

 

アスナ「えっとね、リズの店でこの人、キリト君の剣を作ってもらおうと思って。」

 

キリト「…どうも。キリトです。」

 

リズベット「…はっは~ん。」

 

その瞬間、あたしは理解した。

 

リズベット「(ゴニョゴニョ)あの人って事ね?アスナの好きな人。」

 

アスナ「ええ!?…う、うん///」

 

アスナが頬を赤く染めながら、小さく頷く。

 

リズベット「…なるほどなるほど。なぁるほどぉ。…つまり、約束守ってくれたって事ね?」

 

数か月前、この店を開く手伝いをしてくれたのが、今目の前に居るアスナと、あたしやアスナより年上だけど親しくしてくれる、ローズブラウンの髪をサイドテールでまとめた、短刀(ダガー)使いであるもう1人のあたしの親友だ。その時に、2人にそれぞれ意中の相手がいる事に気づいたあたしは宣伝も兼ねて、「それぞれの想い人に、この店を紹介する」という約束を取り付けたのだ。

 

アスナ「…うん。キリト君が店売りの剣を持つなら、ここしか無いって思って。」

 

リズベット「…ありがとう。アスナ。…それで、どんな武器をご所望かしら?」

 

アスナ「う~ん…キリト君、片手直剣でいいよね?」

 

キリト「ああ、構わないぜ。」

 

リズベット「了解。」

 

あたしはそう言って、ストレージから残ってたインゴットを取り出す。

 

キリト「…ん?ちょ、ちょっと待ってくれ。ま、まさかそのインゴット…」

 

突然、キリトが階段を駆け下り、目を見開きながらあたしからインゴットを取り上げる。

 

アスナ「キリト君、何か知ってるの?」

 

キリト「…おい、まさかこれって、55層でドラゴンから採れるって噂になってる、幻の素材じゃないか!?」

 

アスナ「…えっ!?討伐隊がいくつも出てるのに、素材が一つもドロップしないって言う、あの!?」

 

リズベット「…あ~、そういう事になるわね。」

 

アスナ「あれ?それじゃあリズ、昨日一人でこれ取りに行ってたの?もしそうなら、私も誘ってほしかったな…」

 

リズベット「ううん。さすがにあんな所、一人で行きやしないわよ。…彼に手伝ってもらったの。」

 

あたしはそう言って、工房の隅の方に居るカイタを視線で指し示す。

 

カイタ「…え~っと、俺、お邪魔?帰った方がいいかな?」

 

…そういえば、今の今まで、彼が空気の様になっていた。申し訳ないことをしてしまった。

 

「…カ、カイタ(さん)!?」

 

そう叫ぶ2人の声で、あたしは我に返った。

 

リズベット「え?知り合い?」

 

アスナ「う、うん。同じ攻略組で、しょっちゅう顔を合わせるから…」

 

その情報に、あたしはまたまた驚いた。と同時に、腑に落ちた。あのドラゴンと単独でまともに戦える実力。攻略組だからと考えれば納得だ。

 

キリト「…ていうか、お前ほどの腕前なら、あのドラゴン、屁でもないだろ。なんだって丸一日かかったんだよ…?」

 

カイタ「…いや~、いろいろありましてね…隠れてろって言ったのに、リズが顔出したっけ、穴落ちちゃって、もう野宿さ☆…高さ80mから落ちた時は、生きた心地がしなかったな。」

 

リズベット「そ、それはごめんって言ってるじゃない…」

 

カイタ「いや、別に怒っちゃいねぇよ。むしろ、あの穴に落ちなきゃ、そのインゴット手に入らなかったし。…そうだキリト。あとでアルゴに、インゴットの入手方法拡散させるように言っとくつもりだから。…言っとくが欲しけりゃ自分で採りに行けよ。」

 

キリト「…ひ、一つくらい譲ってくれても…」

 

カイタ「バーロー。第一、お前は単に楽したいだけだろ。それこそお前の腕前なら楽勝だ。なんたって総合力は俺より上なんだから。」

 

キリト「そ、そんなぁ…」

 

アスナ「ま、まあまあキリト君。その素材を使って、今ここで剣作ってくれるだけでも感謝しないと。」

 

キリト「…まあ、そうだな。何はともあれ、無事で何よりだ。」

 

アスナ「…そうだキリト君!店の外に…!」

 

キリト「…ああ!そうだった!ちょっと待ってろ!」

 

急にキリトがあわただしく工房を出ていった。

 

リズベット「…ほんとにごめんね、アスナ。心配かけて…」

 

アスナ「…ううん。リズが無事なら、それでいいよ。…カイタさん、ありがとうございます。リズを守ってくれて。」

 

カイタ「ん?いいや、俺は大したことはしてないよ。当然の事をしたまで。」

 

リズベット「…あんた、それしか言えないの?」

 

カイタ「…うるさい。」

 

…拗ねたようで、そっぽを向いてしまった。

 

キリト「…お待たせ。連れてきたぞ。」

 

「……カイタ…?」

 

キリトが戻ってきたが、彼が連れてきたのは、あたしがよく知る人物だった。

 

リズベット「…あら、レンコじゃない。どうしてここに…」

 

カイタ「お。レンコ。…一日ぶり、かな?」

 

レンコ「…かな?じゃないよ!バカァ!」

 

レンコがすごいスピードで階段を駆け下りたかと思うと、

 

 

次の瞬間、カイタに抱き着いていた。

 

カイタ「おわっ!?ちょ、ちょっとレンコ、く、苦しい…」

 

レンコ「心配したんだからね!…どうせまた無茶したんでしょ!」

 

彼をポカポカと叩きながら、小言を言う母親の様にレンコが問い詰めている。

 

カイタ「い、いや、今回は大丈夫だったぜ?」

 

キリト「あれ?お前、さっき「高さ80mから落ちた」って…」

 

アスナ「ちょ、ちょっとキリト君…!」

 

キリト「…あっ。」

 

カイタ「キリトお前ぇぇ!!!ナニイッテンダ!プジャケルナ!」

 

レンコ「…やっぱり無茶したんだ。」

 

カイタ「わ、分かった、俺が悪かったから、一回離れてくれ…」

 

レンコ「嫌。」

 

カイタ「…ハイ?」

 

レンコ「…心配させた上に、無茶した罰。もう少しこのままでいたい。」

 

カイタ「…ええ?いや、どういう理屈でそうなるんd…ったく、仕方ねぇな…。おいキリト、後でオハナシな。」

 

キリト「ひえっ…。」

 

リズベット「あ、あの…カイタとレンコって…知り合いなの?」

 

カイタ「え?ああ、俺たち、パーティー組んでるんだよ。」

 

……ああ、そうか。

 

カイタがこの店に来たのは偶然じゃない。

アスナが約束を守ったのと同じ様に、レンコもあたしとの約束を守ってくれたのだ。

━彼女の「想い人」にこの店を推薦したのだ。

あたしは、体中の熱が一気に放出されていく感覚がした。

 

レンコ「リズさん、ごめんなさい。カイタが何か変な事言いませんでしたか?」

 

レンコがそう言っているのが聞こえる。

 

だが、あたしはその質問に返答する気力も残っていなかった。

 

レンコ「…リズさん?」

 

アスナ「リズ?どうしたの?」

 

立ち尽くすあたしに、アスナ達が声をかける。

 

リズベット「…もぉー!それならそうと言いなさいよー!ちょっと聞いてよレンコ!こいつったら、出会って早々に、うちの最高傑作の剣をあたしの目の前で叩き折ったのよ?」

 

溢れそうになる涙をこらえながら、あたしは努めて明るく振舞った。

 

アスナ「ええっ!?」

 

キリト「…おい、嘘だろお前…。」

 

カイタ「う…め、面目次第もございません…。」

 

レンコ「ほんとに何やってるの…?お金一杯ふんだくらないとダメですよ?リズさん。」

 

リズベット「…も、もちろんよ。」

 

今はただ、ここから逃げ出したかった。

そうしないと、レンコやアスナ達に当たってしまいそうだった。

この気持ちの持って行き場が分からなかった。

 

その証拠に、すでに涙がこぼれそうになっている。

 

リズベット「…ご、ごめん!あたし、仕入れの約束があったんだった!ちょっと出るから、誰か留守番よろしく!」

 

アスナ「えっ!?ちょ、ちょっとリズ!」

 

アスナが呼び止める声も無視して、あたしは店を飛び出した。

そのまま街を走り出て、どこかも分からぬまま走り続けた。

 

ふと我に返ると、そこは街の端っこだった。

人がいない事を確認した瞬間、堪えてきた涙が堪えてきた。

 

リズベット「…ううっ…ひぐっ…」

 

店でレンコと話している間、何度も「あたしも、あの人が好きなの」と言いそうになった。

 

いや、言いたかった。

でも、言う訳にはいかなかった。

抱き着いてくるレンコを見るカイタの表情を見た瞬間、あたしは分かってしまったからだ。

 

(カイタ)の隣に立てるのは、彼女(レンコ)しかいないのだと。

 

今はまだだが、(カイタ)を本気に出来るのは、彼女(レンコ)だけであるという事を。

 

そして何より、レンコは第1層でカイタと出会ってからずっと、彼を支え続けてきた。

 

そんな二人に、出会って一日の、余所者のあたしが割り込むことは出来ない。出来るはずもない。

 

…忘れよう。

昨日の事は、全て夢だ。そんな物は、涙で流してしまおう。

 

そう思いながら、あたしは泣きに泣いた。

 

━どのくらい泣いたのだろう。

 

「…リズベット。」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、あたしはちらりと後ろを見た。

…そして、今一番顔を見たくて、でも今一番会いたくない人の顔が見えた。

 

リズベット「…なんで…来たの…?もう少しで、いつものリズベットに戻れたのに…」

 

そこには、走ってきたのであろう、息を切らせたカイタがいた。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

……やっぱ今回じゃ終わんなかった。

…わっかんねぇなぁ…もう…。

何でこのエピソードだけこんな長くなったのかなぁ???(心の温度編全体で2万字越え)

次回で本当に、誓って本当に、「心の温度」編、完結です。

それでは、また。


…いや、も、ほんとだ…何でこんなに長くなったのかな????(2回目)


(⑧へ続く)
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