Sword Art Masked Rider   作:通りすがりの幻想

20 / 35
皆さん、どーもです。

今回で、心の温度編、完結です。

…いやー、長かった。


Ep.18 心の温度はソコにある⑧

 

(リズベットside)

 

リズベット「…なんで、ここが分かったの?」

 

あたしは、カイタに聞いた。

あたしが店を飛び出してから、あまり時間は経っていないはずだ。

 

カイタ「…キリトにも手伝ってもらってな。キリトが地上を、俺は…コイツを使って、屋根を走りまわって探した。」

 

腰に巻かれたベルトを指さしながら、彼はそう言った。

 

リズベット「…ほんと、無茶苦茶よね…。あんたって。…あんまり無茶してると、またレンコに叱られるわよ…?」

 

カイタ「……」

 

リズベット「…ごめん、あたしは大丈夫だから。初めての冒険で、心がびっくりしただけだと思う…だから、あたしが言った事は、全部忘れて。」

 

あたしは、泣きそうになりながら…いや、すでに涙は流れていたが、彼に見せまいと顔を手で隠した。

 

カイタ「…俺さ、リズにお礼が言いたいんだよ。」

 

リズベット「…へ?」

 

いきなり彼がそう切り出した。

 

カイタ「…山降りる前に、お前言ってたよな。「自分を助けてくれた」って。…確かにそうかもしれない。でも、それは俺だけの力じゃない。…お前が俺を信じて、希望を諦めなかったからだ。だから、とどめを刺したのは俺だけど、結果的には、リズが自分の力であの呪縛を振り切ったんだよ。あれは並大抵のことじゃない。俺は素直にすごいと思ったし、感謝もしている。だから、その…うまく言えないけど……俺を信じてくれて、ありがとう。」

 

一息置いて彼は、あの夜に見せた優しい笑みを浮かべてそう言った。

 

カイタ「…だから、このお礼は、この先の攻略を進めることで返していきたい。リズが作ってくれたこの剣で、あらゆる敵を切り伏せて…100層を攻略して、リズや、この世界にとらわれてる人を助ける。……もちろん、時々こいつのメンテをしてもらいに顔は出しに行くよ。」

 

リズベット「………」

 

その言葉を聞いたあたしは、心がジワリとするのを感じた。

 

リズベット「…分かったわ。でも2つ約束しなさい!1つ、絶対に顔を出しに来ること!2つ、この世界を終わらせること!……ただし、無茶はしない事。あんたに何かあったら、あたしやアスナ、キリト、何よりレンコが心配するから。」

 

カイタ「分かってる。……そうだ、今思いついたけど、この剣の代金、現実世界(向こう)で払うよ。現ナマでも、飯のおごりでも、俺が出来る範囲で。」

 

リズベット「おっ?言ったわね?…そうねぇ?フルコースでも奢ってもらおうかしら?」

 

カイタ「うっ、お、お手柔らかにお願いします…」

 

リズベット「なーんて。冗談よ、冗談。…さ。帰りましょ。いつまでも、レンコ達を待たせるわけにもいかないからね。」

 

カイタ「…ああ。」

 

涙を拭いて、彼の背中を追おうとしたら、メッセージが入った。

 

差出人は、レンコだった。

メッセージを一瞥したあたしは、ふっと笑みをこぼした。

 

リズベット「…全く、あたしの方が年下なのに…こんな時まで丁寧語なんだから…。」

 

カイタ「ん?どったの?」

 

リズベット「何でも無いわよ。」

 

あたしは笑いながらカイタに返事をして、レンコのメッセージに返信した。

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

レンコ「リズさん、今回はごめんなさい。後日、日を改めて話したいです。リズさんは大切な友人だから、有耶無耶にしたくないんです。でも、もしもリズさんが私と話したくないなら、それでもいいです。」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

リズベット「分かったわ。明後日に、うちの店の近くにあるカフェで落ちあいましょうか。あたしにとってもレンコは、大事な友達にして、お得意様だからね!」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

 

 

(少し戻り、レンコside)

 

その日は、アスナからのメッセージから始まった。

 

なんでも、昨日からリズさんと連絡がつかないらしい。

 

リズさんこと、リズベットは、数か月前にアスナを通して友人になった、鍛冶屋にしてマスターメイサーの女性プレイヤーだ。

 

話を戻すと、アスナが言うには、リズさんが店におらず、メッセージも届かないというのだ。ちょうど私も、カイタとの連絡が昨日からつかなくなっていたので、アスナと、彼女に(強制)招集されたであろうキリトさんと一緒にリズさんを探すと同時に、カイタの事も探すことにした。

 

あちこち探しまわって、結局見つからなかったが、最後にダメ元でよったリズさんの店で、看板が「open」になっていた。私は万が一のすれ違い防止のために店の外で待ち、アスナ達が確認した所、工房にリズさんがいた。だが、報告に戻ってきたキリトさんによれば、彼女と一緒に、なんとカイタもいるというのだ。

 

私は居ても立っても居られず、カイタとも合流した。キリトさんによると、どうやら片手剣の素材集めに行った際に、厄介なトラップに引っかかったらしい。それで二人して帰りが遅くなったようだ。

 

私は、リズさんに謝ろうとした。「この店を推薦する」という、彼女との約束を守ろうとしたとはいえ、迷惑をかけてしまったからだ。

でも、リズさんの顔を見て、私は驚いた。

 

リズさんが、泣きそうになっていたからだ。泣くのをこらえて、明るく私たちに話しかけていた。

 

そして、リズさんが店を飛び出して、しばらく静寂が訪れた。

 

キリト「…えっと…どうするんだ?」

 

カイタ「いやどうするったって…」

 

カイタとキリトさんが話している。

 

アスナ「…もしかして。」

 

レンコ「…アスナ?」

 

アスナ「…あの、カイタさん。リズの事を探してくれませんか?」

 

カイタ「はえ?そりゃあ、頼まれなくたって探すつもりだったけど…」

 

アスナ「多分、街からは出ていないけど、ここから遠くにいると思います。私とレンコは、ここに残ります。入れ違いになったら困りますし。キリト君も、手伝ってあげて。」

 

キリト「…なぁ、アスナ?なんで場所の見当がつくんだ?」

 

するとアスナは、ちらりと私を見てからこう言った。

 

アスナ「…うーん…女性の勘、ってやつかしら。」

 

キリト「…え?いや、だから、それがどういうこt」

 

カイタ「…行くぞキリト。こういうのはな、男がむやみに突っ込むのは野暮ってもんだぜ。」

 

キリト「え、ちょ、ちょっと待て、引っ張るなって!ちゃんと行くから!」

 

キリトさんとカイタが、バタバタしながら工房を出ていく。

 

残されたのは、私とアスナの二人。

 

アスナ「レンコ。確認なんだけど…」

 

レンコ「何?」

 

 

アスナ「…あなた、カイタさんの事、好きなのよね?」

 

 

レンコ「……」

 

アスナ「……」

 

レンコ「…うん。」

 

アスナ「…そう。…今だにキリト君に想いを伝えられてない私が言えた義理ではないけど、急いだほうがいいかも。…あれきっと、リズもやられてるかもしれないわ。」

 

レンコ「…やっぱり。」

 

アスナ「気づいてたの?」

 

レンコ「確信はなかったけどね。」

 

何となく、リズさんから出ていた雰囲気が前にあった時と異なっている様に感じたのだ。

…それに、キリトさんの話を聞く限り、リズさんは昨日カイタと野宿をしたようだ。

それなら、彼女の心情に何かしら変化があってもおかしくない。

 

レンコ「…私、リズさんと話してみる。…話してくれるかは分からないけど。」

 

アスナ「ええ。私も、それがいいと思うわ。」

 

私は、フレンドのメッセージを立ち上げて、リズさんにメッセージを送った。

 

少したってから、リズさんから返信が来た。

返事に安堵していると、カイタがリズさんを連れて戻ってきた。

少し遅れて、キリトさんも戻ってきた。

 

その時のリズさんの顔は、吹っ切れた様に明るかった。

 

 

 

3日後。

私は、リズさんに指定された店に向かった。

 

ちなみに、カイタはキリトさんと何か用事があるようで、別行動をとっている。

「にしても16連撃はなぁ…あんなん反則級の威力だろ…」と呟いていた気がするが、何のことか分からない。

 

リズベット「あ、レンコ!こっちこっち!」

 

店のテラス席で、リズさんがこちらに向かって手を振っている。

 

レンコ「リズさん、こんにちは。…それで、今日は、」

 

リズベット「まあまあ、まずはお茶にしましょうよ。レンコの近況も聞きたいし。」

 

レンコ「…分かりました。」

 

それから少しの間、お茶を飲みながら、リズさんと話をした。

 

レンコ「……それで、その時にカイタが…」

 

リズベット「あー。やっと出た、その名前。」

 

レンコ「…あ、ご、ごめんなさい。本題と関係ない話をべらべらと…」

 

リズベット「いーわよ。それくらいは。……で、本題なんだけどね。」

 

レンコ「……はい。」

 

リズベット「…はっきり言うわ。あんたがカイタの事を好きな様に、あたしも彼の事が好き。」

 

レンコ「……うん。」

 

リズベット「…怒らないの?」

 

レンコ「何となくそんな気がしたから。」

 

リズベット「…あっちゃー、もしかして顔に出てた?」

 

レンコ「顔にというか、雰囲気が違いましたから。……ちなみに、どういう経緯で?」

 

リズベット「…助けられたから。彼に。……いや、『仮面の戦士』に。」

 

レンコ「…!も、もしかしてリズさん…見たんですか?カイタの、アレ(・・)…」

 

リズベット「…まあ、見ざるを得なかったというか…」

 

レンコ「どういう事ですか?」

 

リズベット「実はね…」

 

そこからの話は、驚きしか無かった。

 

要約すると、トラップの洞窟を抜けた後、オレンジプレイヤーの手により、リズさんが無理やり変身させられたらしい。そして彼女を止めるために、カイタもゼロワンに変身して戦ったようだ。

 

リズベット「…とまあ、そういう訳よ。いやー、あの時は生きた心地がしなかったわ……で、あの姿を、レンコは知っているって事?」

 

レンコ「…うん。第1層で、同じ様に助けられたから…。最も、その時に私は変身させられたわけじゃなくて、怪物が襲ってきたんだけどね。」

 

リズベット「なるほど…じゃあ、当時ガイドブックに載ってた「恐ろしく強い怪物に襲われたプレイヤー」っていうのは…」

 

レンコ「…うん。私。」

 

リズベット「…はぁーっ。あの時はさして気にしていなかったけど、いざ自分が目にしてみると、その恐ろしさがよく分かるわ。…それに、あいつの無茶ぶりも。」

 

レンコ「ほんとですよ。いっつも無茶しては何事もなかったように振舞って…見てるこっちが心配になります。」

 

リズベット「……でも、そういうところが好きなんでしょ?」

 

レンコ「…うん。他人を助けるために懸命になっている彼を見てたら…すごいな、カッコいいなって…。///」

 

リズベット「……あぁーあ。こりゃ、重症ね。まあ、あたしも人の事は言えないけどさ…。」

 

レンコ「…はっ!?ご、ごめんなさい…!」

 

リズベット「ううん。大丈夫よ。…さて、あたしはもう行くわ。」

 

レンコ「え?もう行ってしまうんですか?」

 

リズベット「こちとら、あんたと違って店があるのよ。納品予定の武器、まだ少し残ってるから。」

 

レンコ「わかりました。…また、店に寄った時は、武器のメンテナンス、お願いします!」

 

リズベット「了解。あたしにまっかせなさい!……あ、そうだ、レンコ。最後に言っておくけど。」

 

レンコ「はい?」

 

リズベット「……あんたがカイタの事をどれだけ好きかは、よぅく分かったわ。…でも、あたしはもう迷わない、もうこの勝負を降りる気はないからね!」

 

聞き返す私に、リズさんは不適な笑みを浮かべてそう言った。

 

レンコ「…もちろんです!その勝負、受けて立ちます!」

 

リズベット「ふふん。それでこそあたしの親友よ!」

 

(ぎゅっ)

 

私たちは、お互いの健闘を祈り、固い握手を交わした。

 

リズさんと別れて、宿に戻る私の足どりは、いつもより軽かった気がした。

 

 

 

レンコ(……私は、彼が……カイタの事が好き。あの日、彼が私を守ってくれた様に、今度は、私が彼の支えになる…!)

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

Sword Art Masked Rider

 

「…これより、殺人者(レッド)ギルド、ラフィン・コフィンの討伐戦を開始します!」

 

殺人者(レッド)ギルドとの決戦

 

「…イッツ・ショウ・タイム!」

 

互いの信念が

 

「…ここで、終わらせる!」

 

ぶつかり合う━。

 

次回、『コレが棺桶の逆襲だ』

 

 

「…さあ来いよ、ブラッキー…Masked Fighter!」

 

 




いかがだったでしょうか。

…このエピソードに突入してから早4か月ほど…途中2か月ほどサボったりしましたが、ようやく次の話に進めます…

このエピソードだけで、2万5千字越えという始末…w
どうしてこうなった。

次回は、まあ、次回予告見ていただければ分かると思います。

それでは、また。

P.S:前回の話を投稿した後、初変身の回(Ep.4)のPV数が1000件を越えました!
ありがとうございます!
…まあ、もっとも、変身しただけで、戦闘自体は次の話なんですけどねw
初変身だけでなく、今回の話でも言及された、カイタとレンコの出会いのエピソードでもあるので、まだ見ていない方はぜひ読んでみてください!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。