ノアとミルチアの上司はミルチアを切り捨てる判断を下したようで、実験の素材として運用するそうだ。人権配慮もくそもない。せめて普通にクビにしろ。
俺とノアは上層から逃げ出した。
逃げた先は一つ下の聖堂街だ。なぜヤーナムの外へ逃げずに聖堂街なのか。
ノア曰く、ヤーナムの者がヤーナムの外に出る。それは輸血液の依存性と戦うことになるという。血の医療こと輸血はどんなことにでも使われる。輸血液は人の生命力を上げるのだ。人にもよるがエナジードリンクを飲むように手軽に輸血をする。輸血液の恩恵とその昂揚を手放したくないのだろう。
ノアは自分がその中の一人だと笑っていた。諦めの混じった笑みだった。
俺だけでもヤーナムの外に出ないのかって?
俺がミルチアに入る前にも輸血液を使っていたし、時代も土地も異なるヤーナムの地で一人で生きていける気がしない。
ノアもそう思ったのか、わざわざ俺と一緒に逃げてくれたのだ。とても優しい。神様ですか?
そして、なんだかんだあり家を借りることができた。大橋の近くにある家だ。高台にあり階段の上り下りがつらい立地だ。
その家で俺は引きこもって内職をしている。輸血液のビンにラベルを貼り文字を書く仕事だ。ノアの紹介なのだが、結構量があって大変だ。何箱もあるそれなりの大きさの電化製品でも入りそうな木箱に、ビンが敷き詰められている。これが半日でなくなるらしい。依存性って怖いもんだ。
ノアは医療関係者として働いているらしい。医療教会も把握していないような下っ端として頑張っているそうだ。
ノアに申し訳なくなってきた。
+++
なんてことはない食事中にいきなりノアが訊ねてきた。
「貴方はミルチアではないの?」
「……いきなりどうしたの?」
飲み物を噴出しそうになった。危ない。
なぜ急にこんなことを言い出すのだろうか。
テーブルの上にはいつもは見かけない赤い飲み物があった。匂いがきつい。酒だろうか。
酔っているなら唐突な質問もうなずける。
「どうしても気になったの。記憶喪失になってからミルチアの根本が変わってしまったように見えるのよ。」
やっぱりノアにはばれていたようだ。けれど彼女は聖歌隊にいた頃から俺への違和感に気づいていたように見えたが……
それでも焦りとして無意識に素が出る。聞かなくてもいい質問をする。
「ならどうして医療教会に通報しない?ミルチアの皮をかぶった化け物かもしれないんだ。
いい研究サンプルになるだろう。お前ら医療教会の願いに近づくかも知れないぞ。」
「……人間は愚かで下等な生き物。だから宇宙と接触して新しい段階に至り進化する。これが聖歌隊での私の目的だった。」
ノアが遠くを見ながら話す。酔いで焦点が合っていないだけなのか、それとも別の理由か。
「私とミルチアはずっと一緒だった。だからミルチアの違和感に気が付いた。他の人たちはミルチアがただの記憶喪失だと思っていたみたいだけど……」
聖歌隊は孤児院の子どもたちが元になった組織だった。きっとノアとミルチアは姉妹のように生きてきたのだろう。
「私はミルチアの中に入った貴方を監視した。貴方が何をしようとしたのかを知ろうとしたの。
けれど貴方は何もしなかった。ただただ人間を模倣していた。
エーブリエタースを見たでしょう。この世界に取り残された星の娘は祈ってばかりで私たちもこの世界も見ない。
星の娘が求める宇宙はどれほど素晴らしいかずっと気になっていた。」
ノアの目線が俺に向く。
「あの日、ミルチアの中に貴方が入ってきた。そして貴方は人間に収まり人に堕ちた。だけど上位者である貴方が不満もなさげに愚かで下等な人間として人間とともに生きている。」
ノアは俺を上位者か何かと思っているようだ。あんなよくわからん奴らと一緒にしないでほしい。
「貴方は上位者でありながら下等な人間としてこの世界に存在している、そのことに私は驚いたのよ。そして思った。人であることがそこまで悪いものではないのではないかと。」
つまり、俺の存在がノアの宇宙探求への道を外させてしまったのか。悪いことをしてしまった。
でも俺は上位者ではない。俺は否定の言葉を紡ぐ。
「上位者。超越的な思索を持った人ならざる者。
確かに私はミルチアの体を乗っ取っている時点で人間ではないさ。でも上位者なんてそんなたいそうなものではない。完全なものは不完全なものに焦がれたりはしない。」
「そうかしら。」
「そうさ。」
「それでも私は貴方の見ているものを見たい。」
**********
【ノア視点】
(やっぱり、ミルチアの中に潜む存在は人間ではないのね)
あの日、目覚めたミルチアは"異様”だった。
様々な動作、発言。何もかもが異様だった。まるでミルチアの中に別の何かが入ったような……
それはほかの聖歌隊員も気が付いていた。
何か根本的なものが違う何か。だが、その何かは人間のように振舞った。すべての動作、発言からみられる思考はどこまでも人間だ。
はじめはミルチアが超次元的存在を身に宿したのではないかと浮足立っていた聖歌隊員も、人間の範囲を超えない何かを懐疑的にみるようになり、ただのおかしくなった被検体としての目を向けるようになった。
だが私はある時に気がついた。 この何か……彼は『この世界を世界として見ていない』と。
世界を見ていない。 人を人として扱いながらも、物としか見ていない。
彼の見る世界に彼はいない。
鏡の向こうにある世界のように一線を引いている。彼はこの世界を、本の物語のように他人事に見ているようだった。
ヤーナム……いや、世界で起こる数々の出来事を起こっていることではなく、歴史に残るような事象の一つにしか彼は考えていない。
素晴らしい発見や発明がされても、驚くような事件が起きても、彼は眉ひとつ動かさないだろう。
彼は様々な神秘、そして上位者を見てもあるべき当然の事象として捉え、興味すら示さなかったのだから。
どれだけ人間のふりをしようとも、結局は彼は人知を超えた上位者だった。
背筋が凍るような寒気がし、そして納得した。
あの日、ミルチアは叫びながら走り回る奇行に走っていたが、あの叫びには恐怖がなく歓喜に満ちていたような気がする。
きっと宇宙と接触したのだろう。ミルチアは自らの体を器として上位者を自分に召喚したのだ。
そんな彼が器に大人しく収まり、人間を模倣するのは何か意味があるはずだ。それは最初から人間であった私が見れないようなものかもしれない。けれど彼とともに居れば知ることが出来るのだろうか。
ゲーム内のnpcや目に見えないモブが死んでも、現実で近しい人が死んだように一々嘆き悲しんだりはしないでしょう?
「宇宙は空にある」というメモを読んでも「そうだね」という感想だったでしょう(初見時)
俺さんは自分の体であるミルチアとノアだけ現実にいる人として扱っている感じ。
感覚では俺さんはモニターの前にいて、他の人々はモニターの中でしゃべっていて、ノアは画面から半分体が飛び出ている感じ。
ミルチアはどう表現すべきかわからん。アバターとはちょっと違うし……難しい……
追加分
ミルチア(俺さん)ははたから見るとかなり異様です。
まあ、そりゃあ現実から二次元(ゲーム世界)に憑依転生したのだから何か影響は出るよね。
何とも言えない説明では、車の運転に近い。
ブラボ世界ではノアたち現地民は自動運転で無人で動いている車。ミルチア(俺さん)は人間が普通に運転している車。
人間はどうあがいても機械と同じ動きはできないから、そういう違いみたいなものが違和感として出てる。
「再録」マルチプレイ時、単体ボス(渇けも・エミーリアみたいな)に対してどう戦ってますか?
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とりあえずタコ殴り
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攻撃係と囮
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部位破壊
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ボスごとに決まった戦い方がある
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何も考えていない
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その他
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