偶然か必然か、その少女の名前は…
※サブタイトルがこんなですが、「君の名は」の要素は一切ございません。
ある幼稚園にウマ娘の問題児がいるという
その相談を受けた生徒会長に「君が適任だろうと、私は思う」と言われたため、幼稚園にやってきた
幼稚園の先生に案内されて遊んでいる子どもたちを横目に見ながら応接室へと足を運ぶ
ふと遊んでる集団から離れてぽつんと一人でいるウマ娘の少女が目に入る
つまらなそうな表情をしていながらどこか寂しげな印象を受けた
(喧嘩でもしたのか…いや、あるいはあの子が…)
「見ていただきたいものがあるんです」
案内を受けた先である一つの映像を見ることとなった
つい先日に撮ったというかけっこの動画だ
『よーい、どん!』
子どもたちが一斉に駆け出す
どの子も一生懸命走る健気で微笑ましい映像だ
見ていると幼少の頃に姉とかけっこをしていた記憶が思い起こされる
「ん?」
そんな中一人の少女の表情が目に留まる
先程一人でいたウマ娘の少女だ
子どもたちは様々に、けれどみんな必死の表情をしている
けれどその子だけは涼しげで、そしてつまらなそうだった
かけっこも後半、走るのが得意な子もそうでない子もいるが大きな差はなく団子状態のまま最後のコーナーに集団が差し掛かった
その時だった
あの子が、大きく踏み込んだ
ぞくっ
思わず鳥肌が立った
突如として一変、彼女の走りは先程までの幼い子特有のただ手足を前に出すような動きでは無くなっていた
(…まるで鬼、いや怪物だな)
荒々しい暴風が吹いたかの如く彼女は一瞬にしてゴールを駆け抜けた
ゴール後、そのあまりの気迫に子どもたちの中には泣き出す子まで出ていた
彼女はというとその様子を一瞥しただけでさっと水飲み場へ去ってしまった
「今回ご相談させていただきたかったのは…今の一着を取った子のことなんです」
そうだろうな、とは思っても口には出さずに次を促す
「ウマ娘の子は彼女だけでなく何人もこの園にはいます。走るのが得意な子は多いです。けれど彼女だけはその…ご覧になったように比較にならないほどの走りで…」
話しながら段々と先生の言うことの歯切れが悪くなっていく
「いえ、問題というのはその才能のこととかではなくて、あの走りの時にこわい感じになることでもなくて…ええと…」
一人だけずば抜けた走りができること、その走りの威圧感で他の子が泣いてしまうこと、それはそれで子どもたちを預かる先生としては問題だろうに、この先生はあの子のことを思って心配しているのだろう
彼女の問題、それは私にはよく理解できた
応接室から出てあの子がいる方へと足を向ける
先生は後ろで不安そうに見守っている
彼女の背中の近くまで寄ったところで声をかけた
「一緒に走らないか?」
ピクッと少女の耳と尾が動く
「…ほんとに?」
振り向いてこちらを見つめる瞳には疑いと期待、そして何よりもギラギラとした闘志が宿っていた
「ほんきではしっていいの?」
ああ、と彼女の目を見てしっかりとうなずく
「―っ!」
すると彼女は中庭へと駆け出す
「じゃあはやく!はやくはしろう!」
やっと年相応な表情になったな、と内心安堵する
後ろの先生もほっと胸をなでおろしているだろう
「慌てるなすぐに行く、っとその前に…」
自己紹介をしていなかったな、と今更に気付いた
「私はナリタブライアンだ。お前の名前も教えてくれ」
すると彼女はあはははと笑い声をあげた
何がおかしかったのだろうと思っていると彼女は振り返らずに名前を叫んだ
「わたし、ナリタブラリアン!」