提督side
私は今日、提督と言う立場になる。
数年ほど前、海に『深海棲艦』と言うバケモノ共が姿を現し、人々を襲った。
未だ解体されていなかった海軍はこれに立ち向かった。が、しかし。現行の兵器は何一つ通用しなかった。ただ食われ続けるだけ、そんな絶望が世界に蔓延った時、奇跡が起こった。
『深海棲艦』に唯一対抗できるモノ。その名を、『艦娘』。
『妖精さん』と呼ばれる小人のような人型が突如現れ、彼女らに言われるまま資材を用意した結果、建造ドックと呼ばれるものが作られ、更にそこに資材を投入して数時間。
妖精さんと共に現れたのは、かつて大戦時に活躍した長門型一番艦『長門』だった。
彼女はたった一人で異形どもを駆逐し、日本近海の制海権を取り戻した。しかし、やはり一人では厳しいのか、彼女は多くの仲間を欲した。海軍も『艦娘』がいれば有効打を打てると信じ、多くの建造を行った。
だが、ここでもまた壁が立ちふさがった。資材の枯渇だ。彼女らが行動する際、必ず燃料が必要になる。彼女らが戦闘を行う際、必ず弾薬が必要になる。彼女らが被弾し、入渠する際、必ず鋼材が必要になる。彼女らの艦載機が撃墜される度、必ずボーキサイトが必要になる。
ある意味この4つさえあれば大丈夫だった。しかし、これらは建造するときにも必要なものである。そして、多くの建造を行った結果、資材が枯渇した。
そこで、海軍本部大本営は各鎮守府を流用して、彼女らを使役する場所を作った。何の因果か、鎮守府はただ座して待つだけで資材が増えていった。そうして何とかむりくりして海域を攻略していったと言う。
彼女らを使役する人間のことを、『提督』と呼ぶ。『提督』は特殊な能力が無ければ成ることは出来ず、結果として『提督』は慢性的な人手不足となった。その特殊な能力と言うのが、『妖精さん』を視認できること。『妖精さん』は一般人では存在すら感じ取れず、『提督』は唯一無二の存在だ。そして、『提督』の業務は『艦娘』を指揮すること。
『妖精さん』、『提督』、『艦娘』、『資源』。これらが揃って、漸く『深海棲艦』に太刀打ちできるのだ。
そして───
『妖精さん』も『提督』も、唯一の存在だが、『艦娘』だけは、『資源』さえあれば幾らでも建造できるのだ。
だから捨て艦戦法などという悪質な指揮が広まった。
結果艦娘の多くが轟沈し、深海棲艦の戦力が増大した。
理屈はわからない。もしかすれば『艦娘』の怨みが彼女らを『深海棲艦』に至らしめたのかもしれない。ただ、その事実だけがあった。
この事実を受け、大本営は方針を転換。『提督』らの反対を押し退け、『艦娘』らを大事にするよう命じた。そして、『提督』が大本営の意思に反した場合に備えて『憲兵』と言う役職を作った。
年々と艦娘らの轟沈数は減っていった。しかし、裏では未だに同じことをしていたのか、深海棲艦の猛攻が止まることはなかった。
そして、現在。
ここ、柱島鎮守府にて不正が発覚した。捨て艦戦法、盾艦戦法、大艦巨砲主義に加え、艦娘を兵器とみなし、その生活を最底辺に、彼女らを性欲の捌け口とした吐き気を催すほどの悪質な鎮守府だった。
轟沈数は少なかったが、その内情が大本営の意思に反していた。
抜き打ちで調査した結果わかったことだった。
しかし、すぐに捕らえることはできない。何故なら鎮守府は提督が存在しなければ回らないからだ。提督がいない間に深海棲艦に襲撃されればひとたまりもない。
そして、私に話が来たのだ。
車内で、資料を読み、嘆息する。既に車は鎮守府前に着いていた。
車内から出て、待っていた大淀と挨拶を交わす。
私が向かっているのは、その柱島鎮守府だ。
私は大淀の案内のもと、執務室へと向かう。大淀から感じるのは警戒。性処理の対象にはならないだろうが、どんな人間か分からない、そんな感じなのだろう。
「この鎮守府には何人の艦娘がいるの?」
警戒を解き、信頼を得る為にはまずコミュニケーションだ。会話することさえ儘ならないなら行動で示すしかない。
「……ここに在籍しているのは約150名です」
警戒色の濃い声音で応える大淀。予想よりも多く艦娘がいた。資料にも轟沈した数は少なかった。この様な鎮守府は大抵轟沈者が多いものだが、ここは違う。資料を読んでいて違和感があったのは、
「……予想よりも、随分と多いのね」
驚きを隠す為に固い声を出す。
「……この鎮守府には、守り神がいますから」
守り神? その守り神のお陰で彼女らは今まで生き残った?
どう言うことか、そう聞こうとした時には目の前に執務室の扉が存在していた。
「ここが執務室です。……大淀です。入ります」
大淀がノックした後、中から誰何の声が聞こえ、入室の許可を出した。私は大淀と共に入室する。生暖かい風が、私の頬を撫でた。
「新しくここに着任する提督をお連れしました」
「ああ。大淀、ありがとう」
彼女は大淀にお礼を言い、そして私の目を見た。見定めるかの様な、鋭い目。
「貴方が提督か。私は長門型一番艦戦艦『長門』。………よろしく頼む」
長門は私に手を差し出した。考えるまでもなく悟った。恐らく、ここが転換点だ。ここで、私がどう判断されるのかがわかる。
「ええ、よろしく。私は橘桜。階級は先日中佐に上がったわ」
しっかりと、手を握る。にこやかな笑みを浮かべて。
それに驚いたのか、長門は───いや、
「───ハハッ」
長門は堪えきれないとばかりに笑った。そう言えば私が執務室に入った時も、大淀と出会った時も、私を一眼見て皆驚いた。何故なのだろう。
「───長門さん」
冷静で涼やかな声が鳴り響いた。それは少し、長門を咎める意思を含んでいた。
「ああ、すまない。提督、笑ってしまってすまなかった。まさか手を握り返してくるとは思っても見なかったのでな」
長門は正直に、真剣な顔でそう言った。やはり、試されていたのだとわかる。
「さて、他の面々と役職を紹介しよう。私は戦艦総括職で、隣にいるのが正規空母『赤城』、役職は空母総括」
そうして先程声を上げた女性を紹介する。
赤城は一歩前へ出て少しだけお辞儀した。これは、まだ信用されていない証だ。
「ご紹介に預かりました。空母総括を務めさせていただいております、赤城です」
また元の位置に戻る赤城。彼女は私の顔を見ない。ずっと目を逸らしている。
「次に重巡総括の高雄型一番艦重巡洋艦『高雄』」
「高雄です。重巡総括を任されています」
赤城と同じように一歩前へ出て、また下がる。彼女は長門と同じく私を見定めるかの様な目をしていた。
「軽巡洋艦総括の球磨型一番艦軽巡洋艦の『球磨』」
「球磨だクマ。よろしくクマ」
こちらも長門同様手を差し出してきた。ただ、その瞳には警戒色が色濃く出ている。
「後、ここには居ないが駆逐・潜水・海防艦その他総括兼
「は?」
思わず、声に出してしまう。いや、それも仕方がないと言える。
なぜなら、
「まぁ……そうなるだろうな」
静かに、長門がこぼす様に言う。その声音は、後悔に塗れていた。
「どういうこと?」
聞く。聞かずにはいられない。長門のその声音もそうだが、私が声を発した際に、多大な
恐らく時雨は、この鎮守府の中心にある。
「………」
長門が横に目を滑らせて赤城や高雄、球磨と目を合わせる。きっと目と目で会話しているのだろう。私はただ待つのみだ。できることなど、少ない。
「……わかった。提督、今から話すのは、この鎮守府の
闇そのもの。その言葉は、限りなく重い。今しがたここに到着した私に、受け止められる話だろうか? わからない。わからないが、聞くしかない。
「時雨は……」
そう、長門が口を開いた時。執務室の扉をノックする音が、静かに、しかしはっきりと聞こえた。
「……誰ですか?」
今まで扉の側に待機し、黙って話を聞いていた大淀が誰何する。
『時雨です。新しい提督が着任したと聞いて、挨拶をしに来ました』
「「「「「ッッッ!!!!」」」」」
私を除く全員が息を呑む。いや、私も驚いたと言えば驚いたけど。ただ、彼女らのそれは、何かが違った。
「………どうぞ」
大淀がそう声を発し、時雨を招き入れる。
執務室の扉が開き、その向こう側の景色を露わにした。
そこには────所々に赤黒いシミのある制服を着る、時雨の姿があった。
後日談はあり? なし?(20日まで)
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書いてほしいかな
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どちらかと言えば?読みたいかも
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あー、別に?あったら読むかもね
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いらんいらん。後日談は蛇足だから
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読まないね
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艦これの他の作品も読んでみたい
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どーでもいー