国産MMORPG『ETERNAL』~修行中ウォーリアとドチートプリースト、戦場を縦横無尽に駆け回る~ 作:佐伯 みのる
オリジナルの主人公がノックシア大陸を駆け回ります。
今回は、旅立ち~シラヌイとの出会いまで。
基本はゲームシナリオに沿って進みますので、ゲーム内ムービーや会話をスキップされている人も(笑)読んでみて頂けると、ETERNALの世界観が改めて知れるかも…。
亀のごとき歩みとなるかもしれませんが、是非お付き合い頂けると幸いです。
『ノルダニア神聖国』。ノックシア大陸の南部に位置する、人間族の宗教国家である。
この国は今、多くの問題に直面している、特に大きな問題としては『オルド連合体』との睨み合いだ。彼らとの緊張は今や最高値まで高まり、いつ戦争に発展してもおかしくない様相を見せていた。
『オルド』とは、様々な種族の連合体である。ディランド地方に先住していた彼らは、そこへ侵入してきた人間と幾度となく領土を巡る争いを繰り広げてきた。その戦いにノルダニアが参加した事によって、ノルダニア神聖国とオルド連合体との間には軽くはない因縁が生じることとなった。
16年前の戦争を最後に休戦協定を結んだ両者であったが、今や再開は時間の問題だった。
ノックシア大陸の中には地図にすら乗らないような、村とも呼べない小さな集落が点在していて、その兄妹が暮らしていたのもその中の1つであった。
妹の名前はアリシャンテ。小柄な彼女は身の丈に近い長さの大剣を難なく振り回してみせるウォーリアである。しかしまだノルダニア軍の中では見習いの立場だ。
彼女に剣を教えた師は同じ集落に住む好々爺然とした隠居爺で、それまで彼女は野山を駆け回って遊ぶ元気な少女だったのであるが、6歳の頃、分け入った山でウルフと遭遇し、追い回されていたところをその爺に助けられたのだという。その夜、帰ってきたアリシャンテは全身擦り傷だらけにも関わらず「わたし、せかいさいきょーになる!!」などと頭が悪そうな目標を高々と掲げた。
それからは隠居爺の元へ足しげく通い出し、剣の持ち方構え方、そして当然素振りの練習から始まった。たまに練習試合として爺と実戦で剣を合わせているようであるが、隠居爺といっても年の頃は60半ば。まだまだ若いアリシャンテでは、全くと言っていいほど歯が立たず、いつもぶっ飛ばされて終わっていた。
兄の名前はフリューゲルト。アリシャンテとは歳が4つ離れている。妹とは違い家の中で黙々と本を読み耽るような、穏やかなタイプの青年だ。彼の場合は少し特殊で、小さな頃から腕白で山を転がり遊び回っては怪我をこさえて帰ってくる妹の手当てをしている内に、回復の力を手に入れてしまったプリーストだ。
およそ10軒にも満たない集落に魔法の使い手などいる筈もなく、残念ながら彼には師匠と呼べるような相手はいない。農業や牧畜を営む面々以外は、若い頃に剣を扱った事がある今では隠居の爺さんぐらいだったので、怪我や病気には昔から、薬草を磨り潰して塗ったり煎じたものを飲んだりして治してきた。
これはアリシャンテが8歳の頃だ。いつものように傷をたくさんこさえて半べそをかいて帰ってきたアリシャンテの、師匠に木刀で叩かれたのだろう真っ赤に腫れた手の甲を擦り、「痛いの痛いのとんでいけ~」と唱えるように歌った。手当はもちろん後で薬草を使って施すつもりであったし、彼の中ではただただ妹を泣き止ませたかっただけなのだが。
その時、ふわりと風が動いた。窓も扉も閉められていたのに。そして、小さな妹の手の甲から腫れが少しずつ引いていった。
これが、フリューゲルトが初めてプリーストの能力に目覚めた瞬間である。
そんな2人が村を出る事となった理由は、やはり隠居爺のせいだった。
ある日、唐突に一枚の羊皮紙を手にアリシャンテが帰ってきたのだ。そこには何やらミミズがのたうち回ったようなテキトーな文字で「めんきょかいでん」と書き殴られている。
そして言う。
「ノルダニアに行けって、師匠に言われたんだけど」
年の頃は、アリシャンテが16歳、フリューゲルトは20歳。
2人は半ば強制的に、旅に出る事となったのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「はやくはやく~!!教官きっとおかんむりだよ~~?」
「うるっさいわね、分かってるっつーの!!
ちょっとお兄ちゃん、遅いんだけど!?」
「あ、あのね、僕は、本来、ハァハァ、体力系じゃないんだよね…ッ。
ハァハァ、お前みたいな、体力オバケと、ハァ、一緒にしないで欲しいなぁ…」
「あァん !?」
赤い鱗粉を撒き散らしながら先導して飛ぶ妖精を追いかけるように、アリシャンテとフリューゲルトは走る。妖精の名前はレッドテイル。彼女との出会いはまたいずれ述べることとしたい。
山道を走り抜け、教官の待つ拠点まであと少しという所で、先を行くレッドテイルがくるんと宙を一回転して止まった。
「あれは…!!」
「ん?」
「……オークとゴブリンだね」
立ち止まった事に少し安堵の表情を作り、息を整えながらフリューゲルトは言う。
「女の人が一人で戦ってるよ!?」
レッドテイルが指さす先には、巨体で力の強いオークと俊敏に動き回るゴブリンを相手に、たった一人で立ち回る女性がいた。頭の高い位置でひとつに束ねた緑の髪を靡かせて、両手にダガーを持ち敵の攻撃をいなしている。
「うわぁ…一人はキツそうだよ~……」
「加勢しよっか」
「アリシャンテ、ゴブリンとオークだけどいけるかい?」
「ラクショーっしょ!」
にやりと不敵に笑って、アリシャンテは背中の大剣に手をかけると走り出した。非戦闘員のフリューゲルトとレッドテイルは後ろからついていくしかない。
背中の鞘から大剣を引き抜くと、女性とオーク達の間にためらいなく飛び込んでいく。ゴブリンが振り下ろした斧を剣で弾くと、女性を背中に守るように立ちはだかった。
「……あなた達は?」
「我が名はアリシャンテ!!
剣聖の命題に従い、そなたに助太刀いたす!!」
「……は、はい?」
「また師匠の本を勝手に読んだね、お前」
「行っきまーす!!」
ぐっと姿勢を低く保ち大剣を構えると、まずは素早いゴブリンへと飛び掛かった。ゴブリンは慌てたように持っていた手斧をアリシャンテに投げつける。それを難なく弾き飛ばしてみせると、下から振り上げるように大剣を振る。ゴブリンはとっさにナイフで受けるが勢いを削ぐことができず、顎に一撃を食らってその場に昏倒した。
ちなみに、アリシャンテが弾いた手斧は、緑髪の女性とフリューゲルトの元へと飛んできた。レッドテイルはもっと離れた所に既に退避中である。
「回避を!!」
「大丈夫ですよ」
避けるよう指示を出す女性へと、にこやかな笑みを浮かべてフリューゲルトが答える。そんな彼の真後ろで、何か見えない壁のようなものに遮られ、手斧は2人の手前で勢いを殺して地面に突き立った。
「お怪我はありませんか?」
「あ…はい、大丈夫、です…」
にこにこと人好きのする笑みを見せるフリューゲルトを見て、僅かに頬を染めながら女性は答えた。
残りはオークのみ。素早さに定評のあるアリシャンテにとっては、ゴブリンより楽な相手だ。
「どっりゃぁッ!!」
大剣を振りかぶり、一閃。慌てて後ろに下がったオークは巨体のバランスを崩し、その場に尻もちをついた。
「お覚悟ォォォ!!」
「そこまでッ!! 双方、剣を収めよ!!」
オークの脳天に一撃かまそうとしていた所で、思わぬ所から待ったがかかった。先ほどの緑髪の女性である。
「え……えぇ?」
きょとんとアリシャンテが目を瞬かせながら、それでも指示に従いゆっくりと大剣を背中の鞘に収める。
「この戦い、拝見させて頂きました。
申し遅れました。私、ノルダニア軍のシラヌイと申します。ゲイル教官からの依頼を受け、あなた達をテストさせてもらいました」
「え…?」
「テ…、」
「テストォォォォ!?」
驚くレッドテイルとフリューゲルトよりもさらに大仰な声を上げて、アリシャンテはシラヌイに食ってかかる。
「ちょ、テストってどういうこと!?」
「うふふ、ですから、ゴブリンとオークを相手に一人で戦う私を見てどうするのかとか、それら相手にどう立ち回るのか、とか。まぁ色々です。
そうそう、こちらのオークとゴブリンも私の知り合いです。今回のテストに協力して頂きました」
照れたように頭を掻きながら、オークとゴブリンは会釈をしてくる。先ほどまでの敵意は霧散して全く何も感じない。
「え…えぇぇ…?」
「それで、結果はどうなんでしょうか?」
全身で脱力を表すアリシャンテの肩を励ますように叩き、フリューゲルトは視線をシラヌイに向けると。
「もちろん合格です!
さぁ、ゲイル教官へ報告を!!」
にっこりと笑みを浮かべて、シラヌイはサムズアップしてみせた。
【続く】
オリジナル主人公が、ETERNALの世界観を壊さないでくれているといいな…とドギマギしながら始めました!!
やっぱり小説を書くのは楽しいなぁ…としみじみ感じ入っております。
読んでくださった皆様が『けっこう面白いじゃん』と思ってもらえるようなものを書けるよう、次の話も頑張りたいと思います!!