暁の巨神   作:おっとー

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プロローグ:3060年・惑星ハントレス

『降下予定地点に到着、全機降下用意。』

 大気圏突入用降下殻に覆われたバトルメックのコクピットの中でそのアナウンスを聞いた時、私は来るべき時が来た事に胸が震えるのを感じた。

 いよいよ私の復讐が果たされる。そう思うと、居ても立っても要られなくなり、すぐさま降下船の扉を開けて飛び出したくなる衝動に駆られた。

 だが、まだだ。まだ早い。復讐の機会を10年待ったのだ。あと数分ぐらいは待ってもいい。

 そこに秘匿回線で通信が入ってきた。私の副官で愛人の一人でもあるマーニャからだ。

『トキコお姉さま......いえ大佐。間もなくですね?』

「秘匿通信だから、いつも通りでいいわよ。」

『すいません、一応任務中ですので。誰かに聞かれたらと思うと......』

 そう言うと、頬を赤く染めてうつむく。普段は鬼の副官と呼ばれているが、本来は内気で大人しい性格をしており、こんな時代でなければメックで戦う事は無かっただろう。

 だが、彼女の家系と情勢がそれを許さなかった。しかも、彼女の家族は一人残らず殺されているのだ。何人か残った私はまだマシな方だろう。

「そう、私達の復讐はもうすぐよ。もうすぐ...... 」

『はい......あの女に、やっと意趣返しが出来ます.........』

 再び顔を挙げたとき、その目には危険な輝きが宿っていた。大人しいからと言って、好戦的ではない訳ではない。何しろヤクザの娘な上に人一倍短気なので、「クレイジー・マーニャ」とも呼ばれているのだ。

『あの女に、エドで私にした事の報いを......うふふ...... 』

 暗い笑みを浮かべるマーニャに、私は溜め息を付く。もっとも、奴が私達にした事を思えば無理も無いことだが。

『二人とも~、作戦中に内緒話しですか~。』

 間延びした声に、私達はハッとなる。秘匿回線に割り込んでくるような芸当を持っているのは、部隊では一人しかいない。

「盗み聞きとは悪趣味よ、アズサ。」

『作戦中に内緒話なんか、するからですよ~~』

 何度も繰り返されたお馴染みの会話。妹のアズサは天才的なハッカーであり、その能力は「魔法使い」とも言われている。ドラコ連合ではなく連邦=共和国に産まれていたら、NAISに入学していただろう。

 アズサの横槍にマーニャはたちまち不機嫌になるが、作戦中なのでひとまず黙っている。いつもだと、文句の1つ2つが出てくる所だ。

『機動部隊本部より通信です~。「当初の作戦行動に従い、敵補給基地及び物資備蓄所を攻撃せよ」で~す。』

「いつも通り、という訳ね。」

 補給所への襲撃だからと言って楽な任務ではない。ツカイードの戦い以降、氏族(クラン)は補給所の守りを固くするようになり、複数の補給所への襲撃には大隊以上の戦力が必須だった。

 《ブルドック作戦》と呼称された今回の戦いには、私が率いる傭兵部隊「アカツキ武士団」の他に大小様々な傭兵部隊が―――最大の戦力を有していたのはエリダニ軽機隊とノースウィンド・ハイランダーズであった―――ハントレスへの侵攻作戦に参加していた。

 戦闘は既に始まっており、先行したサーペント機動部隊によってスモークジャガーの前衛戦力は潰滅し、本隊も大きなダメージを受けていた。

 しかし、首都周辺の防衛線は未だに強固なもので、戦況は予断を許さない状況となっている。この補給所への攻撃が突破口になれば良いのだが。

『降下準備完了。全機、降下を開始せよ。』

「先行部隊は境頭堡の確保に努める。降下地点を"掃除"して、降下船が降りるエリアを作るわよ」

『了解!』

 仲間の返事を聞くや否や、私は降下船のハッチを開けて降下殼ごとハントレスの衛星軌道に飛び出した。あとはハントレスの重力に引かれて降下していくだけだ。

 降下しながら、私はこれまでの10年間を思い返していた......

 

 

 

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