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江松小の純白の廊下に、血が流れる。
少数の屍人が、多数の人を仲間にするかのように血が拡がっていく。
「チッ─────クソが」
忌々しげに舌を鳴らすのは、アーベル・ルプスだった。
彼の肩甲には深々と黒曜の短剣が刺さっており、刺さった箇所からは鮮やかな赤が流れていた。
(……殺気を感じて咄嗟に躱したのは良かったが……サーヴァントか、クソ、厄介だな)
「……アサ、シン……なぜ、ここにいる……遊人は……」
なにを、と言いかけた切翔を遮るように”陽“のアサシンが口を開いた。
「なに、ただ───言われたままに従っただけさ、『キミは”陽“のセイバーの援護をしろ』、というユウトの指示にね」
時は遡ること数分前─────
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ある家電のショッピングモールへと足を運んでいた遊人だったが、ふと立ち止まり、”陽“のアサシンへと振り返った。
「アサシン、悪いけど江松小まで行って、アニキの援護に行ってくれる?」
「な、何を馬鹿なことを言う貴様!?
私一人でどうにかなると思っているのか、セイバーやアーチャーなどといった魔術に耐性のあるサーヴァントと出くわした際はどうするというのだ!!」
怒鳴る”陽“のキャスターを一瞥し、遊人が嘲笑した。
「……お言葉ですが、もとより義隆にとってはボクたちはいてもいなくてもいい戦力なようでして。
じゃなきゃ、アサシンとキャスターとかいう正面からの戦闘向きのサーヴァントではない二組で行動はさせないハズなんで」
「なっ────!?」
動揺する”陽“のキャスターに続き、戸惑いながら一号が訊ねた。
「あ、あの遊人様……僕は貴方の意見に賛成ですが、いいのですか?
……義隆様が、使い魔で監視している可能性が───」
「それは無いよ」
遮って、遊人が断言する。
「だってココ、美月っていう霧島が魔術師の家系の頃に不戦の契りを交わした魔術師のトコロの土地だもん。
特に爺さんは使い魔含めた不可侵の契りを交わされたみたいでさ、ここに来たら監視なんてムリなワケよ」
強かに笑う遊人。
その瞳は明らかに義隆への反抗が現れていた。
「そんなわけさ、行ってくれアサシン。
大丈夫さ、実は近くに戦闘用のホムンクルスを複数体控えてもらってるからさ。
奇襲に対しての備えもバッチグーよ」
ウィンクをし、”陽“のアサシンに余裕を伝える遊人。
そんな、遊人のお調子者な姿に”陽“のアサシンは溜息を零した。
「分かったよユウト。
……君の言うことに従うさ、それが一号の願いでもあるみたいだしね」
「……こうなれば、私も賛成だ。
あの老害め、よくもこの私を下に見てくれた。仕返しのひとつをせねば気がすまん……!」
”陽“のキャスターは、歯を強く軋ませながら、遊人に賛同する。
目を血走らせながら、霧島邸を睨んだ。
”陽“のキャスターは、自身よりも後に生まれた魔術師にコケにされ、怒り狂っていた。
其れは、魔術師としての誇りもあるが、人としての矜持が大きかった。
尊敬の念を蔑ろにし、サーヴァントを下に見る義隆の態度に、”陽“のキャスターは燃えたぎる怒りの焔を瞳に宿していたのだった。
「こうなれば、ここで暴れて美月とかいうやつに怒りを買ってやる……!!」
本来ならば下らないと一笑する遊人だが、陽のキャスターの性格上、それをするべきでないと瞬時に判断し、そして諌めた。
「お待ちを。実はボク、美月の当主と少し縁がありまして───今、彼女の機嫌を損ねたら次の日になると僕の命が危ういのです。
なのでここは少しの辛抱を。
それに、どうせならば義隆の土地で暴れたくはありませんか?」
「む」
確かに、と唸る”陽“のキャスター。
ここで八つ当たりしても、自身がこの世から留まれなくなる可能性がある。
それを考慮できていなかった浅はかな自身を悔やみ、遊人に視線を向けた。
「礼を言う。危うく、我が研究が出来なくなってしまうところだった」
「おや、聖杯には頼らないので?」
鼻で笑い飛ばしながら、陽のキャスターが答えた。
「確かに、それが楽だろうよ。
しかし、私はそんなインチキに頼りたくはない。かの発明家は失敗は成功のもと、と言ったように。魔術も日々、失敗しながらも悩み、そして成功を掴むものなのだよ。
私は───生前の失敗を活かす。全力で、全霊で」
成程、と頷いて遊人は背を向けて、陽のアサシンへと再度、命令を下した。
「じゃ、ま。存分に暴れちゃってよアサシン。
で、アニキにも一つ伝言お願い。
『借りは返したよ』、ってさ」
「? あぁ、言っとくよ」
そうして、陽のアサシンは切翔のいる江松小へと駆けるのだった─────。
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「ってワケさ。全く、すごいことするよ彼は。
一歩違えばヨシタカによる制裁は免れなかっただろうしね」
「あのバカ弟……自分の、身を考えろ、なにが『借りは返した』……だ……」
ふらついた足取りで力なく立ち上がる切翔。
そして、懐から緑の丸薬を取り出した。
陽のアサシンが、その丸薬を訊ねた。
「それは?」
「……義隆が作った……丸薬だ。
飲めば死ぬレベルの激痛が走るが、体の悉くを再生させるシロモノだよ」
それを、躊躇なく飲み込む。
ごくり、と丸薬を飲み込んだ瞬間、切翔の身体中に痛みが走る。
「ア─────ヅ、ァ」
喩えるのならば、身体の内側からナイフで全身を裂かれる感覚。
それが、切翔へと襲う。
それと同時に、風穴が空いていた腹部が肉と肉で繋ぎ合い、塞がれた。
「チッ……痛たいな。
(───今、
第二の切り札、それを切翔は頭の中で過ぎらせ、理性で使うのを止めた。
本能は使えと叫び吼えるが、理性は早くから切り札をそんなに切るべきではないと、必死に押さえつけた。
「……クソが、サーヴァントと魔術師殺しが一人ずつの状況だァ?
ざけんじゃなぇよ、ホント、クソがよ」
それは、眼前で冷や汗を垂らす
「───否、二人の魔術師、さ。ルプスくん?」
そうして、役者がもう一人、不敵な笑みを浮かべながら来訪した。
黒いハット帽を被せた、有名だった親戚を模倣したかのような姿の男。
コンラート・アグリッパが、その場へと現れた。
「おせぇんだよアグリッパ、何してやがった?」
「なに、準備も兼ねて少しポップコーンを片手に観戦させてもらってたのさ。
ワタシの魔術はしってるだろう?」
再度、ルプスが舌打ちを鳴らす。
切翔は、即座に“陽”のアサシンへと、
「アサシン、セイバーの援護へ向かってくれ。
───おそらく二対一だ。
俺の代えは効くが、サーヴァントなんて歩く戦闘機の代えはない。
それに」
見下すように二人の魔術師に不敵な笑みを見せながら、切翔は言葉を続けた。
「───こんな奴ら、殺せる。
さっきのは情けない話だが、油断をしてしまっていただけさ」
「───────ァ?」
ルプスは思わず、切翔に激しい殺意を向け、
「へぇ? 言うねぇキミ。道化みたいだよ」
アグリッパもまた、嘲笑を浮かべるのだった。
「……そうか。なら、任せるぞセツカ」
陽のアサシンは、切翔は言葉を信じて、窓から飛び立った。
─────沈黙が訪れ、二人は一人を、一人は二人を睨む。
お互いが殺意を感じたその瞬間───切翔は目を閉じた。
『仮に、起源弾が通用しなかった場合はその眼に頼るしかあるまい。
お前の特異……異能にも程があるソレを』
義隆に言われて、昔のことを思い出しながら切翔は思考を逡巡させる。
否、この眼はまだやめようと。
本当に手が負えない、その際に使用しようと。
そう決めた切翔は────前へと駆け出し、マシンガンを連射させる。
狙いがよく定まっていない鋼鉄の雨が降り注ぎ、血の水溜まりを作られようとする。
しかし、ルプスにとってはその雨は些細なモノだった。
アグリッパの眼前へと立ち、驚異と感じられる弾丸のみを弾く。
そのルプスの行動に切翔は笑みを浮かべた。
「ありがとう───アーベル・ルプス!!」
弾丸がひとつ、消化器へと被弾する。
その瞬間、アグリッパとルプスはしまったと悔やむ。
しかし───それはもう遅い。
消化器は破裂し、中から白い煙が漏れ始める。
同時に、
「───“
切翔の手によって放たれる小さな、小さな炎。
しかしそれはスプリンクラーに感知され、ジリリリリリと大きな警告音を響かせながら、水を出す。
(───なるほど、ルプスくんの探知能力を潰しに来たか!!
それらさえ潰しちゃえば後は───)
「”───repeat“!!」
アグリッパが詠唱すると、その瞬間に自身の周りを包みなが、業火が現れる。
アグリッパは狙いを自分だと予測し、守りの炎の壁を展開させた。
ルプスはその中に入らなかった、ルプス自身がそれを拒否したのだ。
そして、そうするだろうと考えた切翔はトンプソン・コンデンターを取り出す。
そして、放つは魔弾、起源弾と思わせての通常の弾丸だった。
ルプスに狙いを定めて、弾丸を放つ。
「このっ─────!!」
───こうして、手間を取ってもなおルプスの耳は、全て聞こえていた。
弾丸が
そしてルプスはそんなものは通じないとばかりに、弾丸を己が肉体で盾となり、弾丸を弾こうとする。
「……今だな……っ!!」
そうして、切翔は───その瞳の色を綺麗な紅色にて変貌させる。
視界が奪われているため、ルプスは気付かなかった。
しかし、
─────ヒュン。
風を切る音だけは聞こえていた。
刹那、ルプスの胸部に深い切込みが入った。
鋭い痛みと共にルプスは身をたじろがせ、そして弾丸がその切れ込みの中へと侵入する。
「ガ────ガァァァァァァァァァァァァ!!」
「な、なんだ!?
ルプスくん、一体何が……!!」
ルプスの咆哮に、アグリッパが動転し、訊ねるも返答はない。
傷口にデスソースを流されたようなもの、そんな激痛を喰らえば、返答など出来ないし、まず気付かないだろう。
『─────呵々、よもやお前が生まれついての魔眼持ちだとはな?
……発現するまでには遅かったがよかろう。
『切断の魔眼』、自身の起源を関する名の魔眼を持つこととなるとは、面白い運命を有したな切翔よ』
笑う老人の顔が切翔の脳裏に再度、過ぎる。
「……黙れ、爺め」
ソレを、殴るように切翔が呟き、前方へと歩む。
コツコツと、足音を鳴らしながら。
「グ、ツゥ……クソ、クソクソクソクソ!!
霧島のゴミがァ……ッ!!」
ルプスはその方向へ睨みを飛ばす。
先程よりかは威勢の弱い、恨み痛みの眼だった。
「───あまり吼えるなよアーベル・ルプス……弱者へと転落したいか?」
切翔が歩み寄る。
しかし、
「そうら!!」
それを阻害する、アグリッパ。
魔力で生成した呪いの玉を切翔へと打ち込んだ。
『ガンド』と呼ばれるソレはアグリッパの直感ではあったが切翔のいる場所へ見事、向かって飛んだ。
切翔は後方へ退き、ガンドを回避する。
それと同時に、
「▉▉▉▉▉▉▉────────」
ルプスが吠える。
仲間を呼ぶように、狼の遠吠えを放った。
それと同時に、階段から獣の足音が聞こえる。
切翔が後ろを向くと、
「u───GRRRRRR」
血走った目で切断を睨む、その犬たちを見て切翔は愚痴を零した。
「面倒な手間を取らせてくれる全く……!」
眼を発動させる。
瞬間まるで豆腐を切るかのように、犬たちの首が切断されていく。
そんな中───ルプスは切翔へ向かって突進していた。
(───奴に踊らされてたが、よくよく考えりゃ身体能力はこっちの方が上……なら!!)
「……殺せれる、か?」
瞬間、切翔はルプスへと振り返っていた。
ルプスは大きく目を見張り───首筋へ向かわれていたナイフを回避するべく再度、後ろへ跳んだ。
「残念だったな。
俺の魔術は少し変わっててな。
段々と、効力が翔けてくるんだよ。これは祖父が以前言っていた、俺の起源に由来するとの事だ」
「……マズイねぇ」
呟きながら、アグリッパが左手を輝かさせる。
それは、令呪を使用するのだと気付いたルプスが、吼えた。
「おい、今使ったら……!!」
「今、使わなければだよ。ルプスくん?
セイバーが戻ってくるかもしれないが幸い───こちらは既に応援を呼んである。
あと数分もしないうちに来るだろうよ。
……ミヤビと、バエルがね?
その間、我々は時間を稼げばいいのさ」
「……! へぇ、そりゃいい」
ルプスが納得し、笑みを浮かべる。
それは、アグリッパのハッタリだと理解していたからだ。
しかし、切翔にははったりだと分からない。
切翔の中では、撤退という本能による絶対命令が行われていた。
(応援が来るだと?
クソ、こちらの応援が望めない以上、こうなったら早く逃げたいところだが……セイバー達はどうなっている?)
ふと、切翔がグラウンドの方へ向くとそこには、腹部を貫かれた”陽“のセイバーと、“陰”のセイバーに圧されている”陽”のアサシンの姿が映っていた──────。
実を言うと切翔くんの魔眼は今日思いつきで書いちゃいました♡
理由としては単純に、次期当主としては上がいすぎるなって思ったためです。
とまぁ、それはさておきキャラ紹介へ移りマース!!
キャラ紹介
霧島遊人
年齢……16歳
誕生日…4月1日
身長……164cm
魔術属性……『地』
好きなこと……魔術の探求
嫌いなこと……竹流の嫌がらせ
天敵……切翔
起源『遊ぶ』
雅の次男坊。生まれた当初は周囲の者達に持て囃されたが、魔術を覚えてしまって以降は侮蔑の目線を向けられ、周囲から一歩間違えれば死ぬような仕打ちを受けていた。
切翔とは違い高校に在学してる。