少年と聖人
───煉瓦造りの道の上を、彼女に手を引かれながら歩く。
力が強いから、ちょっと痛いけど、構わない。
その、夜のような綺麗な黒髪が、海のような青い瞳が。
そして、聖母のような優しき心、全てに僕の心が奪われた。
彼女の手の温もりだけで、全て帳消しに出来るというものだ。
『そういえば、先に貴方の名前を聞いておかないと!!』
そう言い、僕に振り返る。
女性は、自身の名を明かしてから、僕の名を訊ねた。
『私はマルタ、ただの、マルタよ。
貴方の名前は?』
『え……と、僕の、名前は……』
呆気に取られて、しどろもどろと、他所から見れば怪しい挙動で僕は名前を明かした。
『僕は……▉▉▉って、いいます』
何の変哲もない、ありきたりな名前。
だというのに、この人は笑いながら、
「▉▉▉……素敵な名前ね!!」
そう、言うのだった。
……多分、もっと前のこととは思うけれども。
僕は、この女性に惚れてしまっている。
それは、彼女に声を掛けられたときからか、それとも、たまたま彼女の横をすれ違った時なのかは分からない。
だけれど、こんな、甘くて、蕩けてしまいそうなくらい幸せな時間を、悠久の如く続いて欲しいと願っているというのは事実だ。
『失礼します』
『おや、マルタか。ん、そこの子供は?』
───しかし、その時間は突如として終わりを迎える。
かの方との出会いで、紙が破かれるかのような容易さで。
マルタさんはその男と顔を合わせると、僅かに頬が紅潮しており、顔を俯かせた。
恐らく、この人に惚れてしまっているのだろう。
……なんでか、そんなことを悟った途端、僕は目の前の男の事が憎くて、怪しく見えて仕方がなかった。
彼は彼女のことを騙しているのでは、と。
絶対にコイツの嘘を暴いて、マルタさんを助けなければ、と僕は胸に誓い、そして彼女の前に立って、その男に名乗った。
『初めまして、僕は▉▉▉と申します』
出来るだけ、作り笑顔を巧く見せながら。
僕は、男に手を伸ばした。
男が、嬉しそうに笑みを浮かべながら、僕の手を握り返す。
……なんて弱々しい手だろう、と不意に思ってしまった。こんなに弱々しいと、思わず握りつぶせるのでは、の錯覚してしまう。
僕の、そんな屑のような感情を見抜いてないのか、男は微笑み、名乗り返した。
『初めまして、私は───────』
そのビッグネームに、僕は思わずやっぱりだと、浅はかな勘違いをしてしまったのだった。
彼は騙してなどなかった、正真正銘、自身の人柄で人々から支持を得るようになったのだと。
……それを死ぬ直前に悟るなんて、なんて、愚かなのだろうか。
その日、僕は恋と、嫉妬を知るのだった───
人物紹介
裏切 雄大
年齢……幾つに見えますか?
誕生日…秘密です
身長……180cm
魔術属性……『火』
好きなこと……人類の進化
嫌いなこと……感情的になること
天敵……霧島義隆
起源『虚無』
自称魔術師の男。
それにしては経歴が出鱈目であり、そしてロザリオなんかをつけている。
果たして、男の目的とは……???