Fate/fake savior   作:桜野 ヒロ

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大変お待たせ致しました


妻と夫

 ───“陽”の陣営魔術師達が潜んでいるホテル。

 その、“陽”のアーチャーとその契約者であるジャック・ユースタスの二人の部屋にて。

 ジャックが宝石に魔力を込めている光景を、アーチャーは興味津々に眺めていた。

 その、あまりにも夢中な視線に、ジャックもついに反応してしまった。

 

「……なんだ、アーチャー」

 

「いやね、この宝石が輝きを増すのが美しいなって思っちまってよ……オレも真似しようと思ってたんだよ!! 

 んで、この技術で輝かせた宝石を、カミさんと息子にプレゼントしてやるんだ」

 

 “陽”のアーチャーの言葉に、ユースタスは呆れながらも、どこか嬉しそうに苦笑した。

 

「……貴方に真似をされたら私の立場がないに等しくなるだろう。

 戦術等も貴方が上手なのだしね……いやだが、真似できたならばさすがはウィリアム・テル。

 我が国が誇り、愛する解放の英雄だと、私も拍手するね」

 

「ん? オメェさんスイス生まれかい!?」

 

「あぁ、しっかりとコレもある」

 

 ユースタスが胸ポケットから取り出したのは、“陽”のアーチャー……ウィリアム・テルの肖像が描かれたコインだった。

 そのコインを見た彼は、少し恥ずかしそうに、けれどとても嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

「へへ、恥ずかしいが……こうやって、愛しい後輩に出逢えるなんて奇跡は歓迎だ!! 

 さ、マスター呑もうぜ。アンタと、その家族の話を聞かせてくれや!!」

 

 冷蔵庫から、酒を取り出しながら“陽”アーチャーがユースタスを誘う。

 しかし、ユースタスはバツの悪い顔を浮かべた。

 

「……すまないアーチャー。家族とは、疎遠なんだ。

 息子も、妻もいるのだがね……私は、貴方のように気高く、愛を伝えれる人柄ではないのだ」

 

「なーにヴァージンくせぇこと言ってんのマスター!! 

 いいよいいよ、家族の愚痴は聞いてやら、嫁の愚痴は惚気のうちってな!!」

 

 沈む、ユースタスだがそれに反して“陽”のアーチャーは浮かれながら、豪快に笑い飛ばす。

 そんな明るいアーチャーを見て、ユースタスは勇気を得た。

 彼ならば話してもいいだろうと、静かに話し始めた。

 

「……私は、魔術師の感性を持ち得ることが出来なかった。

 父の教育が間違っていたわけでもないが、どうしても私は人の心を持ったまま、代を受け継いだ。

 ……だというのに妻は、息子は酷く魔術師として完成形に近い姿となってしまっていた。

 息子は私の魔術師としての姿に羨望の眼差しを向け、妻も魔術師としての私にはまるで生娘のような態度となる。

 それが、辛くて、辛くて辛くて……研究に没頭せなければならないと偽って、私は別居をすることにした、そう。私は逃げてしまったんだ」

 

「……おう、役者をずっと続けんのもツラいだろう。

 なんせ、つまりはお前さんは人一倍、優しいんだからな。

 優しいから、魔術師としての人格が完成できなかった、優しいから、騙す罪悪感にやられちまったんだ」

 

 ユースタスが言葉を発してから、ピタリと笑いを止めた“陽”のアーチャーは温かな声音で、ユースタスを慰める。

 

「家族を騙し続けてるのに……か?」

 

「あたぼうよ、男の嘘は優しさで出来てんのさ。

 そんな、優しい嘘ついて罪悪感でやりちまったんだ。可愛いもんだよ。

 だが……まぁ、ダメだよなぁずっと黙っておくのは!!」

 

 ユースタスの額を指で弾きながら、アーチャーは次は、説教を始めたのだった。

 

「いいか、家族には堂々と自分をさらけ出せ。

 逃げ場を無くすな、拠り所にしがみ続けろ!! 

 大丈夫だ、瓦解なんてしねぇよ! 

 ……だってよ、愛した女だぜ? 

 その結果、生まれた子供なんだぜ? 

 嘘で、虚飾だらけなお前を愛する、愛してくれているさ。

 なんせ優しいお前が選んだ女だ、優しくないハズがねぇ」

 

「アー……チャー……」

 

 おう、と“陽”のアーチャーは笑顔をうかべる。

 朝日のように眩しい笑顔を。

 その笑顔の前に、ユースタスは自身の目頭が熱くなった錯覚を覚えた。

 目を擦り、ユースタスが柔らかな笑みを浮かべる。

 

「……ありがとう、かなり肩の荷が下りた。

 そうだな、一回話あってみないとダメだな。

 この聖杯戦争に生き残れたら、私は一度話し合ってみるよ。

 機械音痴なんでね、電話機器なんて持ち合わせていないんだ」

 

「おう、そうしな!! 

 お、そういやオレって祖国じゃ今はどんなんなんだ? 

 知識としちゃ好かれてるってのは知ってるけど、知識よりも聞くことも、そしてお前さんの熱弁具合で推し量ることも可能だよなぁ!!」

 

「あぁ、それなら─────」

 

 こうして、二人は会議の時間まで酒を飲み交わし、談笑を続けた。

 ユースタスは現代のスイスについて、ウィリアム・テルという偉大な男についてを熱く、雄弁に。

 “陽”のアーチャーは祖国の現状を嬉しそうに、そして自身のことに関しては少し気恥しそうに聞き続けたのだった。

 

 ……余談、ではあるが。

 この後、ユースタスは見事に酔いつぶれてしまっており、他のマスター達からは呆れられてしまったが、それを気にせずに“陽”のアーチャーは笑い飛ばし、ユースタスは深く反省したのだった。

 

 

 

 ──────────────────────────

 

 

 

 ユースタス達が談笑している最中、“陽”のバーサーカーは街を徘徊していた。

 土地を知り、戦場に役立てるという名目で街の視察を行なっていた。

 

 ……微かに、“陰”のアヴェンジャーと出会えることを期待しながら、彼女は回りを見渡しながら歩く。

 

 彼女の近くにはじっと見つめる鳩がおり、その鳩は雅の使い魔だった。

 彼女の言を信じつつも、念の為に雅が監視をすることとしたのだ。

 

(……この土地は……時延だったか。

 周囲には建物が多い。弓兵殿や、主などは絶好の狙撃地点では無いだろうか? 

 問題は、それを敵側も知っていること……いっその事壊して───)

 

 少し思案していた“陽”のバーサーカーは、ふと、ある店から出る男女を見つけた。

 煌びやかな、外から少し騒々しい音が漏れ出ている、機械だらけの店。

 ───ゲームセンターを、彼女は見つけた。

 

(あれは確か……げぇむせんたぁ……でしたか。

 そういえば……義仲様とは幼い頃、よく遊んでいましたっけ)

 

 脳裏に、煌びやかな思い出を回想させる。

 とても輝かしき遊びの思い出に“陽”のバーサーカーは、つい綻んだのだった。

 

(いけません、現を抜かしては主にかたじけありません……気を取り直し───)

 

 気を取り直して、“陽”のバーサーカーが視察を再開させようとした、その時だった。

 なんと、ゲームセンターから、“陰”のアヴェンジャーが出てきたのだった。

 

(義仲様……!? 

 何故、げぇむせんたぁなどに!?)

 

 驚きつつも、“陽”のバーサーカーは“陰”のアヴェンジャーの後を追う。

 使い魔で観察をしていた雅は、止めるつもりなど毛頭無かった。

 あくまでも、監視の目的は“陽”のバーサーカーが敗退するのを避けるためだった。

 何よりも、雅は巴御前を選んでしまった罪悪感が少なからず存在していたというのも大きい。

 

 義父、義隆はこの聖杯大戦には絶対に木曾義仲を選ぶと豪語していたからこそ、木曾義仲を無力化させる為に雅は巴御前という、戦力にもなるカウンターを用意した。

 しかし、実際はどうだ。

 木曾義仲は木曾義仲……しかし、それは復讐に囚われ、我を忘れ愛しき妻をも忘れた義隆の同族と成り下がっていた。

 それどころか、義隆は“陰”のアヴェンジャーに“陽”のバーサーカーの事を『仇』であると偽りの情報を教えたのだ。

 それは、彼女にとっては精神的にも大きなダメージとなるのは容易だった。

 

 そのメンタルケアをするべく、雅は日中の行動を何も言わないことにしたのだった。

 

「…………ココデハ、ナイ」

 

 残念そうに呟きながら、復讐鬼は歩みを速める。

 “陽”のバーサーカーは、その後を追うべく足を一歩出して───その途端に悩みが生じたのだった。

 

「……今、ここで追っても義仲様は巴のことを…………」

 

 先日のことを思い出し、その足が半歩、下がる。

 しかし、

 

『バーサーカー、思うようにしろ。

 ……彼と話を試みたいならそうするといい』

 

 その背中を、雅が押した。

 不安定な精神状態で戦われては困ると、雅は自身に言い聞かせて、判断した。

 

「ありがとうございます、ますたぁ……!!」

 

 ───────そうして、少女は駆け出した。

 想い人と話す為に、自身を思い出してもらうために。

 ……この状態の方が都合がいいのかもしれない。しかし、それでも彼女は走る。

 今度は、思い出した際には此方の味方になってもらえるのではないか、そんな期待を、僅かに抱きながら。

 




キャラ紹介

ジャック・ユースタス
年齢……55歳
誕生日…10月24日
身長……183cm
魔術属性……『火』
好きなこと……研究
嫌いなこと……老化
天敵……義隆
起源『挑戦』

霧島義隆の同期の魔術師。
実力はそんなに高くないが、二枚舌を武器になんとか魔術協会で生き残っている。
息子や妻はジャックの本当の姿を知っているが、それを含めて愛されていることを感じれていない不器用な男。
見た目が二十代半ば頃のように見えるが顔はかなり若く見えるのは、彼が必死に顔パックなどをして若作りをしていたからである
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