『───────レクス、お前は我らが王となるのだ』
幼き頃、父にそう言われその通りに生きてきた。
王として、強者としての強き振る舞いを教わり。
誰にも虐げられぬように徹底的に鍛えられた肉体へと成長させられ。
そうして完成したのは、一人の王だった。
『素晴らしい。その姿、その在り方。
まさに、我らが王には相応しい姿なり』
言われなくとも分かっている。
その為に仕上げられたのだから。
故に、オレの振る舞いは何一つ間違っていない。
……その、ハズだった。
『失礼、隣いいかい?』
時計塔でも異端中の異端児、魔術師に向いていない性格の男。
セドリックと会ってからはオレの考えは反転を重ねることとなるとは思いもしなかった───────
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「……チッ、また懐かしい夢だぜ」
悪態をつきながら上体を起こし、仮眠を終えたレクスが周囲を見渡す。
傍には、自身が呼び出したサーヴァントであるセイバーがいた。
ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン。
過去に決闘で卑劣な手を使い、私財を肥やした”野盗騎士“と呼ばれている彼は主であるレクスの護衛をしていた。
レクスが起きたのを視認すると彼は明るい笑顔を浮かべながらレクスに手を振った。
「お早う、主よ!!
快眠出来ましたかね?」
「てめぇのガチャガチャ音のせいで浅眠だったよ」
溜息を吐き出しながら、レクスが毛布から足を出して起き上がる。
そして、毛皮で作られたコートを羽織り洗面台へと移動して、髪を整える。
その際も、彼は後ろにいるサーヴァントに警戒心を解くことは無かった。
彼は、物語の中では善性を持つ少しだけ下品なヒーローではある。
しかし、事実はその真逆。
そんな男に、レクスは心を許してはいない。
「む? 主よ如何なさいましたか!!」
声の主である本人に向けているハズだというのに、それに勘づいていない様子を見せるサーヴァントに、レクスはさらに苛立ちを覚えた。
乱暴に髪の毛を掻き毟り、舌打ちを響かせてサーヴァントを睨んだ。
「うるせぇなァ……俺ァな、テメェを信用しちゃいねぇんだよ!!
昨日のあの失態といい……テメェは腹に一物抱えてるのは想像に難くねぇ!
この際、吐き出させてやる!!」
牙を剥き出しにし、そこに宿る尻尾の様な形をした紅い紋様、令呪が煌めく。
「な、何を……もしやすると主よ、私に乱暴なことを!?!?」
「んなワケねぇだろボケが!!
前回、この地に起きた聖杯戦争。
そこじゃサーヴァントの裏切りが横行したってハナシだ。
そんなデータがある以上、いい加減なテメェにムカついたからテメェの本心を聞き出す迄だ…………!!!!」
戯言を吐かす阿呆な騎士に、彼は唱える。
その絶対遵守の命令を───────!!
「令呪をもって命ず。
”陽“のセイバー、テメェの目的と今の本心を話やがれ───────!!」
煌めきは紅くこの場を包み、そして”陽“のセイバーを包み込む。
絶対遵守の呪いを受け、その騎士はポツリとその心の内を明かすのだった。
『我が目的は一つ。
それは、生前では出来なかった騎士として己が行いを貫くこと。
そして今、抱いている我が本心は』
ぐっ、と身を屈める陽のセイバーに応対してレクスが身構える。
そして、騎士が初めて主へ
「……なぜ、大事な令呪を使ったのですか普通はもっと大事な場面で取っておくべきだろケットパーンチ───────!!!!」
腕を放った。
難なくその拳を躱して、その腕に繋がれている鎖をレクスが掴んで強引に引っ張り陽のセイバーを床へと投げつけたのだった。
「バカか?
……確かにテメェはサーヴァントだ、強いさ。
けどな、テメェの平均ステータスはDだ。
この、人狼の先祖返りであるオレの敵じゃあねェよ」
「いやはや、勝てるとも思ってないし、吾輩は敵意など全くもってないですよ、えぇ」
主殿はあるようですが、と付け加えて陽のセイバーが起き上がった。
「……まぁ、吾輩は本当に、聖杯で叶えたいと思うほどの胸の内に抱いている願いは無いのです。
ただ、吾輩が抱いた一つの事をやりたいだけであります」
「一つのことォ?」
「えぇ、生き様を貫くことです」
眉を顰め、レクスが陽のセイバーを睨む。
男の言葉は、レクスの不信感増幅させてしまうには十分な言葉であった。
そんな結果は目に見えていた陽のセイバーは自嘲したのだった。
「生き様ねぇ……力のねぇテメェに生き様を貫けるのか?
この世は結局は力だ、心が強かろうと力がなけりゃ意味がねェ」
「いいえ、心が一番なのですよ。
人は、心があるから人なのだ」
「……アイツみてぇなこと言いやがって」
不機嫌そうにコツコツとレクスが足音を鳴らしながら、部屋のドアへ手を伸ばす。
その直前に、ピタリと腕が止まりレクスは陽のセイバーを一瞥した。
「いいぜ、暫くは信用してやるよ。
取り敢えず、製作途中の武装造りを再開するから邪魔すんなよ」
廊下と思われた空間は歪み、鍛冶場のような景色となる。
そこには、十字架のような剣が描かれていた絵画があった。
「さてと……ほんじゃ続きだなァ!!」
吼え、人狼の先祖返りは金槌を握るのだった。
その顔はどこか懐かしみで、微笑んでいるのだった。