Fate/fake savior   作:桜野 ヒロ

26 / 54
祈りと謎

「───────俺は確かに言ったぞ」

 

 竹流が静かに詰め寄り、切翔の肩に手を置く。

 そして、空いていた手を使って切翔の顔に裏拳を見舞わせた。

 バゴ、と乾い音と鈍い音が混ざり合った音が廊下に響かせる。

 セイバーが一瞬、剣を出したが切翔が手で制止した為、

 

「掟を破るな、切翔。

 お前は優しい子だ、だからあんな屑にすら手を差し伸べたくなるのだろうな。

 だが、父の逆鱗に触れたあの屑を助ける道理は無い。

 ……もう、無駄な事は辞めるんだ」

 

「俺が優しい? 

 冗談はよしてくれよ竹流さん。

 人殺しの俺が優しいわけないだろう、アンタはただ、俺と母さんを重ねているだけだ」

 

「そうだ、お前は美華に似ている。

 だから俺はお前を助けたいとも思うんだ。

 しかし、遊人……あの屑はダメだ。

 気を抜けば殺してしまいそうになる、俺から美華を奪ったあの(ごみ)にそっくりだ」

 

 切翔の指摘を、竹流は冷静に流す。

 そして憎々しげに、遊人の部屋を睨み呟くのだった。

 

「……出来ることなら、爆破してやりたいのだがな。

 アイツの部屋を、そうすればお前が抱く余計なしがらみは無くなると思うしな」

 

「そんな事をすれば霧島雅(オヤジ)の二の舞を起こすだけだ。

 魔術協会に鼻で笑われるぞ、『二度も裏切られる間抜けな集団』ってな」

 

「───────いや、修羅場じゃん昼ドラじゃん。

 なに、アニキまた差し入れ持ってきてくれたん?」

 

 言い合う二人の間に、冗談を言いながら遊人が二人の背後を取るように現れる。

 部屋からでは無い、どこからともなく現れた遊人に竹流が反射的に彼を殴りつけた。

 プロボクサー顔負けの、岩のように重々しく、そしてナイフのように鋭い拳が遊人の顔へと目掛け、放たれる───────!! 

 

「“強化(ゲームスタート)”」

 

 その一閃が来るよりも早く、疾く。

 彼が詠唱を唱えて、身体の魔術回路を浮き出させて魔力を自身の顔へと集中させる。

 顔に拳がヒットする。

 しかし、本来ならば遊人にダメージが入るハズだったが、寧ろ竹流の拳の皮膚が裂けてそこから血が吹き出すのだった。

 痛みが竹流にフィードバックされて、思わず腕を抱えて、彼は遊人を殺意を込めて睨みつけるのだった。

 

「ぐおぉっ……!? 貴様ァ、遊人ォ!!」

 

「当たり屋じゃん怖。

 あ、おにぎり貰ってくわ。

 ありがとうごぜぇやぁーす」

 

 軽く躱して、切翔の手からおにぎりを一つ拝借して、そそくさと部屋へ向かう。

 部屋の前に着いた遊人が、切翔の方へ振り向き、

 

「なーんで、こんなショーもねぇ事で言い争うんだろうねウチって。

 こんなん、放っても負け確でしょ」

 

 それだけ言い、彼が部屋へと入っていくのだった。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

「小岡神父、起きてらっしゃいますか?」

 

 ルーラーが彼の自室の扉をノックする。

 すぐ出ます、と小岡神父が答えて数秒で彼が部屋から顔を出す。

 

「如何なさいましたか?」

 

「いえ、少し気になる気配が部屋からしたので」

 

「あぁ、恐らくコイツ(……)ですな」

 

 小岡が隙間から、床に血を流し倒れ伏す青年を見せる。

 ルーラーは、その青年が粒子となり散ったことからサーヴァントであると事実を目の当たりにして、驚きを露にした。

 

「サーヴァントを……!?」

 

「しかし、明らかに手応えがありませんでしたのでコレが本体ということはないでしょう」

 

 小岡が引き出しを引き、膨大な数のノートの中から比較的新しめのノートを取り出した。

 

「確かコレだったか。

 過去にハサンの名を持つアサシンの英霊の中で似たような存在が確認されていたハズです。

 しかし……どうやらソレでは無いようです」

 

「貴方の資料にないサーヴァント、ということでしょうか? 

 ……仮説ですが。

 私は今、英霊の真名を視れる能力を有していまが、彼からは名が記載されていないのです。

 ですので、もしやするとですが宝具自体の効果なのではないかと」

 

 ふむ、と顎に手を添えて小岡が思考する。

 

「そういえば.……今朝のニュースである一家が惨殺されたニュースはご存知で?」

 

「勿論。

 遺体は食い散らかされた後がある、とも情報が回ってきました。

 嫌々、去年の聖杯戦争を思い出しますなぁ」

 

「去年も似た英霊がいたのですか?」

 

 ルーラーの問いにいいえ、と首を横に振って小岡が答えた。

 

「以前は食屍鬼(グール)が沢山おりました。

 あるサーヴァントの宝具の能力により、死徒が発生してしまったのです。

 ……ルーラー様、ここは一度この街を探索してくださってもよろしいでしょうか?」

 

「そうですね……これが死徒による仕業(しわざ)だと仮定し、これ以上に被害が拡大する前に吸血鬼を迅速に処理しましょう」

 

「お願いします、代行者様達が来てしまわれば以前のようなこと以上になってしまわれます。

 ……あの少年さえ生きていれば、良かったのですが」

 

 小岡が窓にに移る空を見つめる。

『あの少年』、という言葉にルーラーは興味を抱くがそれはまた後日に聞こうと気持ちを抑えて、小岡に背を向ける。

 黒く、まるで絹糸のような艶やかさを備えた髪が空を撫でて。

 そして魅力の一つである穏やかで美しい表情を一変させて。

 強く、凛々しい表情を神父に向けるのだった。

 

「それでは、参ります。

 ───────主よ、我に力を」

 

 祈るように言霊し、ルーラーが姿を粒子にして姿を消す。

 小岡は、ルーラーが無事に帰るようにと。

 人々の想いで建てられた、大切な女神像に願うのだった。

 




久々のルーラーであるマルタの登場です。
割とキャラぶれてないかビクビクしながら書いています、えぇ。
あとこれは嬉しい事なのですが、竹流叔父さんを割と情けなく書けて僕は満足です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。