JR和歌山駅の中にて。
切翔が“陰”のセイバーを連れて歩いている最中に、切翔が気配を感じピタリと足を止めたのだった。
「どうされました?」
「多分だが敵だ。
……セイバーいったん退くか?」
切翔が咄嗟に出た、その言葉にセイバーが目を丸めた。
夕方での一件といい、切翔は前日から朝にかけての態度とはうってかわり、自身を尊重してくれるのだった。
彼女としては嬉しい。確かに嬉しくはある。
しかしそれはそれとして、不気味にも感じてしまうのだった。
二重人格かなにかなのだろうか、陰のセイバーがそんな勘繰りをする。
「……気にするなセイバー。
ただの、気の迷いさ」
陰のセイバーの疑問を切翔が感じ取ったのか、温和な笑みで彼女に囁く。
そんなことで疑問は晴れないセイバーではあるが、切翔としてはそういう他無かったのである。
───────自身すら、困惑したのだから。
(何故、俺はセイバーにこんなにも優しく接してしまう……? コイツはただの駒のハズ。
なのになぜ、こんなにも───────?)
湧き上がる疑問を頭で振り払い、彼は自身の頬を叩いて深呼吸をする。
スイッチを切り替えて。
冷酷な眼差しで、彼はセイバーを一瞥して命ずのだった。
「やはり、排除しに行くぞ。
昨日は精神の問題でお前が遅れをとってしまったが。本来ならばお前は陰の陣営最強の英霊だからな」
「ほう、ならば貴女を斃せば私達の陣営が大いに優位に傾くわけですか」
「───────バーサーカー、巴御前か…………!?」
切翔が懐から銃を抜きとり、敵を睨む。
銀の長髪の女性はその身に甲冑を纏っていた。
紅蓮の鎧兜を見て、切翔は資料を元にサーヴァントのクラスと真名を口にするのだった。
陽のバーサーカーは不敵に笑み、切翔の傍で剣を構える少女に薙刀の矛先を向けた。
「御命、頂戴します。
……義仲様に会えなかったのは真に残念なのですが、敵を斬れぬセイバーが相手ならば好都合。
さぁ、行きます───────!!」
「狂戦士が、若輩者が私に勝てると思うな……!!」
少女と女性が衝突する。
流れるような薙刀捌きと、烈火のように荒々しい剣捌き。
まるで対極な二人はまさに陰と陽。
斬り合う中、僅かに自身のサーヴァントが押していると確信した切翔は物陰へと潜んで辺りを警戒し始めた。
「……どこにいる」
───────”陽“のバーサーカーのマスターは霧島雅の可能性が高いのは、彼女の真名を把握した時に全員に義隆の口から伝えられていたのだった。
『雅はかの伝説、衛宮切嗣と引けを取らぬ魔術師殺しだ。
まぁ、それもそのハズだがな……呵々』
「……親父、一体アンタは何故に向こう側へ着いた───────?」
「何故か、それは自身で導くことだ切翔」
声をした方を振り返ると、改札口の傍でマシンガンを構える雅の姿があった。
いつの間に、驚く切翔を余所に雅は弾丸の雨を降らした。
その雨は当たれば濡らす。雫ではなく、血溜まりで。
切翔はすぐさま自身の魔眼を発動させてその未来ごと、弾丸を尽く切り払うのだった。
それを当然、予想していた雅がすぐさま行動を移した。
懐からアーミーナイフを取り出し、すぐさま切り掛る。
切翔が二回目の魔眼を発動させるが、雅はすかさず跳躍して、その狙いであった脚への奇襲を躱し、切翔の目と鼻の距離にまで接近に成功させた。
刃が心臓を貫く直前、切翔が銃身を盾代わりとすることで防いだ。
それに感心しながらも、切翔の魔眼を見た雅は残念を隠さずため息で表し、助言を送るのだった。
「それはまだ枝だ。
枝で振るっても、避けることは容易だろう?
もっと花弁を開花させなければその魔眼の本来の力を発動させることは出来ないぞ切翔」
「花弁だと……?
というかアンタ、俺の魔眼の事を知って───────!?」
「お前と、遊人の父親だよ僕は。
子供の能力の把握くらいは、父として当然のことだろう」
戸惑う切翔に対して雅があっさりと答える。
驚いて目を丸めた切翔には大きな隙が生まれてしまい、雅もそれを見逃すほど甘くはなかった。
すぐさま、彼の懐に銃口を当てる。
トンプソン・コンテンダーの銃口を感じ取った切翔は僅かに冷や汗を流した。
彼の中で、雅の中に二つ選択肢があると見抜いていたからだった。
その二つのうち、切翔は賭けた方を願い───────
「……戯れだよ、切翔。
僕は少なくとも君の命を奪うことはしないさ」
その通りに動いたことに切翔は安堵するのだった。
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谷栄という地区、そこに建てられているLEAZという美容室と、焼肉レストラン店の近くに聳え立つ教会内。
そこでは、小岡神父が祈りを捧げていた。
ルーラーが無事に帰宅するようにと、彼はただ只管に祈り続けていたのだった。
そんな中。ギイ、と扉が開く音が聞こえた。
コッコッコ、と革靴の音が響き渡る。
祈りをやめて、小岡が振り向く。
振り向いたその先には、意外な来客がいたのだった。
「おやおや、珍しいお客さんですな。
───────如何な用で御座いますか、
小岡の視線の先には、黒人を連想させるような黒い肌を持つ癖毛の長身の男、霧島竹流がいた。
「決まっている。
お前から預託令呪を奪いに来た」
自信満々な笑みを浮かべ、霧島竹流がさらに一歩迫る。
完全な敵対姿勢に、小岡が薄らと笑みを浮かべるのだった。
「怖い怖い、まさか殺してでも奪うおつもりで?」
「あぁ、そうさ。
神への祈りは済ませたな? 俺に無様に命乞いする心の準備は出来たか?」
竹流が銃口を向ける、その刹那には。
───────小岡は既に、竹流の懐へと辿り着いていた。
「なっ───────!?」
急いで迫り来る拳を掌で受け止めたが、受け止めきれず吹き飛ばされてしまう。
扉ごと外へと吹き飛ばされた竹流は急いで強化の魔術を発動させる。
「……受けられたか。若い頃ならば二の打ち要らずであったが惜しむ必要は無いでしょう」
コツコツと、迫り来る足音。
まるで死神が近寄るかのような恐怖心を抱いた竹流は、すぐに起き上がり小岡がまだ教会内にいることを把握した。
「な、なんだあのジジイ……!?
資料には、十字教徒の修道士としか書かれていない。
悪魔祓いでも、異端審問会でもないハズ───────!?」
「聖堂教会所属、元軍人です。
しかし、貴方は侮った。
何故、かの大戦の生き残りであると意気込まなかったので?」
小岡の問いには圧が含まれていた。
その圧を前に竹流は思わず冷や汗を垂れ流してしまうのだった。
困ったように小岡はやれやれと首を振り、竹流を睨むのだった。
「荒事は沢山ですが……仕方ない、貴方を殺してでも追い返しましょう。
主へのお祈りは済ませたな? 私に無様に命乞いをする心の準備はできたか?」
煽るように来る小岡の問いに、竹流は自然と諦めの笑みが浮かんでしまうのだった───────
オスが……分からせられとけ()