「どうやら琴線を引いちまったみたいだな」
「申し訳ないアーチャー、少々煽りが過ぎたようだ」
「気にすんなよランサー。
お前さんは果たすべき役目をやったんだ。
これで相手の宝具を引きずり出してやったんだ、オレとアンタは宝具を使わずにな!!
…………いやまぁ、オレは昨日の時点でバレてるがな!!!!」
陽気に笑い飛ばし、“陽”のアーチャーは目の前の敵を見据えた。
敵の膨大な魔力の渦。
ソレは、“陰”のアーチャー自身ではなく矢へと注がれていた。
「ランサー、ここが踏ん張り時だぜ。
お互いのマスターを死なせねぇように頑張ろうや!!」
「そんなダサい真似はもうしないさ。
その代わりお前らに直接ぶち込んでやるよ。
喜べ、下民共め」
矢尻を弦へと当て、矢を引いて。
“陰”のアーチャーは、自身の首飾りを煌めかせながら唱えた。
「”光明を司る神の加護賜る。この矢、この一撃は神速を射抜く“
光明得し鍍金王の矢《アポローン・トロイ》」
方角を天へと変え、彼が矢を放つ。
その矢は天高く飛び、見失った。
しかし、“陽”のアーチャーはどういった宝具なのか、それをランサーと共に予測してみせた。
「コレ、狙いは多分ランサーだな」
「ですね。……しかし」
続きを言おうとした直前、矢が上空から刹那よりも速く、ランサーの腕を射抜いた。
「───────やはり、疾い」
「躱すことも出来ないの? ダッサ。
朝じゃなくて良かったね、朝なら今頃は腕に刺さるだけじゃなくて身体が微塵になってたよ」
笑みを浮かべ、“陰”のアーチャーが“陽”のランサーを煽る。
しかし、騎士たる彼にそのような煽りは通用しないのだった。
毅然とした態度で彼は、臆することなく“陰”のアーチャーに言葉を返した。
「夜に満足に力を発揮出来ないのは残念だ。
こんな、羽虫の如し矢で何度も射抜こうとも意味が無い。
現に、今のは私の鎧に刺さっただけで私個人に怪我すら与えれていない」
「肩から血出てるぞ、強がるなって。
それに───────お楽しみはここからさ」
そういい、“陰”のアーチャーが姿を再度消す。
「あ、それも使えるのか」
「アポロンの加護を舐めちゃいけないさ。
……前世は射抜く事だけだったけど、この世に現界すると姿も消せると知った時は嬉しかったね」
言いながら、天高く再び矢が飛ぶ。
次は“陽”のアーチャーの肩に深く突き刺さった。
肩に刺さった矢を見て、“陽”のアーチャーがはてと首を傾げた。
そして、素朴な疑問を見えない“陰”のアーチャーへと訊ねるのだった。
「なんですぐ殺さないんだ?
オレァ、アンタが姿見えなくても位置は把握してるぜ?」
“陽”のアーチャーの言葉は森の中を響き渡る。
木の上にいた、姿を消していた“陰”のアーチャーは“陽”のアーチャーの言葉を信じず、嘘だと断定したのだった。
───────分かるはずがない、宝具を使わさせない為のはったりだと。
戦闘に関しては素人な彼だからこそ出してしまった、間違った判断が勝敗を分かつことになるとこの時は知らないまま。
『嘘だと思うけど答えてやるよ。
さっき言った通り、アンタ達には無様に死んで欲しいのさ。
顔は勿論、身体も至る所に矢を刺して手も足も出ませんでしたって風にさ』
「なるほどねぇ……」
“陽”のアーチャーは頷きながらボウガンを天高く掲げ、一発を射出する。
西部劇の打ち合い前のコイントスを彷彿とさせるかのようなボウガンの射出に“陰”のアーチャーは姿を消しながらも眉を顰め、男の言葉を待った。
それを察した男は要望通りに言葉を紡ぐのだった。
「今のボウガン、アレが地面に着くまでにアンタに一発当ててやるさ。
頭の上のリンゴを射抜くよりも簡単だぜ?」
二カリと笑う“陽”のアーチャー。
陽のアーチャーの言葉を、“陽”のランサーは信じ。
主であるユースタスも当然、信じた。
アグリッパは、信じた訳では無いがそうすることは可能なのだろうと判断した。
陰の弓手───────彼は、その言葉を激昂と共に否定した。
『冗談も大概にしろ! お前のような神の加護も貰ってないようなヤツが、そんな神技を出来るわけがないだろう!!』
天高く走っていたボウガンが勢いを失い、地面へと墜落を始める。
そのタイミングで、“陰”のアーチャーが淡々と二発目の準備を始めた。
そう。常任ならば、並の英霊ならば出来ないであろう。
しかし、この男の名はなんだ?
救国の英雄、ウィリアム・テル。
自身の宣言をしくじるような真似を、彼はするハズがない───────!!!!
「アーチャー!!」
ユースタスが大声で彼の偽名を叫んだ。
それは、「やってしまえ」と言う意味を含んだ信頼の後押しだった。
その信頼を受けて男が笑みを浮かべる。
そして、“陰”のアーチャーを煽るかのように彼自身が目を閉じたのだった。
「知ってるか、“陰”のアーチャー。
……神の加護がなくとも、伝説の武具がなくともお前の言う神業はイケるぜ?
その秘訣はな」
矢が降り落ち、木よりも少し高い地点で陽のアーチャーがボウガン放つ。
ボウガンは一直線。姿を隠している筈の陰のアーチャーの心臓へ目掛け飛んでいた。
「なッ───────にぃ!?」
慢心していた彼は、呆気に取られて回避が遅れた。
その僅かな誤差が災いとなり陰のアーチャーの肩に矢が突立つのだった。
屈辱と苦痛、そして憤怒に顔を歪めて“陰”のアーチャーが陽気に笑みを浮かべる男を睨んだ。
睨む“陰”のアーチャーをと目を合わせ、“陽”のアーチャーはただ一言。
「心で撃つことさ、パリス」
そう言い放ち、既に準備していた次の矢を放つのだった───────
陽のアーチャーは割にお気に入りです