ヨッシ「台本というか、このサイトのまえがきに直書きだよな?
メモくらい書いといて欲しいけどな」
作者「反省します」
ヒーローの心得
聖杯大戦二日目は終わり、深夜2時。
私、ジャック・ユースタスはホテルの一室へと帰還した。
深々とソファに腰を下ろし、大きく溜息を吐き出す。
……いやはや、本当に疲れた。
と言っても、私はただの傍観者でありアーベル君の様に勇猛果敢に戦えるわけでも、ミヤビの様に銃火器を扱える訳では無い。
全く、時代の流れは本当に恐ろしい。
インターネットなる珍妙なモノが普及されてから、魔術を外で扱えば一般人にそれを広められる危険性がある。
まぁかと言って、基本的には外で行使することはないが。
そして、そのインターネットよりも古くからあるが凄まじいスピードで成長を見せる銃火器は本当に、たまに魔術を使うのが馬鹿らしくなってくる。
しかし、それでも私にとっては嬉しき事もある。
「おつかれさんマスター!!」
言いながら、私の背筋に強烈な痛みを走らす伊達男が一人。
翠で揃えた帽子、服。
煙草が似合いそうな雄々しい顔付き。
鼻にある「一」の字の傷跡。
私が呼び出したサーヴァント、陽のアーチャーこと、我が故郷の愛すべき英雄ウィリアム・テルその人だった。
令呪がその宿った手の甲に宿った瞬間から、呼ぶのは確定だった。
愛すべきヒーローを呼ばずして何がファンか。
呼び出すのは、彼の顔が彫刻されたコインのコレクションで充分だった。
それ程までに心の内で敬愛する男に、私は背中を抑えながら声を絞り出した。
「……アーチャー、以降は優しく叩いてくれ。私はこう見えても50は超えてるんだ。
背中にヒビが入るかと思ったぞ」
「え、アンタ20かそこらじゃねぇの!?
息子さんと嫁さんの歳はいくつよ!?」
「妻が38、息子が8歳だ」
あんぐりと口を開け、陽のアーチャーが驚きを露わにする。
私はふう、と一呼吸おいてから話し始めた。
「そんなに驚かないでくれよ、私とて人だ。少し悲しいぞ」
「すまねぇな。でもあんた、年齢は打ち明けてんのか?」
「当たり前だ、付き合う前に言ってるよ。
彼女、『まぁ、そうは見えないくらい素敵だわ』と褒めてくれたよ」
「へへ、だろうだろうよ!!
なんせアンタはオレを呼び出したナイスガイなんだからな!!」
この際、本当は魔術協会からは那須与一の触媒を渡されていたことは黙っておこうか。
……しかし、仮に私が那須与一を召喚していたら、平安時代に活躍していた兵士が固まってしまうのか。
それに、与一は源氏の兵だったしな。
それはそれで見てみたいな、と少し思ってしまう自分が憎い。
「アーチャー、私は仮眠を取るとするよ。
負担をかけて悪いが敵襲に身構えといてくれ」
そう言い、ソファから立ち上がる。
……おっと、その前に日課のシャワーと顔パックを済まさなくては。
よろよろとシャワールームまで歩き、顔パックも終わらすと私は寝巻きに着替え、瞼を落とした。
「おつかれさんマスター。
護衛はオレがしとくぜ、任せな」
最後に、ニカッと笑っているのは容易に想像できるほどの彼の陽気な声を耳に私は脳をシャットダウンさせた───────。
────────────────────────────
『おい、やめとけよテル!!』
仲間がオレを呼ぶ。
しかし関係ない。オレは、荒れ狂う川の中に身を投げ、溺れることなく泳ぐ。
その先には、溺れて苦しんでいる子供がいた。
……オレの息子と変わらない年齢であろうガキだった。
そんなのを見捨てて、戦地になんて行けるかってんだ。むしろこの子のことが気になりすぎてセンチになるってんだ。
『掴まれ、今助けてやる!!』
そういいながら、ガキの手を掴む。
そして、仲間が投げてくれたロープを握ってオレは仲間に引かれ、陸地へと着くとすぐにガキの意識の安否を行う。
『おい、大丈夫かアンタ!!』
ガキの肩を揺さぶって意識を確認する。
ガキはこくりと頷いて、
『ごめんなさい、泳げないから別のとこを渡ろうとしたんですが、転んでしまって。
溺れては無いですので、安心してください』
そう答えてくれた。
思わず頬が緩み、その少年をハグした。
……その際、少年のポケットに入ってるであろう硬いものに当たったが気にしなかった。
そんなモンよりも、目の前のガキを死なせずに済んだからだった。
『良かったぁ……最近滑る奴多いからよ、気を付けろよ。
取りあえず、ここは時期に荒れるだろうから』
そう言い、その少年を背負ってベースキャンプまで向かう。
『───────着いたぜ、ドクター!!
ちょっとこのボウズの面倒を見といてくれや』
ドクターに少年を引渡し、オレはキャンプから出て、戦場へと赴く。
『あの、貴方の名前は!?』
ふと、少年に名前を呼び止められた。
オレは少年に、
『ウィリアム・テル。みんなのヒーローさ』
そう答えた。
すると、少年はみるみると表情を変えて───────
『お前か、お前が僕の父さんを!
助けてもらった、なんて恩は捨ててやるさ!!
僕の父親の名前を知ってるか!?
───────ヘルマン・ゲスラーだ!!』
ポケットに隠していたナイフを取り出し、少年がドクターを突き飛ばしてオレへと向かって走る。
オレは、その少年に向かってただ一言。
『なんだ、オレの過激派ファンかよ』
そう、言った───────
────────────────────────────
「──────────────ッ!?」
思わず、飛び起きたのは“陽”のアーチャーのマスターであるジャックだった。
この後何が起きたのか、どうなったのかは想像に難くない。
自身の敬愛する英雄の死の記憶を見て、ジャックは脳裏に不安が過った。
「なんだ、悪ぃ夢でも見たのか?
ジンジャとやらにでも向かって、お前さんがボインのネーチャンに囲まれる夢を見ますようにって祈ればよか───────」
「刺されたのか?」
ユースタスの問いに、アーチャーがピタリと言葉を止める。
彼は、頷きながら答えた。
「おうよ、脇腹をブスリとな。
だがまぁオレのファンの行動だ、そこに恨み辛みなんてねぇ」
「違うだろう、復讐だろう!?
……貴方はあのまま死んでしまったのか、ウィリアム・テル」
「バカ言っちゃいけねぇさ。
オレはまだ生きてる。今回もただ、同郷の後輩に呼ばれたから来ただけさ」
“陽”のアーチャーの言葉に、ジャックは少し苛立ち溜息を吐き出した。
「真面目に答えてくれないか。察してるとは思うが私は貴方の過去を見た。溺れた少年を助けたら、それはヘルマン・ゲスラーの息子で君はその復讐にナイフで刺された。
そしてそのまま死んだ、違うか?」
「真面目さ、オレは死んでねぇしこれからも死なねぇよ」
真剣な眼差しのウィリアム・テルの顔を見てジャックは今の自分では理解出来ない思考なのだと悟り、怒りは収まった。
だからこそ、ジャックは抱いていた不安が増強されていき、訊ねた。
「貴方は決して、ここから去らないよな?」
「へぇ、そう聞くかぁ。
残念だが、オレは一人しかいねぇ。オレの助けを呼ぶ声がしたら、そこへ飛ぶさ。
英雄《ヒーロー》は皆の助けを求める声を聞いたら駆けつけるのが性分でね。
まぁ、オレが去る時はお前さんが大丈夫な時さ。そん時は胸張って誇りな」
「……なら私も、貴方がいち早く去ってもいいように努力しよう。
本当はずっといて欲しい。貴方という大英雄を独り占めにしておきたい。
しかし、そうはできないのは明白だ。
だって、ヒーローは一人しかいないもんな」
おう、と頷きウィリアム・テルが微笑む。
その時だった。
『───────クソ、巫山戯んなセイバーテメェ!!!!
なんで時間を教えなかった、試作途中でもキリシマセツカを殺しに行くって言っただろうがクソガァァァァィァァ!!!!!!』
『主殿、そんなに怒らないで……痛い痛い痛い!! お願いします、狼になるのをやめてくだされ!!
ワガハイ、髪が、髪が抜けますぅぅぅぅ!!
ちょ、誰かお助けー!!』
隣室のペアが何やら、揉めている声が聞こえた。
ジャック・ユースタスは思わず溜息を零し、ベットから腰を上げ、部屋の扉まで向かい、アーチャーに呼びかけた。
「行こうアーチャー。
殺しはしないだろうが、髪の毛を引っこ抜かれて禿げた騎士が英霊なんて笑い話作るわけには行かないだろう」
「へへ、そうだな。あのイカしたヒゲの騎士助けっか!!」
“陽“のアーチャーが陽気に笑い、マスターであるジャックの後ろをついて行く。
そして、大声で騒いでいるレクスと”陽“のセイバーの間に介入し二人の……というよりもレクスによる”陽“のセイバーへの怒りを鎮めさせたのだった。
感想などお待ちしてます(小声)
ずっと言ってなかったけど、すっごい励みになりますので。