午後の十四時。
ゲームセンター、「プトレマイオス」にて。
少し傾斜なレンガ造りの階段を昇り、最上段の入口前では陽のバーサーカーがいた。
いつもの戦装束ではなく、白いワンピースを身にまとっているのは、主である雅が用意した物であった。
彼女は、夫であった堕ちた復讐者に待ち合わせを要求されており、逢う事を楽しみにしていたのだった。
───────そうして待つこと二時間。
待ち続ける彼女の前に、復讐者は現れなかった。
「……義仲様、どうされたのでしょうか」
誰かに殺されたのか、不安が過ぎるが胸の内に押し殺した。
そんなハズは無いと、彼女は胸の内で否定する。そうして彼女はさらに待つことを選択した。
しかし、無情にもさらに時間が経ち現在17時となった。
「……義仲様」
女の悲しみが言霊となる。
涙を滲ませたまま、巴御前が階段を降りようと───────
「何処へ行く、巴。
済まない───────待たせたな」
する彼女を止めるのは、右肩が吹き飛んだ姿の嘗ての復讐者。
陽のアヴェンジャーと呼ばれていた男、木曾義仲その人であった。
彼の無惨な姿に、巴御前は駆け寄る。
堪えていた涙を流しながら、周囲に奇異な視線を向けられている木曾義仲へと。
「義仲様……その腕、腕は……!?」
「この右肩か。気にするな、味方の弓兵にやられたものだ。
まぁ仕方がないさ、彼にも思うところがあったのだろうよ。
それよりも巴、待たせてすまなんだな」
よく見れば腕は止血されており、左脇には着替えと思われる着物を抱えていた。
周囲から見れば、彼は霊体化していて巴御前が何やら一人で取り乱しているように見えるという構図だが、巴御前は気付くことなく言葉を紡ぎ続けた。
「……いいえ、待ち切れませんでした。
貴方が、巴のことを忘れられてしまったのだろうと思って。
巴は、今すぐにでも霧島の屋敷へ向かおうと思っていました」
「そうか、なら間に合って良かった。
さて、では巴よ私と共に行こう。
……今からでも時間はまだあと、二時間ほどは許されるだろうさ」
そう言い、木曾義仲は自らの左手を差し伸べる。
巴御前はその手を取り、彼と共にプトレマイオスの中へと入っていく。
瞬間───────中から騒音が響きゲームセンターに初めて来た二人の耳を攻撃した。
先程の二人の会話から百八十度回転した獣の世界。
「はァ!? 巫山戯んなよ相方ァ!!」
「ウッホー!!!! 私はゴリラでウホー!!!! でもお前らはカモカモカモカモオオガモでーす!!!!」
「うるせぇんだよボケェ!!!!」
吠え続ける人の姿をした獣達の咆哮に、二人は思わず苦笑いを浮かべてお互いが顔を合わせた。
「……場所でも変えるか、巴よ」
「いえ、ここにしましょう。
他に、遊べるようなところもありませんし」
周りの視線を気にせずに、二人は手を繋ぎゲームセンターの中へと入っていくのだった───────