「この状況をひっくり返す、か。
面白い、乗ろうかウィリアム・テル。
貴様のその要望、
不敵な笑みを浮かべて、
ただの気まぐれではあるその言動に、ユースタスは少し驚きを見せた。
「なんだ、意外か?
こう見えても昔の仲間には情があるのでな。
……と言っても魔術という存在を消せば結果、お前達を消すこととなるがな」
呵々、と笑い義隆が数歩下がり二騎のサーヴァントとの距離を開ける。
二騎は、お互いに笑みを見せていた。
無言の了承、僅かな接触での中で芽生えた二人の奇妙な友情。
会釈をし、自身の主の方へ足を運んだのは陽のアーチャーだった。
胸ポケットにあるコインケースから、自身の肖像が掘られたコインを取り出した。
「ワリ、借りるぜ」
「……私は、貴方を、止めれない。
私が、迂闊に離れて……ヨシタカと、会敵、したばかりにこんな羽目になった…………」
「気にすんなよ、アンタは間違ってねぇ。
運が悪かっただけさ。
───────それに、オレは死なねぇさ」
太陽のような笑みを浮かべ、”陽“のアーチャーが”陰“のランサーの方へと歩む。
「このコインが地面に落ちたら開始の合図だ、それでいいな?」
「西部の射撃のようなものか。
いいだろう、受けて立とうとも」
「ありがとよ、ランサーよ」
”陽“のアーチャーはそう言い、足早に”陰“のランサーと距離を取り矢を番える。
そして、器用に片手でコインで指を弾いた。
くるくる、クルクルとコインが宙を舞う。
”陰“のランサーはその軌道を捉えながら。
”陽“のアーチャーはも、そのコインを見つめながら。
しかし、胸中では自身の主であるユースタスに謝意を浮かべていた。
(悪ぃな……令呪を使えば、確かにオレァ逃げ切れたと思うぜ。
だが、アンタを見殺しになんて出来るかよ。
オレの事を好いてくれて、こんな大舞台に呼んでくれた愛すべき
だから───────可能性が薄くてもオレはこの出鱈目男に勝ちに行かせてもらう)
覚悟を決め、目付きが一層鋭くなる。
漲る闘志に、”陰“のランサーも影響され昂っていた。
義隆はただ、その分かりきった結果が来ることを楽しみに二人を視界に収めていた。
コインはあと少しで地に着く。
(───────嗚呼、残念だ。
ウィリアム・テル。貴殿のような良き男とは出来れば、もっと別の日にやり合いたかった)
その胸中の嘆きは“陰”のランサーのものだった。
もう訪れないであろう楽しみを噛み締め、“陰”のランサーは思考を真っ白に変え─思考を殺した。
──────────────コインが、着地する。
先に動いたのは“陽”のアーチャーだった。
クロスボウから矢を射出させ、“陰”のランサーへと迫る。
“陰”のランサーは、その矢を槍で切り裂く。
そして、その轟速で“陽”のアーチャーのすぐ目の前にまで接近した。
雌雄は決したも同然。
“陰”のランサーが勝ち、“陽”のアーチャーの敗北は誰もが結論付いていた。
否───────
一人はその手の甲を赤く煌めかせ、一人は腰に隠していたナイフを抜き取った。
(野暮かもしれない、だがそれでも。
私は、貴方を援護する。それがマスターとして、あなたを尊敬する一人の人間としてするべき行動だ───────!!)
「マスター……アリガトよ!!」
「残りの令呪を全て使う……“勝て、逆境を打ち破るんだ私の
“陽”のアーチャーの身体能力がこの刹那、跳ね上がった。
そのまま、“陰”のランサーに向かってナイフによる一太刀を繰り出した。
その一太刀は“陰”のランサーの心臓をしっかりと捉えた軌道を描いていた。
「…………見事なり、“陽”のアーチャー。
そしてそのマスターよ」
しかし、その一太刀は“陰”のランサーが刀身を掴むことで防がれてしまったのだった。
その結果に、“陽”のアーチャーは口角を吊り上げた。
主も、自身も出し切った上での敗北。
だというのにその胸中は清々しいものであったからであった。
「あんたこそ、流石だよ本多忠勝。
───────オレの、負けさ」
刹那、槍は“陽”のアーチャーの心臓を穿いた。
サーヴァントが現界できるその最たる理由の霊格の破壊。
それが原因でウィリアム・テルの敗北が決まった。
「グッ…………アーチャー…………!!」
歯をかみ締め、ユースタスは己の不甲斐なさを呪った。
「私が不甲斐ないばかりに……貴方を、死なせてしまった…………!
すまない、すまない…………!!」
「オイオイ、今朝もさっきも言っただろう。
オレは死んでねぇってな」
「呵々、何を言うておる。
心臓が破壊された、貴様の死は必至だろうに」
嗤う義隆を、“陽”のアーチャーは憐れむような視線を向けて語った。
「人ってのはな……人に忘れられて初めて死ぬんだ。
此処にオレのことを忘れないヤツがいる限り、オレは死なねぇさ」
「…………何を言うておる?」
眉を顰めるながら、義隆が“陽”のアーチャーを睨んだ。
刹那、彼の脳裏でノイズのようなモノがかかりながらも、ナニカが聞こえた。
『あなた』
「ぐっ───────オオォォォォォオオ………………!!??
誰だ、誰だ……貴様はッ!?」
罅割れるような痛みに襲われ、義隆はその場を離れた。
「……某はあの男を護衛するとしよう。
さらばだ、ウィリアム・テルよ」
そう言い、“陰”のランサーが義隆の後を追った。
そして台風のように。闖入者はその場から去り、ユースタス、“陽”のアーチャーの二人だけとなった。
「じゃあなユースタス。
お前は強い、この先も生き残れるさ」
「忘れられないから、か?」
「いや」
首を横に振り、陽のアーチャーが微笑みながら答えた。
「お前さんは答えを導ける。何度も何度も間違えたとしても。
最終的には、いい未来を築けれる。
誇れ、後輩。お前はこのオレが見込んだ男なんだぜ?」
ウィリアム・テルの言葉にユースタスは感服し、涙を浮かべる。
その涙をすぐに吹き、力強く頷いた。
「あぁ、その言葉を胸に絶対に生き残ってみせるよ」
「───────あぁ、安心したぜ」
呟き、最後に無理やり声を捻り出した。
「あばよ、カミさんにこのハート型のパイを届けてくるわ!!」
「あぁ、行ってこいウィリアム・テル」
ユースタスが、送り出す。
そうして“陽”のアーチャー、ウィリアム・テルはこの世から別の場所へと還ったのだった。
サーヴァントプロフィール
陽のアーチャー
全身を緑の衣で包んだ男。
故郷を愛しており、今を生きる故郷のもの達も男の事を愛している。
ちなみに、コインに自身の肖像を彫られて嬉しかったりしている。
聖杯にかける願いは「故郷が幸せになるように」
真名『ウィリアム・テル』
スキル
単独行動……B+
隠れ蓑……C
気配遮断の視界版のようなスキル。
彼の場合、木の上に登れば完全に同化して姿を隠すことが可能である。
風避けの加護……D
心眼(偽)……C+
宝具
二射叛逆(アップル・ゲスらー)
ランク……EX
レンジ1〜5人
最大補足 二人
対人宝具
彼の生前での行動が昇華された宝具。
人に対して、二射目の射撃をすることで命中率がどんな状況でも99%にまで跳ね上がる。
作者コメント
最初はコブラをイメージして作ったキャラクター。
この小説の前身となる作品(削除済み)でもしっかりと登場して、二日目で退場という流れであったがあともうひとつくらい見せ場を作りたいと思って二日目に陰のアーチャーとの戦闘を書きました。
マジでアプリの方でウィリアム・テルが実装されると思わなかったので頭の中混乱しまくりましたが、このキャラを土台に新しいキャラを作ることが僕の力量では無理だった為そのまま続投させていただきました。