江松小学校付近にて、江松小へと向かっていた遊人、一号一行だったが不意に”陰“のキャスターが足を止め、変わらない不遜な態度で全員を呼び止めた。
「待て、少し話がある」
自身に違和感を抱いていた遊人は何が起こったのかを瞬時に悟り、キャスターの方へと顔を向けた。
遊人に合わせて他の二人もピタリと歩を止めてキャスターに視線を向けた。
小さく頭を下げて、彼は三人に告げた。
「今、宝具を使った。
この私、ファウストが契約を結んだ悪魔・メフィストフェレスの力を借り受ける我が宝具……
結果から言おう、アサシン。貴様は殺られた」
”陰“のアサシンは驚きをせず、ゆっくりと頷いた。
こんな場でそんな冗談を言う男ではないと、この三日間のたった数度のやり取りで見抜いていたアサシンは彼の言葉を真剣に受け入れた。
そして、受け入れると同時にアサシンが相手について訊ねた。
「敵は?」
「キャスターだ。姿を消す不思議な力を持っていた」
「? キャスターの真名は判明しています。
英霊よりも格が下の幻霊、不死の魔術師リッチー。
そんな彼が透明な魔術を使えたのですか?
しかしそれでは───────」
「相手のマスターにカナンの家の者がいるのだろう。
カナンは……我がマスターなら分かるはずだがお前達に説明しよう」
眼鏡を掛けた”陰“のキャスターが説明を始めるのだった。
「カナン家とは、千年近く前から存在する魔術師の家系なのだが彼らは何故か、聖杯戦争が始まる前から英霊同士の魂を融合させるという手段に固執しているトチ狂ったヤツらだ。
彼らに目的を訊ねても『分からない、それが一族の悲願だからだ』との事だ。
まぁ……魂を融合させ、その起源を覗き渡ることで根源に到達するのだろうと推測はされている」
「推測?」
「あぁ、先程も言ったが目的を訊ねても分からんだからな。
コイツらの家系くらいさ、そんな推測をされる一族は」
一号の疑問に”陰“のキャスターが答えて、江松小へと視線を向けた。
「……恐らくだが、幻霊同士の融合に成功させたのだろう。
透明人間、とかどうだ? しっくりくるはずさ」
成程、と”陰“のアサシンが頷きキャスターに訊ねた。
「要は、オレの出番ってコトだろ?」
あまりにも自信に満ちたその言葉。
とても先程不覚を取られた男から発せられるとは思えないが状況は違う。
相手の情報が知らぬ時に手札を切るのは得策では無い。
しかし、
情報が渡っている。
それも、切り札を切るに値する状況であると。
誰かが答えるまでもなく、アサシンは髑髏の仮面を外して目の包帯に手をかけた。
「フン、なんだ。戻ってくる前は情けなく殺られたというのに素晴らしい威勢さ」
「皮肉どうも。まぁ、今から挽回させてもらうさ。
……情報どうも、キャスター。
アンタ、俗に言うツンデレってヤツだろ?」
「なっ!?
黙れ黙れ、誰がそんな低俗な性格だ!!」
”陰“のキャスターが”陰“のアサシンに憤慨する。
まるで幼い子供のような怒り方にアサシンは思わず笑みを零した。
気を取り直すべく、わざとらしい咳払いをしてキャスターが遊人に目線を配った。
「アサシンの宝具は使えるのか?」
「うん、思いの外っつーかこの状況においては最適解。
リフティング一回出来たらクリアくらいには」
「ほう。ならば楽しみだが……なぜ私は省かれた?」
「あの、宝具を開示した日は初日で、キャスター様はその日は……」
「あの後か。成程、理解した」
再度、切り替えて。
”陰“のキャスターがアサシンに指示を降した。
「”陰“のアサシン、宝具を使用するのだ」
「もう使ってるよ」
アサシンは既に、包帯を解きその素顔を露にしていた。
「───────
穏やかな顔をした、その童顔の瞳は青く輝いていた。
その綺麗な瞳から見える景色には、赤黒い『線』が写っていた。