Fate/fake savior   作:桜野 ヒロ

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その赤線は生命の糸。
黒いナイフ、白い髑髏の仮面。
月を背景に跳び回る私は生命を奪う狩人。
私を救け殺した貴方は死を司る神。
もういちど救けて下さいとも、殺してくださいとも請いません。
どうか、どうかその蒼き瞳で私を審判してください。


裏切の報復

 江松少校内を覆うように、魔力が渦巻く。

 一人の罠等によって仕立てあげられたその場は、彼にとっての『要塞』。

 “陽”のキャスター……不死のなり損ない(リッチー)は、優雅に闖入者が自身の近くに現れるのを待ち構えていた。

 自身の魂と混ざりあったパートナーの幻霊、『透明人間』の力により姿形は勿論、なんとそれと魔術を組み合わせて自身の殺気を消す事に成功した今の彼は無敵そのものであると自負しており、疑うことは無かった。

 これも全て、あの見るに鬱陶しかった自身の主、バエル・カナンの功労の賜物である。

 そう感じている彼だったが、バエルに対してはいつか盛大な仕返しをしてやる、と企んでいた。

 

 ───────バエルは融合に成功させた時、心臓である箱を彼に渡した。

 今ならば安心して渡せれると、この不死者は完全無欠の存在となったのだと。

 この聖杯大戦、分からぬことが多くはあるがそれでも些細な問題だろうと。

 彼らしからぬ安堵が生まれてしまった。

 故に、その宝具を持つことを許した。

 そしてそれを自身の胸の中に埋め込んだ”陽“のキャスターは、哀れな狩人気取りを心底から待ちわびていた。

 

 そして現れた。

 髑髏の仮面と、眼鏡をかけた男。

 ”陰“のキャスターと”陰“のアサシン。

 その二騎が、何も知らないでのこのこと自身が待ち伏せしている、二階の廊下へと現れたのだった。

 髑髏の仮面は、その瞳を青く光らせていた。

 その『変化』を、この男は低く見積もった。

 

(魔眼……の類いか? なんだ、魅了か? それとも洗脳か? 

 しかし───────見られるわけが無いのに、やつの魔眼に引っかかるわけもない。

 このままサクッと後ろから……!!)

 

 そして、判断を違えた。

 距離を置いて戦う、逃げる、何れも選択肢はあったはずだった。

 ───────だのに、彼はその二つを真っ先に放棄した。

 プライドがそれらの策を許さず、慢心が愚考を掴み取ったのだった。

 自らの手で葬ってやらんと、戦い慣れない彼の愚考が、愚行として体現された。

 一歩、二歩、三歩と彼らとの距離を縮めていく。

 焦燥、緊張。期待、高揚。それらの感情が混ざり合いながらも足音を殺して陽のキャスターは陰のアサシンの背後へと近付く。

 

 そして、その手に強く握り締めている短剣を振るった───────!! 

 

「魔術師が暗殺者の真似事か? 

 構わないが、オレも舐められたモンだよ」

 

 そんな、”陽“のキャスターを嘲笑うように後ろに振り返り、ナイフで短剣を弾く”陰“のアサシン。

 火花が散り、腕が痺れ。

 困惑で思考が硬直してしまった”陽“のキャスターは微かに宿った恐怖で後ろへ退いた。

 同時に、仕掛けていた魔術の罠を起動させるべく詠唱をする。

 

awakening(牙を剥け)!!」

 

 刹那、彼の周辺から炎が放たれた。

 迫り来る業火を前に、陰のアサシンは不敵に笑みを浮かべナイフを逆手に握った。

 

(斬るつもりか!? 馬鹿が、どんな手品か知らんがこの炎を消すのはでき───────)

 

「───────地獄の業火よりも温いなら、殺せるな」

 

 陽のキャスターが冷ややかに笑みを浮かべながら、冷や汗を流す。

 が、しかし。

 陰のアサシンが炎に向かってナイフを振るい、その炎を消した瞬間に笑みが消え去り焦燥のみ残った。

 有り得なかったからだ。

 炎を切り伏せてしまうなど、どこの神話の英雄かと。

 

『聞こえるか、キャスター』

 

 得体の知れない恐怖を抱く中、彼の脳内に自身の主であるバエルの声が響く。

 魔力のパスを通じての念話であるとキャスターは理解しつつも、彼の問いに答えることができないでいた。

 その様子を察したバエルは、すぐに話を本題に回した。

 

『ヤツの眼───────アレは”直死の魔眼“だ。

 ハッキリ言うがお前に勝ち目は無いから逃げる事を勧める』

 

 バエルの言葉を聞き入れ、ゾクリと、脈が打たれる。

 視界に映る生命の線を捉え、なぞればその生命は途絶えてしまう。

 偶然、時計塔に在学していた時に小耳に挟んだその魔眼の特徴。

 透明になっている自身も捉えることが出来るのはどういうことだと、陽のキャスターは戸惑いながらも背を向けて逃走を開始した。

 

 しかし、それを見越していた”陰“のアサシンは”陽“のキャスターの脚元に目掛けてナイフを投擲しており、両足首を穿いた。

 無様に床に倒れ、陽のキャスターは直ぐに詠唱を唱えた。

 

 ”start(起動)“!! ”awakening(牙を剥け)!! “”beginning(動け)“!!!! 

 

 三つの詠唱と共に放たれるは、雷、炎、地割れ。

 雷と炎はアサシンに向かって。

 地割れは自身のいる床に起こした。

 少しでも時間稼ぎをして逃げる事を目的に、”陽“のキャスターは魔術を発動させた。

 落ちて、床に激突した苦痛が寧ろ彼の思考をクリアにさせる。

 そして、一つの疑問が”陽“のキャスターに浮かび上がった。

 

『ま、待て!! 貴様、令呪は!? 

 令呪で我を転移させろ、そうすれば逃げれるだろう!?!?』

 

 そう、自身の主のバエルが令呪を使っていないという事実。

 令呪さえ使えば自身は逃げ切れる状況。

 何故、それを分かっているはずなのに自身の主は使わないのか。

 そんな疑問をそのまま、”陽“のキャスターは念話にてぶつけた。

 彼の訴えにバエルは答えた。

 

『無論、お前を切る為だ。貴様を無欠の存在であると思って私もあの箱を貴様に渡したのだが……このザマを見るとどうやら失敗であったみたいでな。この先にいてもなんの役にも立たんと判断した。

 だから、この令呪は使わずに他のマスターに委譲しようと思ってな』

 

『なっ……!? 巫山戯るなよ主ィ!? 

 貴様の采配ミスでもあるんだ、だから、だから我を助けろ、義務であるだろう!?!?』

 

『否、貴様を助けた所でそもそも協調性が皆無だ。我の言う事も聞かない事がしばしばあったな? 

 いつ、味方を殺すかわからんお前など不必要な存在だ』

 

 バッサリと言い捨てられるその言葉に”陽“のキャスターは絶望する。

 しかし、死は怖い彼は地べたを這いつくばりながら、腕を必死に、懸命に動かした。

 死にたくない、死にたくない、死にたくない………………!! 

 そんな、彼の感情がエネルギーとなり速く、速く腕を動かしていた。

 

「無駄だ、なり損ない。

 もう、終わりだ」

 

 ”陽“のキャスターの魔術を殺し、直ぐに後を追った”陰“のアサシン。

 そんなに距離は空いておらず、わずか数メートルといったところであった。

 

「うっ……待て、待ってくれ!! 

 そ、そっちに着く!! 

 我は貴様らの側に着くから、い、命は……!! 

 我は、我は死にたくないのだ!!」

 

「───────いいや、もう終わりにしよう。

 お前は、ここまでだ」

 

 風を切る音と共にナイフが放たれ、”陽“のキャスターの胸の中央───────自身の命の源である箱を穿く。

 穿かれ、”陽“のキャスターは何故か安堵感が胸から湧き上がった。

 なぜ、こんなにも安堵しているのか───────そんな疑問が只管に”陽“のキャスターを襲う。

 身体が魔力の粒へと変換され、肉体が崩れ行く中。

 

「呆れたものだ。不死を追い続けた男、その本心は死にたかった、だとはな」

 

 そんな言葉を聞いて、彼は首を横に振った。

 

「違う、違う違う違う違う……!! 

 我は死にたくない、死にたくないのだぞ!? 

 何故、何故皆口を揃えて我は死にたいと勝手に宣う!? 

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ……我は我は死にた───────」

 

 口を塞ぐように、”陰“のアサシンがナイフで彼の顎を袈裟斬りにする。

 青い瞳には、同情が宿っていた。

 

 最期に、涙を流しながら不死のなり損ないは肉体を崩し、この世を去ったのだった。

 

「死にたくない……か。

 なら、心臓を貫かれた時にあのような笑顔を見せるか」

 

 つまらなさそうに”陰“のキャスターは呟いた───────

 

 

 

 ──────────────────────────

 

 

 ───────資料を纏め、バエルは自室にてカバンに詰め込む。

 研究は一先ずいい結果となった事に、彼は満足していた。

 が、しかし。

 彼の中では消えない疑問が一つ、浮かんでいた。

 

 そう、裏切の含みのある笑みがバエルの胸中に引っかかっていたのだった。

 

『───────やはり、貴方は(わたし)を信用しないのですね』

 

 その言葉が引っかかり、ふと考えた。

 

(あの言葉……どういう事だ? 

 何故、彼奴は言ってのけた? まるで、私の動きを読んだかのように───────)

 

 コンコンと、思考する彼を他所に扉を軽くノックされる。

 係員の者か? 疑問を過ぎらせながらもバエルは扉へ向かい、ドアノブを手に取る。

 

 ドアを開けると───────

 

「やぁ、バエル。久しいな」

 

 そこには。死んだ筈の仲間が立っていた。

 甘栗色の髪の毛を腰まで伸ばし、鷹のように鋭い瞳。

 片手には、煙草を持ってバエルに不敵な笑みを浮かべているその女性は───────

 

「カタリナ・キャッシュヴァルト……!?」

 

 ”陽“のアサシンに喰われ、肉塊となったハズの女性魔術師、カタリナその人だった。

 動揺するバエルは隙だらけ。

 カタリナは、ナイフをポケットから取り出して容赦なく腹部を穿いた。

 鋭い痛みが彼を襲い、バエルはたまらず数歩後ずさり、倒れた。

 

「時計塔以来だな。

 ……ウラギリが言っていただろうに、ホテルから出るべきだ、ってね」

 

「……何故、とは問わん。

 裏切と結託して何か企んでいるんだろうとは予測できる」

 

「あぁ、彼の家は資産家みたいでね。

 2000万ドルを銀行口座に振り込んでくれたさ、だからあっちに着いた」

 

 煙草を口に咥え、カタリナがゆっくりとバエルの元へ歩み寄る。

 ホテルに備え付けられている椅子に腰掛け、優雅に煙を吹かしながら、

 

「……なぁ、私達につかないか?」

 

 そんな、提案をバエルに持ち掛けた。

 しかし、彼の答えは決まっていたしカタリナもそれは予想済みだった。

 

「断る……貴様らの下に着くなど御免こうむる。

 その胸ポケットに隠している銃で撃つがいいさ」

 

「……やはり、君の意思は変わらないみたいだ。

 残念だよ、バエル。

 ───────せめて、研究資料は家族に送ってやる」

 

 それだけ伝え、カタリナは容赦なくバエルの脳天に銃口を向け、弾丸を食らわせた。

 返り血が彼女の顔に付着し、それを拭った後に裏切がバエルの部屋へと訪れた。

 

「あ、終わりましたか?」

 

「あぁ、終わったさ」

 

 携帯灰皿を取り出し、火を消して彼女は吸殻をバエルの死体へと落とす。

 そして、二人はその場から立ち去ったのだった───────

 




さて、ライダーどうしよう(頭抱え)
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