午前0時、霧島邸付近。
そこは近付いては行けないと、魔術師達が口にするその館に片腕の無い鎧武者の姿が。
”陰“のアヴェンジャー───────
なんせ彼は、昼間に仲間である”陰“のアーチャーに突如として襲われて、片腕を無くしていたのだから。
報復の為と館にいる者達、
”陽“のアーチャーの処遇は後で決めることとなり、彼も指定された持ち場へと着く。
義隆のサーヴァントは不在、または敵対中。
しかし、嬉々として彼も自室の机の引き出しから宝石を何個か取り出し、”陰“のランサーとその主である忠吉に着いていく。
部屋に飾ってある日本刀を取りだして。
忠吉は”陰“のアヴェンジャーの元へ赴く。
自身の起源である『戦闘』に従い、サーヴァントと戦おうと意欲を示していたのだった。
”陰“のランサーは止めることは無かった。
停めようかと考えこそしたが、彼の意思に従ったのだった。
竹流は地面に仕込んである爆弾を作動させるべく、自身の部屋にあるモニターを起動させた。
事の発端でもある”陰“のアーチャーは反省する意思を見せない憎たらしい笑みを浮かべながら。
しかし、明確な殺意を込めた視線を”陰“のアヴェンジャーに見せていた。
義隆達が館を出ると、森林から白の甲冑を着け紅色の鬼のような形相の
大太刀の柄を握りしめ、アヴェンジャーは見える四人に声を掛けた。
「待て、私はお前達と
それは予想外ではあったが、義隆からすれば嬉しい言葉であった。
その理由を話すべく、”陰“のアヴェンジャーは言葉を紡ぐ。
「我が役儀に背いてでも、無様に生きてでも───────叶えるべき望みがある」
「それは……敵対する巴御前からくる望みか?」
義隆の問いに、力強く木曾義仲は頷いた。
「応とも。サーヴァントが二十騎ほど、聖杯の中に溜まってあるのは知っている。
ならば、それならば俺と巴がこの世に二度目の生を受ける事が可能な筈だ。
故に、我が望みの為に貴様らと共に汚れよう」
興味深そうに義隆は笑みを浮かべる。
”陰“のランサーも一先ずは胸を撫で下ろす。
折角の圧倒的な数の優位を、自分たちで潰す訳には行かないと常々考えていたからだ。
もとより和解するように話し掛けるつもりでいた”陰“のランサーは、禍根を残しはすれど一先ずの安心があると心の内で喜んだ。
───────が、面白く思わない者がいた。
”陰“のアーチャー、彼はこの状況を見て不愉快そうに眉を顰めた。
「いやいや……何勝手に自分の願いが叶うのは当然と思ってるかのような立ち振る舞いしてんだよ。
ボクも叶えたい願いがあるんだぜ?
ならさ、ここでお前を殺す事も厭わないワケで」
矢を番え、”陰“のアヴェンジャーを睨む。
嫉妬を孕んだその殺意の目は、彼の生前での無念が原因か。
慈悲なく、聞く耳持たず。
力一杯に引き絞られる弦はキリキリと、限界だと叫んでいるかのような音を鳴らす。
限界まで引き絞られたその矢による一撃は容易く音速を超え、そして”陰“のアヴェンジャーのみならず”陰“のランサーと二人の”陰“のサーヴァントを従える主を塵にしてしまうだろう。
本来ならばこの状況では論外と言い表すべき愚行を、”陰“のアーチャーは躊躇わず行った。
放たれた矢は音を超え直ぐに陰のアヴェンジャーの心臓へと迫る───────!!
そんな、一撃は”陰“のランサーにあっさりと切り伏せられた。
元より行動を読んでいたのか、彼は安堵していても背後から感じ取っていたその殺意に備えていたのだった。
”陰“のアヴェンジャーも柄を握り締めていた原因は”陰“のアーチャーの殺意で切ろうと思えば切れた。
だが、半ば強引に”陰“のランサーがそれを阻止する形で矢を切り払ったのだった。
「…………愚かな事をする」
ため息を吐き出し、”陰“のランサーは即座にアーチャーの眼前に現れ、敵意の籠った瞳共に殺意の籠った槍の穂先を首筋に向けた。
生前、ある男の速さを知っていた”陰“のアーチャーは”陰“のランサーの殆ど変わらぬ速さに驚き、目を見開いた。
「アキレウス…………ッ!?」
「貴様は召喚時も同じことをしたが……何故に某はこのような、初日の再演などという事をせねばならぬのだろうな?
弓兵、いい加減に我慢を覚えろ。
───────生前の愚行を再び起こしたくは無いのなら尚更な」
”陰“のランサーの最後の言葉に、”陰“のアーチャーは心底恨めしそうな笑みを浮かべたのだった。
「…………ハッ、ハハッ!!
昼間ならキミなんて瞬殺だってのになァ!!
クソ……悔しいから負け惜しみにこれだけ言わせておくれよ『本多忠勝も傷を負ったら終わりだな』……ってさ」
「貴様───────我が宝具が一つを潰したな」
”陰“のランサーは静かに憤った。
”陰“のアーチャーに? 否、陰のアーチャーにそう言わせてしまった自身の言動に、憤りを感じたのだった。
そんな”陰“のランサーに若干の苛立ちを覚えながらも、”陰“のアーチャーはヘラヘラと憎たらしい笑みを浮かべたまま減らず口を叩いた。
「悪いね、こんな僕にも叶えたい願いって物があるわけでさ?
勝ちやすくなる為なら手段は選ばさせて貰わないぜ」
「その時は受けて立とうとも」
言いながら、”陰“のランサーは”陰“のアーチャーの腕を掴み、攻撃を封じた。
「───────呵々、向こうは終わったな。
「そこまで聖人では無い。
だが……私の願いを叶えさせてくれるならば今までの狂行は目を瞑ろう」
義隆は考える素振りを見せぬまま、
「分かった、しかしこれは聖杯大戦だ。
途中で片割れが散るかもしれん、危機的状況でも
そんな中で貴様と、巴御前が生きておればその願いを叶えるようにしてやろうとも」
あっけらかんと答えた。
「……信じよう、その言葉。
決して、吐き出すでないぞ」
「応とも」
笑いながら、義隆が頷く。
そして、”陰“のアヴェンジャーに向かって、腕の至る所に刻まれた令呪を突きつけたのだった。
「この令呪は貴様を害する目的では使わんと誓う。
違えた場合は、この首を持っていくといい。
貴様とて戦乱の世を生きた武士の一人だ、それくらい容易であろう?」
「当然よ。それでは
「あぁ、これからは貴様の力を惜しむことなく使わせてもらおうか
笑いながら、義隆は”陰“のアヴェンジャーを連れて霧島邸へと入っていく。
そしてこの後、彼の治療により”陰“のアヴェンジャーは片腕を治したのだった。
そして義隆の自室で、”陰“のアヴェンジャーは仮眠を摂ることとした───────
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『あなた───────あなた』
身体を揺され、眠りから目を覚ます。
穏やかな笑みを浮かべた、妻の顔を見て思わず顔が綻んでしまう。
お前さえ入れば、私はそれでいい。
我が家の目的なぞ、知ったことか。
そんな事よりもお前が幸せでいて、笑って行けるならばそれでいいのだ。
そう思っていた、その数ヶ月後。
冷たくなった女を眼前に、私は絶望した。
ある魔術師との諍い。
それが切っ掛けだった。それが、彼女の死因だった。
失意に堕ちる私に家の者達は口々に『仕方ない』『それよりも魔術の腕を研鑽するのだ』等と口々に言う。
その、悲しみの無い言葉に私は自然と怒りに燃えた。
何が魔術師だ、何が根源へと至るだ。
こんな、こんなくだらない、終わらぬ存在など消してしまえばいいのだ。
全て■■の為に───────
…………そういえば、彼女の名は、なんだったか……………………???
その忘却は、自身の起源を知ってしまったからだと悟った私は深く絶望し、そしてやはり魔術師など要らぬと確信したのだった。
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「アヴェンジャー、起きろ」
義隆の声を聞き、”陰“のアヴェンジャーはその目を開けた。
時間は仮眠してから五分程度のみしか経っていなかった。
その五分間のうちに脳に刻み込まれた悲劇は、目の前の男の記憶だと悟った彼だったが口にはしなかった。
彼は義隆の手により辱めを受けた。
その結果が、愛する女に刃を向けてしまい女の笑顔を奪ってしまった。
同情こそあれど、肩入れする気はない。
「なにか?」
毅然とした態度で”陰“のアヴェンジャーは問うと、義隆は鼻で笑いながら答えた。
「なに、寝るなど随分と気楽な振る舞いをすると思ってな。
貴様、アーチャーに射殺されそうになったのを忘れたか?」
「なんだ、助け舟は出さなんのでは無かったか?
とはいえ、その忠告は感謝する」
呵々、と笑い義隆は答えた。
「出す気などないが……駒はまだ失いたくはないのでな。
出さざるを得なかったわけよ」
「成程な。
確かに、俺も気が抜けていたようだ」
”陰“のアヴェンジャーが腰を上げる。
ふと、義隆の机に伏せられている写真立てが目に入ったアヴェンジャーは義隆にその事を訊ねた。
「ソレは?」
「気にするな、家族写真だ。
……む、切翔と遊人が帰ってきたようだ。
一階へと行くぞ、アヴェンジャー」
言いながら、義隆が足早と部屋を去る。
”陰“のアヴェンジャーも去ろうとしたがその寸前に写真立てを起こした。
そこには───────自信の愛した女と似た容姿の若い女性と、美丈夫な男が三人の子供と共に笑顔を見せながら並んで写っている写真が飾られていた。
きっと、それは平和な象徴だったのだろう。
今、伏せられているのはきっと───────
その先の答えを、”陰“のアヴェンジャーは出る寸前で出すことをやめたのだった。
義仲の見た夢は義隆の忘れてる過去です
本多忠勝の宝具、”戦国最強“は彼が傷付いている状態で『本多忠勝も傷を負えば終わりだな』と言ってしまえば消えてしまう宝具です。
あまりにも強すぎるのでそれくらいの弱点があってもいいかなと思いました
後、パリスの性格は半ば無敵の人のような感じですなぜそんな性格なのかは、おいおいと明かします