Fate/fake savior   作:桜野 ヒロ

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やべぇ、通信制限ガガガ(寝たままようつべ開きっぱを行いまくった大罪人)


狼の影を追え《陽》

 二十二時を超えた頃、切翔は”陽“のセイバーを連れて、江松小学校付近へ赴いた。

 気配等は感じ取れなかったが、それでもアサシン等が潜んでいる可能性があると踏んでの事だった。

 

「……いるか?」

 

 恐る恐る、敵からの奇襲を警戒し、切翔は周りを見る。

 しかし、周りには人影など無かった。

 だが───江松小学校の校舎の中に、資料で見たことのあるある魔術師の姿を確認できた。

 現在、時計塔で中で特に実力が高いとされる、王の名を冠した男。

 

「アーベル・レクスか? 

 ……そうか、奴もマスターなのか」

 

 銃を握りしめ、校舎から覗いているレクスを睨む。

 そして、切翔は校舎へと向かう。

 

 レクスのいた二階へ辿り着く。

 そこには、待ちくたびれたと言わんばかりにレクスが堂々とした様子で立っていた。

 

「よぉ、遅かったな霧島の。

 ……やっぱり、オレの勘は当たってたぜ。

 初戦の相手はてめぇとはな霧島切翔!! 

 嬉しいぜぇ、なんせ───仇の息子だからな、代わりに無様に殺してやるよ」

 

「……そうか。ところで知ってるかアーベル・レクス。

 ”弱い犬ほどよく吠える“という(ことわざ)を」

 

 切翔の言葉に、レクスは笑いながら頷いた。

 

「知ってるぜ。なんせ日本は元々大好きだったからなぁ!!」

 

 レクスが切翔へと接近する。

 切翔を守るように”陽“のセイバーが前へと立ちはだかる。

 しかし、隣の教室の扉を突き破りながら現れた、銀色の甲冑を装着した男、”陰“のセイバーに突き飛ばされ、そのまま彼によって踊り場まで押し離された。

 

「フハハハ、我輩の初戦ですな!! 

 しっかし……流石は主殿の作られた礼装、素晴らしい限りですなぁ!!」

 

 喜びながら、”陰“のセイバーは剣を抜き、”陽“のセイバーへ切り掛る。

 それと同時に道が開かれたレクスは、即座に手にもっている禍々しい赫色の刀身のナイフで切翔を襲う。

 

(あの赫色のナイフは何か、呪術的なものを組み込んでいるのだろうか? 

 ……とりあえず、やつの武器がナイフならば銃を持っているこちらに分がある。

 距離を取りながら、奴を蜂の巣にしてやる)

 

「───距離を取らせるはずがねぇだろバカがよぉ!!」

 

 切翔の考えはレクスに読まれていたかのように、レクスが吼える。

 切翔は動揺を見せずに、レクスにマシンガンによる数十の高速射撃を行う。

 

 ───普通の魔術師は、先ずこの連射を魔術で防ぎにかかる。

 切翔はその時に、自身の切り札(……)を叩き込むつもりだった。

 しかし、レクスは切翔の描いた図通りに行かせてはくれなかった。

 

「莫迦が、オレは耳がいいんだ。

 銃弾くらい、どこに飛んでくるかなんて予想出来らァ……!!」

 

 真っ直ぐ飛来する弾丸を、レクスは天井、側壁に跳んで(……)回避した。

 まるで、空を踊るかのように。

 その姿は美しく、そしてどこか獣のような鋭い目付きで獲物(せつか)を睨んだ。

 

「なっ……!?」

 

「───死ねや霧島ァ!!」

 

 動揺する切翔へ向かってナイフによって無慈悲に描かれる、赫色の弧の軌道。

 回避が不可能、切翔すらも思っていたがそれは切翔の背後から突如として流れてきた水流によって阻まれ、レクスは遠ざけられた。

 切翔を避けるようにその水流は行進し、そして剣戟を行っている最中の”陽“のセイバーの剣の元へと帰って行った。

 

(今のはセイバーか? 

 ……よくやってくれた)

 

「───”cut(強化開始)“」

 

 魔力を集中させ、切翔が詠唱する。

 義隆に教えられた数少ない魔術の一種類、”強化“の魔術だった。

 

「……クソが、あのポンコツナイト何やってんだよ、足止めくらいしやがれっての……!!」

 

 水流により吹き飛ばされたレクスはよろめきながら起き上がり、愚痴をこぼす。

 しかし、レクスからは相当な余裕を、切翔は感じ取っていたのだった。

 

(そりゃ当たり前か……セイバーの援護がなければ俺は死んでいた。

 まだまだ未熟なのは承知してたが……こうも甘いとはな。

 レクスは当然、こんな俺を見て余裕だと思うだろうな)

 

 切翔は、マシンガンからナイフに持ち替えた。

 マシンガンは重りになるから、後ろへと放り投げた。

 切翔の行動を見たレクスは笑う。

 自身に対してそれは自殺行為だと、嘲る。

 

「オイオイオイオイ、マジかよ霧島!! 

 次期当主って、道化の才能もあるんだな!! 

 すげぇおもしれぇぜ、爆笑しすぎて腹が砕けそうだよ!!」

 

「───お前が、サーヴァント並に速いのは分った。

 しかし、もう慣れた」

 

「くだらねぇ減らず口が……!!」

 

 再度、レクスが駆ける。

 まるでスポーツカーの最高速度のように。

 しかし切翔は、今度は彼の速度をしっかりと捉えていた。

 迷わずに懐に隠していたもう一つの(コンテンダー)を抜いて、レクスに向かって弾丸を放つ。

 

「!!」

 

 ─────先程のマシンガンの銃弾が無数のナイフならば。

 この、切翔の次に出す弾丸は一つの線を描きながら奔る、全てを貫く槍だった。

 

 弾丸はレクスの方へ目掛け飛翔する。

 しかし、レクスは、すんでのところで回避を行った。

 

 だが、それは切翔の誘導だった。回避するのは読んでいた、だからこそ彼はそこへナイフを投げたのだった。

 コンテンダーの弾丸を放った直後、レクスの意識が弾丸へ集中するのを読んで。

 レクスはその空を翔けるナイフを回避することが出来ず、そのまま肩へと深々と突き刺さる。

 

「チッ……!! ゴミが!!」

 

 乱暴にナイフを抜く。

 切翔はすぐさま、二発目の弾丸を放った。

 その弾丸は、切翔の始まり(起源)が詰まった魔弾。

 狙うは脳天。

 その狙い通りに、魔弾はレクスの脳髄へ翔けるのだった。

 

 

 

『───起源弾』

 

 切翔の脳裏に、義隆の声が過ぎる。

 それは、切翔がソレを作ってもらった時だった。

 

『かの魔術殺し、衛宮切嗣が用いたとされる、大魔術師用の礼装。

 ……貴様の起源は奴ほど強力ではないが、似たようなモノだ。

 奴が切り離した魔術回路を雑に繋ぎ、再起不能にさせるのがその起源弾の力ならば。

 貴様のは、切り離した魔術回路をどこかへ翔けさせる。

 ……相手がフルで魔術を行えば相手は暫くは魔術を扱えんくはなる。

 しかし、相手が中途半端な力ならば魔術は行使できる、もちろんフルパワーではないがな』

 

 どこか残念そうな声。

 義隆はそのまま、切翔へ笑みを浮かべた。

 

『使ったら確実に逃がすな、そして己が父親にも、弟にも己が起源を明かすな。

 そうすれば、貴様は衛宮切嗣のような確殺の魔術師殺しとして世を震え上がらすことが出来るだろう───』

 

 

 

 その、不気味な笑みを切り崩すかのように、凶弾は翔ける。

 しかし、レクスは不敵に笑みを浮かべると同時に、彼の体から発生した煙と共に、姿を隠した。

 セイバーの位置を確認するため、振り返るが、そこにはもう二体の姿は無かった。

 代わりに、側壁が崩れており、一階の運動場で何やら斬り合っていた。

 

(……セイバーの助けはもう来ないだろう。

 しかし、身体から煙を発生させるとはな、なにかの魔術か? それとも、ナニカに変わるのか───)

 

 マシンガンを拾い、さらに後ろへと退く切翔。

 そうして、煙が外へと出ていきレクスの姿が現れる。

 ───月の光に照らされ、レクスの体は全身が毛皮に包まれ、そして頭部が犬、否、狼へと変貌していた。

 

 切翔は、資料にあった化け物を思い出し、言葉に出した。

 

人狼(ヴェアヴォルフ)……!! 

 なるほど、貴様は純粋な人ではなかったのか。

 アーベル・レクス。なるほど貴様は初戦の相手としてくるのは必然だったか」

 

「───(レクス)、なんかじゃねぇよ」

 

 牙で、切翔の起源弾を砕く。

 そして、先程よりも更に凶暴な鋭い視線を向ける。

 

(来る!!)

 

 切翔が身構えた次の瞬間、

 

 レクスの姿は、眼前へと迫っていた。

 

「なっ、──────!?」

 

(ルプス)だ。

 オレの本名は、アーベル・ルプス。

 レクスは渾名みてぇなもんだよ、地獄で覚えとけ」

 

 ───切翔の腹部が貫かれる。

 その樹木のように太く、そして硬い腕によって、貫かれた。

 切翔は、口から血を吐き出し、そしてレクスを睨んだ。

 どこか、諦めを捨てていないその目は、せいへの執着だろうか。

 しかし、獣にはそれはどうでもいい事だった。

 

「ザマァねぇなあ……霧島。

 ミヤビに見せてやりてぇぜ、てめぇの息子の死体を。

 んで───オレと同じ思いを抱かせたいぜ」

 

 レクスは牙を剥き、切翔の首筋へと迫った。

 

(まだだ、まだ、俺はここで死ぬわけには……!!)

 

 切翔が足掻こうとするが、力がでなかった。

 

 

 

 ─────そうして、鮮血が廊下へ飛び散ったのだった。


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