第二回 ウマ娘短編合作 聖蹄祭とウマ娘達   作:雅媛

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9 中華料理トレーナーとタイシン

タイシン「は?料理教室?蹄鉄祭で?」

 

トレーナー(以下T)「そうネ。理事長から頼まれたアル。だからタイシンも手伝うネ。」

 

タイシン「いや...あんた料理できるの?」

 

T「なんネ。普段料理しないからって料理できないって言うのカ?」

 

タイシン「いや、そうは思わないけど...じゃあなんか作ってよ。」

 

T「仕方ないネ。おいらの腕見せてあげるアル。」

 

そういってアタシのトレーナーはトレーナー室に付属されているキッチンに向かう。そして普段使われてないであろう冷蔵庫から食材を取り出していく。てかいつ食材買ってきた。アタシのトレーナーは親が中国人らしく、7歳まで中国で過ごしてこっちに引っ越してきたらしい。ただトレーナーが引っ越してきた理由はソレ以外口にすることはない。気にはするもののあいつも私の過去とかあまり聞こうとしないし、それであたしががっついてしまってもフェアとは言えないし...けどアイツの過去となると少し気になる...

 

T「ところでタイシンは中華料理で何作れるアル?」

 

タイシン「あたし?あたしはレシピが分かれば何でも作れると思うけど...」

 

T「そうアルカ。それだったら別に料理教える手間かけなくて済むネ。」

 

タイシン「てか、料理教室で何作るの?」

 

T「青椒肉絲ネ。肉はこっちで切っておくとして必要なのがピーマンとタケノコだから子供と一緒に作れるネ。」

 

タイシン「なるほどね。で、今作ろうとしてるのは?」

 

T「麻婆豆腐ね。」

 

アタシはキッチンに並べられた食材を見る。豆腐、ネギ、ひき肉。とりあえずどこぞのガキ大将みたいにセミの抜け殻的なやばい物はなさそうだけど...肝心のあれが見当たらない。すかさずあたしは問い詰める。

タイシン「...麻婆豆腐の素は?」

 

T「素?なんアルネそれ。」

 

タイシン「え?麻婆豆腐作るときに必ずいる奴じゃん。レトルトカレーみたいな容器に入ったの。」

 

T「あーあれネ!いらないアル。」

 

タイシン「いや、なかったらどう作るの...まさか?」

 

T「上の棚に調味料全部入ってるね。八角に鶏油、辣油もありゃ葱油も、ただフカヒレだけはないね。それ以外は普通の家庭とほぼ変わらないネ。」

 

タイシン「いや普通の家庭はそんな数種類も油を使わないし、八角なんて料理好きな人じゃないの使わないっての...」

 

粗方材料を切り終えたトレーナーは先に別のフライパンでひき肉を炒めた。ある程度ひき肉に火が通るとさらに移して、上の棚から調理妙の入ったタップやビンを取り出していく。そしてフライパンの中に鶏油と思われるものを入れて火をつける。最初に豆板醤やすりおろしニンニクなどの調味料を入れて混ぜ合わせるとそのままさっきのひき肉を入れて混ぜ合わしていった。ここまででわかることといえば、こいつあたしより料理の手際いい...自慢じゃないけどあたしは今まで一人で何でもしてきたし、料理もそれなりにうまい方という自負はあった。けどこいつはその数歩先を行く腕前だった。次々とみじん切りにされていくネギに、家庭用コンロよりも火力の強い業務用コンロの火にビビらずにフライパンを揺らし、目測で調味料を適量入れていく姿。どう見ても一般的な料理好きとはかけ離れた腕前だった。

 

タイシン「あんたの親って料理人とかなの?」

 

T「まぁそんなところネ。あ、そこにある鶏ガラスープの素の入ったビンのフタ開けてほしいネ。」

 

タイシン「どれかわかんないんだけど。」

 

T「左から2番目のやつアル。」

 

タイシン「あっ、これね。はい。」

 

あたしは鶏ガラスープの素が入ったビンの蓋を開けるとあいつに渡した。あいつはそのままビンの中にスプーンを入れて調味料を取り出すと適当な底のある皿に入れて水と混ぜて、フライパンに入れて混ぜ合わせた。それと同時に水に溶いた片栗粉を入れて混ぜ合わせた。そのあとは豆腐とネギを入れてあえるだけだったから詳しくは言わないけど、かなり本格的だった。

 

T「できたネ。めしあがれアル。」

 

タイシン「いただきます。」

 

麻婆豆腐を口に入れる。最初は普通に麻婆豆腐の味が口に広がったけど後からまるで爆風が吹いてきたかのように強い辛味が口の中を襲った。けどおいしい。ごはんが欲しくなる味だ。

 

タイシン「おいしい...」

 

T「これがおいらの料理スキルね。」

 

アイツがドヤ顔をする。蹴り飛ばしてやろうかと思ったけどその通りにすごいスキルだから何も言えないのが悔しい。

 

タイシン「それで?あたしは何をすればいいの?どうせあたしも手伝わなければいけないんでしょ?」

 

T「タイシンには参加者のアシスタントをしてもらうアル。おいらが前で実践している間にタイシンが参加者の補助をするアル。」

 

タイシン「待って。アタシがアシスタントするの?」

 

T「そうある。だから下手くそだからって参加者蹴るんじゃないアルヨ?」

 

タイシン「うっさい!蹴るよ!」

 

そうこうしているうちに蹄鉄祭は訪れた。料理教室は午前午後に分かれて2回開かれる。1回目は何も問題なく進んだ。けど午後に問題は訪れた...

 

タイシン「ここはこう。そうそう。上手じゃん。君。」

 

子供「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

タイシン(よし、午後もこれなら何も問題なく終われる。)

 

??「あれぇ?誰かと思えばチビタイシンじゃん!」

 

その声に恐怖を感じる。本能が危険を察知している。恐る恐る声のする方を見るとあいつらがいた。

 

男「まだトレセン学園にいるのかよチビ。」

 

女「あんたみたいなのがまだトレセンで生き残れてるなんてねぇ。」

 

思った通りだ。昔あたしをいじめていた奴らだった。アタシは無意識ににらむかのような顔をする。するとあいつらはこっちに向かってきた。

 

男「なんだよその眼。おめぇみたいなのが俺らに気にかけてくれるだけでもありがたく思えよ。」

 

女「てかあたしたち料理できないから作ってくれなーい?もちろん嫌だとか言ったりまずい物なんて作ったらわかってるよね?」

 

正直逃げたい。けど逃げたら何されるかわからないし、あたしが作って済むなら...とあきらめて作り始めようとしたとたん。顔の横に何かが飛んできた気配がした。すると壁に寄りかかっていた奴のマ隣に包丁が刺さっていた。後ろからは声が聞こえた。

 

T「お兄ちゃんたち。ここは料理教室ネ。女と男探してるなら歌舞伎町のホストやキャバか渋谷で探すなりするネ。」

 

いつの間にか後ろにトレーナーが来ていた。アタシの後ろに来てそしてあたしをあいつの後ろへと誘導する。隣に包丁が刺さった奴が声を荒げてこういう。

 

女「ちょっと!危ないじゃない!あたしに刺さってたらどうするつもりだったの?」

 

T「ん?あぁ。実は唐の時代に人肉食は存在してたね。料理としてではないアルけど。君が死んだときにはメニューを変えて中国料理の歴史でも再現しようとしてたね。」

 

女「は?な、何言ってるの?」

 

トレーナーの言ったことにあいつらは顔を青くする。トレーナーはそのまま女の方に向かっていき包丁を取ってこういった。

 

T「それで?今すぐ歌舞伎町の方に向かうのと中国料理の歴史に路線変更するの。どっちがいいアルカ?」

 

トレーナーがそういうとあいつらはそそくさ教室を出ていった。その理事長にチクられたけどあたしが事情を説明すると理事長は何も言わずにどっか行ってしまった。こうして料理教室は問題が起きながらも終了した。後片づけをした後、あいつは何かを作り始めていた。

アタシは疲れたからか机に突っ伏していた。

 

T「いやぁ一時期はどうなるかと思ったアル。タイシンも大変だったアルネ。」

 

タイシン「別に...慣れたことだし...」

 

T「...別に変な探り入れるつもりはないアルが、誰かに話を聞いてもらうのは案外いいことだったりするアルよ。」

 

タイシン「...あたしさ、やっぱチビだったから狙われやすくって。中学に入ってからはトレセンを目指し始めてたから余計に狙われるようになったんだ。それでトレセン入ってからはばったり会わなくなってたけど...」

 

T「...なるほどアルネ。」

 

タイシン「...ねぇ、あたしが言ったんだからあんたもいってよ。あんたの過去。」

 

T「...この状況で言わないのはだめアルネ。とりあえず言えるのは。おいらの家族は料理人ね。日本には引っ越してないアルが。」

 

タイシン「じゃあ中国にいるの?」

 

T「そうアル。しかも中国屈指の料理人で彼に料理を頼むときにはかなりの金を積む必要があるね。だから金のない人は蔑ろにされる。おいらはそれが嫌いだった。大金持ちにだけ料理をふるまうのはほんとに反吐が出るネ。誰でもおいしく食べれる料理を作るのがおいらが料理を極める理由アル。」

 

タイシン「...以外とすごいところの生まれなわけね。」

 

T「すごくないアル。人間の強欲の塊しかなかったアル。さて、話しているうちにできたアルよ。」

 

そういってあいつはあたしの前に料理を差し出す。ごはんの上に小さく切られた豚の角煮みたいなものが載せられているだった。

 

タイシン「これは?」

 

T「ルーローハンアル。日本の豚の角煮に近い奴ね。」

 

タイシン「ふーん。おいしそう。」

 

出された料理を口に入れる。豚肉から出てくる油のうま味にちょっと独特の味が広がってこれもご飯が進む。

 

タイシン「これもおいしい。けどこの香りはなんだろ。」

 

T「八角ネ。日本人にはなじみのない味だから合うかどうかわからなかったけどおいしいならよかったアルネ。」

 

トレーナーの言葉に相槌を打ちながら箸を進める。不思議なくらいに何杯でも食べられそうだ。

 

T「...ここにはおいらもいるしチケットたちみたいな仲間もいるネ。悩みがあるなら相談することも大事アル。」

そういってあいつはあたしの頭を強くなでる。アタシは手を払おうと思ったけどどこか心地よくてずっと撫でられてほしいと感じるほどだった。けど夢見心地はすぐに終わることになる。

 

チケット「なんかいいにおいがしてきたー!!」

 

チケットが思いっきりドアを開けてこっちへ来る。トレーナーは頭をなでるのをやめてしまった。

 

タイシン「チケットうるさい。」

 

チケット「あぁ!タイシンなんかおいしそうなの食べてるー!」

 

T「チケットも食べるアルカ?」

 

チケット「いいのぉ!?ありがとぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

チケットが騒いでいるうちにハヤヒデも来ていつも通りの雰囲気になる。トレセン学園に入ってからあたしの周りには信頼できる人が増えた。チケットやハヤヒデ、クリークさんにトレーナー...さっきのトレーナーの頭撫でてくれたの。よかったな...もう一回やってみてほしい。

 




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