第二回 ウマ娘短編合作 聖蹄祭とウマ娘達   作:雅媛

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ネタバレ:タイトルと中身の雰囲気は一致しない


3 窓際のマンハッタンカフェ

 

聖蹄祭。通称、秋のファン感謝祭とも言う。

それぞれのクラスやチームで催しを行い、ファンと触れ合う文化祭だ。

日頃たくさんのファンに支えられているウマ娘としては、ぜひともこの機会に、様々な形で感謝を伝えたい、と思うはずなのだが…

 

「………」

 

催し物に興味はない、というウマ娘もまた一定数いるわけで。このマンハッタンカフェも、その1人だった。

一応出し物の体裁を保ったカフェを開いてはいるが、ほとんど人目につかない階の端の教室に、しかも看板も掛けずに扉を閉めた状態で開いており、もはややる気がないのがひと目でわかってしまう。

 

(向こうのカフェは、ずいぶんにぎやかですね…)

 

彼女の視線の先には、チーム"リギル"の開いているカフェがあった。外側まで人があふれかえっているため何をしているかまでは分からないが、誰もが笑顔になっているのは、ここからでも分かってしまう。

 

「はあ……」

 

ボーっとそれを眺めながら、時が過ぎるのを待っていた。

幸せそうだ。あれはきっと、私には作れない顔なんだろうな。……でも、そういうのは私のキャラじゃないんだろう。

 

「コーヒーでも入れますか…」

 

気持ちを切り替えるようにそう呟いて、カフェはすくっと立ち上がった。

 

しばらくすると香りがあたりに漂い始め、コーヒーが飲み頃であることをカフェに主張している。もちろんカフェもそれに応えるように、カップを口元へと運んでいくのだ。

しかし、それと同時にドアが弱弱しく開き始めたのが、彼女の視界の端で見えた。

 

「す、すみません…誰かいませんか…?」

「おや、貴女は……?」

 

そこには、黒髪の…おそらく小学生程度の年齢のウマ娘がいた。

カフェは一度カップを机に置くと、そのウマ娘のほうへと向き直り、声をかけた。

 

「えっと、その、ダイヤちゃん…友達とはぐれちゃって…」

「なるほど、それは…大変でしたね。どのあたりではぐれてしまったんですか?」

「わ、わかんないです…気づいたらいなくなってて、それに教室もいっぱいで…」

 

まあそうだろうな、と思いつつも、どうするべきかと考えるカフェを見て、黒髪のウマ娘は、急に黙り込んでしまったのを不安がってかどんどん表情を暗くしていく。

 

(ダイヤチャンを無事に送り届けるのもありですが、誰かほかの人に任せるべきでしょうか…?それこそ会長にでも…いえ、彼女たちも今は忙しい、でしょうね…)

 

そこまで考えて、カフェは一度ため息を漏らすと、先ほど用意し始めていたコーヒー関係の物品を片付けながら、黒髪のウマ娘に声をかけた。

 

「では、ダイヤチャンさん。私が…そうだ、まだ名乗っていませんでしたね。マンハッタンカフェ、と言います。ともかく私が一緒に友達さんを探すので、どうか不安がらないでください」

「は、はい…!ありがとうございます!」

 

さっきまであんなに不安そうだった顔が急にキラキラしだしたのを見て、カフェはくすり、と笑みをこぼした。

 

「あ、それと…」

「?」

 

「私の名前、ダイヤチャンじゃなくてキタサンブラックです…。すみません、名乗ってなくて…」

 

カフェは斜め上を仰ぎ見るような格好を取った後、一度うなずいて教室の扉を開けた。

 

 

さて、こうして学園内を練り歩き始めた2人だったが、やはり聖蹄祭中というのもあって、どうしても目移りしてしまうものがあった。特にキタサンブラックは、焼きそばのにおいをかいではそちらに釣られ、明石焼きのにおいをかいではあちらに…といった様子で、カフェはどうしてはぐれてしまったのか、すぐに納得した。

 

(この様子だと、ダイヤさんもどこにいるか見当がつきませんね…どうしたものか)

 

…とにかく今は、隣の危なっかしいウマ娘の手を握っておこう。逃がしたらもう会えそうもない。

そう思って少し強めに手を握ると、ブラックは少し戸惑ったような表情を見せたが、そのままカフェに並んで歩き始めた。

 

さて、話は変わるが今はお昼前、時間は11時頃だろうか。ちょうど舞台のほうでは、『逃げ切りシスターズ』によるライブが行われていた。上からサイレンススズカが降りてきたり、セイウンスカイまで参加していたりと、なんだか豪華なメンバーのようだ。

 

「…ブラックさん、行ってみますか?」

「いいんですか!?はい!行きたいです!」

明らかにそちらのほうに目を奪われているブラックに、カフェは小さく声をかける。

どうせ聞こえてもいないんじゃないかと思っていたが、案外大きな声で食いついてきて、少しびっくりしてしまった。

 

 

さて、会場のほうに来たが…だいぶ多くの人がいるようで、はぐれないでいるのが大変そうだ。

 

(ああ、これスズカさん巻き込まれてますね、ご愁傷様です)

 

若干1名、ヤケクソになって踊っている。普段と違うそれが受けているのか、スズカへの応援は一段と大きいようだった。

恐らく明日当たり、悶えるスズカを見られるだろう。お疲れ様です、とカフェはとりあえず手を合わせておいた。

 

「さて、このあたりにダイヤさんはいるでしょうか…」

「え、は、はい!なんでしょうか!」

「いえ、やはりこういう催しには皆さん集まるだろうとおm誰ですか貴女!?」

 

そしてライブ1曲目が終わり、少し静かになったところでブラックに声をかけたが、なぜか手をつないでいる相手が変わっていた。

茶髪…と言ったらいいんだろうか、額のダイヤモンド型の模様が特徴的な、これまた小学生くらいのウマ娘だ。

 

「あ、あの…私、サトノダイヤモンドっていうんですけど、さっきからキタちゃん…友達とはぐれてしまって、ここにいるかなと思って…」

 

カフェは隣の"お友だち"を頼ったが、完全に投げやりの態度でそっぽを向いた。せめてはぐれそうなら何か言ってくれてもいいのに、絶対この子ライブに夢中になっていただろう。役立たずめ。

 

…さて、どうしましょうか。本当に。

 

一度思考の海に入ろうとしたカフェだったが、ダイヤがだんだんと不安そうな顔になるのを見て、思いとどまることにした。

 

「こういうところ、似ているものなんですね…」

「へっ?な、何か…?」

 

小さな笑みをこぼしてつぶやいたその言葉に反応したダイヤを見て、カフェはまたクスリと笑い、頭を横に振って、「何でもないですよ」と言った。

少し気持ちを整えて、カフェは「さて」と言いながらダイヤのほうに向きなおり、話を続ける。

 

「私はマンハッタンカフェと言います。カフェ、と呼んでもらって構いませんよ。」

「は、はい、カフェさん」

「…そう怖がらないでください、噛みついたりしませんから。まあ、それでですね…実は私も、ブラックさんを探しているんですよ」

「そ、そうなんですか?でも、キタちゃんにカフェさんのことを聞いたことはないですけど…」

「いえ、そういうわけではないんですよ。」

 

カフェは少し、これまでの事情を説明することにした。

 

「そうだったんですね…って、もしかしてまだこの辺にキタちゃんがいるかもしれないってことですか!?」

 

一通り事情を聞いて納得はしてくれたようだが、今度はダイヤがどこかへ行ってしまいそうになったので、カフェはとっさに腕をつかんだ。

 

「待ってください、ただでさえこの辺りは人が多いですし、一旦ここを離れたほうがいいと思います。それに、またはぐれられては困りますから、どうか私から離れないでください」

「あぅ、すみません…」

 

そして2人は、外の屋台広場と言えるような場所まで来た。そこらからいいにおいが漂い、お昼時なのもあってカフェも少しお腹が空いているのを感じ始めた。

隣を見ると、ダイヤはあたりを見渡しているが、食べ物というよりはブラックを気にかけている様子で少し心配になり、カフェは微笑ましいような、子供を気に掛ける親のような気持ちで、提案をすることにした。

 

「…何か、お昼ご飯でも買いましょうか。食べたいものはありますか?」

「いいんですか?えっと、じゃあ……」

 

 

結局2人してなかなか決めきれなかったが、一通り屋台を回って昼ご飯を買い集め、席に座った。

ただ、なかなかダイヤはお昼ご飯に手を付けようとしなかった。

それを見て、それから少し遠くを見て、笑みをこぼしながらカフェはダイヤに声をかけた。

 

「……やはり、ブラックさんが気になりますか?」

「あ、はい…キタちゃん、私のこと探しててお昼食べてなかったら嫌だなと思って…大丈夫かな…」

「ダイヤさんは友達思いなんですね」

 

そういわれて、驚いたような、照れたような表情で否定をするダイヤをほほ笑みながら眺めた後、カフェは席から立ち上がった。

 

「では、少し待っていてください。すぐに済む用事ですから」

「へっ?な、何かあるんですか?」

 

その質問には答えず、カフェは小走りで建物の角を曲がって、ダイヤの視界からいなくなってしまった。

 

 

 

「さて、どこにいましたか?……ああ、案外近いんですね、良かったです。……ありがとうございます、助かりました」

カフェは、誰もいないところに話しかけながら、小走りで先ほどの会場の方へと向かう。その後、そこを通り過ぎて、少し開けたところに向けて大きめに手を振った。

すると少ししてから、向こうの方からも小さな手が振られたのを見て、カフェはそこそこの力でそちらの方へ駆ける。

 

「ふぅ……見つけましたよ、ブラックさん」

「あ、ありがとうございます、カフェさん!…やっぱり、速いんですね!すごいです!」

「いえ、私よりは……」

 

タキオンさんのほうが、とは言わないことにした。別に知らない人のこと言われたのがどうこうではなくて…なんだか、それを言ってしまうと負けを認めたようで、悔しさを感じたのだ。

 

「…何でもありません。それより、行きましょうか。そろそろお腹がすいてきたでしょう?」

 

少しごまかすような笑みを浮かべて、カフェはブラックにそう提案した。

 

 

それから2人はまた手をつなぎ、屋台のある広場へと戻ってきた。角を曲がるとすぐに、ブラックがはっとしたように声を上げ、カフェから離れて走り出してしまった。

しかしカフェはそれを止めず、「さて」と声をこぼすと、そのまま教室棟へと戻っていったのだった。

 

 

自分の、(一応)開いているカフェに戻ると、扉を閉めて、コーヒーの器具を取り出し始める。

 

「……別にいいんですよ、元々知り合いでも何でもないですし。………そうですかね?多分、時期に忘れると思いますよ。ただはぐれたのを少し手助けしただけですし。………別にそんなにケチじゃないですよ。」

 

誰もいないところにいる"お友だち"と話しながら、サンドイッチを広げた。

コーヒーを淹れて、1人でぼんやりと外を眺め、昼食をとる。

 

 

 

「……ふふっ」

 

私にも、いつかあんな風に笑顔で話せる友人ができるでしょうか。

 

その視線の先には、2人で昼食をとるキタサンブラックとサトノダイヤモンドがいた。

 

 

(お昼からは、私も何かに参加してみてもいいかもしれませんね…)

 

ひょっとしたら、またあの2人と話せるだろうか。とか、いつもなら考えもしない期待も胸の内にあったりして、何か満足感を感じる。

 

「やあ、カフェ!私の紅茶は「ホント帰ってくれませんか貴女、空気読めないんですか?」…なんだよぅ、意地悪だな」

 

……少なくとも、これは笑顔で話せる友人ではないだろう。

 

カフェはため息をついて、再び祭りへと繰り出した。

さしあたっては、スズカを慰めるとこからだろうか。いや、ファンの人がいるなら、何か話してみるのもいいかもしれない。

 

「文化祭も、悪くないですね…」

 

来年は頑張ってみてもいいかもしれない。カフェはほんの少し、そう思った。




話変わるんですけどアオハル杯でサトノダイヤモンドにエモート追加されましたよね。いやーもうホント、すべてが尊い!ダイヤちゃんかわいいヤッター!!ってことだけ覚えて帰ってくださいね
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