ダイヤちゃんはデートに誘いたい ! 作:fantasia@pixiv共用
「トレーナーさん、明日お暇な時間ありますか?」
「ん?特にないけどどうしたんだ?」
「もしお暇なら私とデート行きませんか?」
「お断りします」
私はトレーナーさんの素っ気ない答えに頬を膨らませました。
窓から差し込む夕陽がトレーナー室を橙色に染めて、少し寂しさを感じてしまう頃。
今日もいつものようにトレーニングを終えて、トレーナー室で今日の反省点や次のレースについて話し合いをしていました。
終わり際に、明日休みという事もありデートに誘ってみましたが今日も断られました。
これで既に40回断られています。
流石にトレーナーさんが好きでたまらない私でも、心が折れてしまいそうです。
正直泣きたいです。
容姿も悪くない、スタイルも同年代の子より起伏に富んでいますし、何より私は浮気は絶対しないのに。
何で振り向いてくれないのでしょうか。
「トレーナーさん、一回位してくれてもいいじゃないですか........」
私はもう泣きそうでした。
私だって女の子です。
好きな人に素っ気なく断られ続けたら泣きたくもなります。
少し涙声な私の言葉に、トレーナーさんは私の顔を見てギョっとして、少し慌てています。
「だ、ダイヤ!?な、泣かなくてもいいだろ」
「泣きたくもなりますよ!私今日で40回もデート断られているんですよ?誰も『うまぴょいしましょう』とか言ってませんよね?普通のデートがしたいだけなのにあんまりです」
もう半分怒っています。
ええ、流石の私も怒ってしまいます。
私の口からマシンガンのように飛び出す言葉に、トレーナーさんは胸を押さえてうっと唸っています。
もっと唸ればいいんです。
私、断られる度に夜にベットで一人泣いているんですからね!
........うまぴょいについてはノーコメントです。
「と、とりあえず落ちつけ、な?」
トレーナーさんがどうどうと私を落ち着けようとしてきますが、その子供扱いの態度に私は少しカチンときました。
垂れ下がっていた両手を握りしめて、わなわなと力を思い切り込めていきます。
「........」
私が俯いて両手を握りしめている姿を見て、トレーナーさんは身の危険を感じたのか「はぁ」と溜息をついて頭を掻いています。
「........分かったから。デートすればいいんだろ?」
何ですか、その投げやりな言い方は。
私はもう我慢するのは無理でした。
もう少し言い方あるじゃないですか。
私は顔を上げてトレーナーさんを睨みつけると「もういいです!」と言い捨てて、トレーナー室から走って出て行きました。
扉が壊れそうな音を響かせて閉まり、私は扉にもたれ掛かりながら頬を伝う涙を感じながら人知れず呟いていました。
「トレーナーさんの馬鹿........もう知りません........」
☆☆☆☆☆☆☆
その次の日。休日。
私はそのまま自宅に戻り、自分の部屋に篭っていました。
特に予定も無く、昨日トレーナーさんと喧嘩別れした事も響きやる気が起きませんでした。
ずっとベットの上でゴロゴロとしています。
流石に泣き明かすとかはありませんでしたが、それでもずっと断られ続けたのは精神的に辛く。
身体も毎日のトレーニングで疲弊していたのもあり、のんびりしていました。
私の身を包む緑と白のパジャマが、私が身体を動かす度に衣擦れ音を鳴らします。
それでも、私の頭に浮かんでくるのは昨日の一件で。
トレーナーさんが私とデートしない理由は解っていました。
『トレーナーとウマ娘は恋愛関係になってはいけない』という理事長からの通達が関係していて。
その関係もあり、基本的に二人きりで学園外を歩く事は特例を除き控えざるを得ない状況でした。
それでもトレーニングに必要な蹄鉄やスポーツドリンク等の必需品の買い出しは基本許可されていたのも事実です。
要は『物は言いよう』なのが現状で、幾らでも言い逃れが出来るのでした。
他のウマ娘やトレーナーさん達はその穴を潜り抜けてしているみたいですが、私のトレーナーさんはそういう事を嫌う方でした。
そういう面も含めて好きになってしまったので、惚れてしまった私としては強く押す事も出来ずにずっと我慢をしてきました。
トレーナーさんを困らせたくなかったのもありますし、何より私の我儘にトレーナーさんを振り回したくない気持ちもあったからです。
それでも、私の周りではトレーナーさんと○○に行って楽しかったとか惚気話をずっと聞かされて羨ましく思ってたのも事実で。
私だけずっとデートすらして貰えない、という焦りや。
私はトレーナーさんに好かれていないのでは、という恐れから昨日は爆発してしまって........。
私が悪いのは解っています。
私が我儘を言わなかったら良い話ですから。
それでも、私はトレーナーさんと一緒にデートしたいんです。
『私はトレーナーさんに好かれている』んだと、実感したいんです。
そうでないと、もう耐えることも我慢し続ける事も出来ない所まで来ていました。
「........」
私はスマホ画面に映る『トレーナーさん』と表示された発信画面をずっと眺めていました。
電話を掛けて謝りたいけど、素直に謝れない。
そんなモヤモヤした複雑な気持ちに挟まれたまま、時間だけが流れていきました。
「お嬢様、お客様がお越しです」
ノックと共に執事さんがドア越しに私に来客が来た事を伝えてきます。
が、私は今日誰とも会う気は無かったので断ろうと口にしようとした所────
「お嬢様のトレーナー様がお見えになりました」
執事さんの続く言葉は、私の目を見開かせるには十分な内容でした。