自分をTASだと思ってる精神異常者の話。   作:名無しの権左衛門

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TAS君と友人とウマ娘

 

「なあ、TAS」

「なんだい?」

「ハーメルンが、ウマ娘の二次創作ばっかりなんだけど」

「へー」

 

 まーた友人が隠し持ってきたスマホの画面を見せてくる。

何してんの?

 

「それがどうしたの?」

「いや、どうしてそんなに熱中できるのかわかんねぇんだよなぁ」

「じゃあ、行ってみる?」

「そういや、行けたな(笑)」

 

 最近ニュースとかでもウマ娘に関して色々聞くなあ。

でもやってみたいとは思わないかな。

だってソシャゲって、お金使ってなんぼなところあるし。

俺は別に外から眺めてるだけでいいよ。

 でも友人がそうしたいのなら仕方ないかな。

さっさとウマ娘とかいうUMAと接触して帰ってこよ……いや、これ、

生放送すればいいんじゃない?

 

「なあなあ」

「ん?」

「夏休みこれする?」

「あー、それもいいかもな。TASの現実拡張がどんなのか知りたいし、

最近はゲーム内のキャラと喋ってないし」

「それな」

 

 期末テストでそれどころじゃなかったりするしね!

ゆとり教育も終わってしまったから、勉強に関しても前よりきつくなっちゃったし。

その代わり長期休暇はそのまま!

うん、ありがたい。

 

「現実拡張されるとなったら、トレーナーになるところから始めるのか。

それとも、トレーナーから?」

「ゲームで一定の役職が決まったところから始まるやつ、今までやったことないよね」

「んー、体育の先生にアスリートの教育ってどうやってするのか聞いて来ようぜ!」

「そだね」

 

 そういうわけで、体育の先生という専門の先生を探しに友人の兄貴が

通ってる中学校へ乗り込んで聞いてみる。

 

「なんでそう思ったのか知らないけど、聞かれたから教えよう。

基本的な走力強化は、陸上選手もバスケ・サッカーも変わらないんだ。

応用としてバスケやサッカーのチーム戦を想定したメンタルトレーニングや戦略を

練ったり、それらを活用できる練習もする。

 え、陸上選手の練習の仕方? うーん、基本は……この本をあげよう。

これに書いてあるから、基本はこれでおこないなさい。

後は各選手にあった練習を施すんだ。瞬発力・速力・スタミナ、走法もそうだな。

いいか? 育てる選手には個人差がある。そこをいろんな計測をすることで、

数値化するんだ。そして何を目指すのか目標を設定させて、そこへまい進させる。

これだけで選手のやる気は違う。特に褒める・叱るなどの飴と鞭は、具体的かつ簡潔にすること。

あとは……」

 

 俺達は先生の4時間余りの陸上談義に花を咲かせた。

メモ帳持って来といてよかったー!

 

 

 そんなわけで、パソコンでウマ娘をダウンロードした。

生放送の準備もできたし、カメラも俺達の顔が映らないような位置に設定できるし、

いいことづくめだな!

 

「向こうに行ったらどうなるんだろーなー」

「よっしゃ、行くぜ!」

 

 

 向こうに行ったら、俺達はトレーナー室とかいうところで二人部屋だった。

どういうことなの?

 

「あれ? なんか違う?」

「TAS! これだよこれ、通知表!」

 

 なんか合格通知書っぽいものがあって、次の日……朝日が昇ってるから今日だなぁ。

今から選抜レースがあるらしく、そこで見繕っていけだって。

また特別に二人で一人のウマ娘を見てもいいらしく、これで三年間やったら

俺達が別々でチームを作ってもいいらしい。

 

「後のことはいいや、とにかく行ってみよう!」

「その前に飯だ飯!」

 

 この世界はごはんがあって、なんと空腹もある!

HOIとかポケモンの世界もそうだったけど、その世界にご飯の概念があると

時間を忘れて熱中できなくなるんだよね。

だけど一度頭をクールダウンさせることで、さらなる集中を招くことができるから

ごはんがあったほうがいいな!

 

 それにこっちでごはんを食べると、なぜか現実でもお腹いっぱいのままだし。

 

<お、新人じゃねーか。早いな>

「えーと、貴方は?」

<俺はチームスピカを牽引してる、沖野っていうんだ。よろしくな!>

 

 握手を求められたので、俺達は普通に握手をする。

というか、見た目が子供なのに普通の反応だなぁ。

ありがたいけど。

 

<お前たちも立派なトレーナーだ。ライバルに教える義理もないとか、

そんな血も涙もないことは言わない。だけど、優秀なウマ娘は譲らないぜ>

「沖野さんのおすすめは?」

<とにかく、一位になったやつだな!>

 

 単刀直入というか明解な答え。

おかげで俺も友人も、目の前の選抜レースに目を向ける。

 

<始まるぞ>

 

 実況の声と合わさって、会場が静かになるとゲートが開いた。

体操服姿のウマ娘たちが、どどどっと走っていく。

 たしかに見た目は綺麗だけど、それだけだしなぁ。

そこまで夢中になれるか?

友人は目を輝かせてるけど。

 

 あ、あの差しの奴なんか大差とかやりそうだし、乱数でブロックさせるかぁ。

なんか直感でそんな感じの事がわかったから、髪色が前と後ろで違うウマ娘を

他のウマ娘でブロックさせることに成功したんだ。

 

<今回はあの娘か。次のレースまで15分もある。さあ、スカウトしにいくぞ!>

「お、おう!」

「え、どこ!?」

<こっちだこっち! ほら、ウマ娘がでてきてるだろ?>

 

 

 皆が皆、一位から入着した子を勧誘しに行ってる。

 

 でも俺は12位にさせた子のところへ行く。

 

<なぜだ……>

 

「ねえ」

 

<ん、君は?>

 

「俺はTAS。れっきとしたトレーナーだよ」

 

<なるほど、小さい体形はもとより大人か>

 

「いや、ぴっちぴちの12歳だよ」

 

<!? まあ、そういうこともあるのか>

 

「それはそれとして、スカウト受けて」

 

<……やめておいた方がいい。最下位だぞ>

 

「それを決めるのは、キミじゃないよね。

大丈夫。まずはキミを三冠にしてあげよう、シンボリルドルフ」

 

<その自信はどこからくるんだ……。まあいい、スカウトは絶望的だったんだ。

よろしく頼む>

 

「TAS!? もう決めたのか」

「うん。有望株のシンボリルドルフだ」

「は!? え、でも、12着……え?」

<困惑するのも無理はない。私も驚いているところだ>

 

 たぶんそっちじゃないんだよなあ。アプリ最強らしいシンボリルドルフが、12着だってことだとおもうよ。

 

「俺は友人Aだ。よろしくな、シンボリルドルフ!」

<友人A? えーと、A、よろしく>

「応!」

 

 そういうわけで、チーム登録を行った。

なんで今チームとして申請するかって?

俺が友人のサブになったわけだけど……。

 

「いや、TASがメイン張れよ」

「えー、わかったー」

「よっしゃ! じゃ、俺がTASのサブやるぜ」

「何からやる?」

「先生がいうには、目標設定が先らしい」

「おk。というわけで、しんちゃん。目標を掲げようか。

俺はキミをまずは三冠にすることなんだけど」

<あ、ああ。私も三冠を目指そう>

「ついでに無敗もつけておくか」

「おっそうだな」

<い、いや、ちょ、流石にそこまでは>

「やるよね?」

<やります……>

 

 ちょっとパソコン画面を見ると、生放送だからかコメントが結構荒れてる。

シラネ。

 

 

 目標設定したので、次は簡単な持続可能な速度を測る事なんだけどー。

 

「しんちゃんは、差しが得意でその次に先行。得意距離は中距離と長距離で、

芝適性ね」

<トレーナー、そのしんちゃんっていうのは、私の事か?>

「そうだよ、他に誰がいるのさ」

<いないです>

「TAS、まずは俺が測るからさっさと走って来いよ」

「そだな」

<ちょっと待ってほしい。まさか、トレーナーも走るのか!?>

「そうだけど?」

 

 めっちゃ驚いてる。

友人はすでにストップウォッチと計測表を持ってきていて、トレーナー気分を満喫しているぞ。

俺もさっさとトレーナーとして走りたいぜ!

 

「それじゃ、スタートに立ってー」

「立ったよ!」

<準備完了だ>

「よーい、ドン!」

 

まずはTASの本領発揮だ!

スタートするまで動けないから、ケツワープのための速度保存をする。

そして開始と同時に、動けるようになるので一気に加速する。

 

<!?>

 

 次にこの速度では曲がれないので、ソニックカラーズのレーザーを使うんだ!

こいつで反射! ただしこいつの効果時間内でゴールはできない。

更にケツワープのための速度保存はないので、このままちょっとした坂道にスライディングで侵入。

最後に坂道の最後の方で、走り出すとレーザーの速度を保ったままゴール!

 

「1600Mを15秒か中々だな!」

「だろ?」

 

 1分12秒で帰ってきたしんちゃん。

 

「やあ、おかえり」

<ただいま……ところで、トレーナー>

「ん?」

<今のはなんだ?>

「速度保存だよ」

<速度保存?>

 

 俺は友人も交えて、しんちゃんにゲート内加速方法を伝授した。

だけどケツワープなんて、TAS以外あんまりできない。

期待せずにいたら、なんと100Mだけものすごい速度で射出された。

 

<す、すごい! これが速度保存の技術か!>

「そうだ!」

 

 後ろを向きながら前に飛ぶということをすると、しんちゃんはゲート解放と同時に空中を飛んだんだ。

これがなかなか革命で、これの練習をすることになったんだ。

まあTASには遠く及ばないんだけど。

 

「おいTAS。ちょっとは真面目にやれ」

「はーい」

 

 友人に怒られたので、この世界にはまだない人間工学等に基づいた話をすることにした。

 

「それでしんちゃんはどうなんだ?」

「直すべきところはないね。筋肉や骨格、その他が最高に近いレベルだ。

俺達がやるべきことはないよ」

「節穴かよ……」

「残念ながらTASは受動的なんだ」

 

 自分で動くこともできるんだけど、なんか条件を決めたうえでやるようなものばかり。

そういう場面だと最高のパフォーマンスを発揮できるんだけど、

自由かつ自分で考えないといけないようなことになるとあんまりTASの力を発揮できないような気がする。

 

 よし、ついでにTASの限界というのにも挑戦してみようかな!

 

「よし、しんちゃん。君に直してもらいたいフォームがある」

<?>

「それは前傾姿勢だな」

<な!? ウマ娘の基本ともいえるスパート時の姿勢だぞ!

 ウマ娘用のトレーニング教本にも書いてあるっ>

「いや、あれ、速くなってない。むしろ足が後ろに流れたり肩の位置がずれるほど力が腕に入ったり、重心が下になりすぎたり、肺をしぼめたりして非常に効率が悪い」

<そんなにか……>

 

 友人はなんかトレーナーとして真面目に助言してるぞ!

すげぇ、キミ、そんな指導ができるのか……。

 

「ああ。そこで提案するのは、前傾5度。走行時、体の真下でつま先を使って着地して、

そのまま後ろに蹴る様に走ること。腕には力を入れないで、振り子の様に振る事。

ゴール前は身体を投げ出すように胸からゴールすること」

<ううむ>

「プライドがあるのはわかる。だけど、これで走ってみて欲しい。 TAS!」

「あいよ!」

「しんちゃんと競争してくれ」

「OK!」

 

 俺は友人の頼みを聞いて、しんちゃんと一緒に8割方の力で競争をしたんだ。

ゲームの中だから俺達に体力が設定されていないけど、おかげでTASの技術をふんだんに取り入れた走法ができるようになった。

しんちゃんも最初は驚いていたけれど、日が沈み始めるころには驚くことはなくなっていた。

 

「今日はこれでおしまいにする。一気に詰め込むのは体にも悪い。徐々に直していこう」

<わかったトレーナー>

「それだとどっちかどっちかわからないから、俺達の事は気軽に呼んでいいんじゃない?」

「まあ、年上だしなあ。俺はA君でいいぜ!」

「じゃ、俺はTASくんでいいよ!」

<二人がそれでいいならそうしようか>

 

 しんちゃんは、朗らかに笑う。

 

 やり終えたら、俺達はトレーナー室へ戻る。

だけどそれと同時にやってみたいことが増えたし、なによりこのゲームの世界にハマりそうだ。

 

「どうだ? ウマ娘は」

「ゲームじゃなくてポケモンみたいに、世界観にはまったよ」

「じゃあ、プレイは継続するか?」

「うん。それと確認したいことがあるから、ちょっとここに残ってて」

「OK!」

 

 友人には残ってもらってて、俺は外に出る。

外に出ても時間は、1分とも経ってなかった。

まあTASでやれば、3年なんて10分で終わるからなあ。

そう考えたら、たった1日なんて一秒にもならないか。

 あ、そうだ。

やりたいことは、ウマ娘を史実の奴を見せた場合の反応や今ゲームの場面を変えたらどうなるのか。

今の場面はシンボリルドルフのURAシナリオを開始したところだ。

 

 ターンは1も進んでいない。

まあ月の上下旬をやってるからそうもなるかあ。

じゃ、これをスピード特訓を選択して、半月進ませる。

現実世界で1分経過しているから友人たちは、相当進んでいそうだなぁ。

 

「ん?」

 

 あれ、シンボリルドルフのステータスが一部おかしいことになってる。EやFがなくなってCが表示されている。

つまり、これはゲーム内の事が表示されている事だ。

 

 これってチート行為ということか?

それとも内部処理でそうなっているからかもしれないし。

 

 とにかく内部干渉は、外部にも影響が出るということで。

そうとわかればなおさら友人の兄貴を、例の惑星から出すわけにはいかなくなった。

お互いに影響されるのならば、細菌関連とか確実に影響するじゃんって。

 

「あっと、もう3分! すぐにいくぞ、友人!」

 

 俺はPCに触れてゲーム内へ飛ぶ。

 

 

 云い忘れてたけど、友人と俺が折半してセキュリティが強いマンションの一角を購入した。

なので両親に邪魔されず、ゲームの中に入れるんだよね。

ちゃんと窓も閉じたし、物理ロックは二重に窓ガラスも入れないように

防弾ガラス仕様に、自動ロックも完備しているから多分入れないはず。

 入られたらそれはそれで困るけど、あるのは押し入れの中のPCのみ。

いじられない限りどうにかなるさ!

ホーム画面には、2重のロックがあるし。うん、よし、行こう。

 




トウカイテイオーをRTAしてしっとりさせるより、こういう方向性が好き

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