Fate/GrandOrder 特異点 機動戦士ガンダム00―Awakening of the Trailblazer―最後の対話 作:鉄血
オラトリアは明日投稿します!
今回の虚数潜航は正直に言ってどうなるか分からない。だからシャドウ・ボーダーにもできるだけの処置はしておいたけれど・・・立香くん大丈夫かい?」
立香の隣でダヴィンチちゃんがそう言ってくる。
だが、立香は「問題ないよ」と答えると椅子に座った。
そしてシャドウ・ボーダーからアナウンスが響き渡る。
『ペーパームーン惑星航路図プラスマイナス収束開始。シャドウ・ボーダー、間もなく実数境域へ入港します。汎人類史残存数値∶B異聞深度:観測不可。実数空間における存在証明、英霊■■による仮想海図に投錨。虚数潜航、終了。これより実数空間へ浮上します』
アナウンスが終わると激しい振動と眩い光が藤丸立香達を襲う。だが、それも一瞬の出来事だった。
『実数空間にアンカー固定。実数証明完了。シャドウ・ボーダーの存在確立。ゼロセイルによる帰港に成功しました』
アナウンスが再び響くと、座っていたホームズが口を開く。
「よし。無事に実数復帰できたようだ」
「フォウフォウ」
ホームズの言葉にフォウも鳴く。
立香はシャドウ・ボーダーの窓から外を覗くと、遥か遠方に見える巨大な建造物に声を上げる。
「・・・すごく大きい」
その声につられるようにして、マシュも巨大なタワーを見て立香と同じような感想を溢す。
「はい!あれほどの巨大な建造物を始めて見ました。オリュンポスの巨大な都市や空想樹にも負けず劣らずの高さです!」
マシュもどうやらその巨大な建造物を見て興奮気味に言う。
そんな中で、ダヴィンチちゃんがあのタワーの解析を終わらせたのか、この場にいる全員に言った。
「あの巨大な建造物だけど、解析した結果、巨大な発電所だ。しかも、あの壁一枚一枚が巨大な太陽光発電パネルになってる。内部解析は近づかないと分からないけど、高さ的には異聞帯の秦にあった始皇帝の本体より大きいよ。アレ」
ダヴィンチちゃんはそう言った後、ゴルドルフがその隣で言う。
「つまり、この異聞帯の人類は宇宙にまで活動圏を増やしている訳かね?だが、この場所には空想樹の確認が無いわけだが・・・」
そう溢すゴルドルフに、ホームズは言う。
「いや、この場所は異聞帯ではなく、特異点だ。しかも数多ある未来のうちの一つ・・・つまりは可能性でしかない。だがこうやってこの特異点が存在している以上、最も我々の世界の人類がたどり着く終着点に近いのだろうね」
「ちなみにだけどこの場所を解析した所、此処はモンゴルだ。近くに基地みたいな建造物があるけど、どうする?」
ダヴィンチちゃんの言葉に立香は言った。
「行ってみよう。結局は人がいる場所に行かないと状況も分からないからね」
「そうですね。情報収集も兼ねて行きましょう」
二人の返答を聞いて、ダヴィンチちゃんは呆れつつも笑顔をつくる。
「そう言うと思って、もう進路を向けてるよ。って、待った」
突然の待ったにゴルドルフが言う。
「どうしたのかね?」
「レーダーに生体反応がある。数は二つ。これは・・・反応的に現地の人かな?」
ダヴィンチの言葉を聞き、ホームズは眉を上げる。
「この特異点の住人か。接触してみよう。何かしらこの特異点について聞き出せるかもしれない」
「りょーかい。なら、進路を少し変更するね」
ダヴィンチちゃんはそう言って、部屋を出ていった。
そして、その後ろ姿を見送った後、ホームズは立香達に言った。
「この特異点はまだまだ不明な所が多い。気をつけて接触したまえ」
「はい」
「わかりました」
藤丸立香達はそう言って、シャドウ・ボーダーの外へ出ていった。
◇◇◇◇◇
マリナ・イスマイールとシーリン・バフティヤールの友誼は、出会ってから十数年を経ったいまも変わることなく続いている。
だが、その間にお互いの肩書きだけは、様々な変化をみせた。
中東にあるアザディスタン王国の第一皇女と、そのそばで政治的助言を与える側近。
そこから、まず最初に、地球連邦政府になっても改善されない中東政策に業を煮やしたシーリンが側近の座を辞してカタロンの構成員となり、次いでアロウズの計略によってアザディスタン王国の名前を地図上から抹消されたマリナが流浪する亡国の皇女となった。
それから二人は、けっして短くない期間の逃亡生活を共にし────そしていま、マリナは復活したアザディスタン王国の皇女に戻り、シーリンは連邦議会員から選出され地球連邦政府中東方面特使になっている。
第一皇女とその側近であった頃に比べれば直接顔を合わせる機会は減ったものの、彼女たち、は現在も公私にわたって連絡を取り合い、親交を密にしていた。
「お子さんは元気かしら、シーリン?もう一歳になったのよね」
「ええ、毎日走り回ったり騒いだりで大変よ。いったい誰に似たのかしら?」
そのような言葉をかわし、つかの間、数年前の自分たちを思い返して、まさかこんな会話をする日が来るなんて思わなかったわね、と笑みを深くする。
その二人が、共に宇宙へ上がることになった。
中東使節団の一員としてコロニー開発公社を視察する為だ。
コロニー開発公社は、主に地球連邦政府からの発注を受けてスペースコロニーの開発、建造を請け負う会社である。
そのこうしゃが、前政権────アロウズの傀儡であった────ときに施行した中東政策を利用して、強制的に囲い込んだ中東出身の労働者たちを、いまだ開放していないというのだ。
噂が真実であるか否か、また労働者たちの実情、心情はどうなっているのか、それを確かめるのが、今回の視察の目的だった。
と、隣でシーリンが船窓の向こうを流れていく資源衛星の群れを指さしながら、案内役として船に残ったコロニー開発公社側の男に尋ねる。
「視察予定のルートから外れていない?」
「ご要望であった作業員宿舎へ向かっています」
男は無機質な表情で答えた。
「わざわざ資源衛星に宿舎を作る?」
シーリンが重ねて問う。
コロニーの建造は地上に一軒家を建てるのとはわけが違う。
何十万、何百万という人間が生活するための大地────言い換えれば、街────を宇宙空間に、造り上げるのだ。
そのため、ひとつのスペースコロニーは人間が圧迫感を覚えるほどの巨大さを有しているのだ。完成させるためには膨大な手間と時間と人材が必要である。
にもかかわらず、実作業を担う労働者たちを、わざわざ建設現場から遠く離れた資源衛星群の中に寝泊まりさせるのは、非効率もはなはだしい。
普通に考えれば、現場近くに仮宿舎を設けて、そこで生活させる方が望ましいだろう。
だからこそ、使節団の一行は作業員宿舎が建設途中のコロニー内に設営されているものと思われていたのだが───。
「どういうこと?」
険しい目で聞くシーリンに、案内役の男はわずかに言葉を詰まらせつつも平静を貫く。
「・・・さあ、そこまでは・・・・」
男の顔に、マリナはかすかな機微を見出した。
わかっているが答えられない、というような微小な翳りだ。
そんなときである。
『船長より乗客の皆さまへ』
緊迫感を含んだ放送が、船内に響き渡った。
『所属不明のモビルスーツが接近。念の為、シートベルトの着用をお願いします』
マリナたちは、揃って船窓に顔を向ける。
そこに、資源衛星の影から飛び出してくる三つの光点が見えた。
その光にマリナは見覚えがある。
かつて地球連邦が────というよりアロウズが───改良に成功した疑似GNドライヴから排出されるオレンジ色のGN粒子の光だ。
三つの光点が接近してくるに従って、徐々にモビルスーツの形状が見て取れるようになる。
全体的に丸みを帯びたフォルム、つるりとした曲線を描く頭部には両目のような二つのメインセンサーが見て取れる。
見間違えようがない、アロウズが跳梁していた時代、地球連邦軍に制式採用されていたモビルスーツ、GNX―609T《GNーXⅢ》であった。
三機のGNーXⅢは、それぞれにライフルのような銃器を携えている。
「コロニー公社のモビルスーツじゃないのか・・・!?」
SPの一人が疑念の声をあげる。
「おい!?これはどうなっているんだ、答えろ!」
先程のSPが、この場でたった一人のコロニー公社側の人間に怒号をぶつけるが、男は眉間にしわを寄せ、凝然と船窓を見つめるだけだ。
「来るぞ!」
別のSPの声に、マリナ達は三機のGNーXⅢに顔を戻した。
接近していた三機が、光点だった位置から、はっきりと各部パーツの形が認識できる距離まで来ている。
おそらく射程距離に入ったのだろう、三機のGNーXⅢはタイミングを同じくして銃口を此方へ真っ直ぐ向けた。
もはや言い逃れはできまい。
あの三機は、間違いなくこの船を狙っている。
操縦席では、船長が三機のGNーXⅢに向け、警告の言葉を出しているはずだ。
それを無視して攻撃態勢に入っているということは、こちらが中東使節団の船であると知って、攻撃をしてきたことに他ならない。
「そこまでしてまで中東労働者を開放したくないのか・・・!」
使節団の一人から呪詛めいたつぶやきがこぼれる。
そして───熱線が銃口から迸った。
誰もが息を詰まらせる。
しかし、その光条は三機のGNーXⅢから放たれたものではなかった。
三機のGNーXⅢを狙って放たれたものだったのである。
事態の急転に、中東使節団の一行は誰ひとりとして理解が追いつかなかった。
むしろ即座に対応したのは、不意打ちを受けたGNーXⅢの方である。
彼等は横合いから襲いかかってくる粒子ビー厶の群れをかわすと、機体の向きを船から粒子ビームの発射元に向けた。
そこには、先端に巨大な剣のようなパーツをつけた戦闘機のような形状の機体だった。
「フラッグか・・・!」
男が叫ぶと、同時にフラッグから数発のミサイルが発射され、それを三機のGNーXⅢが迎え撃つ。
粒子ビームの弾幕によってミサイルは全弾撃墜されるが、それはただのミサイルではなかった。
爆発したミサイルはそこからGN粒子入りの煙幕が拡散し、戦場全体を覆い尽くす。
そして、フラッグは後ろから実体剣で未だに此方を捉えていないGNーXⅢを両断した。
『コイツ!!』
GNーXⅢのパイロットはビームライフルを撃ちながらフラッグを追いかけるが、フラッグは急反転しプラズマソードを手にすると、そのまま肩から腰元まで一気に切り払った。
そして起こる爆発に最後のGNーXⅢはメインカメラを一瞬だけ向けるが、すぐに船へと視線を戻し、ビームライフルを発射する。
「アイハブコントロールっと」
船員が舵をきる。粒子ビームが船に当たる直前に船が急激に傾いだ。
『よけた!?』
パイロットは驚愕の声を上げるが、遅れてスモークの中から飛び出してきたフラッグが、右手に携えた実体剣を振り下ろし、背後からGNーXⅢの胴部を断ち切った。
上半身と下半身に分かれて回転する機体が、それぞれに爆発光を上げる。
使節団の船に襲いかかってきたGNーXⅢが全滅したのだ。
目の前で起きていた戦闘の迫力と、助かったという安堵感、そして自分たちを救ってくれたフラッグのパイロットが誰なのかという僅かな疑問が思考を支配する。
と、その時だった。
案内役の男がバックパックに擬したホルスターに収められていたのであろう拳銃を握り、その銃口を真っ直ぐマリナに向けている。
「あなた・・・!」
シーリンが鋭い非難の声を上げる。
しかし男は、ちらりとシーリンを一瞥しただけで、再びマリナに目を戻した。
そんな中で、マリナは男に刺激を与えないよう、ゆっくりと口を動かし、訊いた。
「これで、あなたの家族は・・・幸せになれるのですね・・・?」
「──────」
男の顔に動揺のさざ波が走る。
次の瞬間───男の手元から拳銃が弾け飛んだ。
銃声がキャビンに響き渡り、それが男の握っていた拳銃を弾き飛ばしたと認識したときには、既に数名のSPが男を組み伏せていた。
マリナは銃声の聞こえてきた操縦室のドアの方へ首を動かす。
すると、拳銃を握ったパイロットスーツの男は「やれやれ」と嘆息を吐きながら言った。
「襲撃が駄目なら暗殺かい?コロニー公社も無茶をするねぇ」
バイザー越しに不敵な笑みをひらめかせる男の顔を見て、マリナは驚きに目を見開く。
その顔、その声を覚えていたからだ。
「あなたは───」
というマリナの言葉を遮るように、男がすかさず口を開く。
「名乗る者でもないさ」
彼は「んじゃな」と言って、キャビンの前にある非常用ハッチに近づいていった。
「待ちなさい!」
シーリンが制止の声を投げかけたが、彼は止まらない。
直後、非常用ハッチが開け放たれた。
ハッチのすぐ外は宇宙空間である。気圧差の影響でハッチに向かって激しい気流が起こるが、それはすぐにやんだ。
そして再び視線をそちらへ向けたが、彼はキャビンから姿を消していた。
気づくと、船窓のすぐ近くにいるフラッグへと近づいていく彼の姿が見える。
彼がサブコクピットに身を潜り込ませ、ハッチが閉じられると、フラッグは加速を開始し、使節団の船から離れていった。
「・・・ジーン1・・・」
小さくなる光点を見送りながらシーリンが呟く。
「・・・ソレスタルビーイング・・・」
マリナが独語する。
「だとすると・・・あの機体には・・・彼が・・・」
もはや星の光と区別がつかない程に小さくなった光点を見ながらマリナはそうつぶやいていた。
『挨拶しなくていいのかい?』
宇宙空間を飛翔するフラッグの中、ロックオンはフラッグを操縦している刹那に言う。
「その必要は感じられない」
『あっそ』
刹那の返答を聞いて、ロックオンは通信をきる。
そして、ロックオン・ストラトスは嘆息しながら呟いた。
「・・・たく、鈍いんだよ。イノベイターの癖に・・・」
フェルトといい、お姫様といい何で俺がこんなことで気をもまなきゃならんのよ。と思いながら、フラッグのコクピットで一人足を伸ばすのだった。
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