前回は後で修正しますが表記が変わるだけですのでストーリーに影響はありませんのでご安心ください。
ギルバードさんの家から帰ってからヴァルナに指摘された。
「マスター、今のタイミングで転職しても問題ないのでしょうか?今は【裁判官】の講義や裁判官としての仕事の最中です。もしかしたら他の職業になってしまったら問題があるのかも知れません。」
確かに、言われてみるとそうかも……。
「一応明日の講義が終わったらローテルさんかエリーゼさんにでも相談してみようか。」
「そうしていただけると安心できます。いきなり説教が始まるのは妾はいやですよ。」
私だって嫌だよ。というか誰だって怒られたくはないでしょ。怒られて嬉しい人なんていないよ。
◇
そんなやり取りを昨夜したので法学校の講義が終わった今、【裁判官】ギルドの受付にやってきた。
「エリーゼさん。【裁判官】のレベルが上がりきったので他の職業に転職したいのですが問題ありますかね?」
「ロウさんですか。レベル50になったのですね。おめでとうございます。ジョブリセットさえされなければ問題ないですよ。法学校の方もサブジョブに含まれていれば受けられますので。」
「そうだったんですね。――ギルバードさんの労役ってあとどれくらいの期間残っていますか?」
ギルバードさんはやはりと言うべきなのか判決で出たお金を払いきることができなかった。そのため、一月前から【裁判官】ギルドのほうから指定された仕事をやってもらっている。
「無理して体を壊してしまうのは我々もあのときの決定としては違いますので毎日の用になってもらってませんので……。それに余裕がある時に少しお金を渡してもらっているので、今のペースですと後2ヶ月くらいですかね。」
律儀にお金を入れてるんですね。そのおかげで、予定されていた労役終了までの期間が短くなっているようですね。無理していなければいいんですけど、まぁ昨日まで言って会っていた様子を見るに本当に余剰分のお金を渡しているということなのでしょう。
「そういえば――差し障りなければ次はどのジョブを取得されるので?」
「マスターは【騎士】を取得されますよ。【適職診断カタログ】で提示されたジョブですけど、。色々と便利なスキルも多いですし、妾との相性を考えるとそれにしましょうと昨夜話し合いました。」
そう言って私たちは【騎士】のジョブクリスタルのあるところへ向かうことにした。
転職の際に何か必要かと考えたけどそんなことはなく、行ってクリスタルに触れ、職業を切り替えたら何事もなく終わった。
「こんなにあっさりとジョブの切り替えができちゃうなんて拍子抜けと言うかなんというか……。」
「まぁまぁ、何かあって色々と遅くなるよりはあっけなく終わるほうが良いですよ。」
「ステータス画面上もちゃんと変わってるから変わってるとはいえ実感が無いんだよね。」
「多分どんなことしても実感がわかないと思われますよ。今は少し興奮してるだけだと思いますので急いでギルバードさんのところで武器でもいただきましょう。」
そうだった。ギルバードさんに武器を見繕ってもらっていたっけ。急ぐ必要はないだろうけどギルバードさんのところに向かおうか。
◇
ギルバードさんのお店に到着し、ギルバードさんと軽く会話をすると選んで見た剣を持ってくるとのことでお店の奥に行ってしまった。
「剣でお願いしてたけどどんなものになるかな。」
「どんなものになるかはわかりませんね。ただ、両手で持つ剣にはやめたほうが良いかと思います。」
「どうして?」
「まず妾たちの今後の戦い方を考えるとマカラにはマスターに乗っていただいたほうがよろしいかと思います。前衛はマスターが後衛は妾が担当するのが良いかと。」
マカラには乗るのはヴァルナのほうが良いと思っていたよ。私よりも全然ステータスが高いからさ。
「ステータスは今の段階では妾のほうが高いかも知れませんが、最終的に前衛としてであればマスターのほうが高くなるのではないかと思っております。後衛であれば機動力なども必要ないでしょうし、今のうちからその速度で訓練するのが良いかと思います。」
「そう言われてみるとそうだね。せっかく【騎士】になったし、スキルも《騎乗》や《盾技能》っていうものもあるみたいだからね。片手剣を持って騎乗していないときは盾でも持とうかな。」
「良いかと思われます。騎獣が使えないときもそれである程度は戦えるでしょう。」
装備選択も難しいね。一言で剣って言っても色々あるからこれって決めるのがめちゃくちゃ大変だよ。他の人はどんな感じで決めているんだろうか。寝る前にでも調べてみようかな。
二人で考えていると奥からギルバードさんがやってきた。
「待たせたな。武器を使うのも初めてだって記憶があったからなるべく癖のない物を選んできた。この中でオススメなのはこれだがどうだ?」
片手直剣を選んで進めてきてくれた。他にもレイピアや海賊が持っているような剣もあったが希望のものを進めてくれたようだ。
「先程、ヴァルナと話し合っていたのですがこのオススメされているもので良さそうです。あとは、あればで結構なのですが片手で扱える盾とかはありませんか?」
「盾だとこのあたりなら予算内だと思うぞ。俺も少しはサービスしてるから超えることは無いだろう。」
もしかして、剣とかかなり値引いてもらってるんじゃ……。
「そういうのは気にすると思ったから値段に値引きはそこまでしてねぇよ。ただ、俺が作ることで原価ギリギリのものにはしたけどな。同額じゃここまでのものは買えないぞ。」
「口に出してましたか?」
「いや、そうじゃない。単純にお前の顔に出ていただけだ。多少、表情は隠したほうがいいぞ。」
失礼な!私そこまでわかり易くないですよ!あっちじゃ無表情だから全然分かるはずがないし!
「マスター。お忘れかも知れませんが、こちらでは表情は出ていますので本来は表情豊かな方だったのだと思いますよ。」
「うるさいうるさい!私は表情はそんなに筒抜けな人じゃないの!」
「ははは。そういうことにしておこう。ほら、顔を真赤にしてないで盾はどれにする?」
ヴァルナもギルバードさんも好き勝手言ってくれちゃって……。私はあまり顔に思ったことを出さないと思うんだけどなぁ。
「盾ですけど、できることなら取り回ししやすいのでお願いします。おそらくですけど重いとそれに振り回されちゃうと思うので。」
「となると、革で作られたものがいいか。――この店にあるものだと中型盾か小型のバックラーの二つがある。どちらも片手で取り回しが効く。ただ、バックラーは他の盾と違った技術が必要になってくるから一般的なものであれば中型盾が無難だな。どっちにする?」
「他にも技術を使い回せる中型盾がいいかな?それでお願いできますか?」
「分かった。少し腕の長さとか測らせてくれ。ロウのサイズに合わせて少し微調整をしたいんだ。」
そう言われて私は腕の長さや手の大きさなどを測られた。測り終えると「帰るまでに微調整をしておくからキャシーと話したり遊んだりしてくれ」と言われたので、キャシーちゃんとピクニックにでも行くことにした。その際、キャシーちゃんが最近調子が悪いようなので気をつけてほしいと注意を受けた。
◇
キャシーちゃんに声をかけ出かけようとしたところでキース君がお店の近くに来ていたので一緒にピクニックに誘った。
いつもと同じように<イースター平原>の少し街道を沿ったところの近くにちょうどよい丘があるのでそこでシートを敷いて話したり、お菓子を食べたりしている。たまにモンスターが現れるのでそのたびに私とヴァルナでモンスターを倒していた。しかし、第Ⅱ形態になってからはマカラを呼んでモンスターに体当たりをして倒してもらったり、追いかけてもらうことで周囲の安全を確保してもらっている。仕事が終わるとキャシーちゃんに頭をなでてもらって喜んでいる。
――「ロウお姉ちゃん。お兄ちゃんから何を買ったの?」
――「キャシーちゃんの体調は問題ない?」
などと今日のお店でのことを聞かれたり、体調のことを聞いたりと様々なことを話していた。その中でキースくんがキャシーのことをチラチラと見ながら私たちの話しに混ざっていたけど、やっぱりキース君はキャシーちゃんのことが好きなんだなって思った。前々からそのような気はしてたけど今回で確信した。私は影から応援してるよ。あっちでは私はずっと家にいたからそんな経験もないんだけどね。
「ねえねえ、ロウお姉ちゃん。あそこでモンスターを倒してる人すごく強いね。服は簡単に脱げちゃいそうな格好だけど。」
そう言われて見てみると純日本風の服を着た男の人が戦闘をしていた。左手に紋章が見えたってヴァルナが言っていたのでマスターだろう。筒袖という種類の和服だったっけ?上半身はそれで下半身は袴を履いている……。このあたりじゃ全然見ないな。私がいくら交流が少なくてもそのような格好の人の噂はティアンの人から効くはずだから多分他の所から来た人だろうか。
その人がこちらに気づいたらしく、やって来た。近くで見てみると日本人っぽい顔つきのアバターだったけど、私みたいに殆ど変えていないのかな?
「はじめまして、僕は近衛 京介。最近このあたりにやって来たんだけど君たちの邪魔だったかな?そこで景色を見ていたようだったから。」
「私はファトレティ・ロウ。私側から順番にヴァルナ、キャシーちゃんそしてキース君です。邪魔じゃないです。珍しい格好だけどすごく強いねって話していました。そんな実力者がこのあたりの初心者用の狩場でどうされたのですか?」
「あぁ、僕は天地からやって来てね。ここでは手に入れた武器の試し切りをしていたんだ。天地では見ないものだったので習った動きがこれでもできるか試してみていたんだ。」
そう言うと私たちにアルター王国では一般的に使われている剣を見せてくれた。
「ただ、切るというよりは叩き潰すというものだったから思っていた以上に同じ動きにならなくてね。どうにかできないかって色々と試行錯誤してたんだ。」
「なるほど……。すごいですね。私なんか最近ようやく【騎士】になって初めて武器を買ったところです。そんな差は分からなそうですよ。」
「武器の使い勝手は触った回数だから初めて武器を買う人はわからないよ。まずは買ったものを使いこなせるようにならないと。」
そんなものかなぁ。まぁ取り扱いがわからないと何が良い悪いなんてわからないか。と思っていると後ろから私にだけ聞こえるように小声でヴァルナが話しかけてきた。
「マスター、そろそろ戻ったほうがよろしいかと思います。キャシーさんの様子が少し悪くなってるようですし。」
キャシーちゃんをよく見てみると顔色が悪いように見えた。ヴァルナに言われたから余計にそう見えるのかと思ったが、ここ最近キャシーちゃんは体調を崩しやすくよく寝ていた。無理させて明日以降に影響があるとギルバードさんに申し訳ないし、近衛さんと話している最中だけど帰ったほうがいいかな?
「あの……近衛さん。キャシーちゃんの調子が悪くなってきちゃったみたいで、申し訳ありませんがここで帰らさせていただきたいのですが……。」
「そうなのか。見たところ様子がそこまで悪くはなさそうだけど。」
「近衛さんとのお話を切り上げたいから言ってるんじゃないですからね。ここ最近調子を崩しがちで明日以降に寝込んじゃったら大変ですから。」
「それは失礼した。体調が悪いのは気のせいじゃないかなって思ってね。」
「こちらこそ言い過ぎました。すみません。」
二人して謝っているキャシーちゃんがやって来た。
「ロウお姉ちゃん。私は全然元気だから近衛さんとお話していても大丈夫だよ?」
「嘘はだめだよ。さっきここまで来る時に足元がフラフラしていたんだから。もう今日はおしまい。無理をしたら辛くなるのはキャシーちゃんなんだから。申し訳ありませんがキャシーちゃんがそろそろ限界のようなので。」
「そのようですね。先程の足元は危なすぎます。早めに休ませてあげて。」
「お話の途中ですけど、失礼します。もし再び出会えましたらまた話でもお願いします。」
「わかりました。ではまた会えることを楽しみにしています。」
別れの言葉を近衛さんと交わし、私たちはギルバードさんのお店まで帰りひとまずキャシーちゃんを寝かしつけたのであった。