騎士団へ先程到着したけど、色々と恥ずかしかった。
ヴァルナが知っているだろうと思ったから「じゃあ騎士団の詰め所に向かおうか!ヴァルナ、案内よろしくね。」って言ったのだけどヴァルナは「妾はしりませんよ。」って言ってきたんだよね。そうしたら、キース君に肩を脱力させながら
「姉ちゃんたちそんな偉そうに言ってたけど騎士団の詰め所の場所を知らないなんてありえねぇだろ……」
って言われてしまったのが。
二人して顔を真っ赤にしてキースくんの顔を見れないからってうつむいちゃった。
「急がないといけないんだろ、恥ずかしがっていないで行くぞ。さっきまで行こうとしていた方向と逆でこっちだよ。」
そもそも、私は詰め所へ行こうとしていたのに逆方向に行こうとしていたんですね……。
しかも、向かう最中も私のAGI値が低すぎるために足手まといになってしまって「歳上なのに足を引っ張るってどういうことなの……」という思いでいっぱいになってしまったよ。
詰め所に到着したので詰め所に聞いて本事件の担当者がいるか確認してもらったところ、そもそもこの詰め所で担当者さんは働いていないとのこと。
騎士さんが勤め先が分かるなら馬車で送る事ができるのでなにか心当たりが無いかと聞かれたので、事件資料をよく見たら勤め先が書いてあった。
この担当者の詰め所まで行く流れで何回恥ずかしい思いをしているのだろうか……。
「さて、馬車が到着いたしました。差し障りがなければ私、アンセルがご案内させていただきます。」
「助かります。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。」
お辞儀をしようとしたところで、やめさせられた。
「いやいや、事件担当の【裁判官】殿にそのような行為をされてしまいますとこちらも立場があり、困ってしまいますのでお辞め下さい。対等な関係でなければ対外的にもよろしくないもので……」
「確かに……、申し訳ありません。」
そう言うと、全員が馬車に乗り込み始めた。
本で見た中世の馬車そのものの内装だ!現実にはもうないだろうから感慨深いね。
走り出すと思っていた以上に揺れがなく驚いた。
「【裁判官】殿どうされましたか?」
「いえ、馬車に乗るのが初めてで、思っていた以上に揺れが少なく驚いていただけです。」
「そうでしたか。数十年前に比べるとだいぶ揺れが少なくなりましたからな。以前では移動中にこうして話すこともできませんでした。次の馬車では腰に優しいものが嬉しいですが。」
「長時間大きな揺れで硬い椅子に座るとなると大変ですね」
と、私は苦笑を交えつつ答えた。
「さて……本題なのですが……。あなたは<マスター>なのになぜ我々ティアンのためにここまで行動を起こしてくれるのですか?」
「なんでかって言われても……。」
「<マスター>の皆さんは魔物を倒すといったことを主にする人が多いですよね。ロウ殿は司法を行われております。なぜ、戦わなかったのですか?我々は伝説の<マスター>について正しく知る必要があるのです。」
「ただ、私は司法について勉強したくて……。今回に関しては、事件を捻じ曲げて間違った結果をそれが真実だと言うのが嫌なの。それは、被害者だけじゃなくて、その周りもすごく辛いって言うのは私自身が知っているから。」
「<マスター>というのも人それぞれということですな。我々ティアン一人一人が違うように。」
「それで良いと思います。」
「なるほど……。ではロウ殿らとは友好的な関係が作れそうですな。」
「嬉しいですね。私たちはその期待を裏切らないようにしないとだね。」
「そうですね。マスター。妾たちの行いでアルター王国の<マスター>への印象が変わりますからね。」
「ははは。そんなに気を負う必要はありませんよ。少なくともロウ殿個人と我々の関係ですよ。」
そんなことを話していると担当の騎士がいる詰め所に到着したようだ。
先程まで話していた騎士が私たちを紹介してくれた。
「私は本日の事件で【裁判官】の一人として参加していた、ファトレティ・ロウと申します。こちらはヴァルナ、私の<エンブリオ>です。あとこの少年はキース君です。被告人の知り合いでこれから説明することの一部を知っていたためこちらについてきていただきました。」
「何かしこまってるんだよ。姉ちゃんたちはそもそも俺がいなければ案内してもらった騎士がいる詰め所にまで行けなかっただろ。」
「それは言わないで!すっごく恥ずかしいんだから!」
「はっはっは。気にすることはない。<マスター>がこの地にやってきてまだ日数が経っていない。こういうところに用がなければわからないだろう。」
「殿方、恥ずかしいものは恥ずかしいと感じるのが女性なのです。」
「そういうものか。あぁ、挨拶が遅れて申し訳ない。私はシド・グレイ。この詰め所で働いている【大騎士】だ。よろしく頼む。」
「シドさん。よろしくおねがいします。騎士団側の調査はどのようになっておりますか?こちらも調査したところいくつか判明した点があったのですが一度情報の共有をしたいと思っています。」
「わざわざ【裁判官】がそのようなことをしても良いのか?騎士団側への助力が明らかになると平等中立という点に問題が出て言う人らに言われるぞ。」
「私は【裁判官】ですが【裁判官】になったのは、両者の意見を聞き正しいと思える判決を下すためになりたいと思ったからです。誤った判決をするくらいなら片方に肩入れしたほうがいいですね。」
「なるほど……。それならまずは騎士団側の現状を伝えよう。恥ずかしい話だが進捗が無いというのが現状なのだ。正直なところこの件をやれる余裕がなくてな。」
「余裕がないというのはどういうことでしょうか?一応こちらは【裁判官】ギルドとしての依頼ですよね?」
法学校で学んだことなんだけど法廷での【裁判官】【裁判長】の指示はギルドからの依頼になるのだ。
必ず成功させる必要は無いけど無視することはそうとう問題のある行為になるらしい。
「窃盗だけでは動くのが難しいというのが正しいか。この地域の人目がつきにくい箇所で死体の遺棄が発生しているのだ。そちらの調査をするのに人手を持っていかれてしまってな。」
「ヴァルナ!それってもしかして。」
「本当に危ない可能性でてきてしましましたね。シドさん、私たちはその件の情報も持っております。ですが、それは独立した事件ではなく一つの事件としてつながっている可能性があるのです。」
「ヴァルナ殿、一体どういうことだ?これらが一つの事件として繋がっているということは。」
「本事件では、裏にネストル一家と呼ばれる集団がいるらしいのです。キースさんとギルバードさんはよく合う間柄で家族構成にも詳しいため、家族について聞いてみたら妹さんがいらっしゃるそうです。
ところで、死体遺棄の現場には若い女性の死体が多いのではないでしょうか?」
「それはそうだが……。どうしてそんなことを?」
「実は妾はネストル一家のアジトには潜入いたしまして……。そこで大量の契約書を見つけました。内容は基本的にはお金を貸す際の担保として女の子の子供を必要としているのです。そこから、多いのではないかと当たりをつけてみました。」
「ほぉ……。だが、どうしてネストル一家とやらのアジトへ潜入したのだ?関係がつかめないな。」
「ギルバードさんも、妹さんが担保としてネストル一家に囚われています。」
「だが、それだけであれば返済のために窃盗を働いたと言うことになってしまうが……。」
「多分事件の真相としてはそれであってる気はします。情状酌量の余地があったかは判断するべきだとは思いますが……。しかし、ネストル一家では少し厄介なことが起きているのです……。」
私は先程話していた本事件の予想と【呪術師】の行っているであろう儀式についてシドさんに伝えた。
「そのようなことが……。だとすると一刻も争っていられないな……。我々は直ちにその現場に向かい儀式の実態について調査することにする。」
「よろしくおねがいします。我々では力不足で……。」
「戦闘職でもないのだ。気にすることではない。一刻を争うと思うため申し訳ないがこれにて失礼する。」
そう言って姿を消すと、シドさんは人を集めるように指示をしたのかその詰め所は急に騒がしくなった。
今度はギルバードさんがいる場所まで向かわないと……。忙しいけど真相を明らかにするためにここで泣き言を言ってられない。
儀式についてはもう心配いらないし、妹さんも間に合うなら助かるはず。
そう思って私はギルバードさんの元へ足を進めた。
◇
ギルバードさんは弁護士と話しているが何やら揉めているようだ。
「ギルバードさん。いい加減にしてください。こちらもあなたがどういった事情を抱えているのかなど知らなければ弁護を適切に行うことができないんですよ。ずっと答えられないって言われますとこちらも困ります!」
「オリバーさん。すみませんが話すことができないんです。本当であれば話したいんです。ですが、こればっかりは無理でして……。」
そういう会話が続いているようだね。
ギルバードさんの立場からするとあれしか言いようもないだろうと思うけど、それを知らなければただ黙秘しているだけで弁護士に協力していない依頼人って思われちゃうよ。
「お取り込みのところ失礼します。私は本事件の担当【裁判官】の一人でファトレティ・ロウと申します。こちらはヴァルナ、私の<エンブリオ>です。少しお時間を頂いても良いですか?」
そう言うと弁護士(オリバーという名前らしい)が、私たちに返事をするとオリバーさんは少し頭を冷やしたいので離席するからそれまでに話を終えてほしいと言ってきた。
怒る一歩手前だったらしいね。だけども完全に怒ってしまう前に中に入ったのは私の良い判断だったと思わないかな!
自画自賛していたらヴァルナから白い目で見られていた。
「もう少し早く中に入っていたらオリバーさんももう少し冷静なときに話ができたのではないでしょうか?マスターは行くと決めたときにはすぐに行動したほうがよろしいですよ。」
「うぅ。そ、それはおいておいてさ。ギルバードさん、色々と言えない秘密があるそうじゃないですか。妹さんがいるとか、お金は危ない感じの組織のネストル一家からお金を借りたとか。私たちはそういうお話を聞きたいのです。」
「あぁ、妹はいるさ。だけどそれを俺は君たちに説明する義務があるのか?無いのであればそこをとやかく言われる筋合いはないな。」
「本来であればその必要はありません。しかし、今回は事情が異なります。私たちが調べたところ借金の担保はお店と妹さんだとか……。そういう場合は話す必要があると思うんですよね。」
「っっ……、どうしてそれを……。ん……キースじゃないか。もしかしてお前、俺のことを調べていたのか?キャシーは今、別のところで生活してるといっただろう。ネストル一家がおとなしくなるまでは比較的安全な地域にいるんだ。」
「兄ちゃん。そういうのはやめてくれよ。俺……心配で…気になっちゃって……。なにか力になれないかと思って調べたんだぜ。そしたら……。」
キース君はギルバードさんのためにと思って行動したのに、こんなことを言われてしまってショックを受けているようだ。
「一般人のキース君をだませても、【裁判官】の私を騙すことはできませんよ。<真偽判定>が反応しました。何かを偽っていることは明白です。お願いです。真実を言わなければ、大きい事件が起きたときに取り返しがつかないのです。」
「それは……。しかし、こればっかりは言うことができないんだ。」
私がどうしようかと考えているとヴァルナが口を開いた。
「仕方ありませんね。マスターはあなたに心配を掛けさせたくないので言葉にしませんでしたが、言うしか無いようですね。」
「一体、何を言うというんだ。」
「あなたの妹さんもしかしたら危険な状態かもしれませんよ。」
「妹には薬を飲ませたら復調したのは俺が目の前で見ていた。そんなことはない!」
「それではありません。妹さん、今ネストル一家にいらっしゃるのですよね?答えなくても大丈夫です。妾はその一家のアジトへ乗り込みましたが妹さんの姿は見つかりませんでしたよ。それどころか、見つかったのは【呪術師】系統が行っている儀式の部屋です。」
「【呪術師】の部屋?一体それがなんだって言うんだ!」
そう言われると一呼吸をおいてヴァルナは言った。
「あなたの妹さんが、その儀式の生贄として使われている可能性があります。また、生贄にされているのはあなたの妹さんだけではありません。他にも多くの人が生贄として使われています。事件をはっきりとさせるためにギルバードさん、あなたの発言を待っているのです。」
ヴァルナが言い切るとギルバードさんは顔を青くして考え込んでしまった。
ギルバードさんの今の現状を正直に話してほしいだけなんだ。
お願いだから契約書に書かれていても、この件の被害者らのために私たちに話してほしい……。
日曜日にこの章のプロットをまとめて、いろんな設定を考えてって作業してたら遅くなりました。申し訳ありません。