数十分経っただろうか、ギルバードさんは話すことを決意したかのような表情をして言った。
「わかったよ……。こんな事になっているなら話すしか無い……よな……。」
「兄ちゃん……。」
「ネストル一家が現れる数日前からキャシーの調子が悪くなってきたんだ。【医者】や【司祭】に診てもらったんだけどどちらも【快癒万能霊薬】が必要だと言われたのさ。」
「しかし、その【快癒万能霊薬】は非常に高価で手持ちのお金では到底払えませんでしたのよね?」
「あぁ、そうさ。数日間どうしようかと悩んでいたら、あいつらがやってきたんだ。『店と妹を担保に【快癒万能霊薬】を売ってやる』って言ってきたんだ。キャシーを担保に入れるなんてするつもりもなかったがキャシー自身が俺にこれ以上の迷惑を
かけるわけにはいかないって言ってきて、渋々その条件を受け入れたんだ。」
「それがキャシーさんを担保にすることにした理由なんですね。なぜ、今回窃盗をしたのですか?やはり、キャシーさんが【奴隷商】に売られてしまうからですか?」
「それだけじゃないさ。住んでいる地域の近くで奇妙な児童の遺体が現れ始めたんだ。それも、あいつらがお金を貸し始めた時期以降だぞ。」
「確かに危険かと思うかも知れませんけど、それだけでは行動を急ぎすぎたのではないでしょうか?」
「それは認めるが……。だけど、やはりキャシーが大切なんだ。キャシーを奴隷にするということはなんとしても避けたかったんだ。それに、契約で衛兵などにも相談できなかったからな。」
「そういうことですか……。危険な儀式が行われると先程話しましたが、私たちはこちらに来る前に騎士団の方へ赴き生贄となりそうな方々の救助を要請しました。現状、ギルバードさんは待つことしかできません。しかし、良い知らせが来るはずです。」
「助かる。」
ギルバードさんがそう返事をすると突然、体中に傷が現れてステータスを見たところ様々なデバフが発生していた。
「ギルバードさん、突然どうしたんですか!?」
「あぁ、お前らは知らないのか……。契約書で交わした契約事はな、反故にするとステータスダウンや状態異常を与えられちまうんだ。最上級になるとそれこそ死ぬ可能性があるが今回のはこのくらいで済んだな。」
「そんな……。申し訳ありません。妾たちはそんなことになるとは知らず……。」
「いいさ、気にしないでくれ。そういうリスクを込みでも伝えようと思ったんだ。それに最上位のものは使っていないと思ったしな。契約書の金額だけでもこういうときには使わないだろうと思ったからな。色々と手を尽くしてくれてありがとう。」
「こちらこそ、本当にありがとうございます。私たちはそろそろ帰ろうかと思いますが、他に聞きたいことなどはありませんか?」
「騎士団が今行動しているといったが妹が救出されたら会うことは可能か?」
「私の力ができる範囲で叶えてみようと思います。それで良いでしょうか?」
「ああ。大丈夫だ。ありがとう。」
そう返事をされると私たちはその部屋を出てキースくんとも分かれた後【裁判官】ギルドへ一度戻った。
必要なものを整理したので騎士団が行動をしているところへ向かいなにか手助けできることは無いか聞いてみよう。
そう思って【裁判官】ギルドから外に出ようとしたところで【裁判長】から声を掛けられた。
「ロウさん。どこへ行こうとしているのですか?」
「これから、協力を養成した騎士団の元へ向かい私にできることが無いかを聞いてこようと思ったところです。」
「それは認めることができません。おとなしく我々と共にここで待っていてください。」
「なぜですか!私たちにもなにかできることがあるかも知れません!」
「それは自惚れです。ヴァルナさんはなにか協力ができるかも知れませんが騎士団との共同になると邪魔になることのほうが多いでしょう。そもそもロウさん自身は【裁判官】という非戦闘職なのです。そんな人が行ったところで邪魔にしかなりません。助けになりたいという気持ちは崇高ですがここは我慢をするところです。」
「マスター、現場へ行って助けになりたいという気持ちはわかりますが、妾たちはここで待って解決されることを祈りましょう。」
「ロウさん。私から騎士団へ行って、作戦が終了したらこちらへ来て報告をしてもらえるか聞いてみましょう。それまでは私があなたに対してのお説教の時間です。」
「えっ。お説教とは一体なんのことですか?私たちは調査してよいというからその言葉の通りに調査しただけですよ?」
「ええ。基本的には調査をしていただけました。そのおかげで大事件に発展しそうな事件を早期に発見できました。騎士団の方から話を聞きましたが大量殺人の危険性があったものですしその功績は大きいでしょう。」
「でしたらお説教なんて……。」
「私が説教しようというのはギルバードさんの件に関してです。」
「ギルバードさんの件ですか???」
「そうです。弁護士の方から話を聞きましたよ。なんでも、契約書の禁止事項を破るように促したとか。」
「それは……。でも、事実関係をはっきりとさせたくて……。」
「それは大変結構なことです。ですが我々はルールや法を司り判断をする存在です。そのような存在が契約を破るように言うことは厳禁です。」
「マスター。今回は妾たちが急ぎすぎたのかも知れません。ですが、次回以降このような事件があったときに動くことがあったら今回の件を活かして動けるではないでしょうか?」
「そうだね。気落ちしていないで次回以降に活かしていけるようにどういうふうにしたら良かったか考えないと!」
「その意気ですね。ですが反省もしていただかないといけませんよ。」
「はい……すみません……。」
「とりあえずお二人はあと70日ほどは法学校で講義を受けていただこうと思います。」
「70日程度ですか……。」
「ええ、それに私が参加する裁判に定期的に出席してもらいます。まぁ、戦闘職でいう修行というやつですね。私のもとできちんと教育をいたしましょう。」
ん???これって罰則なのかな?なんというか対外的に罰則を与えなければいけないからそうしたという感じがするね。
でも、法学校70日かぁ。司法について学べるのはすごく嬉しいけどそればっかりだと飽きそうだなぁ……。
あぁ!だから定期的に私を裁判に出させてくれるのか!なんて優しい人なんでしょう……。
「そういえば、ロウさんとヴァルナさんに名前を伝えてませんでしたね。私は【裁判長】ロテール・ダルセーと申します。ローテルとお呼びください。」
「「よろしくおねがいします。」」
そういうやりとりをもう少ししていたら慌ただしく【裁判官】ギルドの扉が開いた。
何事だろうと入り口の方に振り返るとローテルさんから呼ばれたのでローテルさんの方へ向かった。
「ロウさん。事件の方は一段落したようですよ。今、騎士団からの伝令役が来てくれました。」
「ほんとですか!」
「ええ。それでは説明をお願いできますか?」
「かしこまりました!それでは本件について説明させていただきます!」
敬礼してそう言うと、突入作戦について説明が始まった。
◇ SIDE: 【高位呪術師】????・????
「もう少しです……もう少しで儀式が完成します……。」
幾多の子供を生贄として使い召喚を行おうとしていたが失敗続きだった。しかし、この数日の間に成功への兆しが見えてきたのだ。
「さて、もう一度やりましょうか。ほら、エレン君そんなに怯えないでください。」
猿轡を噛ませた上で腕を縛った男の子が怯えた表情でこちらを見ている。
「大丈夫ですよ。成功したら君は至高の存在になれるのですから喜ばしいことですよ。」
禁呪を発動し、至高な存在を召喚しようとしたが儀式の最中に子供の息が途絶え中断されてしまった。
「全く、頼りないですね。もう少し頑張ってくれてもいいでしょうに……。」
新しい生贄を連れてこようとしたとき、入り口に人の影が見えた。
「おお、ネストル殿。どうされましたかな?あまりこの部屋に来たくないと仰っておられたはずですが。」
大げさに腕を広げてみせる。ネストル殿はそれが気に食わなかったのか少し苛つきながら話し始めた。
「あぁ……、そんなふざけた真似はよせ。いい加減儀式とやらは成功するのんだろうな?」
「ええ、それでしたらもう少しで成功するという手応えがございますよ。あと一人二人だと思っております。」
「だとしたら急いでもらいたいね。最近騎士団の動きが活発になってきた。そろそろこのあたりで他所のところに移動しようとで準備を進めている。」
「でしたら次の生贄の息が途絶えたら場所を変えましょうか。幸い儀式はどこでもできますからね。」
「そうかい。だったらそうしてもらえると助かるね。基本的に身柄が判明するような証拠は消すつもりだ。」
「そうですか……。でしたら早速儀式を始めようと思います。ここでやれる時間が少ないですからね。」
次の子供を用意し、儀式の準備を進めているとネストル殿はこの部屋から去っていった。
「へっ。気色悪い男だな。だが、利益を生む間はお互いに協力関係だからな。ぜひぜひ、成功してほしいもんだ。」
聞こえていますよ。お互いにパートナーには不満があるってことでしょうね。
「さて、あなたのお名前は何でしょうかね。資料によると……。ふむふむ、キャシーというのですね。怖くありませんよ。これからあなたは至高の存在への贄となるのです。光栄に思えこそすれ怖がることなんてありません。」
早速、至高の存在を召喚する儀式を始めた。その中で過去一番と言っても良い手応えを感じた。
「おお、この手応えは……。成功したのでしょうか……。」
そう思ったがキャシーは自分の意識がある様子。至高の存在は生贄の魂を乗っ取るはずなので自我を保てるはずはない。
「あぁ、また失敗かもしれません……。ですが、あの手応えは気になります。一度、調べてみないとですね。」
調べるための準備をしようとしたところでネストル殿が慌ててやってきた。
「おい!急いで荷物を纏めて別のところへ行く準備をしろ!」
「突然どうされたのですか?」
「どっかのバカが契約を破りやがった。騎士団にバレた可能性がある!持ち歩けないものは燃やせ!急いでトンズラするぞ!」
そう言われ、儀式の成否を確認することができずに脱出する事となってしまった。
色々と心配し過ぎだとは思いますが今の協力者の言うことには従いましょうか。
「非常に残念ですねぇ……。念の為、使い魔をこの子につけておきますか。」
使い魔をこの子につけた後、ネストル殿に指示されてこの隠れ家を出ていった。
戦闘とかを書きたいけど、このようなシーンを入れたのでそのシーンまでまでたどり着くのが非常に大変です……。